任侠提督着任します   作:咲張

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出所

収監番号 8692番 原!

「ハイッ!」

「只今より釈放手続きに入る。ついてきなさい」

房を出ると、決して明るいとは言えない灰色の通路を歩く。

私物返却の手続きが済み、囚人服から私服へ着替えると刑務所から追い出される。

「もうくるなよ」

「へえ。お世話になりました。」

原と呼ばれた男が刑務所を出ると、そこは娑婆であるはずだが、誰もいない。

潮風が頬をなでるが、15年の懲役暮らしはすっかりどうしたらいいかの感覚を奪っていた。

自由が全くない生活を15年もしていた男に、今から自由だと言われても何もできない。

人は自由がなければないなりに生活リズムを作るものだから。

出る前は「出所したら天丼を食いたい」「酒をのみたい」「女を抱きたい」

色々と欲望はあったはずだが、知らない世界へ放り出された途端にどうしていいか分からなくなってしまった。

呆然としていると、守衛が声をかけた

「おまえ、出迎えもないのか・・・・ヤクザだったんだろう?」

「そうだったんですがねえ。もう一泊くれえさせてもらえやすかい?」

「早く行け。目出度く釈放(バイ)になったんだ。世間の辛さも味のうちだろう?」

そんな釈放になった人間とは思えない会話をしていると、一台の軍車両が止まった。

「原だな。乗れ」

「えーっと、どちらさんで?あたしは鉄砲玉でござんすが、あいにく軍隊(ぐんてえ)には知り合いはおりませんで。」

「貴様には国民提督法の甲種適性が確認されており、海軍が身柄を引き受ける。道中で詳細は話す。まずは乗りたまえ」

中からゴツイ男が二人出てくると、原は少しの間天丼がどうの、酒がどうの騒いでいたが車に担ぎ込まれた。

ドアが閉まると軍車両は排気音の残して刑務所を走り去っていった

「提督ねえ。。。刑務所でて、そのまま海軍とはな。あいつもツいてねえ。つるかめつるかめ」

刑務官は一人ごちると職場に戻っていった。

 

「やい!軍人ども!!離しやがれ!」

車内では両腕をがっつりとからめ捕られたまま、はれて自由の身になっても不自由な状態を満喫している元囚人がもがいていた。

運転をする海軍を名乗る軍人はどこ吹く風といった風情で、何ら気にする様子もない。

「おう!いいかげんにしろい!!こちとら15年のションベン刑ごときで大人しくなると思ったら大間違いだ!とまりやがれ!!はなせこのやろう!!」

「おうおう。流石は最強の鉄砲玉って言われるだけはあるな。まあ、煙草でもつけて落ち着いてくれよ」

「てめえ見損なうな!出所したばかりの極道つれてっちまおうなんて、ヤクザよりひでえ野郎に恵んでもらおうとは思わねえや!!」

「まあ、そういうなよ。大将。一服付けて、俺の話もきいてくれや。どうせ世情はしらねえんだろう?あすこの刑務所はとにかくおっかねえって話だからなあ。おう離してやれよ」

運転手がそういうと両脇の軍人は原の両手を解放した。原はそいつらをにらみつけると出された煙草をひったくった。セブンスターだった。

まだ半分ほど入っている煙草を一本抜く。15年ぶりの煙草ではあったが吸い方は忘れていなかったらしい。

「大将、缶コーヒーで悪いが飲むかね?」

軍人は微糖と書いてあるよく冷えた缶コーヒーを差し出した。

原は黙って受け取り、プルタブを開けてコーヒーを一口つけた。

煙草を吸う。

コーヒーをもう一口つける。またつける。あとは止まらなかった。

「ちくしょう。。。。甘いなあ・・・うめえなあ・・・」

煙草を吸いながら元囚人はコーヒーを飲みほす。

久しぶりに飲んだ缶コーヒーはほっぺたが縮み上がるような格別のうまさであり、まさしく娑婆の味だった。

「娑婆へようこそ。一服付けたところで状況を説明させてもらう。」

「ケッ!勝手にしろい!」

「ありがとう。私の名前は一軸。海軍司令部勤めの准将だ。よろしく。」

「へえへえ。そんでそのお偉いジュンショー様がしがねえ懲役太郎に何の用だ」

「懲役に行かれていたので、ご存じないとは思う。まずは簡単に説明しよう」

・10年前から深海棲艦と呼ばれる謎の生物が海に出てきていること

・海軍はそれと戦ったが惨敗。

・艦娘と呼ばれる者がどこからか現れ、深海棲艦をやっつけた。

・艦娘は提督とよばれる存在の言うことは服従するが、それ以外は命令を聞かない。

・ほっとくとどこまでも敵を追い続けてしまう。提督の命令が必要。

・軍人である必要はないけど、先天的に提督になれるかどうかは決まるらしい。

・選別方法は血液検査でわかる。

・国民で提督の素養がある人間は海軍に集中的に集める法律が可決された

「へえ。するってえと、そのカンムスってえのがウマで、テートクってのがヤネだと思やあいいわけだな?」

「まあ、あながち間違ってない。」

「まあ、チャカが勝手に動いて、こっちに向けてこられたら好い気持ちはしねえなあ。」

「しかも言うことを効かないオマケつきだ」

「そこでテートクの出番ってわけかい。ムショの中で血液検査ってのは変だと思ったぜ」

「まあ、事態はそこまでひっ迫しているということだよ。」

説明が終わると原は煙草を一本つけた

社内を静寂が包む

チリチリという煙草を吸う音だけが聞こえた。

「おう!とめろい!」

一軸は無視して運転した

「ちょいとションベンだ。逃げも隠れもしねえよ。てめえもどきやがれ!」

一軸は車をとめる。

横の軍人を肘で押し返すと原は車から降りて道端で立小便をした

「こんなことができるのも放免(バイ)になったからか。。。」

ジョロジョロと立小便をしながらごちた

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