「あいつが・・・・出るんだよな」
「とうとうだね」
まあ、二人共思うところはあるでしょう
ちなみに今回はミコトさんは出ず、竜希さんが中心となります
それでは本編どうぞ
第133話
「退屈だな」
煙管を吸いながら少女は退屈を口にする。誰しもが一度も口にしたことのある言葉だが・・・・少女がそれを口にするのはいささかおかしいと言わざるを得ないだろう。
少女が今居るのは地獄。生前罪を犯したものが死して行き着く罪を償うために罰が与えられる場所。罰が与えらている中、退屈だと口にするものは本来いないはずである。しかし、それでも少女は退屈を感じていた・・・・・あるいはその退屈こそが罰なのかもしれないが、この場合は違う。
少女は自らの罪を認め、自らの意志で地獄に堕ちた。だというのに、この地獄で少女を罰しようというものは誰一人いなかった。生前と同じく、少女は罰を与える地獄の住人にさえ愛され、担ぎ上げられ、敬わられ・・・・・整然と同じように酷く優遇されていた。
「はっ、確かにここは地獄だな。罰を望んでわざわざ来てやったというのに、生きてた頃と何も変わらん・・・・そう言う意味では確かに地獄だが、私が望んだ地獄とは程遠い」
生前でさえ自分の生き様に少女は不満を抱いていた。悉くに愛されることが定められていた人生。それほどつまらないものはないと・・・・これほどの地獄はないと彼女は思っていた。ゆえに少女は真の地獄に期待していた。自身が犯した最低最悪な罪・・・・・愛する者の目の前で自ら命を断つという罪に与えられる罰が地獄で施されると少女は期待していたというのに・・・・・この地獄は生前の世界と何一つ変わらなかった。
ただまあ、これに関しては少女に非があるとも言える。なにせ地獄に期待など本来寄せてはならぬものなのだから。少女の意に沿わなかったという意味では、確かにここは少女の地獄と言えるかもしれない。
ゆえに少女は・・・・ある決意を下すことにした。
「仕方がない、退屈しのぎに会いにいくとしよう。ちょうど頃合だしな」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、少女は歩みだす。
少女が愛した数少ない者達のいる楽園・・・・・幻想郷へと
「はあぁっ!」
「おお、いい一撃~。けどそれじゃあ俺に当てるには千年早いよ~」
永遠亭の庭にて、すでに日課になりつつある模擬戦を行う妖夢と竜希。妖夢の斬撃は竜希が幻想郷に来た当初・・・・春雪異変の時よりもはるかに速く、洗練されている。しかし、それでもいつものようにニコニコと締りのない笑みを浮かべる竜希にはかすりもしなかった。
「まだですっ!」
「お?」
ひときわ鋭い斬撃が竜希を襲う。その斬撃もあたりはしなかったが、先程までの竜希笑みがわずかに薄らいだ。
「へぇ・・・・・今のはなかなか良かったねよ~むちゃん。いつもよりも本気で避けちゃった」
「それでも当たる気配が全くしないんですが・・・・」
「当然。本気って言ってもあくまでもいつもより、だからね~。それはそうと・・・・・今日はこれで終わりだ」
「ッ!?参りました・・・・」
妖夢の斬撃をかいくぐって、竜希は妖夢の背後に回り込んで刀を首筋に添える。本日の模擬戦は、これにて終了となった。竜希が幻想入りしてはや数ヶ月。毎日のように模擬戦を繰り返すことで妖夢の剣士としてめきめき力をつけているが、それでも尚『最強の剣士』たる竜希には遠く及ばない。
それどころか・・・・
「あの、竜希さん」
「ん~?なによ~むちゃん?」
「その・・・・・もしかして竜希さん、強くなってますか?」
竜希は自らの強さを嫌っている。そんな竜希にそんなことを聞いてしまっては気分を害してしまうのではないかと思いながらも、妖夢は恐る恐ると尋ねてみた。
「・・・・どうしてそう思うの?」
「直感的になんですが、剣を交えているとき以前よりも一層竜希さんには敵わないと感じ取ってしまったので」
「いつからそう感じてた?」
「永遠亭から帰ってきたあとぐらいです」
「なるほどね~・・・・・これは喜ぶべきかそうでないのか・・・・」
竜希は頭を掻きながら、困ったように苦笑いを浮かべた。
「えっとね・・・・・結論から言うとよ~むちゃんの言うとおりだよ。俺は前よりも強くなってしまった。この幻想郷にきた当初よりもね。これには俺の厄介な特性が絡んじゃっててね~」
「厄介な特性・・・・・ですか?」
「うん。なんていうか俺は自分よりも何らかの力が上回ってる相手と対峙したら、それを上回っちゃうっていう面倒くさい特性があってね~」
「なんですかそのデタラメな特性は・・・・」
妖夢は竜希のありえない特性を耳にして驚きを通り越して呆れ返っていた。
「デタラメなのは否定しないかな~。ともかくまあ、永遠亭に行ったとき、俺は身体能力が俺よりも上のやつと戦っちゃってね~。そのせいでそいつの身体能力を超えちゃって前以上の強さを手に入れちゃったってわけだよ~」
「竜希さん異常の身体能力ってどんなバケモノですかそれは・・・・」
「いやいや、確かに身体能力は凄かったけど強さ的にはたいしたことなかったよ?ミコちゃんでも十分に勝てる相手だったし、今のよ~むちゃんでも倒せるねあれは」
「・・・・そうですか」
竜希の発言で、妖夢は微かにだが微笑みを浮かべた。あの竜希がある程度今の自分の実力を認めてくれていると思い、嬉しくなったのだろう。
「というか、よ~むちゃん的にはやっぱり残念かな?」
「何がですか?」
「俺が強くなったってことはもちろんだけど・・・・・俺の特性とか」
『最強の剣士』である竜希を超える剣士となる・・・・それが妖夢の、そして竜希の願いだ。ゆえに、竜希が強くなることも、竜希の特性もその願いにとっては厄介この上ないもの。だからこそ、竜希は妖夢が残念に思っているのではないかと考えているようだが・・・・
「いえ、特に残念には思っていません」
「ほえ?」
妖夢の予想外の回答に、竜希は間の抜けた声を上げてしまった。
「確かに、乗り越えるべきより高くなってしまいました。ですが、ただそれだけのことです。竜希さんを超える剣士になるという目標は一切揺るぎません。むしろ・・・・」
「むしろ?」
「壁は・・・・高ければ高いほど超えがいがあると思いませんか?」
ふっと不敵な笑みを浮かべながら妖夢は言う。
剣という凶器の恐ろしさも、剣術という殺人術の悍ましさも妖夢は知っている。知ってはいるが、それでも妖夢は剣士だ。ゆえに、剣士として超えるべき壁が高いということは、剣士としての己を高めることになるのにつながる。だからこそ、妖夢はその壁が高くなることを残念に思ってなどいないのだ。
「くくっ・・・・よく言ったよ~むちゃん!それでこそだ!いいよよ~むちゃん!最高だよ!可愛いよ!」
「みょん!?可愛いは今は関係ないじゃないですか!」
「お~、真っ赤になった真っ赤になった。これまた可愛いね~」
「ッ~!!もう知りません!」
「あはははは~♪」
可愛いと言われ、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしてそっぽを向く妖夢。そんな妖夢を見て、竜希は愉快そうに笑い声を上げていた。
「さ~て、それじゃあ模擬戦も終えたことだし、お茶にしよっか~。幽々子さんもそろそろおやつって駄々をこね始める頃だし~」
「そうですね。屋敷に戻りましょう」
お茶にしようと二人で屋敷に戻ろうとする竜希と妖夢。
その時・・・・
「ほう、その半人半霊がお前の求めか愚弟?」
「え?」
「ッ!?」
二人の耳に、女の声を聞こえてきた。妖夢は聞き覚えのないその声に首をかしげるが・・・・竜希は、誰よりも聞き覚えのあるその声に表情をこわばらせる。
竜希が振り返ると・・・・そこには我が物顔で立つ少女が居た。
「久しぶりだな竜希」
「かぐ・・・・ら」
少女の名は紫黑神楽。竜希にとっては双子の姉で・・・・・最愛であった女であった。
久しぶりの投稿ですがあとがき座談会はお休みです
というより・・・・・これを考えるのもなかなか大変なので、今後はやらないかもしれませんのでご容赦を
それでは次回もまた来てくださいね!