[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです   作:型破 優位

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 本日、28日土曜日の22時からキャスを行います。
雑談なんでも凸待ちで、普通にキャスもしますし、小説の方の質問、要望も受け付けていますので、是非どうぞ。

というか、来て下さい(´・ω・`)

この告知のためにこんな早くに出しましたから……ハイ


ジブリールvs深雪

 大会委員がフィールドを直そうと奮闘しているも、そんな短時間で直るはずもなく、競技場を変えて決勝戦が行われることになった。

 

 当然観客からの不満は出てくるが、それでも皆決勝戦が見たいのか、全員が競技場を移動した。

 

 数十分ほどの遅れが生じているが、本日最後の競技場にして、最大のメーンイベントということもあり、競技場の外にまで人が溢れかえっていた。

 

 その中には当然のことながら、研究員らしき黒いスーツを着ている人もいるのだが、観客席の一部が真っ黒に染まるほどまで集まっている、と言えば、この試合の注目度が分かるだろう。

 

 雫とジブリールの試合が終わってから約二時間後。

 アイス・ピラーズ・ブレイクの決勝戦の準備が整ったことがアナウンスにより知らされて、そこから再びルールの説明が入った。

 

 それも終わり、いよいよ選手入場の時間となった。

 ジブリールと深雪の登場に沸く観客。

 罵声や怒号も飛び交うなか、フィールド上の二人は静かに闘志を燃やしながら、お互いを見詰めあっている。

 

 そこから発せられる二人の気迫に、観客も次第に静かになっていた。

 

 大会委員も試合が始められる状況になったのを確認し、スタートのランプを点し始めた。

 

 一つ、二つと点いていくランプとともに、緊張感が高まっていく。

 三つ目が点いたとき、ジブリールは手をフィールドへと翳して、深雪はCADを持ってる手を前に出し、もう片方の手を添えた。

 

 開始のブザーが鳴った瞬間、二つの魔法が同時に展開された。

 

「「おお!!」」

 

 観客からは驚きの声が上がる。

 

 二人ともが『氷炎地獄』を展開し、それぞれに発生した熱気と冷気が相殺しあって、水蒸気が競技場を覆った。

 

 それにより両者とも魔法をキャンセル、すぐさま深雪はCADの長所でもある魔法式の切り替えの早さを利用し、別の魔法を展開した。

 

 深雪の陣地から、液体窒素が流れ込んでくる。

 

 『ニブルヘイム』だ。

 

 その冷気は深雪の陣地を覆って強固なシールドを張り、大気中にあった水蒸気を再び凝固点まで下げてそれらが(あられ)となって競技場に降り注ぐ。

 

 その冷気がジブリールの陣地へと差し掛かったとき。

 

 突如、そこの空間に上下の穴があいた。

 

 そして、『ニブルヘイム』は下の穴へと吸い込まれるように入っていき、上の穴から深雪の陣地へと流れ込んだ(・・・・・・・・・・・・)

 

 空間と空間に穴を開けてその部分を繋げ、魔法を跳ね返したのだ。

 

 それを深雪は冷静に対処、魔法の発動をキャンセルして次の魔法を発動……しようとしたところで、即座に『情報強化』の魔法を展開するも、縦一列の氷柱がレーザーによって撃ち抜かれた。

 

 そして、そのレーザーは深雪から見て手前の氷柱の前に出来た空間に吸い込まれ、空へと消え去っていった。

 

 魔法のキャンセルを行った一瞬の隙を狙った、不可避の一撃。

 CADが有った状態なら確実に九本持っていかれていただろうと理解した深雪は、一筋の汗を流した。

 

 CAD無しで『氷炎地獄』を展開し、さらに『ニブルヘイム』を空間に穴を二つ開けて、空間どうしを繋げることで魔法を跳ね返し、そこで生じるであろう一瞬の隙を狙ったジブリールの技量は、自分との圧倒的な差を表していた。

 

 深雪は自惚れでも過大評価でもなく、同世代で兄以外の人から遅れを取っているとは思ってなかった。

 

 事実、そうだ。

 

 あの二人に会うまでは。

 

 その二人はふと現れて、自分達を引っ掻き回した挙げ句、命を助けられた。

 その二人は兄の本質を見抜いており、その片割れの彼女をいつの間にか目標にしている自分がいた。

 

 しかし、その後ろ姿は一向に見える気がしないのだ。

 

 (もや)がかかっているかと思えば、すぐに霧散してしまう。

 少し迷ったとき、気がついたら後ろから支えている。

 

 やり方は雑だったり、嫌気が差すような言い方をするけど、それでも正しい方向へと持っていった。

 

 深雪にとって、その二人は、ジブリールはそんな存在だった。

 

(だからこそジブリール。私と貴女との差が今どのくらいまで空いているのか、見させて貰うわ。そのためにまずは貴女に勝って見せましょう。お兄様と一緒にね?(・・・・・・・・・))

 

 その瞬間、深雪の雰囲気が変わった。

 その様子にジブリールも気がつき、臨戦態勢に入る。

 

 深雪はCADを持ってない手で裾に手を入れて、もう一つのCADを取り出した。

 

「……おや?深雪は確か二機同時に扱えなかった気がしますが……何をするのか楽しみでございます」

 

 尚も臨戦態勢のまま、深雪の行動に最大限の警戒をして観察するジブリール。

 

 取り出したのは拳銃スタイルの特化型。

 

 それをこちらの氷柱へと向け、魔法陣を展開する。

 

「――ッ!?まさか!!」

 

 その瞬間、ジブリールは即座に『情報強化』の魔法を展開した。

 

 発動と同時に放たれたのは、『天撃』

 

 それも範囲は最小限に、威力は『トーラス・シルバー』が可能な限り強くしたものなのだろう。

 

 普通の天翼種並みの『天撃』が繰り出された。

 

 全てを破壊する一撃が氷柱に飛来し、衝突する……も、全ての氷柱は無傷で残った。

 

 驚かされはしたが、なんとか防いで内心ホッとしたジブリール。

 それがジブリールの『隙』だった。

 

 ジブリールが深雪を見た瞬間、深雪から後光が挿した。

 

 フィールド全体を覆う、強い光。

 

 これもまた、ジブリールが知ってるものだった。

 

 無数の光の筋が、ジブリールの氷柱に飛来する。

 

(まさか、『光の弾丸』まで使ってくるとは……達也も末恐ろしい方でございます)

 

 この光の筋は『情報強化』で防ぐことは出来ない。

 光の早さで飛来するこの魔法に、この距離で二つの空間に穴を開くことは出来ない。

 

 ジブリールはその時、練習中に佑馬に言われたことを思い出す。

 

『ジブリールは相手の力量を見るために必要以上に待ってしまうことがある。そこで初見殺しが来たら恥もいいところだぞ』

 

(それが正にこの状況でございますか)

 

 ここで負けては、佑馬の面目が潰れてしまうかもしれない。

 可能性が低いからといって、ジブリールにはそれだけは絶対に避けなくてはいけない事だ。

 

(佑馬……また迷惑をかけてしまいますね)

 

 しかし、その刹那の時間でジブリールは考えるより前に動いていた。

 いや、主にジブリールの背中の部分がだ。

 

 『手』が権限し、掌をフィールドへと向けた。

 

 それと同時に、『光の弾丸』がジブリールの陣地を襲った。

 

◆◆◆

 

 競技場は砂ぼこりに覆われ、何も見えない状態となっていた。

 

「結果は……結果はどうなったの?」

 

「分からんな……ただ、何が起きていても不思議ではない」

 

 観客席から見ていた真由美と摩利は上がっている砂ぼこりをうっとおしそうに払い除けようと手を払っており、達也はジッとフィールドを見詰めている。

 

「仕方がないわ…………えっ?」

 

「どうした?真由美」

 

 マルチスコープを使った真由美は、フィールドを見て唖然とした。

 

「……氷柱が一本だけ残ってるわ……後、すごい光ってる」

 

 いろいろと聞きたいことがある摩利だが、フィールドが次第に晴れてきたため自分の眼で確認することにした。

 

 ある程度晴れてきて見えたのは、ジブリール側が光っていること。

 

 そして、氷柱は……ジブリールの方に一本立っていた。

 

「本当に何が起こったんだ?あの状況から逆転できるようには思えなかったのだが」

 

「……深雪の攻撃は確かにジブリールの氷柱を襲いましたが、一つだけ誤算があったようですね。ただ、さすがにこれは規格外すぎて自分では説明が出来ません」

 

「また達也君でも説明出来ないことか……今年の九校戦は本当に人間がやってるのか?」

 

 ジブリールの勝利宣告がされて観客は沸き、両者一礼してその場を離れていくのを見ながら真由美は困ったように呟いた。

 

「……あの二人はねぇ……」

 

◆◆◆

 

「大丈夫か?ジブリール」

 

「なんと、か……」

 

 光を纏いながら控え室に戻ったジブリールは、佑馬の指示によってソファーで安静している。

 

 そして、ジブリールは幼女化した。

 光っていたのは、佑馬が精霊を送ってなんとか姿を維持していたからだ。

 

「全く……前にも言ったのにどうしようもないな……まぁ、でもあの状況からよく勝ったな。あれは意識してやったのか?」

 

「…………」

 

「……寝ちゃったかな?」

 

 そして、そのままソファーで寝始めたジブリールの頭にヘアバンド型のCADをつけて、さっきの試合を思い返す。

 

 間違いなく、深雪の『光の弾丸』はジブリールの陣地を襲った。

 ただ、それをジブリールは一番近い柱のみに絞って、それに降り注ぐ光を『手』で時空間をねじ曲げ、その現象ごと受け止めた。

 

 そこから『光の弾丸』を六発、深雪の陣地へ。

 

 『手』を高速で発動し、光の弾丸まで発動したのだ。

 

 いくら精霊の保有量が常人の数百倍、数千倍あるとはいえ無理があったのだ。

 

「しかし……よくあの攻撃を耐えたな……俺じゃ無理だったぞ。お前はやっぱり、すごい奴だ」

 

 確かに自分の欠点を晒してはいたが、それを乗り越えて勝利したのだ。

 それ以上攻めることではないし、今は休ませるべきなのだろう。

 

 佑馬はジブリールが寝ているソファーの横に座り、ジブリールの頭を撫で続けた。




空間と空間の部分はどこでもドアを思い浮かべて頂ければ。

そこぉ!『光の弾丸』のときの回想の時既に氷柱に届いているだろとか言わない!
ご都合主義なんだから!←

キャスで会いましょう!

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