女神官逆行   作:使途のモノ

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第三話

 

 

 ――彼女はゆっくりと目を覚ました。

 

 藁のベットから身を起こす。見慣れた、懐かしい天井。

 

 体を伸ばし、四肢の調子を見て、寝間着から着替える。

 

 飾り気のない、だが、清楚でかわいらしいワンピース。かすかな石鹸の香りが心地よい。

 

 鏡の前で身だしなみを整え、よし、と頷く。

 

 最近は、牧場近くで野営が出来ていない。

 

 使徒が彼の横にいるからいい、というのもあるのだが。体が休まるまで夜遊び禁止! と受付嬢から言い渡されたのである。

 

 夜遊び。

 

 まぁ、確かに、連日着替えに戻るだけで朝帰りの日々のようなものであった、そう思われていても仕方ない。

 

 どちらかというと真面目一徹な人生を送っていたので、女神官は素行不良で叱られることなど、初めてであった。

 

 ゴブリンスレイヤーや妖精弓手達からも絶対休養を申し付けられており、彼の退治や彼女たちの探索に付いていくこともできない。

 

 そういう訳で、降って湧いた休日の日々の過ごし方は牧場の様子は使徒任せにして、もっぱら使徒ごしに彼との生活を楽しむか、普通の女神官として教会に顔を出すかの概ね二択である。

 

 炊き出し、布教、懺悔室の聞き手、教導、それらの手が空いても経典の写本をしたりもする。

 

 また、教会を出ても女武道家や女魔術師、そして新米聖女と買い物に出かけたり、食事へとでかけたり。

 

 つまり、やるべきことは中々多くあるのだ。

 

「その、ちょっといいかしら」

 

 そう呼び止めてきたのは神官長である。

 

 ふわりとした長い黒髪とやや垂れ目ぎみの瞳、白い面に泣き黒子が艶めかしい。穏やかで包容力のある肉感的な妙齢の女性だ。

 

「はい、なんでしょうか、神官長様」

 

「……その、勤勉であることは、確かに美徳です、ですが……その、少しは、休みなさい」

 

 彼女は、自分にとって師で、孤児院の頃から目をかけてくれた、母親のような存在でもある。

 

 そんな彼女が、掛ける言葉に困っている、困らせてしまった。そのことに、罪悪感でちくりと胸が痛む。

 

「……はい」

 

「ええとですね、とはいえ、ほら、誰かのためになっていることは確かです、守り、癒し、救う、それは地母神様の教えにもかなうことです」

 

 しゅんとした自分に言い過ぎたとでも思ったか。慌てて言葉をつなぐ。

 

「――でも、あなたが倒れてしまっては、多くの人が悲しむの、それだけはわかっていてね」

 

 気遣わしげに、肩に手が置かれる。

 

「はい」

 

 肩に置かれた手を握り、強く頷く。

 

「―――それはそれとして」

 

「え?」

 

 肩に置かれた手が握られる、がしりと、逃げられないように。

 

 地母神の神官は、よく農作業に従事する、力、とりわけ握力は強いのだ。

 

 そして、張り付けられたような、青筋の立った笑顔。

 

 何か知らないが、不味い。それだけはわかった。しかし、だからといって何が出来ようか。

 

「連日朝帰り、だと聞きました。これはどういうことですか?」

 

「ひっ」

 

 ――――お、親は反則でしょう!? 親は!!

 

 脳裏でイイ笑顔をしている受付嬢にそう抗議の声を上げるが、もちろん届くことはなかった。

 

 

 

 女武道家は荒い息をついた。

 

 死屍累々、同じ一党の聖女も魔術師も、別の一党の巫術師もすでに倒れ伏している。

 

 残るは、自分だけだ、自分がやらねばならない。

 

 敵は強大、いや、それはもうわかっていたことだ。

 

 自分にあるのは四肢と技、それだけだ。

 

 武道家というのは、どこまでいっても、それだけだ。

 

 驚天動地の大魔術。

 

 世界を塗り替える奇跡。

 

 海断つ聖剣。

 

 月を射抜く魔弓。

 

 そんなものはない。

 

 鍛えた体で速く動き、速く打つ、それしかない。

 

 武器は二つ、拳、足。

 

 唯一の呪文は、がんばる、それだけだ。

 

 だが、だからこそ、生まれ落ちたときからずっと共にあってくれた拳足であるからこそ、もっとも心を乗せることが出来る。

 

 信頼をもって、命を預けることが出来る。

 

 だから、迷わない。

 

「ふっ!!」

 

 最高の跳躍、最高のタイミング、間合い、至高の一蹴。

 

 繰り出した本人の心さえ、驚きに染まるような一撃。

 

 話に聞く田舎者や小鬼英雄ですら、無事では済まないであろう飛燕の一撃。

 

「こんな広々とした場所で飛び蹴りなんて自殺行為ですよ」

 

 するりと横に回り込んだ女神官が、女武道家の股下から手を入れ、もう一方の手で後ろ襟をつかむ。

 

 世界が回った。

 

 

 

「いざという時のために、後衛とはいえ護身術訓練をしましょう」

 

 ギルドの新米女子組に、ふらりと、幽鬼のようにやつれた様子の女神官がやってきて、張り付けた笑顔でそう提案してきたのだ。

 

「ふふふ、今の私なら魔神王だろうが屠れる……」

 

 一人大地に立ち、なんかむやみにおどろおどろしいオーラを纏ってそんなことをつぶやく女神官。本当にしそうだ。

 

 ――ただのストレス発散だこれ!!

 

 女武道家は地面に叩きつけられ、大の字になってそう思う、実際には言えないけど。

 

 いや、勉強にはものすごいなったのだ、なったのだが、釈然としない。

 

 レモンがきつめのレモネードをあおりながら、皆で息を整える。

 

 最初は自分と女神官が二人で教師役として他の面々を手取り足取り教えていたのだ。

 

 しかし、気づけば言葉巧みに一対多の実戦形式での組み手に持ち込まれていた。

 

「というわけで、実戦では私たち後衛の呪文使いはいつでも安全とは限りません、無論、前衛顔負けの殴り合いの技術は必要ありません、せめて相手の奇襲を一撃、一撃でいいので凌ぐことが出来れば、一党の前衛がなんとかしてくれる、私たちは一党を組んでいる以上、そう思うべきです」

 

 私たち? 何言ってんのこの人、という視線を受けながらとつとつと語る女神官はかつての自分の国を思い出していた。

 

 ――骨の一本や二本、奇跡で治すから骨折位ありきの訓練でしたもんねぇ

 

 精鋭部隊の話ではない、一般兵の訓練でそれだ。

 

 往時の日々を懐かしみながら、彼女たちの様子を見る、とくに回復の必要はなさそうだ。

 

 ではもう一戦。

 

 

 

 そうして、のんびりとした明け暮れは一か月ほど続いた。

 

 そして、さっくりと勇者が魔神王を討ち果たしたという。

 

 そのため、この町で執り行われる祭典に駆り出されもした。

 

 とはいえ、平穏な日々であった。こんな日々がずっと続けばいい、そう思ったが、なんにでも終わりは来る。

 

「頼みがある」

 

 思いつめた顔の、彼が来た。

 

 

 

「わかりました、殺しましょう」

 

 こくり、と女神官は顔色一つ変えず、頷いた。

 

 全てを話した。自分が住まわせてもらっている牧場に、ゴブリンの物見の形跡があったこと。

 

 百匹程のゴブリンの群れを率いているのはおそらく小鬼王であること。

 

 自分では手が足りないこと。

 

 それでも、殺したい、――いや、守りたい、ということ。

 

 この娘であれば、首を横に振ることはない。

 

 何より最初に彼女の元を訪れたのは、そう、わかっていたからだろうか。

 

 彼女が、いかに強力な呪文使いであろうと、自分と二人で100匹を超えるゴブリンを野戦で滅ぼすのは無理だ。

 

 だから、彼女以外にも助力を請うのは、必要なのである。

 

 いや、もしかしたら彼女であればどうにかできるのかもしれないが、少なくとも術師というものに理解の浅い自分には、無理と判断するしかない。

 

 だから、むしろ最初に行くべきは冒険者ギルドであり、一人でも多くの協力者を募るべきなのだ。

 

 だが、自分はここに来た。

 

 不安、なのだろう。

 

 自分の時のように、誰も来てくれないかもしれない。

 

 ポツンと張り出されたゴブリン退治の依頼に、誰も見向きもせず、どうすることも出来ずに自分と、幼馴染と彼女の叔父さんが死ぬ。いや、幼馴染は死ぬよりも辛い目にあうことだろう。

 

 だから、せめて、誰か、自分の横に立ってくれる味方が欲しかったのだ。

 

 だが、それはつまり。最悪二人きりで死ぬよりも苦しい目に合う、分の悪い戦いに付き合ってくれ、ということだ。

 

 彼女であれば、それが、どれだけ勝算のない話か、分かっているはずなのにだ。

 

 そんなことを、おめおめと頼みに来たのだ、自分は。

 

 そんな自分が、情けなく、あさましい。

 

「そんなに、自分を責めないでください、ゴブリンスレイヤーさん」

 

 いつの間にか、目の前に来ていた女神官がゴブリンスレイヤーの兜を己のつつましい胸元へ抱き寄せる。

 

「私を、頼ってくれて、ありがとうございます」

 

 その言葉が、どれほどのものが込められているか、彼は知らないだろう。

 

「本当に……あなたが私を頼ってくれて、本当にうれしいんです」

 

「……」

 

「きっと……大丈夫です、諦めず頼めば、皆手を貸してくれます、あなたが、ずっと頑張ってきたのは、決して無駄なんかじゃないんです」

 

「それは……」

 

「ゴブリン達を殺して、牧場が助かって、牧場が無事だから、街も平和、きっと、そうなります」

 

 だから、勇気を出してください。

 

 

 

 長い夜が始まろうとしていた。

 

 二つの月が上り、その時は刻一刻と近づいてきた。

 

 思い思いにゴブリンを待ち構える冒険者達、その中に、剣士達の一党の姿もあった。

 

 鉄鉢兜に鉄板が打たれた手甲をつけ抜刀しているのは剣士だ、新米戦士も同じく、鉄鉢兜をかぶり、ショートソードを構えている。

 

 女武道家も手甲に革鎧、開けた場所ということで杖を携えている。

 

 女魔術師にしても、レザーのマントを羽織り、少しは防御力を上げている。

 

「いいか、今回、俺たちは無茶も無理もしない」

 

 その言葉に、一党は頷く。死んだらそれまでだ。

 

 なにせ今回の依頼で一番救いなのは、万が一の時、死体を拾ってくれる誰かがいる、ということなのだ。

 

 それ以外、命の保証すら、無い。

 

 とはいえ、そんなことは冒険者であれば、当然である。

 

「正直、銀等級がぞろりと参加した今回、俺たちが狙うのは田舎者や小鬼英雄なんかじゃない」

 

 それはそれとして、参加するだけ参加して、何も報酬を得ることなく終わっていい、というのであれば、冒険者になど、なってはいない。

 

「大物は、上の等級の人達が出張る、と思う」

 

 それに、一匹は一匹、報酬は変わらない。であれば、効率よく、手堅くいこう。

 

 拾った石で簡単な戦模様をシュミレートしてみせる。

 

「で、そういう大物と上の等級の人との大立ち回りってなると、巻き込まれないように、敵だろうが味方だろうと遠巻きになるから、つまりばらける」

 

 大きな石を二つ置き、小石をその二つから避け、散らす。そして、その一番外側あたりを指さす。

 

 そこに、襲い掛かる、ということだ。

 

「女魔術師は出来るだけ《矢避》を展開してもらって、切り込めそうなところに俺と戦士と女武道家、内二人で強襲、連携優先で、できるだけ切らないで突く。一人は念のため後衛の護衛として残る、面子はその都度、疲れている者が護衛として残る感じで、後、前衛後衛離れすぎないように、お互い注意する」

 

「うん」

 

「任せて」

 

 こくりと頷く女武道家に、女魔術師、新米戦士も新米聖女も緊張した様子だが、しっかりと頷く。

 

「癒しの奇跡は二回、だったよな」

 

「うん、無理すれば、もしかしたら三回いけるかもしれないけど、期待されると困る」

 

「よし、一応、いろいろ水薬は買ったけど、聖女の癒しの奇跡が切れたら、つまり、二回使ったら、もしくは女魔術師の《矢避》が切れたら、もう俺たちは撤収だ、いいな。でもって適当に傷ついた人とか、拾えそうなら拾って帰る」

 

 その言葉に、一党は頷く。

 

 そうこうしている内に、戦端は開かれた。

 

「よおし! 一党の初陣だ! せいぜい稼ぐぞ!!」

 

 気炎を上げて、少年たちは駆け出して行った、それが、駆け出し(ルーキー)の終わりと知らずに。

 

 

 

「ほうほう、まぁ、大体優勢、いや、勝勢、といったところかの」

 

 投石紐を振り回しながらゴブリンを撃ち殺して回りながら、鉱人道士は戦況を評した。

 

 手先が器用な鉱人の操る投石紐は、森人の弓に迫るほどに、精妙にゴブリンを倒していく。

 

「まぁ、そうだろうな、とはいえ、後から後からうじゃうじゃと」

 

 槍使いの視線の先には増援のゴブリン達が見えた。

 

 稼ぎ飽きた、とばかりに槍で肩をトントンとたたき、呼吸を整える。

 

 そうして待ち構えると、視界の端から金色の矢が増援のゴブリン達にもぐりこんだ。

 

「おぉっ!? ちょっと見ねえぞあれは!!」

 

 それは、一匹の牧羊犬だった。牧羊犬はなで斬りにするように、ゴブリンを一匹、二匹と、かみ殺し、ゴブリン達を蹴散らしていく。

 

「ここにいる、ということは、かみつき丸の飼い犬かの?」

 

「かもな、おいおい、おっさんぼさっとしてたら犬に手柄首の数で負けちまうぞ」

 

「はっ、そんな様になるんじゃったら髭を剃った方がましじゃい」

 

 そういいながら投石紐を仕舞い、手斧を引き抜く。

 

「いくか」

 

「いこう」

 

 そういうことになった。

 

 

 

「――――そう、考える事はわかっていた」

 

 必死に脱兎のごとく逃げるゴブリンロードの前に現れたのは、血まみれの冒険者、ゴブリンスレイヤーだ。

 

「間抜けな奴め。大軍は囮にこそ使うべきだ」

 

 吐き捨てるようなその言葉を聞きながら、目の前の男が何をしたうえで自分の前に現れたのか、それはわかった。

 

「お前の故郷は、もうない」

 

「ORGRRRRRRRRR!!!」

 

 ロードは雄たけびをあげて、ゴブリンスレイヤーに飛び掛かろうとした。

 

 しかし、眼前に白い網が広がり、無様に倒れる。《粘糸》の呪文である。

 

 ――何が!?

 

 じたばたともがけばもがくほど絡まってくる魔法の蜘蛛の糸にがんじがらめになったロードは思いつく限りの罵声を上げる。

 

「一」

 

 それも、いつも通りの、ただゴブリンを殺すカウントと共に、ゴブリンスレイヤーの一刀が振り下ろされるまでであった。

 

 完全に息絶えていることを確認し、視線を上げると、闇夜から溶け出るように女神官が姿を現す。

 

「帰りましょう、ゴブリンスレイヤーさん」

 

 そう言って伸ばされる手も、赤く染まっていた。その手を、ゴブリンスレイヤーも血に塗れた手で握る。

 

「ああ」

 

 聞こえてくる喧騒もだいぶ静かになってきた。

 

 夜も、じきに明ける。

 

 その朝の朝焼けの赤は、格別に赤かった。

 

 

 

「私たちの勝利と、牧場と、街と、冒険者と――……」

 

 冒険者ギルドでは祝宴が開かれていた。

 

「それから、いっつもいっつもゴブリンゴブリン言ってる、あの変なのにかんぱーい!!」

 

 妖精弓手の音頭にわっと冒険者たちが歓声をあげて、つぎつぎに盃を掲げ、中身を干す。

 

 完勝、である。

 

 負傷者こそ出たものの、冒険者側に死者は出ず、百匹の小鬼は全滅した。

 

 そして彼は、少々腑に落ちない様子で自分に渡された報酬を眺めていた。

 

 金貨五枚である。はて、ギルドが誰かと戦果を間違えたのだろうか、と内心首をかしげていたところで、受付嬢がやってきた。

 

「お疲れ様でした、ゴブリンスレイヤーさん」

 

「あぁ、この報酬についてなんだが」

 

「はい、ロード一匹、あとゴブリンスレイヤーさんの牧羊犬が仕留めたゴブリンが四匹」

 

「……すまない、もう一度言ってくれ」

 

 わけがわからない、という様子で受付嬢を見るも、あちらもきょとんとした様子だ。

 

「金の毛並みの牧羊犬はゴブリンスレイヤーさんの飼い犬と伺いましたよ? こういった場合、魔法使いの使徒と同じように、飼い主に報酬が行くんです」

 

「……いや、それはわかる、わかるが」

 

 すっごい頑張ってたって聞きましたよ、ちゃんとほめてあげてくださいね。

 

 そう言って、また忙し気に受付嬢は去っていった。

 

 何とも化かされたような気分で、しかしそういうことならば、と金貨を一枚、女神官に渡す。

 

「受け取ってくれ」

 

「ありがとうございます、ゴブリンスレイヤーさん、犬飼ってたんですか?」

 

 ニコニコと報酬を受け取りながらそう言ってくる女神官に頷く。

 

「ああ、先日拾ったんだが……」

 

「そんなに頑張ったんだったら、すっごく可愛がってあげるべきですよね」

 

「ああ……」

 

 なぜか、やたらと圧力のある声であった。もしかしたら犬好きなのかもしれない。

 

「よかったです」

 

 見れば、剣士は酔いつぶれた女武道家と女魔術師にもたれかかられており、戦士も聖女の膝枕の上だ。

 

「ああ」

 

 妖精弓手がいる、鉱人道士がいる、蜥蜴僧侶がいる、受付嬢がいる、牛飼娘もこちらをちらりとのぞいている、槍使いも、魔女も、重戦士も女騎士も、剣士達も、誰一人欠けずに、酒宴を広げている。

 

「大丈夫、だったでしょう?」

 

「ああ……だが、なぜわかったんだ」

 

「だって、私、ゴブリンスレイヤーさんに助けてくれって言われたら、助けますもん」

 

 そして、みんな、そうだったから、今こうしているんです。

 

 そう言って、誇らしげにその薄い胸をつんと張る。

 

「――だから、運なんかじゃないです。絶対」

 

 そう、思いを込めてつぶやき、そしていたずらっぽく言葉をつなぐ。

 

「もっと、ゴブリンスレイヤーさんは自分のことを誇ってください。受付嬢さんに銀等級なんですから。って怒られちゃいますよ」

 

 そう言って、両手の人差し指をこめかみ辺りの横に付け、上に向けてで角を模す。

 

「……そうか……怒られたくは、ないな」

 

 そう、言って、彼は微かに笑った。

 


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