[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです   作:型破 優位

37 / 43
遅れて申し訳ないです。

ツイキャスやりすぎました。

また普通に更新しますね。


開幕、モノリス・コード

 大会七日目、新人戦四日目。

 今日は九校戦のメイン競技とも呼べるモノリス・コードの新人戦予選リーグが行われる日だ。

 

 同じく、ミラージ・バットの競技もあり、男子生徒は本能的にそちらへ向かうらしいのだが、今回はモノリス・コードの会場にも男子生徒の姿が観客席のあちこちで見える。

 

 同学年、同性のトップクラスの実力者、佑馬と将輝の試合を観るためだ。

 

 一高の初戦は七高で、三高は九高だ。

 

 試合時間も別れており、一高対七高が先に行われる。

 

 ステージは『岩場』で、あちこちに隆起した岩が障害物となっているステージだ。

 

 一高はオフェンスが森崎、ディフェンスが十三束、遊撃手が佑馬だ。

 

「森崎と十三束は二人で攻め方とか決めていたんだよな?」

 

「うん、そうだよ」

 

「了解。なら俺は邪魔しないように、遊撃手やっておくわ」

 

「僕の邪魔だけはするなよ。中田」

 

 開始直前のモノリス付近での最後の作戦会議で、ある程度の確認をした三人は、それぞれ位置につく。

 

 遠目で見た限り、七高はディフェンス一人のオフェンス二人の攻めよりの陣形なため、遊撃手の佑馬の動きが大事になっていく場面でもある。

 

 そして、開始のブザーがフィールド全体に鳴り響いた。

 

 七高のオフェンス二人と森崎は自己加速術式で岩場に隠れながら高速で接近、あっという間に三人の距離はなくなった。

 

 森崎の家はボディーガードをしているということもあり、戦闘慣れした動きを見せているが、七高の選手の動きには無駄が多く、経験が無いことがハッキリとわかる。

 

 遊撃手はオフェンスとディフェンスをバランスよくこなす必要があるため、正直いらないとは思うが、相手の隠れている岩を魔法で消し飛ばして森崎の魔法が当たるようにアシストする。

 

 その結果、森崎の魔法によってオフェンスはダウン、ディフェンスも森崎家のクイックドロウに成す術無くやられ、一高の勝利が決定した。

 

◆◆◆

 

 第二試合は『市街地』のフィールド。

 原作であの事件が起こることを佑馬は知っているため、策というか、そのための準備はある。

 

 相手は現在九校戦最下位の四高。

 室内にあるモノリスで再び作戦会議を開く三人。

 

「前の試合と同じで、十三束はディフェンスを頼むぞ」

 

「了解」

 

「はぁ……俺は適当に遊んでろってことね。了解」

 

 未だに佑馬に対して冷たい態度を取る森崎に、苦笑する十三束という日常になってきた光景を再び広げる三人。

 もうすぐブザーも鳴るころのため、準備に入ろうとしたその時。

 

 佑馬達のモノリスの天井に魔法陣が出現した。

 

 室内で人がいる場合に使った場合、殺傷性ランクAとなる『破城槌(はじょうつい)』だ。

 

「「なっ……!?」」

 

 森崎と十三束はいきなりのことに驚きの表情で上を見上げるだけだった。

 スクリーンや観客側から見れば、絶体絶命の状況なのは間違いない。

 

 一応大会スタッフが軽重の魔法をかけてはいるようだが、このプロテクターと合わせても常人にとっては気休め程度の効果しかない。

 

 だが、このことを知っている佑馬にとって、対処することは苦ではなかった。

 いや、例え知らなかったとしても問題はなかったのだが。

 

 そして、瓦礫は容赦なく三人を襲った。

 

◆◆◆

 

 観客からはあちこちから悲鳴が上がり、競技は一時中断となった。

 

「佑馬君!」

 

 一高テントで見ていた真由美は、思わず声を上げてしまった。

 あの佑馬といえど、不意打ちでの『破城槌』の対処は難しいし、佑馬だけならともかく、他に二人もいるために、あの短時間で反射の膜を使うことも出来ない。

 

 事実、瓦礫は反射されることなく佑馬たちの上へと落ち、建物は崩れて瓦礫の山となっているのだ。

 

 大会のスタッフが加速魔法で次々と瓦礫の山へと近づき、救出作業をしていると、ふと瓦礫の山全体が揺れた。

 

 その揺れはだんだんと激しくなり、大会スタッフは一時その場を離れた。

 すると、瓦礫の山の真ん中から巨大で真っ赤な右手が一つ出てきた。

 

 まるで骸骨のようなその手が出てきた場所から、左手、頭と次第に人型の何かが出てきた。

 

 さらに、瓦礫の山が再び揺れはじめ、空中に一つ、二つと浮遊しだした。

 瓦礫の山が少しずつ崩れていくにつれて見えるの中の色は、真っ赤。

 

 大会スタッフも唖然とするなか、その真っ赤な人型のナニかはゆっくりと動き始め、首、肩と姿を表していく。

 

 そして胸までいったとき、マルチスコープを使っていた真由美は、そこに誰かがいることを確認した。

 

「……佑馬君……?」

 

 胸にいたのは、佑馬だった。

 さらに体を瓦礫の中から出していく赤い人型のナニか。

 その中にいる佑馬の足元を見ると、無傷の森崎と十三束の姿も確認できた。

 

 つまり、全員無事なのだ。

 

 そのことに内心ホッとした真由美だが、ここで新たな疑問が浮上した。

 

(……あの赤い人型のナニかは魔法なのかしら……)

 

 佑馬の化身のようにして現れたそれは、今までに見たことがないものだった。

 大きさは五階建てのマンションほどだろうか。

 真っ赤で骸骨みたいな格好をしている。

 

 そして何より、そこから漂ってくる雰囲気には自分との力の差をハッキリと意識させるほどの存在感があった。

 

 とりあえず、今は一高テント内の動揺を抑えなければいけないため、会長としての責務を果たさなければいけなかった。

 

「皆落ち着いて!落ち着かなければ出来ることも出来ないわ!……まず、選手は佑馬君の魔法によって全員無事です。これから私は大会本部へと向かいますので「いや、俺が行こう」……十文字君?」

 

 真由美の言葉に口を挟んだのは、十文字克人だった。

 

「七草はここで指揮をとってくれ。俺が行った方が何かと都合がいい」

 

「でも……わかったわ。よろしくね、十文字君」

 

「ああ」

 

 どちらが大会本部へ行くのかが決まったとき、モニターから凄まじい音が鳴り響いた。

 

「今度はどうしたの!?」

 

「いえ、ただ佑馬が瓦礫を退かしただけです」

 

 砂煙が立つモニターを、ジブリールに言われて砂煙が収まるのを待ってからよく確認してみると、先程まであった瓦礫が全てなくなっているのがわかる。

 

「丁度良かったわ。ジブリールさん。あれが何かわかりますか?」

 

 今更ながらジブリールがいたことを思い出した真由美は、ジブリールはあの人型のナニかについて知っているのではないか、と考えたのだ。

 

「勿論でございます」

 

 答えも、是。

 

「あれは『須佐之乎』と言いまして、佑馬専用の魔法と言ってもいいものでございます。そうでございますね……単純に強さが十倍くらいになると考えればいいかと」

 

「……聞いていいのか分からないけど、それとジブリールさんの本気とはどちらが強いのかしら?」

 

「ベクトル操作の有無で変わりますが、有るとしたら、今の私ならなんとか勝てるくらいでしょうか……ただ、これに『黒い翼』が生えた状態になったら、勝つ望みは原子レベルの大きさでしょうか」

 

 それを聞いた真由美は、絶句する。

 自分が闘っても確実に勝てないジブリールが、勝つことはほぼ不可能と断言したのだ。

 それがどれほどの力か、少なくともこの世界を滅ぼすことぐらいは容易に可能だろう。

 

「さらに、佑馬曰く『白い翼』なるものが存在するらしいのですが、佑馬も出し方が分からないと言っております。ただ、『黒い翼』とは比べ物にならないほど強くなるとも言っておりました」

 

 そして、更に強くなる余地があるという。

 佑馬とジブリール、この二つの力を十師族が知ったらどうなるのだろうか、これも容易に想像出来る。

 

 全員が手中に収めようとする。

 それを断れば総力を持って消しにかかるだろう。

 

 しかも、これは日本だけの話ではない。

 

 近頃、USNAの『スターズ』が『神の使者』捜索を日本で秘密裏に行っていることも、九校戦の会場の近くに潜伏していることも父親からの情報で知っている。

 その過程でもし、この二人のことがばれたらそれこそ世界規模での戦争が起こりかねない。

 

 その時、真由美の頭に二つの仮説が出た。

 

 一つは、『神の使者』ではなく、既にこの二人か目的だとしたら。

 それなら九校戦の近くに潜伏していることも頷ける。

 

 そしてもう一つは、彼等自身が『神の使者』だということ。

 

◆◆◆

 

「この赤いのは一体……」

 

「おい中田……何をしたんだ?」

 

 『破城槌』で壊れた建物を下に見下ろしながら、森崎と十三束は驚きの表情でこちらを見つめている。

 

「君達を守った。それだけだよ」

 

 何をした、と聞かれても、この状況からはそう答えることしか出来ないだろう。

 

「質問を変える……これは何だ?」

 

「魔法だよ」

 

 何だ、と聞かれても、この世界ではそう答えるしか信じてもらえないだろう。

 

「十三束はともかく、なんで俺まで助けた……お前は俺を毛嫌いにしているんじゃなかったのか?」

 

「……あのなぁ。好き嫌い言って人を見殺しにするほど俺も腐ってないんだわ。過度なプライドを持つのはあまりいいことではないけど、プライドを持つことは重要なことだ。一科生は魔法の部分では二科生より優れていることにかわりはないことだし、その中でも上位の森崎がそこに拘るのもわかる。森崎、君は確かに優秀なのだから。それに、モノリスに対する気持ちややる気は十三束から聞いていたし、見ればわかる。それで、なんで助けたって質問だけどさ……」

 

 一気に森崎に言葉を投げたあと、少し間を空けて、佑馬は一言言った。

 

仲間全員で勝ちたい(・・・・・・・・・)と思うのは、誰だって同じだろ?」

 

「……そうだな」

 

 それを顔を下げながら肯定する森崎。

 隣の十三束も笑顔だ。

 

「まぁ、俺が勝ちたいと思ってる理由は別にあるんだけどね」

 

「おい、さっきまでお前に心を開きかけた俺を返せ」

 

 そこで、皆が吹き出した。

 森崎も十三束も佑馬も、みんなが笑顔になっている。

 

「中田、俺の足を引っ張るなよ?」

 

「それは俺のセリフだ。森崎」

 

 結局、試合は第四高の失格となり、佑馬達は二勝。

 その後の二高、八高にも圧倒的な力を見せて勝利し、四勝。

 同率一位で予選を通過した。




ハーメルン書く前は、事故をスルーしてオリ主と達也で無双しようと考えていたけど、書き始めたら気持ちが変わりました。

森崎君はなんだかんだで努力家の良い子です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告