Fate/Little little earth spider   作:EMM@苗床星人

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ウェイバー・ベルベットは憤慨していた

頭に血が上っていたと行っても過言ではない。

それはそうだ、構想に数年・・・制作にまた数年を費やした渾身のレポートを

講師に破り捨てられ、夢は寝て見ろと鼻で笑われたのだから

筆者自身も曲がりなりにも学生の身であるからして、この行為が彼にとってどれほど屈辱的で

それよりも何より狂おしい怒りを彼に与えたかは語るべくもないだろう。

 

しかし、しかしだ。

それでその講師を見返そうとする意気込みは解る・・・それどころか実力主義の通常の教育機関であればそれはあくなき向上心として誉め称えられるべきであろう。

講師の同行を確認し、聖杯戦争という自らの才能をフルに生かせるイベントを探り当てそれに先立つ形で遠い冬木の地に立った行動力は学生の鏡だ。

暗示によって地元の老夫婦を騙す手腕は通常誉められたものではないが、それはそれ、魔術師の世界であるからして魔術の秘匿という観点からは十分に合格点だ。

聖杯もそんな彼の才能を認めて彼に令呪を与えたのだ。

 

そこまでは良かった。

 

しかし、彼は肝心なものを忘れていた・・・聖杯戦争とは7人のサーヴァントを召還し

それを戦い殺し会わせることで生き残ったサーヴァントのマスターの元に聖杯を召還しあらゆる願望を叶えさせるという儀式である。

そのサーヴァントは己の魔力と簡単な魔法陣さえかければ後はほんの少しの工夫と聖杯のサポートで簡単に英霊を召還できる。

そのマスターの工夫の中で一番大きいのが"触媒"だ。

触媒さえあれば、マスターはその触媒にゆかりのある英霊を召還できる。即ちある程度強力な英霊を選択できるのだ。

しかし触媒がなければサーヴァントがでるかは完全にランダム、多少は聖杯によってマスター気が会う英霊が選ばれると言われているが確実に勝てる強力な英霊がでるかどうかは運次第なのだ。

触媒のあるなしではサーヴァントの"質"が変わるだけにとどまらず、それどころかほとんど運だめしになってしまうのである。

マスターが優秀であれば、あるいは連携を重視してあえて触媒なしで気の合う英霊を召還することもあり得るだろう。

しかしそれを進んで行うほどウェイバーは、自分の才能を過信してはいるが自惚れてはいない。

 

だが、寄りにもよってその触媒を用意し忘れていたのもあまりに今更な事実であった。

 

これはある意味遠坂の呪いが関係ないウェイバーに飛び火したかのような"うっかり"だった。

そして今になって、生け贄の鶏の血で書いた魔法陣を前にして気付いたウェイバーは間抜けな自分に心底自己嫌悪していた。

 

「あああぁぁぁあああ・・・今になってすれば、何であの時男の聖遺物が入ってるっぽかった箱を盗んだりしなかったんだぁぁ」

 

魔術師の世界である、多少の遺恨は残るとはいえ魔術の発展につながるものと言い張れば盗った盗られたなど些細なことだったのだ。

しかしウェイバーは長年良い生徒過ぎた、それ故にはいはいと講師に言われるがままに宅は遺物をその元に届けてしまったのだ。

これが他の世界線のウェイバーであればこのウェイバーを笑うだろうか・・・いや、その世界のウェイバー達も盗んだことに対して講師に罪悪感を少なからず感じていたのだ。

このウェイバーは選択がただ違っただけ、たとえるならばその日の食事に箸を使うかフォークを使うかを気まぐれで変えただけの可能性である。

しかし前言撤回しておこう、これが通常の学生であっても触媒を忘れることは学生にとって課題に画竜点睛を欠き狙ったウケではなくたまたま講師にウケるかどうかを試すに等しい(命がかかっている分なおさら重大な失敗かもしれない)。

学生としても彼は相当な失敗をしていた。

しかし、ここで諦め立ち止まるほどウェイバーは凡骨ではなかった。

彼も魔術師である、根元に至るという先祖代々の願望と何より鼻で笑われた自身の論文の立証のために彼は立ち止まるわけには行かなかった。

 

「閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。

 

繰り返すつどに五度。 ただ、満たされる刻を破却する

 

————告げる。

 

汝の身は我らが下に、我らが命運は汝の剣に。

 

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

誓いを此処に。

 

我らは常世総ての善と成る者、 我らは常世総ての悪を敷く者。

 

汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」」 」

 

触媒は無くともウェイバーは自身に魔力が充実していくのを感じていた。

聖杯が穴を埋めるために奇跡で魔術を穴埋めしていく・・・そして魔力が最高潮に達したとき

魔法陣は爆発した。

 

「うぇええぇぇぇぇぇぇええええ!!!??」

 

暴走で錬成された仮想粒子だろうか、銀色の粒子が混ざった爆煙が辺り一帯を覆った。

ウェイバーはせき込みながら魔術の成功を確かめる。

 

「げっほ、げほ!!成功、したのか!?」

 

「けほけほ・・・なんやなんや?なんでこんな演出されとるん聞いてへんですえ!!?」

 

煙の中から別の声が聞こえてきた事にウェイバーは歓喜した。

たとえ穴だらけで尚且つ聖杯のサポートがあったにせよ、自らの手で英雄を呼びだし物質化させたのである。

それはウェイバーにとって一生に一度あるかどうかも解らない得難い感動だった。

しかし・・・一瞬の感動の後にウェイバーは聞こえたその声が余りに幼いことに気がついた。

 

「ん~、結構無茶な事する人やなぁ・・・ほんまもんの爆発で召還即リタイヤとか勘弁願いたいですえ・・・」

 

文句を言いながら余りに小さいその影が姿を現してくる。

余りに小さいと言っても蟻ほど小さいわけではない、かといって周りと比べて背が小さいと言われがちなウェイバーよりも小さい

絹のように細く白く・・・通り越して蜘蛛の糸のようにきれいな白い長髪をサイドポニーに束ね

和服を元にしたであろう黒紫のドレスに同色の上着を羽織り

モノクロのように見えてそうではなく、寧ろ所々に見える肌色と紫色がとてつもなくカラフルに見える女性だった。

そこには一般の人間を遙かに越えた存在感があったが・・・しかし、問題はそこではない

そう、どう見ても彼女は子供だった。

 

「ほな聞きますえ、貴方が私のマスターですかいな?」

 

紫の宝玉のような人外の瞳を細め、彼女はウェイバーに尋ねた。




「でも、何かを犠牲にしてまで手に入れるもんやない」

「というかお前、本当にサーヴァントなのかよ?」

「申し訳ありません我が師よ…」

「マスターと違ってとんだ道化共め…」

「な、ななななななな!!」

「貴方の望みは叶うかしらねぇ♪」


「…で、結局何がしたいんだよお前は」

次回/1 アサシン

「元の世界に帰りたい」
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