まさかプロットが出来上がってから悩むとは思わなんだ…。しかもなぜか次話のプロット+その次の話の頭まで出来上がったという謎の事態。改めて感じたんですけど、構想を文章にするってノッてないとかなり難しいですよね(笑)
日も傾き始めた頃、俺は家で飯を待っていた。いつもは自炊するので俺が作ろうと思っていたのだが、小町がそれくらいはやらせてと申し出てきたので甘えることにした。
ただずっと作ってもらうのは悪いから、これからは当番制にしようとも思うがな。
「もうちょっとでできるからねー」
台所から間延びした声が届いた。
「あいよ」
台所からの距離はそう遠くなく、小さい返事でもしっかりと聞こえる。満足したのか小町から返事の声は無く、料理に集中し始めた。
アパートに男女2人で住むのってよく良く考えたら新婚みたいだよな。某鍵の泣きゲーのごとく、というかまんまその状況だし。まあ兄妹だから前提条件から破綻しているし、だからどうってことはないんだけども。
いや、でもまあ。
「新婚か……」
ガラガラガシャン!!!
な、なんだ!?と音源の方に目をやると、小町が調理器具を落としていたようだった。幸い料理がぶちまけられる、ということはなかったのでその点は不幸中の幸いといったところか。
あいたたた…、とどこを押さえるわけでもなく器具を拾う小町。どうやら条件反射の「痛い」だったようだ。
「大丈夫か?」
「あ、うん…、大丈夫だよ。ちょっとびっくりしちゃっただけ」
「なんか跳ねたか?」
「火傷とかじゃないし、心配しなくていーよ!」
ならなんでびっくりしたんだ?火傷じゃないとしたら、状況的に新婚の単語になるが…。
いやいや、実妹が実兄との新婚を想像して焦るとか2次元じゃねえんだから。どこぞの千葉の兄妹ならまだしもだな……、って、俺も千葉の兄妹でした。テヘペロ。まああそこまで親族に本気になれるのはすげえと思うけども。
程なくして夕飯ができ、ちゃぶ台に並べて2人でいただきますをする。メニューはハンバーグにサラダ、味噌汁に白米のオーソドックススタイルだ。綺麗に作られたハンバーグは一切の型崩れがなく、食欲をそそる匂いが鼻腔を刺激する。
「そうだ、小町」
「なに?お兄ちゃん」
「さっきの調理器具をぶちまけたやつ、あれなんだったんだ?」
「あれは、まあ……、いろいろ?」
「怪我はないんだよな?」
「そこは安心してくれても大丈夫だよ」
まあ怪我がないのならいいか。
「それとな、喧嘩の理由がわかった」
「え、なんで?まさかいろはさんにそのことを怒られてとかじゃないよね?」
小町の言ったことを否定しつつ、俺はことのあらましを説明した。
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翌日、大学からの帰り道。桜内は大学に来ていないようだった。単に今日は会わなかっただけという可能性もあるが、共通の授業でも顔を見なかったとなると来ていないと考えるのが妥当だろう。
さすがの俺でも、なぜあいつが休んでいるのか検討がつかない訳では無い。昨日のことが原因というのも可能性としては大いに有り得る。ただそこの細かな理由なんだが、そこがいまいちはっきりとしない。過去のスクールアイドルの実績、語弊を恐れずに言うならば大した成績も残せなかったことを知られたからか、あるいは去り際に残した「また友達の輪を乱した」のどちらかだろうな。
あいつの過去にあったことはスクールアイドルが関係していたと考えられる。それは別に憶測でも勘でもなく、客観的な事実からだ。前に「浦の星女学院から逃げた」やさっき言った「友達の輪を乱した」という発言を繋げると嫌でも背景が見えてくる。細かなことはわからないが、確実に関係しているはずだ。
(俺がその内浦ってとこに行けば、何かしらわかるんだろうがな)
だがそれは一友人として正しい行為なのか?
行き過ぎたお節介になるのではないか?
……周りに言わせてみれば、これは簡単な問題なのだろうか。人間としての持ち合わせている“協調性”という名の常識が、俺には遠く感じてしまう。まして“協調性”に長けた一色にしてみればなぜそんなことを悩む必要があるのかというところまで飛躍するのだろうな。無論飛躍といっても俺基準での話なのだが。
「また何か難しい事考えてません?先輩」
後ろから声をかけられ、振り向いた。が、確認するまでもない。俺のことをそう呼ぶやつは1人だけだ。
「…いたのか、一色」
「今来たから気付かなくても無理ないですよ」
昨日のような鬼気迫る風体は今の一色にはない。憑き物が取れたというよりはむしろ悟ったような様子で、至って穏やかである。
「昨日はすまんな。言い訳するつもりは無いし、言葉だけで信じてもらえるとは思えないが、これからは気を付ける」
「……言い訳、していいんですよ」
「一色?」
「先輩にデリカシーが無かったっていうのは正しいです。でもそもそもわたしが嫉妬しなかったら喧嘩になんてならなかったじゃないですか!」
静かに漏れ出た怒りは、果たして誰へのものなのか。自己嫌悪にも似た声は痛々しく見えた。
「……」
俺は答えることが出来ない。確かにそうだと認めてしまうと、離れていく気がしたからだ。独占欲と言ってもいいか。離れて欲しくないんだな、と遅まきながら感情を自覚した。
「…すいません、いきなりこんなこと言われても困りますよね」
俯き、でも、と続ける。
「ここで出会う前に小町ちゃんに言われたんです。先輩も悪いけど、先輩の優しさに甘えてるわたしも悪いんだって。……嫉妬するってことは、相手を信じてないんだって。だからですね、先輩」
顔を上げ、しっかりと俺の目を見据える。俺は何も言わずに続きを待った。
「わたしが嫉妬しない、っていうのはちょっと現実的じゃないんですけど…。それでも、
胸を張ってそう宣言する。
……いい彼女を持ったな、なんてことは死んでも口には出さないがな。
「そうか、ありがとな。…それとさ、いきなりなんだがまた嫉妬させるようなことをしたいんだが、いいか?」
「本当は嫌ですよ?もちろん嫌ですけど、多分それは先輩には必要なことなんですよね」
「ああ」
短く答える。まあわかってたことなんですけどね、と一色は苦笑いする。
「桜内が大学に来てないんだ。理由は多分、俺がスクールアイドルのことを知ったからだと思う」
「それっておとといわたし達が読んだやつですよね」
「ああ。それであいつの去り際に『また友達の輪を乱した』とか言っててな。多分その『また』ってのが重要なんだ。それでスクールアイドルと友達の輪を乱すってのを結びつけたんだ」
「つまりあれですか。出張版奉仕部!みたいな?」
「まあ……、そんなところか?」
そこで逡巡し、続ける。
「傲慢だとは思うが、俺は桜内を救ってやりたい。人のために、なんて偽善でも誰かのためになることをあの時に知ったのかもな…って、なんかすっげえ臭いこと言ってんな、俺」
あの時とは、奉仕部の頃であったり小町のことであったり。まあ言わずもがなだろう。
「ヒロインがヒーローに口出ししても意味無いのはお約束ですよ?なので少しの間、ほんの少しの間だけなら私以外の女のために頑張ってください。……でも、その代わり帰ってきたらちゃんとわたしのことも見てくださいね?」
こんな臭い言葉の応酬も、愛おしく感じるのはなぜなんだろうな。救うなんて大それた言葉じゃなくとも、俺に出来た数少ない友達のために何かしたいとかでよかったのかもな。
……俺にとっては、その“友達”って言葉が一番臭いんだけどな。
「お前は俺の彼女だ」
それだけ言い残してこの場を離れた。いちいちはっきりとした言葉を言わなくても、一色なら理解してくれる。照れ隠しを意味のあるものとして考えてくれる。
会話も届かない距離で、後ろから声が聞こえた。
「先輩!嫉妬深い女でも、す、好きでいてくださいね!」
恥ずかしがって目をそらして、しかしちらちらとこちらを見る一色に俺は思わず笑みを零し、また歩き始めた。
返事は今の視線だけで充分だろう。
◇◇◇
早朝に香る潮の匂い。遠くで聞こえる波の音はどこか既視感を覚える。
(音に既視感ってのもまた変な表現だな)
絶望を想起する匂い、なんて言うと仰々しくも感じるがな。どうやら俺と桜内は海に縁があるらしい。違うのは防波堤からの眺めと海岸からの眺めくらいなもんか。
スマホの地図アプリを頼りに歩く。夜行バスで来たので体が痛くてしょうがない。早く目的地を見つけて休みたいもんだな。
情報通りならわかりやすいから見つかるはずだが…。
と、考えていると
「…あの、すいません。先程連絡した者ですけど」
ある旅館の受付口での会話。
「あ、はい。えっと………、ヒキタニさん?」
雑誌で見た人に間違いない。ある旅館──十千万の三姉妹の末っ子にしてAqoursのリーダー、高海千歌。
……てか俺電話口でちゃんと名前言っただろ。なんで間違えてんだよ。
くどいようですがいろはす回はしっかり考えてありますので、どうかその矛を収めてください(ドゲザ
たどり着くまでが長いんや…。
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