[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです   作:型破 優位

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一言だけ。
すみませんでした。


有志同盟

それからしばらくは教師代わりとしてクラス全員を教えるはめになった佑馬とジブリール。

 

二科生に教員はいないのだが、ある意味では教員よりも優秀な二人なので、みんな熱心に二人の授業を聞いている。

 

「なんかさ、佑馬達ってなんで高校にいるのか分からなくなるよな。」

 

「ああ、全くの同感だ。」

 

二人の授業を聞きながら小声で会話をするレオと達也。

 

「まぁ、俺としてはここまでわかりやすい授業をしてくれるとは思ってなかったし、こんな授業受けれるとも思ってなかったから、とても有りがたいんだけどな。」

 

「ああ、どうやったらあそこまで知識をつけられるのかわからんが、わかりやすい授業をしてもらえるのはこっちとしても助かる。」

 

「はいそこ!私語はほどほどに!」

 

レオと達也の会話を聞いて、佑馬が注意をする。

 

「いや、耳良すぎだろ。」

 

そして、思わずでたレオのぼやきに対しても。

 

「……いや、今のも聞こえているのかよ。」

 

グッ!と親指を建ててサムズアップする佑馬に、レオは思わずため息を吐いたのだった。

 

◆◆◆

 

それから数日。

 

一年生の間で佑馬とジブリールの授業が話題となり、教員までもが見学に来るようになっていた。

 

そのため、一科生の授業で教員がいないことも少なくなくなり、一科生の不満は溜まるばかりだが。

 

「よし、今日はここまで!解散!」

 

そんなことも露知らず、佑馬とジブリールは今日も授業をしていた。

 

二科生全員と教員に。

 

「ここまでくるとさ、呆れるしかないよねー。」

 

「本当ですね……佑馬さんもジブリールさんも、本当にすごいです。」

 

皆がそれぞれの場所に戻っていくなか、エリカと美月、レオ、達也はある一角に集まって話していた。

 

「でも、教員が来るのも納得できるほど素晴らしい授業だからな。」

 

「なんか、次のテストは良い点数取れる気がしてきたぜ!」

 

達也は眼を瞑りながら、レオはその達也の言葉に頷く形で言ったが。

 

「アンタじゃ無理よ。頭より筋肉でしょ?」

 

「何を!」

 

結局いつも通りの戯れを始めるエリカとレオ。

 

その楽しくも賑やかな空間に。

 

「おうおう、楽しそうだな。」

 

佑馬とジブリールがきた。

 

「あ、佑馬君!今日もお疲れ!」

 

「お疲れさまです。」

 

「おう、正直ここまで反響を呼ぶとは思ってなかったぜ。」

 

エリカと美月の労いの言葉を受け止め、やれやれと言いたそうなポーズで言う佑馬。

 

「でも、楽しいではございませんか。教えると言うのもまた、私たちの知識としてしっかりと蓄えられるものでございますよ?」

 

「まぁ、そうだな。」

 

佑馬は、横でジブリールが笑みを浮かべながらそう言ったのを見て、口元を緩めながらそう言った。

 

「さて、あと少し頑張りますか。」

 

◆◆◆

 

それから数日後、佑馬とジブリールは職員室にいた。

 

授業を早めに切り上げて自習にし、二人は一年生の教員達と話し合いをしている。

 

「さて、今日ここに呼んだ理由はわかりますか?」

 

女の先生が、そう質問してくる。

 

「あー、はい。一科生二科生のことと、自分達のことですよね。」

 

「わかってるなら話が早いですね。」

 

安定とも言える読心術でさらりと答えを導きだした佑馬。

 

「わかっていると思いますし、こちらに非があることなのですが、貴方達の授業を見たくて教師が度々抜けることがあるために、一科生の不満が募っています。」

 

「それで?」

 

「放課後、貴方達の授業を私たちにもお願いします。」

 

「……は?」

 

「ですから、放課後に貴方達の授業を私たちにもお願いします。」

 

聞かされたのは、非常識で、驚きに満ちたもので、ジブリールもそうだったようで。

 

「説明を求めてもよろしいでしょうか?」

 

と、質問した。

 

「貴方達の授業は、誰から見ても私たちが行うものよりも遥かに質が良く、私たちですら学ぶことがあるものです。教師という立場で新しい切り口を見つけられず、ただ教えているだけの人にとってこれほど魅力のある授業はありません。しかし、一科生の授業もしなくてはいけない。というわけで、放課後に私たちにも授業をしてくれれば、というわけです。」

 

「なるほど。私は構いませんよ。」

 

「俺もいいよ。」

 

「ありがとうございます。それで、残りのしつも」

 

その時、その声は大音量で突然学校に響いた。

 

『全校生徒の皆さん!』

 

「うわ、うるさっ。」

 

あまりの大きさに思わずそう溢した佑馬。

 

ジブリールは顔をしかめてスピーカーをみている。

 

職員室の全員が一斉にスピーカーを見ていた。

 

『失礼しました。全校生徒の皆さん!』

 

今度はちゃんと音量調整をして、少し決まりの悪げに、同じセリフが流れた。

 

『僕たちは、学内の差別撤廃を目指す有志同盟です。』

 

「おい!この放送を早く止めろ!」

 

職員室内は、今の現状を把握して一人の男性教師が叫んでから、だんだんと騒がしくなっていくなか。

 

「失礼します。三年の七草です。」

 

生徒会長の真由美が職員室へとやってきた。

 

「あら、佑馬くん、ジブリールさん。こんにちは。」

 

「あ、どうも。」

 

「こんにちは。」

 

職員室に入って辺りを見回して、佑馬とジブリールを見つけてよっていく真由美。

 

「本当は少し話したいことがあるんだけど、それはまた今度、ゆっくりと。」

 

「……時間さえあれば。」

 

よし、と頷いてから先生達に向かって、こう言った。

 

「今回のこの件は、私たち生徒会に預からせて貰えないでしょうか。」

 

「……わかった。頼んだよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

ある一人の先生が許可を出すと、そのままお辞儀をして職員室を出ようとして。

 

「あ、佑馬くん、ジブリールさん。今度生徒会室に寄ってね。」

 

ウインクをして、出ていった。

 

「……どうする?ジブリール。」

 

「そうでございますね。私としては是非とも何をしているのか知りたいのですが……」

 

「だよなー。よし、行くか!」

 

「はい♪」

 

そのまま職員室を後にして、放送室へと向かったが既に事後で、これから生徒会室で話し合いが行われるということ以外は確認することができなかった。

 

◆◆◆

 

翌日、学校に登校したら、明日有志同盟と討論会を行うことがわかったが、だからといって何かするということもなく、いつも通り授業を始めた。

 

そのまま放課後となり、職員室へと向かう。

 

「失礼します。1-E中田 佑馬です。」

 

「中田 ジブリールです。」

 

「よくきたね。それじゃあさっそく、お願いしようか。」

 

入って早々、職員室の一角にできたスペースに連れていかれて、そこには数十人の教員が座っていた。

 

「それじゃ、授業を始めます。」

 

その一言により、生徒が教員に教えるという異例の授業が始まった。

 

◆◆◆

 

授業も滞りなく終わり、参加した教員全員からお礼の言葉を貰って職員室を後にしようとしたとき、その人達は現れた。

 

「佑馬君、ジブリールさん、授業お疲れ様。」

 

「いえ……それで、どうしたんですか?七草先輩、渡辺先輩。」

 

そこにいたのは、生徒会長の七草 真由美と風紀委員長の渡辺 摩利だった。

 

「いや、明日の討論会でちょっと気になることがあってな……それにあたって佑馬君達の協力を仰ぎたくって待たせてもらっていたのだが。」

 

「討論会ね……気になることとはブランシュのことですか。」

 

「貴方といい達也君といい、今年の一年生は本当に何者なのかしら……」

 

ブランシュ、という言葉に摩利は驚いた顔をして、真由美は困ったような表情を浮かべながら呟いた。

 

「わかっているなら話は早い。頼めるか?」

 

「自分はいいですが……ジブリールはどうしたい?」

 

そこで、隣でずっと話を聞いているジブリールに話題を振る。

 

「そうでございますね……」

 

話題を振られても何をどうする、とまでは言われていないため、判断を迷っているジブリール。

 

そこで、佑馬はそっと耳に口を近づけて。

 

(明日、討論会は荒れるよ?)

 

と、言った。

 

その言葉に、ニヤっとした表情を浮かべ。

 

「わかりました。お受け致します。」

 

と、答えた。

 

「なんか魅せつけられたような気分ね……でも、ありがとう。」

 

「助かる。詳しい話は明日するから、出来ればアドレスを教えて欲しいのだが……。」

 

真由美はまた別の意味で困ったように、摩利はフッと笑みを浮かべながらそう言った。

 

「ああ、それなら……ちょっと背中に手を当ててもいいですか?渡辺先輩。」

 

「え?あ、別に構わないが……何をするんだ?」

 

許可も降りたことで、摩利の背中に手を当てる佑馬。

 

佑馬の身体からサイオンが光り、摩利の周りを包み込み、そして摩利の身体の中へと消えていった。

 

「今のは一体……。」

 

「自分のサイオンを流し込みました。心のなかで何か言ってみてください。」

 

「ああ……わかった。」

 

何がなんだかわからないまま、言われた通りに心の中で言ってみることにした。

 

(右手を上げて左手を腰に。)

 

そう心の中で言うと、佑馬はその通りに動いた。

 

まさかとは思ったが、少し意地悪をしようとニヤッと笑みを浮かべながら、摩利は再び心の中で言った。

 

(ジブリールさんにキスしなさい。)

 

そういうと、躊躇いもなく、ジブリールの口にキスをする佑馬。

 

真由美はその光景に顔を赤くして両手で顔を覆いながらも手の間からその光景を見ていて、ジブリールは最初は驚きながらも、それを受け入れた。

 

「……これはどういう原理だ?」

 

「そうですね、自分のサイオンを渡辺先輩の身体に流し込んで、その心をサイオンづてに伝達してくれる……じゃ、分かりづらいですよね。」

 

口付けをやめて、摩利の質問に困ったように答える佑馬。

 

「ああ、分かりづらいな。」

 

「なんと言えばいいですかね……渡辺先輩の心の中に自分の分身を送り込んだ……みたいな感じでしょうか。」

 

「なるほど……。」

 

つまりは、心のなかで呼べばいつでも話しかけることが出来るということだ。

 

(しかし、理論も出来てこんな魔法も使えるのに何故二科生なのかがよくわからんな。)

 

「そこらへんはまた後日。」

 

「……盗み聞きはよくないな。」

 

「聞こえてしまうものでして……少し調整します。」

 

そう言ってまた摩利の背中に手を当てる佑馬。

 

「で、今度は何をしたんだ?」

 

「自分の名前を呼んでからその後の一文のみを自分に届くようにしました。」

 

「佑馬君……貴方って本当に何者?」

 

「さぁ……人間なのは確かです。」

 

真由美の質問に含みのある笑みを浮かべながら答えた佑馬に、諦めたような表情を浮かべ、その場を後にした真由美と摩利。

 

「よし、帰るか。」

 

「わかりました。」

 

その夜、摩利からイタズラ電話ならぬイタズラ心話をされ、仕返しとして摩利の彼氏を公表すると言ったらすごい勢いで謝られたのは別の話。




久しぶりに使う中田 ジブリール。
違和感はしっかりとログインしていますね。

ジブリールって、基本隣で静かに話を聞いていますよね。

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