[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです 作:型破 優位
少なめです。
「佑馬さん、いつの間にあんなに仲良くなったのですか?」
「さぁ、どうだろうね。俺の行動読めるのはジブリールくらいだよ」
「当然でございます。伊達に何十年も恋人を……」
深雪の何気ない問いから始まったものだが、見事にジブリールは口を滑らせてしまい、あっといった表情で固まった。
「……何十年も?」
その言葉に反応したのは達也。
めんどくさいやつに聞かれた、と嫌な表情を顔には出さなかったが、このまま放置してしまうと肯定していることになるので、差し支えないように返すことにした。
「いや、たぶん何十年も一緒に居たというのは言葉の綾で、それくらい長くいるんだから、ってことだろ」
「さ、さすがは佑馬です。私のこともちゃんとお見通しでございますね」
佑馬のいつもと変わらない口調で言った解釈にジブリールがのったことで、年齢がバレることはなかったが、達也が訝しげに見ているために下手に会話をすることが出来なくなった。
「まぁ、ジブリールは今日二競技やったんだし、いくらお前とはいえさすがに少しは疲れただろ。どうせここ最近寝てないんだろ?」
「ええ、確か夏休みに入ってからは寝ていませんね」
「……え?」
「だよな。だから、今日くらいは寝ておけ」
「え、ちょーっと待ってくれる?」
周りの反応を代弁するかのように英美が声をかけるが、声をかけられた二人は、何か変なこと言った?みたいな感じで英美を見る。
「どうした?明智さん」
「いや、聞き間違いだと思うんだけどね……ジブリールが夏休みから寝てないって聞いたんだけど……」
「いや、聞き間違いじゃないよ。俺もなんだかんだで夏休み入ってから寝てないし」
「……」
辺りを静寂が支配する。
そこで声をかけたのは、意外にも後ろの方からついてきていた真由美だった。
「え?でも一昨日一緒に寝たわよね?」
「七草会長。それは中田君に腕枕をしてもらったってやつですか?」
「え!?リンちゃんなんでそれを知ってるの!?」
そして、見事に地雷を踏んでいった。
鈴音はさっきの夕食会のときは何も言わなかったらしく、何故鈴音が知っているのかを驚く真由美。
そして、佑馬は佑馬で冷や汗を流した。
「……佑馬」
「……ナンデショウカジブリールサン……」
「今日、やってくれますよね?」
「モチロンデス」
近くで真由美が顔を真っ赤にして鈴音に問い詰めているなか、この場にいる全員が、貴重な姿を目撃する。
あの佑馬が、冷や汗を流しながら九十度腰を曲げて頭を下げており、その対象のジブリールは、笑顔だった。
――ドス黒いオーラを漂わせ、目だけが笑っていないが。
あの日、ジブリールに真由美と一緒にいることは言ったが、腕枕をしたことは言っておらず、しかもジブリールは腕枕を今まで一度もやってもらったことがない。
つまり、ジブリールは嫉妬しているわけだが……
「……お兄様、ジブリールの後ろに般若が見える気がするのですが……」
「深雪、俺にも見えるよ」
女の方が強いというのは、どうやらどの世界でも共通の認識のようだった。
◆◆◆
そして夜になり、佑馬とジブリールは家にいた。
二人とも同室者がおり、それが司波兄妹だから部屋を交換してもいいのだが、達也と深雪が同室だと深雪がオーバーヒートを起こしそうなので、家へと帰ったのだ。
そして、風呂に入った後、すぐにベッドへと向かい……
「さぁ、佑馬。会長さんにしたことを私にもしてくださいませ」
「お、おう……」
素晴らしくいい笑顔で言われたので、それを拒否することもなく言われた通りに、真由美にした通りにする。
「……私にはやってくれなかったのに会長さんにこんなことしていたなんて……」
「……どうかした?」
「いえ、何でもございませんよ?」
実践する度に何かぶつぶつ聞こえてくるが、知らぬが仏という言葉があるため聞かないふりをした。
しかし、真由美のやった通りにジブリールにやる度にジブリールが不機嫌になっていくために、佑馬の気が休まる時間ではなかった。
「――これで一通り終わったけど……」
全て終わり、腕枕をしながらベッドの中で対面する形となっている佑馬とジブリール。
「そうでございますか……中々楽しんでいたご様子ですね」
「いや、そんなにやったことはないぞ?」
佑馬にとっては何気ない言葉だったが、その言葉を聞いたジブリールはプイッと背を向けてしまった。
「……もしかして、拗ねてる?」
「拗ねてません」
少し顔を覗いてみたが、若干頬が膨らんでいるようにも見える。
ジブリールもこんな表情が出来るようになったんだ……と感慨深い気持ちになった佑馬だが、とりあえずジブリールの機嫌を直すことにした。
「ははは、拗ねてるジブリールも可愛いな」
「……そんなこと言っても無駄でございますよ?」
とは言いつつも、少し顔を赤らめながら頬を膨らませる自分の恋人を見て、思わず顔が緩んでしまう。
「ほら、ほっぺた膨らませてないで、顔をこちらに埋めてきてもいいんだよ?」
「……からかっているのでございますか?」
佑馬の言葉にさらに頬を膨らませたが、ゆっくりとこちらに顔を向けて、佑馬の胸に顔を赤くしながら沈めるジブリール。
それに合わせるように、佑馬はジブリールを抱き寄せた。
「なんだかんだでジブリールって甘えん坊だよね」
「……そんなことはないのでございます」
「でも、そこも含めて好きだよ」
ジブリールの髪をすきながら、久し振りのゆっくりとした時間をジブリールと過ごす佑馬。
「……そんなこと言ったって許しませんよ?」
「なら、これならどう?」
ジブリールの頬はただ赤いだけでもう既に拗ねてる様子はないのだが、それでも拗ねてますアピールをするジブリール。
佑馬はそのままジブリールに覆い被さり、抱き締めてからその勢いでジブリールの唇を、奪った。
「ん!?……んっ……む……」
「む……んん……んはぁ……これでもダメか?」
「……一つ、お願いしてもいいですか?」
「どうした?」
覆い被さって抱き締めたまま、顔だけあげてジブリールを見る佑馬。
顔と顔の距離はとてつもなく近く、吐息が当たるほどだ。
「私たちは付き合い始めてからもう百年が経とうとしています……そろそろ、進展があっても宜しいのではないのでしょうか……」
「……!」
「……私はその……いつでも準備は出来てございますよ?」
抱き締めていた佑馬の手を掴み、自分の大きな双丘の一つへと持っていき、もう一つの手を自分の下腹部へと持っていくジブリール。
「……そこまで言うなら俺も覚悟を決めないとな……」
そして、二人は濃厚なキスと共に身体を重ねた。
◆◆◆
「……とうとうやってしまったな……」
朝起きた佑馬は、隣で珍しく寝ているジブリールを見ながら呟いた。
ただ、後悔はしていない。
時間には朝日が昇る前で余裕があるため、そのままジブリールの寝顔を見て時間を過ごす。
「……だいぶ待たせてしまって悪かったよ……俺、ホントそこらへんはヘタレだからさ……」
何処の世界に百年も彼女を、というか、ほぼ妻なのだが、待たせる人がいるのだろうか。
恐らく、ここにいる一人だけだろう。
「こんな俺だけど、これからもよろしくな、ジブリール」
佑馬はジブリールの髪をすきながら、優しい笑顔でそう呟いた。
目が笑ってない笑顔にドス黒いオーラがついたジブリールってなんか簡単に想像がつく。
後、頬を膨らませて顔を少し赤くしながら拗ねるジブリール……いいですね。
というか、本来はアイス・ピラーズ・ブレイクを書く予定でした。
これが自分の限界です。
これ以上は無理です。
恐らく、かなりギリギリのところをつきました。