[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです   作:型破 優位

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遅くなって申し訳ありません。
今日からまた更新速度は戻させていただきます。


魔法実習

部活動勧誘期間も終わり、佑馬たちのクラスでもいよいよ魔法の実習が本格化した。

 

魔法実習自体は初めての佑馬とジブリールだが、いまさらそれくらいで躓くわけもなく、実戦でも使いこなせているため、授業内容分はすぐクリアしてしまう。

 

そのため……

 

「佑馬、今度はどうやってみたらいい?」

 

「もう少し背筋を伸ばせ。」

 

「わかった!」

 

「ジブリールさん、今みたいな感じでいいかしら?」

 

「そうでございますね。後はその形に慣れれば自ずと出来ると思います。」

 

先生のいない二科生にとって、先生の代役として重宝されていた。

 

今回の課題は単一系統、単一工程の魔法を高速化支援の機能が全く無い、ある意味原点なCADを使って、コンパイルというものを高速化を練習することだ。

 

男子は佑馬、女子はジブリールと集まっていくなか、別の場所ではある四人組がいた。

 

「940ms(ミリ秒)。達也さん、クリアです!」

 

「やれやれ……三回目でようやくクリアか。」

 

達也と美月のペア。

 

そして、エリカとレオのペアだ。

 

そこから少しして、授業は終わったのだが。

 

「なぁ、もっと早くやるやり方を教えてくれ!」

 

「ジブリールさん、もうちょっと早く出来そうかな!?」

 

「あ、ちょーっといいかな。君たちよりも出来なさそうな二人があそこにいるからいってくる。」

 

昼休みになっても、クリアしてからもっと早くしたいという気持ちからか、一向に人数が減らないためジブリールと視線で合図して、エリカとレオの方に教えにいった(逃げた)。

 

「よぉ、レオとエリカ……ってどうした?」

 

「「……どうせ俺ら(私たち)は出来る目星もない落ちこぼれですよ……。」」

 

「それ、自分で言ってて悲しくない?」

 

「「とても悲しいです……。」」

 

今度は、妙に意気があっている二人と、達也、美月をいれた六人でやることになった。

 

「ふむ……1060msか……達也、どう思う?」

 

「そうだな。照準の設定に時間を掛けすぎていると思う。こういうのはピンポイントに座標を絞る必要はないからな。」

 

「分かっちゃいるんだけどよ……」

 

さっきの言動から、弱音を隠すことが無くなったレオに、達也は同情しながら頷いた。

 

「まぁ、そうだろうけどな……。仕方がない。裏技になるが、先に標準を」

 

「待った、達也。」

 

裏技をレオに教えようとしたところで、佑馬からストップがかかる。

 

「それだと応用がきかないし、今回の目的を達成したことにはならない。」

 

「それはそうだが……。」

 

「と、いうわけで!」

 

そのままレオの背中に手を当てる佑馬。

 

「ん……どうしたんだ?」

 

「まぁ見てろって。」

 

そのまま手を背中に当てて目を瞑る佑馬。

 

その様子にレオと達也、ジブリールと美月とエリカまで見守っている。

 

その目が、カッ!と、見開いた瞬間。

 

「うぉ!なんだこれ!」

 

「……何?」

 

「……そんな……。」

 

その不可解な現象に、レオは驚き、達也と美月は目を疑った。

 

「え、何、どうしたの?」

 

唯一何が起きたか分からないエリカに、達也が説明をする。

 

「……レオのサイオンがさっきよりも増えているんだ……。」

 

「え!何それ!」

 

「いや、増えているだけじゃないぜ!今なら簡単に発動出来る気がするんだよ!」

 

「まぁ、そうなるようにしたからな。」

 

レオはその勢いのまま、CADに両手をかざしてサイオンを流し込んだ。

 

「……438ms……。」

 

「「……え?」」

 

単一系統、単一工程の魔法であれば、500ms以内が魔法師として一人前と呼べる目安となっている。

 

つまり、今回の結果は。

 

「……一科生レベルだな。佑馬、何をしたんだ?」

 

達也の声に、レオをそこまでのレベルに上げた張本人、佑馬に視線が集まる。

 

「何って、簡単なことだよ。俺のサイオンをレオにとって一番使いやすいサイオンに変換して流し込んだ。後はそのサイオンに影響されてレオのサイオンが勝手に使いやすいものになるってだけだよ。」

 

「いや、サイオンを変換するってこと自体がおかしいから。」

 

「まぁ、百聞は一見にしかず。レオ、もっかいやってみな。」

 

「ああ、わかった。」

 

再びCADに両手をかざして、サイオンを流し込むレオ。

 

「937msだ。」

 

「と、いうわけだ。」

 

二回目の結果であっという間に二科生レベルに下がったが、レオは不思議そうな表情をしている。

 

「今のも佑馬のサイオンを使ったのか?」

 

「いや?今のはレオのサイオンのみだよ。一回やり方さえわかれば、レオもこうやって出来るってこと。頭では覚えてるってやつだよ。」

 

「……なるほど、そういうことか。」

 

行われた目の前の現象に、目を疑うしかない美月とエリカ。

 

達也とレオは納得したような表情をしている。

 

「え、じゃあさ!私もそれでやってよ!」

 

「そうだな……ジブリールは今の出来ないから、俺がやることになるんだが……問題ないか?」

 

エリカは女子、佑馬は男子、そこらへんの気遣いはちゃんと出来ている佑馬だが、

 

「そんなの気にしないから!早く早く!」

 

エリカに限って、そんなことは必要なかった。

 

「おっけー、じゃあちょいまってろ。」

 

再び背中に手を当てて、目を閉じる佑馬。

 

「……あれ?」

 

美月が何かに気がついたように佑馬を見た。

 

そして、カッ!と目を見開いた佑馬に連動するかのように、

 

「わ!何これ!すごい!」

 

エリカが驚きの声を上げる。

 

「佑馬さん、今の眼はいったい……。」

 

「お、美月は気づいたか。」

 

佑馬の眼の異常性に気がついた美月に、レオはと達也は佑馬の方へ気を向けるが、エリカはCADに手をかざしてサイオンを流し始めた。

 

「……409ms……。」

 

一端その話はおかれ、エリカの記録が読まれる。

 

「やた!こいつに勝った!」

 

嬉しそうにはしゃぐエリカに、グッと悔しそうな表情をするレオ。

 

「よし、エリカ。もう一回やってみろ。」

 

「うん!」

 

佑馬の言葉に、ウキウキと再びCADにサイオンを流すエリカ。

 

「あれ?984ms。早くはなったけど……。」

 

「え!こいつに負けたの!?」

 

「はっはー!残念だったな!」

 

二回目の結果でレオに負けたことにかなりのショックを受けるエリカ、さっきとは対照的な画になったが、援護は別の場所からとんできた。

 

「エリカ。起動式を読み込むとき、パネルの上で右手と左手を重ねてみてくれないか?」

 

「えっ?」

 

それは、達也からだった。

 

その言葉に、エリカはポカンとした表情をしている。

 

「いや、なんとなくだ。確信があるわけじゃないが、上手くいったら説明するよ。」

 

「う、うん……やってみる。」

 

どういうことかわからない表情で、言われた通りに手を翳してサイオンを流し込む。

 

「892ms!すごい!」

 

100ms近く縮めたという事実に、美月は驚きを隠せず、エリカとレオもビックリしている中、遠慮がちの声がかけられた。

 

「なにやら盛り上がっているようですが……お兄様、お邪魔してもよろしいですか?」

 

声の主は深雪。

 

だが、足音は一つだけではなく。

 

「深雪、……と、光井さんと北山さんだっけ?」

 

深雪のクラスメイト、光井ほのかと北山雫が入ってきた。

 

「二人とも、お疲れ様。お兄様、ご注文のとおり揃えて参りましたが……足りないのではないでしょうか?」

 

エリカとレオを労ってから、そう問いかけた深雪に、達也は首を横に振った。

 

「いや、もうあまり時間も無いことだし、これくらいが適量だろう。深雪、ご苦労様。光井さんと北山さんもありがとう。手伝わせて悪かったね。」

 

「いえ、この程度のこと、何でもないです!」

 

「大丈夫。私はこれでも力持ち。」

 

達也の労いの言葉に、ほのかは変に意気込んで、雫は本気か冗談かわからない答えをした。

 

達也はもう一度礼を言ってから、深雪を含めた三人からビニール袋を受け取った。

 

「ほら。」

 

そして、そのままエリカとレオに差し出す。

 

「なぁに?」

 

「サンドイッチ……か?」

 

袋の中身は購買で売っているサンドイッチと飲み物だった。

 

「食堂で食べてると午後の授業に間に合わなくなるかもしれないからな。」

 

そう言いながら、達也は深雪から弁当箱を受け取っていた。

 

「ジブリール。俺たちもご飯にするか。」

 

「はい♪」

 

何処から出したのか、佑馬はいつの間にか弁当箱を二つ持っていた。

 

「ありがとー。もうお腹がペコペコだったのよ!」

 

「達也、お前って最高だぜ!」

 

そして、始まった昼食タイム。

 

「何これ!すごい美味しい!これ全部佑馬くんが作ったの!?」

 

「ああ、中々だろ?」

 

「中々っていうより、プロだぜこれは!」

 

サンドイッチだけでは、と佑馬がおかずを分けたのだが、それが予想以上に好評だった。

 

深雪たち差入組も、飲み物だけ持って、その輪に加わった。

 

「佑馬さんは本当に料理が上手ですからね。」

 

「へぇ、そうなんだ。あ、私は北山雫。こっちが光井ほのか。よろしく。」

 

「おう、俺は中田 佑馬。こっちがジブリールだ。よろしくな。」

 

そこから暫くは雑談が続くが、そういえば、とエリカから声があがった。

 

「さっきの種明かしを聞いてないんだけど、何で手を重ねて置いただけで、あんなにタイムが上がったの?」

 

「なに、単純なことだ。エリカは片手で握るスタイルのCADに慣れている。だから」

 

そこからはさっきの種明かし。

 

エリカは普段片手でCADを使うから、手を翳して片手にサイオンを集中させた結果、早くなったというもの。

 

「それで両手を重ねて、接点を片手にしたんですね……」

 

美月が感嘆を漏らしたが、同じような表情を浮かべているのは彼女だけではなかった。

 

「あ、そうだ。A組の授業でも、これと同じCAD を使ってるんでしょ?」

 

「ええ。」

 

頷きながらも、嫌悪感を隠そうとしない深雪に、エリカは好奇心をかき立てられた。

 

「ねぇ、参考までに、どのくらいのタイムかやってみてくれない?」

 

「えっ、わたしが?」

 

自分を指差し、目を丸くする深雪に、エリカはわざとらしく、大きく、頷いた。

 

達也に目で問いかける深雪。

 

「いいんじゃないか?」

 

「お兄様がそう仰るのでしたら……。」

 

達也から許可も出たので、深雪は躊躇いがちながら、承諾の応えを返した。

 

機械の一番近くにいた美月が、計測器をセットする。

 

深雪はピアノを弾くときのように、パネルに指を置いた。

 

計測、開始。

 

サイオンが閃き、美月の顔が強張る。

 

いつまで経っても結果を告げない友人に焦れたのか、エリカが結果発表を催促した。

 

「……235ms……。」

 

「えっ……?」

 

「すげ……。」

 

そして、その強張りが伝搬していく。

 

「何回聞いてもすごい数値よね……。」

 

「深雪の処理能力は、人間の反応速度の限界に迫っている……っと、人間といえば佑馬とジブリールさんはどうなんだ?」

 

「なんで人間といえば俺達になるのかわからんが、気になるか?」

 

「そういえば、列が出来てるのは見たけど、実際の数値は見てないね。」

 

達也からの理不尽なパスに、エリカとレオも頷く。

 

「あ、私も気になります。」

 

深雪も気になるらしいので、やることになった。

 

「わかった。まずジブリールからね。」

 

「私からですか?」

 

「そ、ジブリールから。」

 

「わかりました。本気でやらせていただきます。」

 

そう言って、パネルの前にたつジブリール。

 

「ッ!?」

 

その瞬間、部屋全体をサイオンが覆った。

 

「……84ms……。」

 

「は……?」

 

「マジで……?」

 

「ここまで行きますか……。」

 

言われた数値に、ほぼ全員が固まる。

 

「やっぱり人間じゃないな。」

 

「俺まだやってないのに人外認定は大変失礼だな。」

 

「いや、既にわかっていることだろ。」

 

達也と佑馬、深雪以外の全員が。

 

「それじゃあ、俺もやりますかねぇ。」

 

そして、佑馬もパネルの前に立った。

 

グーッと背伸びをして、

 

「さて、やりますか。」

 

と、一言呟いた瞬間に、また部屋全体をサイオンが覆った。

 

「……59ms……」

 

「……」

 

ここまでくると、もはや全員が無言。

 

呆れるしかないほどの記録を叩き出した佑馬。

 

「なんで佑馬さんとジブリールさんは二科生なんでしょうか。」

 

ほのかが当然のことを達也に聞いた。

 

「二科生の方が楽しいからだそうだよ。」

 

が、返ってきたのは当然じゃない答え。

 

「むぅ……佑馬に負けてしまいましたか。」

 

「はっはっは。前までならジブリールの方が上だったけど、今は俺の方が上になったというだけだよ。」

 

「次は必ず勝たせていただきます。」

 

「おう、勝ってみな。」

 

二人の楽しそうな会話を聞きながら、ここにいた一同は全員思った。

 

((この二人、本当に人間なのか?)))




佑馬君は先生としても優秀なようです。

タイム=強さというわけではありません。

空間転移の処理速度のラインを100msと設定しています。

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