[2]魔法科高校の世界にチート転生者がきたようです   作:型破 優位

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明日は二話出したい。


夏休みのとある過ごし方1

「佑馬、海へ行かないか?」

 

「…………」

 

 ピンポーンとチャイムが鳴って出た瞬間にかけられた言葉に、佑馬は無言でドアを閉めた。

 

 再びピンポーンと鳴る。

 

「どうしたんだ?達也」

 

「佑馬、海へ行かないか?」

 

 再びドアを閉めようとした佑馬だが、今度は達也の足がドアの間に挟まって閉まらなかった。

 

「おい、どういうつもりだ?」

 

「それはこちらのセリフだ。雫から海へ行かないかと誘われたんだ。佑馬とジブリールも誘ってほしいって」

 

「ああ……なんか変な意味かと思ったよ」

 

「いや、わかってただろ」

 

「勿論」

 

 素直に達也を家の中へと上げた。

 

「この家に上がるのは二回目だけど、相変わらず無駄に広いな。二人だと広くないか?」

 

「かなり広いよ」

 

 達也をリビングにあげて、お茶を注いで達也に差し出す。

 

「ジブリールは?」

 

「ああ、いつもの部屋で遊んでるよ」

 

「ああ、なるほど……美味しいなこれ。何処のやつだ?」

 

「あ、それね。この前深雪に教えて貰った店長と仲良くなったら、特製茶葉をくれたんだよ」

 

「本当か?」

 

「ちょっとした技術を提供させて貰ったお礼だね」

 

 それからデバイスや魔法について話し合ったあと、部屋のドアが開いてジブリールが入ってきた。

 

「あら、珍しいですね」

 

「お疲れジブリール。ジブリールも来たし、話を戻そうか」

 

「なんのことでございましょうか?」

 

「まぁ、座りな」

 

 なんのことかわからないジブリールは、とりあえず佑馬に促された通りに横に座り、達也の話を待つ。

 

「話を戻すが、雫が来週の金曜日から日曜日にかけて別荘のある海に行かないかって誘いがきているんだが、来るか?」

 

「ということだ。どうする?」

 

「海ですか……また髪にいろいろ絡まりそうでございますね……」

 

 何度か海へは行っているのだが、やはり潮風が嫌らしい。

 だが、それを佑馬が無視しておくはずもなく。

 

「俺がケアするよ」

 

 しっかりと対策を考えていた。

 

「それならば是非行かさせて貰います。」

 

 結果、手のひら返しで了承したジブリール。

 

「それはよかった。佑馬とジブリールの予定が一番わからなかったから少し心配だったんだ」

 

 それの答えに何処かホッとした様子で言う達也。

 あの達也からここまで表情が読み取れるとなると、深雪がなにかを言ったのだろう。

 

「それじゃあ、来週な」

 

「ああ」

 

 達也が立ち上がり帰ろうとしたため、茶葉を少し別けてから店長に言えば貰えるということを言って、見送った。

 

◆◆◆

 

 旅行当日、雫の家のクルーザーで別荘のある小笠原に向かった。

 

「ねぇー!私も乗せてよーー!」

 

「だそうだジブリール」

 

「仕方がないですね……」

 

 しかし、佑馬とジブリールは空を飛んでいる。

 佑馬のケアによってジブリールの髪は精霊によって保護されており、それが余程嬉しかったのか飛んでいくといい始め、今に至る。

 

 エリカは前からどうしても空を飛んで見たかったらしく、いつもより目を輝かせながら頼み込んできたのだ。

 

「それでは、私の右手を掴んでくだ「こうすればいいの?」……それではいきます」

 

  ジブリールの差し出した右手にすぐ様反応した飛び付いたエリカ。

 その様子にクルーザーに乗っている達也達は苦笑している。

 同じくジブリールも苦笑しながら、エリカの旅へと誘った。

 

「わあぁ!!気持ちいいーーー!」

 

「それでは、こんなのはどうでしょうか?」

 

 初めての空を飛ぶという行為をしたエリカは、子供のようにはしゃいで、それを見たジブリールはニヤッとしながらエリカの手を離した

 

「え!?……って、あれ?」

 

「なっ!?……え?」

 

 いきなりのことで誰もが固まるなか、エリカは落ちることもなくそのまま空を飛んでいた。

 

「後四分ほどなら私の魔法でこうやって飛ばすことも可能でございます。手を握っていて貰ったのは私の『想子』を渡すためだけですので」

 

「わぁー!すごい!」

 

「……四分?あのジブリールが?」

 

 そのことに対してエリカを含むほぼ全員が感嘆の声を漏らし、エリカを羨望の眼差しで見ているなか、達也だけは違和感を感じ取った。

 

「よく気がついたね。そうだよ。俺みたいにハッキリと『想子』の種類が見えないジブリールは、感覚だけであそこまで人の『想子』を再現することが出来るようになったんだ。でも、それも限界があって、絶対に安全な飛行を提供できる時間が四分だけってこと」

 

「なるほど、だから手を繋いだときの『想子』がエリカのに似ていたのか。ちなみに、佑馬だとどれくらい行けるんだ?」

 

 その達也の声にさすがは達也といった表情で原理を説明する佑馬。

 この説明で納得してしまうあたり、達也もかなり毒されていることがわかる。

 

「俺か?んー、一時間くらい?」

 

「聞かなかったことにしておくよ」

 

 結局皆を飛ばす羽目になったのは言うまでもない。

 

◆◆◆

 

「遊びすぎだ。いくら俺らの『想子』があるからって、その『想子』はお前たちの『想子』を誘導しているに過ぎない。使っている『想子』自体はお前らのものだぞ。ほら、大丈夫か」

 

「……面目ないぜ」

 

「……あまりにも楽しすぎてつい」

 

「……だから後悔はしてない」

 

 結局、達也と深雪以外の全員が空中散歩を体験し、『想子』を使い果たして別荘のある小笠原群島の媒島(なこうどじま)へと着いた瞬間にグッタリとしていた。

 

 その様子に佑馬は呆れながら声をかけるも、返ってきた言葉は仕組んでいたかのように揃ったものだった。

 

「仕方ない。ジブリール、アレを持ってこよう」

 

「わかりました」

 

 アレと言われて達也と深雪以外の全員が首を傾げるなか、アレと言われたものを取りに転移したジブリールはすぐに戻ってきた。

 

「皆様、お一人ずつこちらを頭に被ってください」

 

 ジブリールが持ってきたのはヘアバンド型CADだ。

 

「お、なんだこれは?」

 

「まぁ、着けてみろよレオ」

 

「お、おう……!これは……すげぇなこれ!」

 

 頭を傾げながら着けてみたレオは、着けた瞬間に『想子』の回復を感じて驚愕する。

 

「え、僕も着けていいかな?」

 

「ああ、勿論。『想子』使い果たしたやつ全員これ着けとけよ」

 

 佑馬に言われて、男子は佑馬のを、女子はジブリールのを着け、それぞれが同じように驚愕する。

 達也はそのCADを前見せたときと同じように興味深そうな目で、深雪はそんな達也を見てニコニコとしていた。

 

◆◆◆

 

「いい景色だな、達也」

 

「俺もそう思うよ」

 

 『想子』を回復した一同は、到着も早々にビーチへと来ていた。

 全員が海へと行くなか、達也と佑馬はパラソルの下でその光景を見ているのだ。

 

「達也くーん、佑馬くーん、泳がないのー?」

 

「お兄様に佑馬さん、冷たくて気持ちいいですよー」

 

「佑馬、久し振りの海なのですから、たまにははしゃぐのもいいかと思いますよ」

 

 エリカと深雪が波打ち際から呼び掛けてきて、ジブリールは上半身だけ転移させて佑馬の横で言った。

 

 そこに女性陣が集まってくる。

 

「うん、そろそろ俺も行くとするよ。達也は?」

 

「そうだな。泳ぐか」

 

 そう言って来ていたパーカーを脱ぎ捨てる二人。

 佑馬も達也も体は引き締まっており、腹筋も胸筋もその年代にしてはかなり鍛え上げられているものだ。

 

 だが、二人には一ヶ所だけ違いがある。

 

「達也くん、それって……」

 

 佑馬の身体には傷一つない綺麗な身体だが、達也が脱いだ瞬間に出来た緊張に、達也からはしまったという表情が読み取れた。

 エリカの言葉から読み取れる通り、達也の身体にはいくつもの傷跡が皮膚に印されていたのだ。

 

「すまない、見ていて気持ちの良いものじゃないよな……ん?」

 

 そう言って達也は脱ぎ捨てたパーカーを拾おうとするも、その場所にパーカーはなかった。

 チラッと佑馬を見ると、ニヤニヤしながらある一点を指指している。

 

 今度はその方向を見てみると、いつの間にか深雪がパーカーを持っていたのだ。

 その後、いつもの通り恋人紛いの行動をしたのは言うまでもないが、佑馬が意外だと思ったのはほのかの行動だった。

 

 あのほのかが積極的に達也にアタックしていたのだ。

 そこからは気を取り直して、全員が再びビーチへと駆り出した。




この話は、テニスの王子様以降の話です。
また、佑馬はここの部分はアニメでやっていないため
原作知識はありません。

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