東方~儚き命の理解者~   作:shin-Ex-

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遅くなって大変申し訳ない・・・・・・

今回は神楽さんと竜希さんがメインです

「いやぁ・・・・・かぐちゃんと話すのも久しぶりだなぁ」

「俺の出番はなさそうだな」

まあそうですね。

それでは本編どうぞ


第134話

 

(この方は一体・・・・?)

 

突然自分たちの目の前に現れた少女を前にして、妖夢は困惑していた。

 

「かぐ・・・・ら」

 

「え?」

 

表情を驚愕に染めて、少女の名前を呟く竜希。その名を聞いて、妖夢もまた驚きを顕にした。

 

『神楽』・・・・その名前には聞き覚えがあった。竜希の双子の姉であり、ミコトの恋人であった・・・・ミコトと竜希にとって、かけがえのない存在であった少女だ。

 

「はっ、相変わらずの間抜けづらだな愚弟が。この私の弟であるのだからもっと締りのある表情は出来んのか?」

 

「・・・・・久しぶりに会ったのに随分な言いようだね~。この絶妙に締りのない顔が俺のアイデンティティであることは神楽ちゃんだってわかってるでしょうに」

 

神楽の偉そうな物言いに、竜希はいつものようにおどけた様に答える。だが、妖夢は気づいていた。竜希の心内には、未だに戸惑いが存在していることに。

 

「ふんっ、まあ貴様の真剣な表情などこの場で見たいとも思わんし別に構わんがな。それよりも・・・・そこの半人半霊」

 

「みょん!?な、なんですか?」

 

いきなり声をかけられたことに動揺して変な声が出てしまった妖夢であるが、かろうじて返事を返すことができた。

 

「客人が来たというのに茶の一杯も出せんのか?少しは気を効かせろ」

 

「は、はい。すみません・・・」

 

客というにはあまりにも偉そうな物言いだが、妖夢は神楽に謝罪をしながら返事を返した。普通ならば怒る場面であるのだろうが、神楽相手に怒りを抱くことはなかった。初めて会った相手だというのに、妖夢はそれが当たり前で自然なことだと受け入れ、認識してしまったのだ。

 

「すぐに準備しますので少々お待ちを・・・・・」

 

「ああ、わかった。それまではこの愚弟といくらか話をしておくとしよう」

 

「ごめんねよ~むちゃん・・・・・かぐちゃんアレがデフォだから」

 

「いえ、大丈夫です・・・・ではお茶を淹れてきますね」

 

妖夢はお茶を淹れに、屋敷の中へと入っていく。

 

(あの人が神楽さん。ミコトさんと・・・・竜希さんにとって大切な方)

 

妖夢は心に、何かもやっとしたものが浮かび上がるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・いい娘のようだな。お前には勿体無いほどに」

 

「あ~・・・・・うん。まあそうだね」

 

妖夢が去った後、竜希と神楽は縁側に座り話し始めた。

 

「もう一度聞くが、あの娘がお前の『求め』なのか?」

 

「・・・・・そうだよ」

 

「そうか・・・・・まだまだ半人前の域はでないがなるほど。確かにあの娘にはそれだけのものがありそうだ」

 

会って間もないが、神楽は妖夢に秘められた力、才覚を見抜いているようで、竜希の『求め』として申し分ない相手であるということを認めたようだ。

 

「というより、かぐちゃんどうしてここに居るの?てっきりかぐちゃんのことだから自分から地獄にでも落ちて悠々自適に過ごしてると思ったんだけど?」

 

「はっ。何が悠々自適なものか。あんなところ退屈で退屈で仕方がない。なにせ誰ひとり私をまともに罰しようとしないのだからな。現世と同じで誰も彼も私に媚びへつらって・・・・まあ、そう言う意味では確かに地獄かもしれんが私の求めていた地獄には程遠い」

 

神楽が求めていたのは凄惨なる地獄。数多の苦痛を与えられ、もう許して欲しいと思わせるほどの絶望。だが、実際に味わった地獄はあまりにも生ぬるかった。神楽にとってはそっちの方がある意味では最低な地獄なのだが、それでも納得できるものでは到底なかった。

 

「罰せられることを望んでいたって物言いだねぇ・・・・いや、実際そうなのかな?なにせかぐちゃんが死んだせいでミコちゃんはえげつないほどに苦しんで絶望しちゃったんだからねぇ。それを思えば罰を受けたくもなるか」

 

「知ったような口を聞くな愚弟が」

 

「相変わらず俺にはきっついなぁ・・・・ミコちゃんへの優しさの一割ぐらいでもいいから俺にも施してくれてもいいんでないの?」

 

「だからよく蹴ってやっただろうが」

 

「それどう考えても優しさじゃないんですけど・・・・・」

 

苦笑いを浮かべる竜希だが、実際のところそれもある意味では神楽の優しさであることを理解していた。神楽は自分以外の人間の多くに価値を見出していない。そんな神楽が自ら直々に蹴ってやるのは竜希ぐらいだ。それぐらいの関心を神楽に持たせる程度には、神楽は竜希と特別扱いしてくれていた。

 

「てかさぁ、その地獄にいるはずのかぐちゃんがなんで幻想郷にいるわけ?」

 

「暇だったんでな。幻想郷に移り住んだお前たちに会いに来たのだ」

 

「・・・・地獄ってそんなに簡単に出てこれるものなの?」

 

「私だからな」

 

説明としては不十分すぎるにもかかわらず、それで納得できてしまうところが神楽らしさであろう。

 

「本来は早苗とミコトに会うことをメインにしていたのだが、いかんせん冥界経由でこちらに来たからな。仕方なくお前に最初に会いに来てやったのだ」

 

「一応肉親である俺に対して仕方なくはないっしょ・・・・・まあいいけどさ。それよりもかぐちゃん。俺、かぐちゃんに言いたいことがあるんだけど・・・・」

 

「聞くつもりはない」

 

「ばっさりだなぁ・・・・・」

 

仮にも肉親から言いたいことがあると言われてこの対応である。

 

ただ・・・・それは単に竜希を邪険にしているからではなかった。

 

「・・・・・不本意だが、お前は私が唯一肉親だと認めた相手だ。お前の考えなど手に取るようにわかる。だからお前が何を言いたいのかも理解できる・・・・だから聞くつもりなどない」

 

そう、神楽がそれを聞こうとしないのは竜希が神楽にとっての唯一の肉親であるがゆえにだ。だからこそ聞かなくても何を言いたいのかなどわかりきっているのだ。

 

「そっか・・・・・俺としては言っておきたかったんだけど、かぐちゃんがそこまで言うならいいや。どうせ俺もどう返されるかだなんてわかりきってるんだからさ」

 

そしてそれは竜希も同じであった。神楽がどう返答するのかはわかりきっていた。だからこそ、あまりしつこく食い下がるようなことはしなかった。

 

「・・・・このあとミコちゃんとさなちゃんに会いにいくの?」

 

「ああ。それを楽しみにしてきたわけだしな」

 

「その言い方だと俺と会うのは楽しみではなかったみたいな感じだね~」

 

「楽しみではなかったな。お前と会うのは・・・・・ただの暇つぶしだ」

 

「ははっ・・・・まあそうだよねぇ」

 

特に深い意味のないただの雑談。竜希からすれば最愛とも言える相手であるがあまりにもあっさりしている。ただ、それでいいのだろう。二人共・・・・・微笑みを浮かべているのだから。

 

「あ、あの・・・・お茶を持ってきました」

 

「ああ。待っていたぞ」

 

しばらくしてお茶をもって妖夢が戻ってきた。神楽は妖夢からお茶を受け取って一気に飲み干す。

 

「ふむ、まあまあだな・・・・・では私はそろそろ失礼する」

 

「えっ?」

 

神楽の発言に、妖夢は困惑した。竜希の姉である神楽と色々と話がしたかったようだ。

 

「ちょっと待ってください。私神楽さんと・・・・」

 

「魂魄妖夢」

 

妖夢の言葉を遮って、神楽は妖夢の名を呼ぶ。

 

「・・・・竜希を頼んだぞ」

 

ただ一言・・・・・神楽は不敵な笑みを浮かべ妖夢にそう告げて、その場を去っていった。

 

(今のは一体・・・・・?)

 

妖夢は神楽の言葉にどういった意味合いが込められていたのかを考えていた。普通に考えれば弟の事を任せるといったような意味なのだろうが・・・・妖夢にはそれを含めたもっと大きく、深い意味があるように思えてならなかった。

 

ただ・・・・・

 

(なんで・・・・あのたった一言でどうしてこんなに・・・・嬉しいんだろう?)

 

ただ一つわかっていることは・・・・・あの言葉の真意は定かでないが、それでもその言葉を神楽からもらえたことに、妖夢は喜びを感じているということだった。

 

「あれが俺のおねーちゃんのかぐちゃんだよ。めっちゃ偉そうでしょ?」

 

「それは・・・・・はい。確かに偉そうだなと思いました。けど・・・・不思議と不快に感じたりはしませんでした」

 

「まあそれがかぐちゃんだからねぇ・・・・・ほんっと、相変わらずでなによりだよ」

 

ニコリと微笑みを浮かべる竜希。その微笑みはどこか儚さを感じるものであったが・・・・妖夢はそれを口にすることはなかった。

 

「さて、今度こそ幽々子さんにお茶とお菓子用意してあげないとねぇ」

 

「あっ、そうでした。急がないと・・・・」

 

幽々子の事をすっかりと忘れてしまっていた妖夢は、竜希と共にまたお茶の準備をしに台所の向かった。

 

神楽の言ったあの一言を・・・・頭の中で何度も反芻させながら。

 

 

 




久しぶりの再会だというのに会話の内容が薄く感じられるかもしれませんが・・・・・双子の姉弟であるあの二人にはあれで十分なんですよね。一応竜希さんも神楽さんも満足していますので

それでは次回もまたお楽しみに!

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