[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです 作:型破 優位
結局ゆっくりと話すことも出来ず、これからお昼は生徒会室で食べることを約束して、その場は解散となった。
そして現在、司波家にお邪魔している。
「よし、今日は飛行魔法のことについて話すぞ。」
「ほう……それは興味深いな。」
この前、教師を土下座させたときに授業を受けさせるという約束していたのだ。
「まぁ、なんでこれを話すかと言うと、ちょうど達也もこれについて何かしらしていると思ったからなんだが、どうだ?」
そして、佑馬が今回、飛行魔法をわざと選択したとわかった達也はため息混じりに言った。
「その情報をどうやって引き出したのかは知らないが、正解だ。」
「それはよかった。じゃあ、今度そのCAD見せてくれよ?」
「勿論だ。」
そうして授業が始まった。
◆◆◆
佑馬の授業が始まった頃、深雪の部屋にジブリールもきていた。
「ジブリールは出る競技とか決まったのですか?」
「決まりましたね。新人戦のミラージ・バットとアイス・ピラーズ・ブレイクでございます。」
「……被ってるわね。」
そう、今回の九校戦、ジブリールは深雪と完全に被ってしまっている。
「深雪さんなら楽しめそうでございますね。楽しみにしておりますね。」
そして、深雪はこれを嬉しく思っていた。
自分よりも実力が上であろう者に挑める。
中々にないことだ。
深雪にとって、ジブリールという存在はとても大きかった。
魔法力も上、体術も上、サイオン量も上。
そして、『神の使者』の一人であり、兄と同じ戦略級魔法師でもある。
ここまで格上の敵、誰がワクワクしないでいられるのだろうか。
「私も、全力でお相手させていただきます。」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。」
そこで手を差し伸べるのはジブリール。
これは、しっかりと自分の敵に値すると判断したために敬意を払っての行動。
それに深雪も答える。
「さぁ、今日はゆっくりとお話を聞かせてもらいますね?」
「話せることでよければ、なんでもお聞きくださいませ。」
そこからは完璧なる女子トーク。
深雪からは主にジブリールと佑馬との関係について。
風呂に一緒に入っている、一緒に寝ているとジブリールが答えた時はかなり顔が赤くなっていたが、さすがは婚約者という関係を保っている。
そしてジブリールの質問。
やはりというべきか、達也と深雪との関係を聞いたジブリールだったが、
「私とお兄様は兄妹で、それ以上も以下もないわよ?」
という答えが返ってきた。
しかし、ここで引くジブリールではない。
「では、兄妹でなければどうなのでございましょうか。」
「そうね……兄妹じゃなければいいかもしれないわ。」
見事に顔を赤くさせながら答える深雪。
女子トークは夜が更けるまでしばらく続いた。
◆◆◆
「……と、言うわけだが、わかったか?」
「助かった。これで飛行魔法の完成のメドはたったよ。」
「それは良かった。」
達也に出された紅茶を飲みながら、ソファーで寛ぐ二人。
そして、達也が思い出したように言った。
「ジブリールの背中の翼、あれはなんだ?」
「あ、やっぱり気づいてた?」
「ああ、サイオンの光がかなり強かった印象がある。」
「そうだな……達也にはいいかな。」
改まったように、ソファーに座り直す佑馬。
達也も真剣に耳を傾ける。
「前にも言っ通り、あれはジブリールの魔法だ。」
嘘は言っていない。
ジブリールは存在そのものが一種の魔法なのだから。
「……何のだ?」
「飛行魔法。」
そして、これも嘘ではない。
「それだけではないし、まぁ、俺もあるぜ?俺は黒、ジブリールは白。外見からすれば悪魔と天使だな。」
今回言っていることは全部本当。
ただ、大事なことを言っていないだけで。
「なるほど……で、普段は偽装魔法をかけているわけだな?」
「そういうこと。」
そこで紅茶を一気に飲み干す佑馬。
そして達也に促されて、達也の部屋に向かう。
そして、一つのCADを見せてきた。
「……これが例のCADか。」
ベッドに腰をかけながら、そのCADをじっくりと眺める。
「ああ、さっき佑馬に教えてもらえたことで、やっと進めることが出来た。ありがとう。」
「まぁ、俺らは飛べるからあまり関係ないんだけどね。」
「……ずっと気になってたが、佑馬とジブリールはBS魔法師か?」
当然の疑問だろう。
BS魔法師、さらにその中で突然変異したものが佑馬達とするなら、魔法師社会の状況も変わってくる。
「それは俺らもわからんな。普通の魔法師ではないし、BS魔法師でもない。ジブリールの言葉を借りて言うなら、『未知』かな。」
未だ知らず、と書いて、未知。
まだ前例のない二人、それが佑馬とジブリール。
そして、ここにも未知の存在が一人。
「なるほど……それはとても興味深いな。」
口角を上げて笑う、司波達也。
彼もまた、前例のない、未知の存在。
「それで、佑馬はクラウド・ボールとモノリス・コードに出るんだよな?」
「ああ、そうだな。」
「モノリス・コードはともかく、クラウド・ボールは何か作戦とか立ててるのか?」
「最高に素晴らしいパフォーマンスを見せてあげるから、期待していいぜ?」
その言葉を聞いて、待ってた、とばかりに笑う達也。
「楽しみに待たせてもらうよ。」
「さて、そろそろ帰ろうかな。」
ベッドから腰を上げて、帰ろうとドアを開けたところで、達也から待ったがかかる。
「こんな時間だし、今日は泊まっていったらどうだ?」
「いや、でも深雪は大丈夫なのか?」
「問題ないですよ。」
佑馬の問いに答えたのは、ドアの外から現れた深雪。
隣にはジブリールもいる。
「こちらもジブリールに泊まって行くか聞いたら、佑馬さんに聞いてからって話になったのでここに来たのですが……問題なさそうですね。」
微笑みながら佑馬の顔を見つめる深雪に、佑馬も頷く。
そうして、司波家のお泊まりが決まった。
◆◆◆
次の日、深雪とともに弁当を作って、九重八雲の元へと向かった。
「師匠、今日は稽古やらないのですか?」
「さすがにお客さんがいるときに奇襲ってのはねぇ?」
「ほぅ、俺らをお客さんって呼ぶとは、だいぶ警戒心を解いてくれたものだな。」
現れたのは八雲ただ一人。
奥の方で弟子が見守っている。
「そりゃ、達也君からいろいろ話は聞いているしねぇ。」
「俺らを調べてること、俺らに気づかれてないと未だに思ってたりするとか?」
「……まさかとは思ってたけど、気づかれていたんだね。敵わないなぁ。」
苦笑いする八雲。
以前訪れたときに『調べるな』と言われたが、そう言われると調べたくなるのが人の心理。
ましてや忍びならなおさらそうだろう。
「それで、何か見つかった?」
「ごく一般家庭のごく普通な資料を見つけただけだよ……僕にここまで尻尾を掴みさせないなんて、一体何者なんだい?」
「あれ、達也言ってなかったの?」
そこで、佑馬がビックリしたように達也にきいた。
「いや、普通は言っては行けないものだと思っていたから、誰にも言わなかったのだが、言っても良かったのか?」
「この人には絶対に言うと思ってたんだが……まぁいいか。」
頭をかきながら八雲に近づいていく佑馬。
八雲は警戒を強めたが、達也の表情を見てそれを解いた。
そして、二歩ほどの距離までつめた佑馬は八雲に正体を明かした。
「俺たち、『神の使者』なんだけど、そこんとこ大丈夫?」
「……。」
無言で達也の方を向く八雲。
達也は、首を縦に振ってそれに答えた。
「君たちがあの『神の使者』ねぇ……ならば僕の隠密行動を見破ったのも納得できる……いやはや、あの『神の使者』がこんな近くにいたとは思っても見なかったよ。」
何処か吹っ切ったように笑って、少し真面目な表情に戻ってから再び話始めた。
「これも因果というものなのかねぇ。達也君の近くに『神の使者』がいる……何かの前触れかな?」
「人を災厄みたいに扱わないでほしいな?」
「あはは、悪かったよ。でも、一つ忠告しておくよ。」
「なんとなくわかるけど、何?」
八雲はさっきの雰囲気を完全に消し、真面目な表情で言った。
「君たちの力は、十師族も黙って見過ごせないほどだ。今も君たちの捜索は行われている……九校戦は気を付けたまえ。」
「ああ、肝に銘じておくよ。」
佑馬も真面目な表情でそれに答える。
そして、フッと笑いながら、
「あ、この前のあれは冗談だから、気にしてたらごめんね?あんた使えそうだし。」
「こき使われそうな言い方が気になるけど、正直安心したよ。僕は過去を引きずるような思考はしてないから大丈夫だよ。」
「話も済んだことですし、稽古をお願いします、師匠。」
「了解。佑馬君もやる?」
「是非、やらせてもらうよ。」
「私もやらせていただきます。」
そして、その稽古は達也が疲れ果てるまで続いた。
次はノゲノラ更新します。
そして、こちらは本格的に九校戦に入ります。