[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです 作:型破 優位
今年も宜しくお願い申し上げます。
昨年始まったこの小説も、とうとう新年を迎えることが出来ました。
ここまでモチベーションを維持できたのは、皆様のおかげです。
これからも、末永くよろしくお願いします。
ちなみに、栞との試合はさらっといきます。
九校戦六日目、新人戦三日目。
今日はバトルボード、アイス・ピラーズ・ブレイク共に決勝が行われる日だ。
ジブリールと佑馬は控え室で既に待機している。
朝起きてからジブリールがずっと上機嫌で、今現在も鼻唄を歌うかのように楽しそうにしながら着替えをしている。
そこに、真由美と摩利がやってきた。
「おやおや、これはお邪魔だったかな?」
「そうみたいねぇ~。お邪魔な私たちは帰りましょうか~」
そして、入って早々、一言がこれだった。
「何処をどうみたらそうやって見えるんでしょうかねぇ?」
「いやー、だって……ねぇ?女の子が着替えているのにその場にいるだなんて、それはもう……」
「あんなことやこんなことしちゃってもおかしくないわよね。普通なら……でも佑馬君だからなぁ」
そして、見事に昨夜の事を思い出させるような言葉を聞き、ジブリールは更に笑顔になりながら真由美と摩利の方へ、佑馬は珍しく顔を赤くしながら俯いた。
「そうなんですよ!とうとう佑馬が一歩踏み出してきてくれたのでございます!こんな嬉しいことがあるでございましょうか!いいえ、ないのでございます!」
普段の静かなジブリールとは正反対の、反語まで使って嬉しさを強調するジブリールに真由美と摩利は戸惑うしかない。
「え、えーと、ジブリールさん……?」
「……佑馬君、一体何したんだ?」
そのジブリールの雰囲気から察して、かなり嬉しいことをされたのは容易に想像出来るが、ここまで上機嫌にさせられるようなことがなんなのかに興味が言った二人は佑馬からの答えを待つ。
「……別段変わったことはしていません。普通に恋人同士でやるようなことをやったまでです」
だが、佑馬から返ってきた答えは曖昧なものだった。
「まぁ、これなら競技は問題なさそうだな」
「ええ、そうね。最強のエンジニアに最強のテンションアッパーがいるものね」
二人して笑いながら部屋を出ていく様子に、佑馬は何とか誤魔化せたと一息つき、ジブリールの方に向く。
「……それじゃあ、今からの試合相手の作戦を考えるぞ」
「はい♪」
なんとか昨夜のことを頭から離して、今からの試合に視点を当てる。
「まず、次の相手の十七夜だけど、たぶん今までの天撃を九つに分けて打つ戦法じゃ無理。CADの性能に合わせた天撃をさらに九つに分けてるんだから、一発の威力が弱すぎる」
「ええ、承知の上でございます。あれは普通の天撃のゼロコンマ一%未満ほどの力しかございませんからね」
「ああ。だから、魔法の制御力とサイオン保持量がある程度あれば止められてしまう。というわけで、丁度いい相手だ。だから、最初は遊んでもいいが、決めるときは『あれ』を使って決める」
「……なるほど。了解でございます」
「よし、それじゃあ楽しんでこい」
「ええ、勿論楽しんできますが、さらに楽しむのは夜からでござい」
「だあああ!早く行け!」
普通に見送ったはずなのに、何故か夜を楽しみにすると言われ、しかも夜のお誘いまでされた佑馬は続きを言わせないように声を張り上げて行くように促した。
「ふふ……このネタもうしばらくは使えそうでございますね?」
「くそぉ……なんでヤっちまったんだ俺」
そして、その一言に反応したのは、ジブリール。
顔を俯かせて、少し声を小さく、悲しそうに、泣きそうな声で佑馬に言った。
「……佑馬は私とヤったことを後悔しているのでございますか……?」
「――っ!いや!そんなことは!」
そして、再びやってしまった佑馬。
「なら、夜楽しみにしていますね♪」
そのまま答えを聞かずに会場に向かったジブリール。
ついに頭を抱えてしまう佑馬だが、なんだかんだで『昨夜はお楽しみでしたね』の言葉が正に似合う様子だったため、完全に拒否することも出来なかった。
そのことについて思考の大半が埋まるが、片隅では別のことを考えていた。
(初めて会った時は主従愛と好奇心しかなかったジブリールが、とうとうあそこまで完全に感情をコントロール出来るようになったんだな……)
ジブリールに人間らしい、いや、完全に人間の感情が生まれたということは、佑馬としても嬉しいことだ。
そのとき、告白した時の情景が頭に過る。
『俺は、初めて会ったときから、一目惚れしてしまったんだ。天翼種に主従愛はあれど、普通に愛するという感情はないことを知っている。でも、だからと言って諦められない!なら、その感情をしっかりと理解させるだけだ!呼び捨てを頼んだり、対等な立場を要求したのも、俺の過去を話したのも、全部そのためだ。だから……だから、ジブリール。俺と付き合ってくれないか?』
佑馬はエルキア城の風呂場で、そう告白した。
『私でよければ、喜んで……確かに私達天翼種には、恋愛感情はありません。でも、今ここで大切にされている、そして、愛されているという感情はしっかりと読み取れました。佑馬は既知をも覆す人。そんな人と対等に一緒にいられる。これほど嬉しいことはございません!』
その時ジブリールが涙を流しながらそう答えたことも、数十年前経った今でも鮮明に覚えている。
「全く……今の俺ですら勿体ないくらい嬉しいことをあの時の俺に言ってくれたんだよな……ジブリールが居たことで、俺がどれだけ救われたか」
そこで、モニターに映るジブリールを見る。
「……今、この世界には俺たちの戸籍が存在している……年齢が十六歳ってことになっているけど、実年齢的には余裕でセーフだし、ジブリールがしたいのなら式を高校出てからでも……いや、退学すればいいのか?いやでも、それだとつまらないし……」
ジブリールとの将来をあれこれ考えているうちに、一つの結論が出た。
「そうだ、モノリス優勝したらプロポーズしよう」
そこで、ジブリールのこの試合が終わったら指輪を買ってくると決めた佑馬は、やっと試合の観戦を始めたのだった。
◆◆◆
アイス・ピラーズ・ブレイクの予選三回戦目、ジブリールと栞が対決する会場の観客席は、人で全て埋まっていた。
「いよいよジブリールさんの出番ですね」
「今度もまたあのレーザーみたいなやつでサッと終わらせちゃうのかな?」
「いや、それは無理だと思うよエリカ。僕が見た限り、それなりの実力があればあれは簡単に防げてしまう。それをあの二人が理解していないわけがない」
「それじゃあミキは他に何か作戦があると考えているのね?」
そして、一高の応援席には、いつもの面子が揃って座っていた。
「ミキじゃない!僕は幹比古だ!……どんな作戦かはわからないけど、何か仕掛けるのは間違いないと思うよ」
そして、全員が入場ゲートから入ってきた両者を称える声で試合の方に意識を向ける……が、そこでジブリールから一つの違和感を感じる。
それに気がついた観客は、みるみるうちにざわついていく。
「……CADをつけてない……?」
「おいおい、これも作戦っていうんじゃないだろうな」
「さすがにこれは僕も予想出来なかったよ……それだと、いくら中田さんとはいえ魔法のスピードが追い付かないと思うんだけど、何か作戦でもあるのかな」
幹比古の言葉を最後に、全員が試合の観戦を始める。
もうすぐ、スタートだ。
◆◆◆
辺りが静寂に包まれた。
試合開始のランプが一つずつ、点っていく。
そして、全て点った瞬間、フィールドの氷柱が一つ崩れ落ちた。
――ジブリールのだ。
ジブリールはフィールドに手を向けたまま、ずっと目を閉じており、栞は牽制のつもりで打った攻撃がすんなり通ったのを見て、すかさず追撃に入った。
振動の波の合成によって破壊されていく氷柱。
四本、五本と壊れていく氷柱を、栞は訝しげに見ながらも攻撃を続ける。
(どういうことかしら。まさか諦めたわけじゃないわよね)
観客がざわざわと騒がしくなるが、それを気にせず追撃を続ける。
そして八本目を崩そうとしたとき、それは起こった。
「――え?魔法が……発動しない?」
何度CADを動かしても、魔法が発動する気配がない。
ふと、ジブリールの表情を見た栞。
――そして、悪寒が走る。
ジブリールのニヤッとした笑顔を見た瞬間、何とも言えない寒気が栞を襲ったのだ。
会場では、何が起きているのか分からないため議論が行われているのか、さらにざわめきが大きくなっていく。
「今やったのは自陣の氷柱の周囲一メートルに結界を張り、中を真空状態にし、氷柱に情報強化をかけて氷を壊さないよう囲ったというわけでございます。それ故、貴女様の振動波の合成は出来ませんよ?」
ジブリールから声が聞こえてきた。
信じがたい事実と共に。
(真空状態を作った?CADもなしに、あんな短時間で?)
実際に振動波が出来ないということは、氷柱の周囲一メートルに確かに真空状態が出来ているということ。
そして、氷に真空状態の膨張にすら耐える情報強化が張ってあるため、普通の魔法も通らない。
まさに、難攻不落の陣。
「それでは、私の攻撃に耐えて見せてくださいませ?」
そこからは攻守が逆転。
ジブリールから放たれる簡単な魔法式で作られた威力抜群の魔法に、何とか情報強化で耐えながら反撃を試みるものの、自分の攻撃は全く通らず、このままではジリ貧となるのは確実だった。
(攻撃は捨てないとダメね。何も全て壊さなくても相手より多く氷柱を残せば勝ち!)
そこからの栞は早かった。
すぐに防衛に周り、ジブリールの攻撃を完全に抑える。
そこで、またジブリールから声がかけられた。
「なるほど。攻撃を捨てましたか。ならもうこれ以上私も時間をかける必要がありませんね」
その言葉に疑念が生まれて顔をジブリールに向ける栞。
その瞬間、ジブリールから後光が挿した。
フィールド全体を覆う、強い光。
それはまるで、ジブリールの後ろに太陽があるかのようだった。
そして、ジブリールがこちらに向かって喋った瞬間。
――光が栞の氷柱全てを撃ち抜いて壊した。
「『
これで完全なR15はしばらく出ないと思います。
佑馬君、結婚宣言。
……R18 とか書ける気がしないというのが本音です...