[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです   作:型破 優位

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次はノゲノラ更新します。


快進撃

 ジブリールのピラーズ・ブレイクの二回戦目は午後の最終のため、ジブリールはクラウドのテニスウェア見たいなユニフォームに着替えて佑馬と控え室にいる。

 

 ここからはクラウドに集中出来るため、二競技といってもジブリールの体力なら一競技と変わらないのだが、昨日の三高の女子が言っていたように、他校から見ればやはり無謀だと思えるのだろう。

 

 ラケットのため、CADの調整は必要なく、一応付いている五十里もただいるだけのようなものだ。

 

 近くで見れるから、という理由で控え室に残っているが、佑馬の機転で花音を呼んでいる。

 

「そういえば、ジブリールさんの魔法、大学の方から『インデックス』に正式採用するかもしれないって打診が来てるらしいよ?」

 

 そこで、花音がこちらに話を振ってくる。

 インデックスとは、簡単にいえば魔法の大百科辞典である。

 

「そうなんですか?なら、佑馬の名前で載せましょう」

 

 CADにして汎用出来るようにした、という点で佑馬の名前を載せようと提案するジブリールだが、そこは佑馬が許さない。

 

「いや、ジブリールだ。あの魔法は元はといえば天翼種(おまえたち)の魔法だろ。あれは開発者名を載せるものだぜ?俺は開発してないからな」

 

 それならジブリールも開発したわけではない、と言いたいところだが、ここまで言ったら佑馬は頑として動くことはない。

 

「わかりました。私の名前でお願いします……しかし、術式は非公開でお願いします、とお伝えください」

 

「わかったわ。あとで会長に言っておくわ。それより、ジブリールさんはそろそろ試合じゃない?」

 

「あ、そうですね……では、行ってきます」

 

「おう、気楽にやれよー……?」

 

 エールを送って見送った佑馬だが、いきなり戻ってきたジブリールに首を傾げた。

 

「……忘れ物か?」

 

「…………」

 

 目を閉じて唇だけを差し出すジブリールに、ジブリールが何してほしいか気付いて、五十里と花音を見る。

 

「……ここでか?」

 

「今更でございます。それに、私はあの日(・・・)から寝ていないので、佑馬は従う義務があるのですよ?」

 

「……それもそうだな」

 

 五十里は困ったように、花音はニヤニヤとしながらその様子を見つめ、佑馬はジブリールの顎を持って、そっと口付けをした。

 

 五十里と花音がいるため、軽いものだったが、それでもジブリールは満足したようで、ウキウキのままコートへと向かっていった。

 

「……花音さん、そんなに面白かったですか?」

 

「いやー?ちょーっと年下ぽくない後輩の貴重な姿が見れただけで、何も思ってませんよー?」

 

「でも、佑馬君もよくやったね……僕じゃ人前でキスなんて恥ずかしくて出来ないよ」

 

「啓が無理でも私が強引にするけどね!」

 

「花音ならしかねないから笑えないなぁ……」

 

 こちらはこちらで二人の空間を作り始めたので、佑馬も次の試合の準備をする。

 

『それでは大注目の一戦!第一高校 中田 ジブリー選手と第七高校 工藤 凛選手の入場です!先程のアイス・ピラーズ・ブレイクで相手を秒殺したジブリール選手!そしてなんと!その時に使用された魔法がインデックスに正式採用されることが決まったようです!それではまもなく、注目の一戦の試合開始です!』

 

 アナウンスが入ったことにより、佑馬は自分の準備をやめてモニターに目を移す。

 

 相手は拳銃型CADを構えてコートに立っており、ジブリールはラケットを片手に目を閉じて始まる時を待っていた。

 

 そして、ランプが点り、ブザーが鳴る。

 相手が球を魔法で打ったことにより、天井や壁のあちこちを不規則にバウンドしてコートに落ちてきた。

 

 それが落ちて相手の点になろうとした瞬間、相手選手の隣を爆音をあげて何かが通りすぎた。

 

 そして、それに反応する間もなく跳ね返った球を再び連続で入れていく。

 

『これはなんというスピードなのでしょうか!まだ一球だというのに次々とポイントが入っていきます!工藤選手はこのスピードに手も足も出ません!』

 

 まだ一球目が出てから十秒だというのに、既に十点がジブリールに入っていた。

 

 そして、ジブリールは相手の棄権により、一セット無失点で勝利した。

 

◆◆◆

 

 ジブリールの試合が終わって、そのコートに試合が入った佑馬は圧勝してきたジブリールを労う。

 

「お疲れさん。余裕だったね」

 

「そうでございますね。このままいけば、あれ(・・)を使わずに行けると思います」

 

「確かに行けると思うが、念のためだ。油断だけはするなよ?」

 

「私が油断するわけないじゃないですか。佑馬こそ、相手で遊びすぎて負けるなんてヘマしないでくださいよ?」

 

 その佑馬の言葉に心外だとばかりに反論してくるジブリール。

 それに苦笑しながら頭をポンポンと優しく手を置いた。

 

「知ってるよ。念のため、だ。それじゃあ俺は行ってくる」

 

「いってらっしゃいませ」

 

 その言葉を聞いて控え室を出る佑馬。

 そしてそのまは出ようとした瞬間、佑馬は強制的に振り向かされた。

 

「忘れ物ですよ?」

 

 ジブリールがニッコリと笑いながら佑馬の唇を強引に奪い、今度はねぶるような濃厚な口付けをする。

 

「……ん……んむ……はぁ」

 

「……はぁ……全く……困った嫁さんだ」

 

「全て佑馬のせいですけどね」

 

 佑馬はジブリールの言葉に、違いない、と苦笑しながらコートへと向かう。

 ジブリールはモニターで試合を観戦するためにソファーに座った。

 

 その後も、佑馬とジブリールが負けるはずもなく、全て無失点で決勝戦まで勝ち進んだ。

 

 この事に分かってはいながらも佑馬とジブリールの決勝戦進出、さらに女子のクラウドのもう一人の選手、里見スバルも三高の一色 愛梨に敗北を喫したはいえ、三位入賞を果たしたため、一高テント内はかなり良い雰囲気が漂っていた。

 

「さすがは佑馬君とジブリールさんだわ!このまま二人とも無失点で優勝しちゃうかもね♪」

 

「そうですね。まさかここまであっさり行くとは思ってもいませんでした」

 

「いやでも、佑馬君はそのまま行けると思うが、中田さんはちょっとキツくないか?相手はあの一色だぞ?」

 

 真由美はもう既に上機嫌、鈴音も頬は緩んでおり、摩利も無失点はキツイ(・・・・・・・)と言っているだけで、佑馬とジブリールの勝利は疑っておらず、むしろ確信していた。

 

 それは当然佑馬とジブリールの耳にも届き、同時に相手の三高も知るとことなった。

 

 当然、三高の選手が怒らないわけもなく、今現在、佑馬はコートを挟んで睨まれていた。

 

「……いや、俺を睨んでも何も出ないし、睨まれるようなことを少なくとも俺はしてないんだけどなぁ……」

 

 そして、さらに当然のことながら、三高の応援にきている人にもそれは広がっており、客先からも所々で敵意を剥き出しにされているため、佑馬にとっては迷惑でしかない。

 

『クラウド・ボール決勝戦はやはりこの組み合わせ!一高中田選手と三高吉岡選手です!中田選手はこれまで多種多様な技で相手を翻弄し、無失点で決勝戦まで勝ち進んできました!対して、三高の吉岡選手も圧倒的なスピードにより、これまた無失点で決勝戦まで勝ち進んでおります!それでは注目の決勝戦、まもなく試合開始です!』

 

 アナウンスを左から右に聞き流して、佑馬はストレッチをする。

 ここにくるまで他人の技を真似して勝ってきたが、そろそろ実力を出さなければ負けそうな相手なため、一応ストレッチはやっておく。

 

 そして、ランプが点り、試合は始まった。

 

 佑馬の方に球が打ち出され、さっそく攻めに入る。

 ラケットの片面を無駄なく使ってスピードを捨てる代わりに回転に全力を注ぎ、それを打ち出す。

 

 そのスピードは、目視出来るどころか人の歩くスピード並みの早さ。

 

『おおっと!中田選手、これは打ち損じか?ふわっと打ち上がりました!これはチャンスボールです!』

 

 実況の言葉とともに、観客席からブーイングが飛ぶ。

 

 しかし、そのブーイングはすぐに消えた。

 この決勝戦一度も失点をしていない三高の選手の打った球は、ネットを越えずにそのまま自分のコートを転がった。

 

 その後も何度もその球を打とうとしても、全てがネットにかかる。

 

『なんと!チャンスボールに見えて実は中田選手の決め球、打っても打ってもネットにかかる不思議な打球に吉岡選手は苦戦しています!』

 

 『百腕巨人(ヘカトンケイル)の門番』

 スピードを捨てラケット全面を使って超回転をかけ、相手の打球をネットに越させない技。

 

 最初のうちは余裕があるため、それで攻めていく佑馬。

 相手はその技に必至に食らいつくが、どうしてとネットを越えない。

 

 そして、三球を越えたころ。

 佑馬は急に普通のペースで球を打ち始めた。

 

 回転をかける時間がなくなったからだ。

 

 それを好機とばかりに三高の選手もラリーをする。

 スピードは確かに高速と言えるものだが、佑馬にとってはやはり遅い。

 

 最初は嬉々としてラリーをしていた三高の選手だが、段々と焦りを見せていく。

 

『先程の一方的な試合とは一転!今度は両者一歩も引かぬ超スピードでの乱打戦となりました!』

 

 佑馬はただ合わせているだけだが、相手は本気でずっと打ちつづけなければいけなくなり、疲労の色が見え始めた。

 

 球は七球まで増えたころ、佑馬が仕掛ける。

 

 球に少しの回転と移動魔法をかけ、相手の打球に当て、それが壁に反射して佑馬が今打った球に当たり、さらにその当たった球は一番最初に打った球に当たり、という連鎖が起きた。

 

『出ました!クラウド・ボール版の『数学的連鎖』!!完全に計算しつくされた球の軌道は、正に球が生きているかのように打球を妨げます!そして何より、今回は中田選手の打球もその連鎖の一つとして加わっているようです!なんというコントロールと空間把握能力でしょうか!』

 

 実況は既に佑馬の技の解説しか仕事がなくなり、結果的に佑馬を褒めることしか出来なくなっていた。

 今回のこれは佑馬の打った打球も計算した位置に行かなければ行かないため、何もしなかった一回戦より難易度は高い。

 

 三高の選手はある程度対策をしたのか、移動魔法で壁などを使ってこちらに打ってくるが、それも全て連鎖の一部となって相手のコートに襲いかかる。

 

 そして最後の九球が出て試合終了まで残り五秒となったとき、佑馬は相手のラケットに向かって、ストロークを打った。

 

「……っ!?」

 

 それは相手のグリップに当たり、ラケットを吹き飛ばした。

 

「これで終わり。『破滅への輪舞曲(はめつへのロンド)』」

 

 そのまま返ってきた球をスマッシュで相手のコートに入れ、それにより連鎖も終了。

 

 その後の二セットは気合いで出場してきたが、佑馬の相手になるはずもなく、その後の二高の選手は一セットで終わり、佑馬の優勝が決まった。




ヘカトンケイルは両面使いますが、佑馬君のやり方が上手いということで。

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