さて、今回はミコトさんと妖夢さんが竜希さんに関する話をします。
「この話で竜希が抱えるものがわかる」
どうかその目でお確かめを。
「それでは本編どうぞ」
現代に生まれた3人の『異端』
一人は何者からも愛されることのなかった『命の理解者』
一人は何者からも愛された『美しき深黑』
そしてもう一人は・・・・・・・・決して満たされることのない『偽りの道化』
side 妖夢
「さて、まずは何から話すべきかな・・・・・」
ミコトさんは煙管を吸いながら言う。
「本当の竜希さんの性格を教えてください」
「・・・・わかった、ならまずはそこから話そう。本当の竜希は・・・・・・妖夢に刃を向けたとき、そして・・・・・西行妖を斬ったときに見せたあの顔が本当の竜希だ。普段見せている巫山戯た態度や口調はあいつが自分につけた自分を偽るための道化の仮面」
自分を偽るための・・・・・仮面?
「なぜ竜希さんは・・・・・自分を偽っているんですか?」
「・・・・・・本気にならないためだ」
「え?」
「あいつは・・・・・・何事においても本気になることを・・・・真剣になることを嫌っているんだよ。だからあんな風に巫山戯た自分の・・・・・道化の仮面を付ける。仮面を外すのは・・・・・本気で真実を語るときと・・・・・刀を抜いた時だけだ」
「本気に・・・・・・真剣にならないために?・・・・・なぜ嫌っているんですか?」
「・・・・・・・・」
ミコトさんは口を閉ざした。
「話してくださいミコトさん」
「・・・・・・妖夢、お前は剣が好きか?」
しばしの沈黙の後、ようやくミコトさんは口を開く。
「え?」
「どうなんだ?」
剣が好きかどうか・・・・・・私は今日の竜希さんとの戦いで剣を振るうことの恐怖を知った。でも・・・・
「・・・・・好きです。たとえ剣がどういうものであっても・・・・・剣を振るうことに恐怖が伴うとしても・・・・その事実は変わりません」
「・・・・そうか。それじゃあ他に好きなことはあるか?」
「他に好きなことですか?そうですね・・・・・・・この庭の手入れをすることが好きです」
私は目の前に広がる庭園を見渡しながら言った。
「・・・・・この庭は妖夢が手入れをしているのか。いい仕事をしているな。妖夢自身は自分の仕事に満足しているか?」
「そうですね・・・・・私はまだ半人前ですが幽々子様には褒めていただいています。嬉しそうに庭を眺める幽々子様を見ていると・・・・・すごく満たされた気分になります」
「・・・・・そうか」
ミコトさんは目を伏せた。
「ミコトさん、今言ったことがどうかしたんですか?それが竜希さんが本気にならないこととなんの関係があるんですか?」
「・・・・・関係あるさ」
ミコトさんは目を開いて言った。
「あいつもな・・・・・竜希も好きなんだよ。そういう庭の手入れとか。他にも歌を歌うこと、舞を舞うこと、花を活けること、絵を描くこと、そういったことをあいつはこの上なく好んでいる」
「そうなんですか・・・・・なんか意外ですね」
「そうだな。だが・・・・・・あいつはそのどれもやらない」
「え?」
「何よりも好きなのに・・・・・・何よりもやりたいと思っているのに・・・・・あいつはやらないんだよ」
「・・・・・どうしてですか?」
「・・・・・・ないからだよ」
「ない?」
「ああ。あいつには・・・・・・その才能がなかったんだ」
才能が・・・・・ない?
「・・・・どれだけやっても自分の満足のいくようにできない。いつも自分の能力の無さに絶望していたらしい」
「自分の能力の無さに・・・・・」
「才能がなくても楽しむことができる。そんな風に考える人もいる。だけど・・・・・俺はそうは思えない。好きだからこそ・・・・・才能がないと辛いし苦しいと思う者もいる。才能がないから・・・・・・自分の満足のいく結果が得られずに楽しむことができなくなる。竜希も・・・・・そうだ」
「・・・・・・」
「しかも・・・・・・それだけじゃあないんだ」
「え?」
「今言ったことだけじゃあない。あいつは・・・・・・・
自分が心の底から望むものを何一つ手に入れることができないんだよ。才能も・・・・・・ものも」
望むものを・・・・・・何一つ手に入れることができない?
「・・・・・・どんなに望んでいても自分がやりたいことの才能がない。自分が欲しいと思ったものも一時は手にしたとしても必ずこぼれ落ちる。どんなに・・・・・
愛する者から愛されたい願っていてもその人物から愛をもらうことができない。あいつは・・・・・・決して満たされることがないんだよ」
ミコトさんはまるで自分のことを語るかのように重く、辛そうに語った。
「だからあいつは・・・・・本気にならないんだ。本気になっても満たされないと知っているから。真剣にやっても・・・・・真剣になるだけ虚しくなるだけだから。だからあいつは本気にも真剣にならない。そうすることに・・・・・意味を見いださない。道化の仮面をかぶる事を選んだんだ。・・・・・それが自分を更に苦しめている」
「道化の仮面を・・・・・」
・・・・・自分の望むものを絶対に手にすることができない。だから本気にも真剣にもならない・・・・あれ?でも・・・・・
「剣はどうなんですか?竜希さんには圧倒的なまでの剣の才能と戦いの才能があります。それこそ・・・・・嫉妬してしまうほどの才能が。それに剣を抜いたときは真剣になっているじゃないですか」
「・・・・・そうだな。竜希の剣の才能と戦いの才能はずば抜けている。この二つの才能であいつを超える者がいるとは到底思えない程だ」
「だったら・・・・・「だからこそ・・・・・・竜希は余計に苦しんでいるんだよ」え?」
余計に・・・・・苦しむ?
「いっそ、そんな才能さえなければ竜希は・・・・・・絶望なんてしなかっただろう」
「・・・・・どういう・・・・ことですか?」
「言っただろう?竜希は望むものを手にすることができないんだ。なら・・・・・・剣の才能と戦いの才能はあいつが求めたものなのか?」
「!!じゃあ竜希さんは・・・・・・」
「・・・・・望んでなんかないさ。剣の才能も戦いの才能も、あいつはそんなものを望んでなんかいない。剣も・・・・・・戦いも・・・・・・あいつは・・・・・何よりも嫌っている」
「・・・・・・・」
「あいつは強さなんて求めていない。剣を振るいたいなんて思っていない。それでも・・・・・・・あいつは強くなるために自分を鍛え続けた。剣をふるい続けた。それが・・・・・・才能を持った自分の責務だと自らに言い聞かせて・・・・・望む才能を得られなかったあいつにとって・・・・・それはどんなに嫌っていたとしても・・・・すがるべきものだったから。これから先も・・・・・・剣を振るい、強くあり続け、戦い続ける。その才能しかあいつにはないから」
「・・・・・・・」
そうか・・・・・だから竜希さんは剣を抜いた時にあんな顔をしていたんだ。嫌っているのに・・・・・したくもないのに・・・・・・剣をふるって・・・・・力をかざして・・・・・それは一体どれほどの苦痛なのだろう?絶望なのだろう?
私には・・・・・わからない。
竜希さんの苦しみを・・・・・悲しみを・・・・私には理解することができない。
ツー・・・・・
「あ、あれ?」
気がついたら私の目から涙がこぼれ落ちていた。
「私・・・・・どうして?」
涙が止まらない。
竜希さんのことを思うとすごく悲しい気持ちになる。
私のことじゃないのに・・・・・・胸が締め付けられるように苦しい。
「・・・・・妖夢、お前に頼みがある」
「私に・・・・頼み?」
「ああ。まず一つはあいつをここに住ませてあげて欲しい」
「ここって・・・・・白玉楼に?」
「ああ。竜希は・・・・・もう外の世界に帰るつもりはないらしい。だから・・・・・・ここをあいつの帰る場所にして欲しいんだ」
「帰る場所に・・・・・私も白玉楼に住んでいますがこの屋敷は幽々子様のものです。私の一存では決めることができません」
「ああわかっている。だから妖夢の口から幽々子に言って欲しいんだ。もちろん俺も幽々子にちゃんと話す。だから・・・・・頼む」
ミコトさんは私に頭を下げた。
「・・・・・わかりました。どうなるかは幽々子様が決めることですが私からも頼んでみます」
「そうか・・・・・ありがとう」
「いえ・・・・・ですがどうしてここ何ですか?ここは冥界で生きている人間なんていません。ここよりも人里で暮らさせる方がいいのでは?」
「いや、あいつにとってここが一番いいんだ。ここには・・・・・・お前がいるからな」
「え?」
私が・・・・・いるから?
「妖夢、お前は・・・・・竜希の『求め』になったんだよ」
「竜希さんの・・・・・『求め』?それって一体どういう・・・・・」
「・・・・・竜希が元の世界に戻らないのは、あの世界にはなんの未練もないからだ。あの世界では竜希が求めるものは絶対に手に入らない。だからあいつは幻想郷に来た。『求め』を探すために。そして・・・・・・あいつは見つけたんだよ。何よりもあいつが欲する『求め』を。決して望むものを手にすることができないと知りながらもあいつが切に願う『求め』を」
「それが・・・・・私?私が・・・・・竜希さんが何よりも欲する『求め』?その『求め』ってなんなんですか?」
「竜希が何よりも求めるもの、それは-----だ」
・・・・・え?-----が竜希さんの『求め』?でも・・・・・
「・・・・・竜希は何よりも-----を求めている。その求めが満たされれば・・・・・・あいつは苦しみと絶望から解放され、不幸ではなくなる」
「でも・・・・そんな・・・・・私じゃあ・・・・・」
「妖夢しかありえないんだ。妖夢でしか・・・・・・ダメなんだ。俺も・・・・・あいつの『求め』になろうとした。でも・・・・・俺じゃあ無理だった。・・・・・妖夢なら可能性がある。他の誰でもない・・・・・・竜希自身がそう思っているんだ。竜希が妖夢との戦いを長引かせ、妖夢に剣の恐怖を教えたことがその証拠だ。妖夢は・・・・・あいつがようやく見つけた『求め』なんだ」
「私しか・・・・・ありえない・・・・」
「・・・・・頼む妖夢、あいつを・・・・・・俺の親友を救ってくれ。お前にしか・・・・・・できないんだ」
「私にしか・・・・・できない・・・・・」
・・・・・正直、自信がなかった。私が竜希さんの『求め』に答えられるのか。竜希さんを・・・・・・救うことができるのか。でも・・・・・・それでも・・・・・
「・・・・・わかりました。私は・・・・・竜希さんの『求め』として・・・・・・竜希さんを救ってみせます。必ず・・・・・私が」
「ありがとう妖夢」
「礼はいりません。これは・・・・・・私が自分で成そうと決めたことですから」
「・・・・そうか。俺は部屋に戻る。流石にもう眠いからな」
「私も戻ります。竜希さんのことを教えてくださりありがとうございます」
「・・・・ああ。それじゃあお休み」
「はい。お休みなさい」
話を終えた私とミコトさんは部屋に戻っていった。
side ミコト
妖夢に竜希のことを話し終え、俺は自室へと戻ってきて布団に寝転んだ。
「・・・・・妖夢・・・・・竜希の・・・・・・
俺は天井を眺めながら呟いた。
さっき、俺が妖夢に話した竜希の求めはひとつ。それはあいつが何よりも欲している願い。だが・・・・・・それとは他にあいつには別の『求め』がある。いや、正確にはあったという方が正しいであろう。
竜希が何よりも欲していたもうひとつの『求め』
あいつが手を伸ばすことを諦めてしまった『求め』
俺のせいで・・・・・・
『あの時』に永遠に失われてしまった『求め』
きっと・・・・・妖夢ならばその『求め』にさえも答えてくれる。答えることができる。
竜希のことを想い涙を流した妖夢なら
「竜希を頼むぞ妖夢」
俺は目を閉じて眠りについた。
竜希の『求め』が叶えられることを信じて。
あとがき座談会のコーナー!IN東方!
今回はゲストなしで竜希さんもなしでお送りします!
「まあ確かに今回は竜希は呼べないな」
そうですね。さて、今回で竜希さんが抱えているものがわかりました。この場で少しおさらいをしましょう。
「そうだな。竜希が抱えているものは自分が欲するものが決して手に入らないことだ。それがものであれ才能であれあいつは得ることができない」
正直これはまともに生きていくことにおいてかなり致命的だと私は思います。なにせ自分の欲するものが手に入らないというのは言い換えれば自分の欲求が満たされないということです。
「はっきり言ってそれはかなり苦しい。生きていく上で欲というものは必ず発生する。その欲が満たされることでストレスや苦しみが軽減され、自分を保つことができるんだ。だが竜希は決してそれができない。だからあいつは真剣になること、本気になることをやめたんだ。不真面目に巫山戯ていれば苦痛が軽減されると思ったのだろう。・・・・・まあ結果、余計に苦しむことになったのだがな」
ですね。さて、ここで欲するものが手に入らないというのがどういうことなのかを少し説明しましょう。
「手に入らないものについてだがこれは竜希が心から望んでいるものが該当する」
例えば竜希さんは空を飛ぶことを求めています。ですがそれは竜希さんの心の底からの求めであるので決して叶えられることができない求めなのです。
「ただ手に入らないのはあくまで心から望んでいるものに限る。例えば何かが食べたい、あれが欲しいなと思うものがあるとする。しかしそれは一時のものであるからそれは手に入れることができる」
まあそれでも心の底から欲するものが手に入らないので欲求は満たされませんが。
さて、次に話すのは今竜希さんが何よりも求めているものです。これは本編にあるとおり2つあります。
「といっても1つは竜希自身完全に諦めてしまっているものだがな」
その完全に諦めてしまったものに関しては・・・・・ミコトさんが関係しているんですよね?
「・・・・・ああ。俺のせいで竜希は・・・・・・その求めを諦め捨ててしまったんだ」
・・・・・・ミコトさん
「と、すまない。空気が重くなってしまったな」
いえ、お気になさらずに。そしてもう一つ・・・・妖夢さんに話した求めについてですが・・・・・これについてはまだ読者の皆さんにはお教えしません。
「どうしてだ?」
まあ読者の皆さんになんだろうなと考えさせる楽しみを残すためですね。そういったおのがあった方がいいと思いますし。まあいずれきちんと話しますのでそれまでお楽しみに。
さて、ではここで締めましょう。
「次回は竜希と霊夢の話だな」
そうですね。それでは・・・・・
「「次回もまたきてくれ(きてください)!!」」