[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです 作:型破 優位
あのヘアバンド型CADがやっと使われます。
風紀委員になることを断ったが、あれからも執拗に勧誘してくる摩利と厄介事を押し付けようとする達也に追いかけられながらも、ジブリールとの学校生活を満喫している佑馬。
そんな日々が過ぎ、部活動勧誘期間となった。
この時期になるとCADの携帯も許可されており、学校は無法地帯となる。
佑馬とジブリールはなんだかんだで、美男美女という組み合わせだ。
ということはつまり、
「・・・こういうことになるんだろうなぁ・・・」
佑馬とジブリールの周りには二人の腕を引く生徒や頭を触ったりする生徒で溢れている。
佑馬もジブリールも嫌そうにしながらも、だが魔法を使うわけにはいかず強行突破しようかと考えていたその矢先に、
・・・一人の男子生徒の手が意識的にジブリールの胸へと向かっていった。
囲われているだけならまだマシだったが、さすがにジブリールの胸を他の男に触られるということを佑馬が許すわけもなく、
「・・・おい、これ以上は見逃さねぇよ。」
「ヒィ!」
それだけで人を殺せるのではないか、というくらいの殺気をばらまきながら、その男子生徒の手を掴み、睨む。
「黙って見とけば、調子乗ってんじゃねーよ。」
その眼に怯えてガクガクと震える男子生徒。
どうしてやろうか、と考えていると肩に手をおかれた。
「そこまでだ。」
「なんだ・・・ああ、達也か。」
そこにいたのは、風紀委員として動いている達也だった。
「こんな殺気立ってどうしたんだよ。」
「いや、この男がどさくさに紛れてジブリールの胸を触ろうとしたから、どうしてやろうか考えていたんだよ。」
「そういうことか。」
ジブリールにゾッコンの佑馬の前でジブリールの胸を触ったのなら納得できる、というか深雪がやられそうだったら達也もこうなる自信があった。
「んー・・・そうだ、達也にこいつ任せるわ。」
「・・・そうしてくれるとありがたい。」
だんだんめんどくさくなったのか、達也に丸投げした佑馬だが、達也もそっちの方が都合が良いということで震えている男子生徒を部活連本部へと連れていった。
「さて・・・これはやりすぎたかな。」
「さすがにあの殺気は私でも身構えるものでございましたから・・・。」
あんなに殺気を出していたため、みんな怯えて近づくことができず、また怖くて離れることも出来なくなっていため、とる行動は一つしかなかった。
「・・・帰るか。」
「そうでございますね。」
校門に向かって歩みを進め、人気が無くなったところで転移をした。
「佑馬・・・今日は少し相手をしてくれませんか?」
帰って早々、ジブリールがそんなことを言った。
「勿論、じゃあ行くか。」
佑馬ももう慣れたように例の部屋へと向かい、ジブリールもそれにならって付いていく。
「さて、今日は何をするんだ?また戦闘か?」
最近は魔法での闘いばかりなので、そろそろ飽きも来そうな感じだったのだが、今回は違った。
「いえ・・・新しく試してみたいものがございますので。」
「ほぅ・・・面白そうだな。」
新しいことへの実験。
それは、この新しいヘアバンド型CADを作ってから、本格的にやることが出来るようになった。
「それでは、行かせていただきます。」
肯定の頷きをする佑馬を見て、空中へと上がるジブリール。
ヘアバンド型CADに手をかけて、少しだけサイオンを送り、手を上へと翳したジブリール。
その手の上からみるみる内に光を放ち始める。
(天撃か・・・?)
天撃、戦略級魔法で世界で二人しか使えない技。
しかし、それは既成の魔法。
「ここからがこの魔法の新しいとこでございます。」
「・・・何?」
だが、今回の天撃は違った。
本気の力を使えば、体が縮む代わりに圧倒的な疲労感が襲うようになったジブリール。
当然、何回か見たことある佑馬は、その限界値を知っている。
しかし、今回の天撃は、はるかにそれを上回る量へとなって、正しくそれは、
「・・・『神撃』か・・・。」
「その通りでございます。このCADのお陰で、サイオンが枯渇することはないので、『神撃』レベルまで上げることが出来たのでございます。」
そう、このヘアバンド型CADには『再生』の魔法式が埋め込まれている。
仕組みとしては、
自分のサイオンをCADに流す→CADがそのサイオンからエイドスを読み取り、CAD内にイデアを作る→そのエイドスの持ち主のサイオンが減ったと同時に再生してもとに戻す、身体の損傷も同様に。
と、なっている。
「・・・実際に打ってみてくれ。」
「はい!」
遥か遠くのほうを指差して言う佑馬に、頷き1つ。
翳していた腕をそのまま振りかざした。
その瞬間。
一つの光と凄まじい轟音が辺りを包む。
(くっ!まさかここまでとはな・・・。)
佑馬ですら立っているのがやっとなほどの爆風が吹き荒れ、だんだんと明瞭になっていく視界に入ったのは・・・
この部屋の床が抉れている光景。
それはつまり、この部屋の許容量を越えたということ。
大陸一つは余裕で消し去るほどの威力の魔法ですらもこの部屋の床に傷をつけたことはない。
「地球を余裕でぶっ壊すな、この魔法・・・。」
戦略級と括っていいのか、てほどの威力。
「はぁ・・・スッキリいたしました。今日はストレスが溜まりに溜まったので、どうしても一発デカイのを打ちたかったのでございます。」
「うん、素晴らしいね・・・俺も使ってみるか。」
そうして、とにかく『神撃』を打ちまくった佑馬とジブリールは、部屋を穴ぼこにして満足した後に、ジブリールの、
「汗ばんできましたし、お風呂入りましょう。」
という一言により、風呂に一緒に入る。
初めて一緒に入ったときは、赤面してジブリールを満足に見ることが出来なかったが、あれから数十年とたち、見ても赤面することはなくなった。
しかし、
「私と子作りする気にはなりましたか?」
「・・・もう少したったらな・・・。」
そっちに関してはかなり奥手の佑馬だった。
風呂から出て、着替えを済ませた後は特にすることもなく、たまには外にでも出掛けよう、ということで出掛けることにした。
まずはデパートへ行き、お茶の販売店を探す。
ジブリールも佑馬もお茶は好きで、好みの茶葉を見つけるために、図書館同様に茶葉巡りをしていた。
「ここからここまでの茶葉を一箱ずつ下さい。」
「か、畏まりました・・・」
店に売っている茶葉を全て一箱ずつ買いながら、デパートを回る佑馬とジブリール。
荷物は邪魔なので、神威で一時的に異次元へと飛ばしている。
次に、服を買いに服屋に寄った。
あの神が用意した服しかないため、そろそろこの世界の服を持つのもいいかもしれないという判断のためなのだが、
「・・・何故にそのチョイス?」
「普段の服装にとても似ているからでございます。」
ジブリールが持っていたのは全て水着。
カラフルだが、それを私服とするのはさすがに出来ない佑馬は、
「店員呼ぶか・・・」
店員にアドバイスを求めることにした。
「あのーすみません。彼女に似合う服を選んで欲しいのですけど・・・」
「わかりました・・・こんなのはどうでしょうか?」
結局ジブリールは店員と何故か集まってきた女性客の着せ替え人形となり、一時間もかけて漸く服を買ったのだった。
とあるカフェで、男女五人構成の高校生集団が、会話に花を咲かせていた。
「その桐原って二年生、殺傷性ランクBの魔法を使ってたんだろ?よく怪我しなかったよなぁ。」
「致死性がある、と言っても、高周波ブレードは有効範囲の狭い魔法だからな。刃に触れられない、という点を除けば、良く切れる刀と変わらない。それほど対処が難しい魔法じゃないさ。」
二人の男子高校生、西城レオンハルトと司波達也。
「でもそれって、真剣を振り回す人を素手で止めようとするのと同じってことでしょう?危なくなかったんですか?」
「大丈夫よ、美月。お兄様なら、心配要らないわ。」
「随分余裕ね、深雪?」
三人の女子高生、柴田美月、司波深雪、千葉エリカ。
今の会話は、今日の部活動勧誘で起きた剣術部と達也についてだ。
「確かに、十人以上の乱戦をさばいた達也君の技は見事としか言えないものだったけど、桐原先輩の腕も決してなまくらじゃなかったよ。むしろ、あそこにいた人たちの中では頭一つ抜け出してた。深雪、本当に心配じゃないの?」
「ええ。お兄様に勝てる者など佑馬さんとジブリールさんくらいですもん。」
その言葉に、一同は、特に剣術部との騒動を見ていたエリカは特に驚きの表情を見せた。
「え、何。佑馬君やジブちゃんってそんなに強いの!?」
「ええ、日本でも勝てる人は片手あれば足りそうね。」
「ああ、あの二人に勝てるやつなんて、本当に片手で数えるだけだろうな。」
エリカの質問に、淡々と答える深雪と達也。
「達也がそこまで言うのなら、本当に強いんだな・・・そういえば、今日、一部の生徒がしばらく震えが止まらなかったり、泣きじゃくってたことがあったって話を聞いたんだけど、そのことについて達也は何か知っているのか?」
「ああ・・・佑馬の殺気にやられた人達だな。」
「佑馬君の殺気に?」
「ああ、実はな・・・」
今日起きたセクハラ未遂の事を話す達也に、一同はまた驚きを示す。
「え、殺気だけでそこまで怯えさせるって、本当に佑馬君は人間?」
「正直なところ、桐原先輩の高周波ブレードよりも佑馬の殺気の方が危ない・・・というか殺傷ランクAにした方がいいかもしれないな。」
真面目な顔でそういう達也に、一同が複雑な顔をしていると、
「よぉ、何を殺傷ランクAにするって?」
「ッ!?」
気配もなしにいきなり話しかけられた達也はバッ!と振り向き、異様な光景を眼にした。
「お、深雪にエリカに美月にレオじゃん。こんちゃ。」
「「「「・・・」」」」
挨拶をしたのに呆然としている他の四人を見て、頭にハテナを浮かべる佑馬。
「どうしたの?」
「佑馬・・・自分の姿を見てみろ。」
そう言って、自分の下半身を見ると、
なかった。
「ああ、悪い悪い。」
そう言いながら、ヨイショ、と出てくる佑馬。
「これでよし・・・まだ何かあるのか?」
一同がまだ唖然としているなか、
「この世界で転移を使えば、不思議がられるのも仕方のないことでございます。」
別の空間から現れたジブリールがそう言った。
「・・・確かにこれは納得できるわ。」
「・・・てか、人間か?」
「・・・すごい人たちですね。」
「・・・お兄様、今のはわかりましたか?」
「・・・いや、原理もわからないし、検討もつかない。」
それぞれがそれぞれの感想を溢し、
「あ、そういえばそうだったな。まぁ気にすんな。」
「そうでございますね。」
佑馬はすっかり忘れてた、と言いながらも特に気にすることもなく五人の席へと座り、ジブリールもそれに続いた。
「佑馬、また今度家に寄ってくれないか?ジブリールさんも同じでいいから。」
「おう!その代わりにあの時のお茶の茶葉が何処に売っているのか教えてくれたらな!」
「勿論。」
そこでジブリールとハイタッチをする佑馬。
そこからは、さっきの転移の話や佑馬、ジブリールの魔法について質問が飛ぶが、教えられる部分だけ教えて後は秘密にした。
というわけで、CADにエイドスを読み取らせ、イデアを作るって直接再生の魔法式を脳に送り、、サイオンを常に再生させる魔法でした。
つまり、佑馬もジブリールもサイオンが一生切れることはありません。
チートでしたかね。