それでは本編どうぞ!
「「スランプなんですね。わかります」」
いつからだろう?
酒に酔っても心から楽しいと思えなくなったのは?
いつからだろう?
酒に酔えても―――に酔うことができなくなってしまったのは?
そして今も・・・・まだ―――に酔えない
・・・・・怖いから
side 咲夜
「フフッ」
「何を笑っている咲夜?」
共にお酒を飲んでいるミコトが首をかしげながら私に聞いてきた。
「いえ・・・・執事じゃないあなたとこうして二人で話をするのは久しぶりだと思って」
「ああ・・・・そういや最近咲夜と話しをするときは紅魔館で執事の仕事してる時ぐらいだったけな」
「執事のときのミコトは敬語で私の事をさん付けするから・・・本当に慣れないのよね」
「それは申し訳ありません咲夜さん(ニコッ)」
ミコトは執事の仕事をするときのような礼儀正しい口調で私に笑顔を向けて言った。
「・・・・お願いだからやめてちょうだい」
「クククッ・・・・わるいわるい」
ミコトは悪戯っぽく笑って言う。全く・・・・・いい性格をしているわ。しかもミコトのことだから自覚してるんでしょうね・・・・タチが悪いわ。
・・・・まあそういうところも嫌いではないけれど。
と、そういえば・・・・・
「ミコト。前から気になっていることがあるのだけれど」
「なんだ?」
「あなた随分と掃除の仕方や料理に精通しているようだけれど・・・・どうしてかしら?」
「どうって・・・・前にも言ってるだろ?慣れてるからだよ」
慣れているから・・・・ね。
・・・・やっぱり納得できないわ。
「・・・・・7年」
「ん?」
「私は紅魔館のメイドになってもう7年になるわ。始めの頃はなれないことばかりでミスを繰り返してお嬢様に迷惑をたくさんかけてしまっていたわ」
本当に・・・・・メイドになったばかりの時は大変だったわね。あの時の未熟な私のことはあまり思い出したくないと思える程に。
「仕事に慣れるのに1年はかかった。そしてお嬢様に褒めていただけるようになるまでに4年はかかったわ」
「・・・・何が言いたい?」
「あなたの仕事ぶりは明らかに慣れているという次元ではないわ。慣れだけであそこまでこなせるとは思えない。一体あなたは外の世界でどういう生活を送ってきたのかしら?」
私はミコトの目を正面から見据えて言った。
ミコトは執事としてのレベルが高すぎる。それこそ完璧といっていいほどに。普通に生活しているだけでは到底至れない境地。
私はなぜミコトがそこまでできるのかがどうしても知りたかった。
「・・・・俺は3年だ」
「え?」
「俺は慣れるのに3年かかったよ。それに・・・・・褒められることはなかった」
ミコトは苦笑いを浮かべながら言った。
「それって・・・・・」
「別に執事だったわけじゃあない。ちょっと裕福だったけど一般的な家庭だった。ただ・・・・うちの家事を全部引き受けていただけだ」
「家事を全部・・・どうしてミコトがそんなことを?」
「・・・・・・俺にできることはそれだけだったからな」
「父さんからも母さんからも兄さんからも・・・・・俺は何一つ期待されていなかったし必要とされていなかった。そんな俺があの人たちにできることは・・・・家事全般を引き受けることぐらいだったからな」
期待されていない?必要とされていない?
・・・・家族から?
「10年もやってたからな・・・・おかげで家事全般は得意になった」
「10年も・・・・」
「・・・・まあ、一度も褒められたり感謝されてりはしたことないけどな」
また苦笑いを浮かべるミコト。ただどこか・・・・無理をして笑っているように見える。
・・・・当然かもしれないわね。誰からも褒められず、感謝されず、自分を必要としない家族のために家事をしていただなんてきっと・・・・
「・・・・辛くなかったの?」
「え?」
「ミコトは・・・・・辛くなかったの?その・・・・自分を必要としない人のために家事をするのが」
私は恐る恐るとミコトに聞いた。無遠慮だということは重々承知しているけれど・・・・聞かずにはいられなかった。
「・・・・・別に。家事は嫌いじゃないから辛くはなかったよ」
ミコトはニコリと笑って私の目を正面から見据えて言った。
「・・・・嘘なんてつかなくてもいいわよ」
「え?嘘なんてついてないが?」
「あなた・・・・嘘をつくときは相手の目を見ていつもの2割増の笑顔を向けるのよ。ちょうどさっきみたいにね」
「・・・・マジで?」
「マジよ。まあミコトのことだから嘘だって見透かされないために無意識にやってるのでしょうけど」
特にこういう相手に気を遣わせてしまいそうな時にはそれが顕著ね。ミコトは・・・・他人に心配させるのを嫌ってるみたいだから
「・・・・まいったな。咲夜は俺のことよくわかってるんだな」
「・・・・・ええ。まあ」
まあこのことは以前霊夢に言われて気がついたのだけれど・・・黙っておきましょう。
「・・・・まあ、確かにちょっと辛かったかな。やれて当たり前みたいに思われて・・・・ちょっとミスれば大目玉だったからな」
ミコトは少し顔を伏せて言った。あまり思い出したくはないのでしょうね。
それにしても、自分の家族・・・・それも家事をしてくれるのにそんな振る舞いをするなんて・・・・ミコトの家族はあまりいい人ではないようね。
「でもまあ・・・・今となってはどうでもいいな」
「どうでもいい?」
「昔のことだし・・・・今の俺にはもう関係ない。でもまあ・・・・」
「ミコト?」
「そのおかげで紅魔館の執事として仕事ができるようになって、レミリアやフラン・・・紅魔館の皆に感謝されるようになった。咲夜の負担が減らせるようになった。そう思うと・・・・少しはやってて良かったかなと思えるよ」
ミコトは目を閉じて頬笑みを浮かべながら言う。
私にはそれが先程の嘘をつくための笑顔ではないとすぐにわかった。
「・・・・これからもよろしくお願いしますね咲夜さん」
「それはやめてって言ってるでしょう?」
「ごめんごめん」
「もう・・・・」
謝ってはいるもののミコトに悪びれた様子はない。本当にいい性格をしているわ。
・・・・次に執事の仕事をしに来た時には思いきししごいてあげようかしら?
「・・・・・咲夜、今何か不穏なことを考えなかったか?」
・・・・中々鋭いわね。
「いいえ、そんなことはないわよ。それよりも・・・・また霧が濃くなってきたわね」
私は周囲に立ち込める霧を見ながら言った。
三日前の宴会の時も出ていたし・・・・この霧一体なんなのかしら?
「・・・・ああ、そうだな」
ミコトはどこか憂いの篭った目をして言う。
「??どうかしたのミコト?」
「何がだ?」
「いえ、なんとなく・・・・様子がおかしかったから」
「・・・・気のせいだ。気にするな」
「そう・・・・」
・・・・本当になんでもないのかしら?少し気になるわ。
side 竜希
「・・・・おい」
「ん?」
俺が気持ちよく酒を飲んでいると金髪で白と青の衣装で札の付いた帽子をかぶっていて肌触りの良さそうな九本の尻尾を持った女性が話しかけてきた。しかもなんか睨みながら。
「えっと・・・・君は?」
「・・・・私は八雲藍。紫様に使える式神だ」
女性・・・・藍さんはぶっきらぼうに名乗った。
「紫ちゃんの式神なんだ~。あ、俺は・・・・」
「知っている。紫黑竜希だろう?」
「およ?知ってたんだ」
「ああ。君のことは紫様に聞いているからな。それと・・・」
紫さんにね~・・・・・紫さん藍さんに俺のことなんて話したんだろ?まああんまりいいことは言ってないだろうな~。あの人多分俺のことあまり好いてないだろうし。
「藍さんみたいな美人に知ってもらえてるなんて光栄だね~」
「そうか」
藍さんは無表情に・・・・というか機嫌が悪そうに返事をした。
「・・・・藍さん?なんか随分と機嫌が悪そうだけど・・・・俺君に何かしたかな?」
「・・・・・別に。君個人がどうというわけではない。だが・・・・・『紫黑』とは色々あってな」
・・・・ヤバイ。なんか嫌な予感がするんですけど。というか藍さんの纏う空気がすごく黒くなってるんですけど。
「えっと・・・・・藍さんは紫黑について詳しいのかな?」
「ああ、よく知っているさ。なにせ私を幻想郷にはびこる悪しき妖獣と言って37回も殺そうと襲いかかってきたからな」
「ごめんなさい」
俺は藍さんに深々と土下座した。
本当に紫黑の人は何をしちゃってくれてるんだよ。馬鹿なの?死ぬの?もう本当に嫌になるんですけど。
「君が謝ることじゃないさ。君は今までの愚かな紫黑の人間ではないだろうしな」
・・・・・藍さん。そう言うならその怒気を引っ込めてください。流石に居心地悪いです。
「・・・・まあそんなことはどうでもいいから頭を上げてくれ。それよりも君に聞きたいことがある」
「何かな?」
「・・・・・君は紫黑の使命についてどう受け止めている」
藍さんはまっすぐと俺の目を見据えて聞いた来た。
身に纏う雰囲気がかなり重い。これは相当真剣だね~・・・・下手な誤魔化しは通じなさそうだ。
・・・・仕方がない。真剣に答えるか。
「・・・・・別に。どうとも思っていないさ」
「何?」
「・・・・はっきり言ってどうでもいい。確かに俺には紫黑の血が流れているがその使命に縛られるつもりはない。俺は俺のやりたいようにやるだけだ」
「やりたいようにだと?つまり使命を果たすつもりは・・・・力を持つものとしての責任を果たすつもりはないということか?」
藍はキッと俺を睨みながら言ってきた。
「まあそうとってもらっても構わないさ」
所詮は俺の先祖が勝手に決めたことだからな。俺には関係ない。
「・・・・・・」
「・・・・俺のことを軽蔑したか?まあ別に構わないがな・・・・・ただ一応言っておくが何も俺だけが使命を放棄したわけじゃあない。そもそも使命を履き違えたのはかつての紫黑の人間なんだ。その時点で使命は破綻している」
「・・・・そうだな」
藍は忌々しげな表情をする。よほどかつての紫黑の人間を嫌っているようだな。
・・・・・まあ俺も嫌われているんだろうけどな。
「・・・・私はこれで失礼する。邪魔をしたな竜希」
藍は立ち上がってこの場から去ろうとした。
「ちょっと待て」
だが俺はそんな藍を引き止めた。
「・・・・なんだ?」
「・・・・さっき言ったとおり俺は紫黑の使命のことをどうでもいいと思っている。だが・・・・もしも奴が俺に・・・・俺の友人に仇をなすと判断したときは・・・・使命を果たすことになるだろうな」
「・・・・・」
「・・・・言いたいことはそれだけだ。引き止めて悪かったな」
「・・・・いや、それではな」
藍は俺を一瞥して去っていった。
「・・・・・あ~あ。これは藍さんに嫌われちゃっただろうな~」
本当に俺ってどうしようもないな~・・・・・気が重いよ。
「・・・・使命か」
・・・・俺にとって紫黑の使命なんて本気でどうでもいい。果たそうとも思わない。
でも・・・・奴が俺や俺の友達に手を出すときはほぼ必ず使命を果たすべき時であろう。
その時は・・・・結局俺は紫黑の使命を全うするんだろうな。
「本当に・・・・・使命なんて果たしたくないよ。その時が来ないに越したことはないし」
俺は少しずつ濃くなっていく霧を眺めながら呟いた。
side ???
「フンフン~♪」
目の前で繰り広げられる宴会を眺めながらひょうたんに入っている酒を飲む。
「・・・・随分と機嫌が良さそうだな」
「ん?ああ、お前か。こんなところで何してるんだ?」
「ちょっと夕涼みだよ。それよりも・・・・いいかげん混ざったらどうだ?その為に集めているんだろ?」
「あ~・・・・まあそうだけどさ」
「・・・・・まだ怖いのか?」
「・・・・・うん」
そう、こいつの言うとおりだ。
私はまだ怖い。
だから私はまだ・・・・―――に酔えない。
「早くしたほうがいい。そろそろ皆感づくだろうからな」
「・・・・・わかってる」
「・・・・ならいいがな。頑張れよ。俺も・・・・協力するから」
「・・・・・うん。ありがとう・・・・・
ミコト」
・・・・・すみません。
現在重大なスランプに陥ってしまいましたために座談会はお休みします。
本当にすみません。
それでは次回もまたきてください!!