『この世全ての悪』を背負いし少年も異世界から来るそうですよ?   作:クロック

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フハハハハハ!ハーメルンよ、私は帰ってきたァ!

久しぶりでございます。クロックです。

更新サボってすいませんでした。本当ならもっと早く書き終わってたんですが・・・二回連続で消去しちゃいました。

数ヶ月間、行方不明ですいませんでした。

あと少し前に『灰と執行者のグリムガル』を執筆させてもらっています。ぜひ閲覧してください。

ではどうぞ。


第9話

森に砲弾を撃ったような、轟音が響く。

 

森の中には二つの影。その二つは全力で疾走している。

片方が両手の銃を連射する。持っている銃の種類からはありえないほどの連射。

 

迫り来る弾丸をもう片方の影が両手に持った歪な双剣で切り払う。その技術は一瞬で自分へ当たる弾丸を正確に見切り、必要な分だけを撃ち落としている。

 

双方が三次元的な機動で翻弄する。

木を蹴り、枝を蹴り、草木を切り裂き、相手の動きを予測し、地面を踏み砕き・・・・・・。

 

ただ戦闘は加速していく。

 

——————————————————————————

 

耀と飛鳥、そしてジンが参加するギフトゲーム。会場は〝フォレス・ガロ〟の本拠の館で行われている。

 

暗流は観戦せずに、館の横の森を歩いている。理由は簡単。シャドウサーヴァントの気配を感じたから。

暗流の今の最優先事項はコミュニティの復興ではなく、シャドウサーヴァントなどの英霊達の対処。

 

分かることはクラスがライダーということのみ。

 

ライダーは宝具が多く、高速移動ではなく移動しながら破壊する宝具が多い。森の中で使うようなものは少ない。

そのことを前提として頭に留め、暗流は森を進み続ける。

 

そして拓けた荒地に出る。半径三十メートルほどの荒地。周りを森で囲まれ、中心に黒い影がいる。漏れでる障気の隙間からは女性らしき四肢が見える。

 

暗流はライダーから15mほど離れた位置に立ち、黒鍵の柄を創り出す。

ライダーはフリントロック式、俗に言う『海賊銃』を両手に持ち、腕を垂らす。

 

館からさほど離れていないため、獣の咆哮が聞こえる。咆哮と同時に幾つもの銃声が鳴り響く。

 

暗流は柄から刃を出し、冷静に弾いていく。ライダーが横へ駆けながら海賊銃を撃つ。暗流もライダーと同じ方向に走り出し、またも銃弾を弾く。

 

黒鍵は耐久力がそこまでなく、二、三発弾く事に霧散する。ライダーの怒涛の銃撃を、黒鍵でいなし続ける。

 

ライダーも真面目に真っ直ぐに進んでいるわけではなく、右や左へと進路を変えながら強襲する。

 

暗流の両手の黒鍵が同時に砕ける。それと同時にライダーが暗流へと急接近。物理法則を無視した膝蹴りが飛ぶ。

暗流は黒鍵を交差させ、膝蹴りから逃れる。だが相手はサーヴァント。暗流の黒鍵を砕き、暗流の腕に痺れを残す。

 

次の瞬間、ライダーの姿が消える。いや、上に跳び暗流を上から狙っている。

暗流は黒鍵を創らず、今度は歪な双剣、『右歯噛咬』『左歯噛咬』で上からの銃撃を防ぐ。

 

リロードと弾切れが起こらない銃撃に暗流は防戦一方。ライダーの空中での跳躍時間は異常に長く、攻撃は止まない。

 

ライダーが地面に着地する。暗流は即座に後ろへと飛び退き、距離をとる。

 

 

だがそれは、ライダーの宝具を開帳させる行為だった。

 

ライダーが右腕の海賊銃だけを暗流に向ける。同時にライダーの背後に魔力が溜まる。

 

宝具の発動、暗流はそれを感じ取り、強化されていた感覚を更に強化する。

 

 

そしてそれは現れた。

 

まるでどこぞのAUOみたいに黄金の波紋が作られる。そして中心からは黒い大きな円筒。暗流の背中に冷たい汗が走る。頭の中で警鐘が鳴り響く。

 

自らの直感に従い、暗流は横へ飛び退く。次の瞬間、暗流のいた場所が轟音と共に抉られ、クレーターが作られた。

 

『黄金鹿と嵐の夜』。それがライダー——フランシス・ドレイクの宝具。本来なら彼女の船を丸々出すのだが、シャドウサーヴァントとして劣化した今、砲台を二つ出すのが限界である。

 

だが宝具まで昇華された砲台。その威力は並みのものではなく、直撃すれば当然のようにどんな英霊でも木端微塵となり、消滅は免れない。

 

爆熱と衝撃波で暗流は吹き飛ばされる。連射できないのが唯一の救いだ。

 

暗流はすぐさま起き上がり、森へ逃走する。ライダーがそれを見逃すはずもなく、暗流のことを追いかける。

 

二人は木の上で熱戦する。攻撃に余裕が出来た暗流は黒鍵を投擲する。ライダーも銃撃するが、暗流が木に見を隠すことで無駄となる。

 

突如、暗流の気配が消える。高速移動の宝具かと思い、ライダーは辺りを見渡す。実際、暗流はその場から動いていない。

 

スキル——気配遮断

 

アサシンクラスのスキルである気配遮断で、暗流はあることをしていた。

 

魔力を練り上げ、糸のように錬金して、動かす。

ライダーは辺りに銃弾をばら撒くが、そこに暗流はいない。

 

(いける・・・)

 

暗流は静かに立ち上がり、ライダーに向けて飛び出す。ライダーは暗流に銃を向ける。その時、暗流が腕を振るった。

 

「——ッ!」

 

銀の細い光が舞い、光はライダーのもつ海賊銃を巻きつく。暗流が反対の腕を振るう。

再度現れる銀色の光はライダーの体に向かって迸り、その四肢を切り裂く。

 

ライダーは咄嗟に後ろに下がるが、何かに引っかかって速度を落とす。

 

暗流が操っているのはワイヤー。この魔術はかつて第四次聖杯戦争で聖杯の器となり飲み込まれたホムンクルス、アイリスフィール・フォン・アインツベルンが使っていた、アインツベルンの奥義『錬金術』。

本来なら貴金属に魔力を通して行うのだが、暗流は黒鍵の刃を、細くしなるような構造を前提として創り、魔力を通して使っている。

『錬金術』は等地交換なので、本来なら代償が必要なのだが、暗流の体にある聖杯の泥で代替している。

 

暗流はワイヤーを創り、辺りに結界の様にばら撒き、ライダーの移動を封じた。

 

海賊銃を封じたライダー——フランシス・ドレイクだからこそ、彼女は状況を脱する為に宝具を使う。

 

再度現れる黄金の波紋。波紋は暗流に向けられ、その奥から砲台を覗かせる。

 

暗流は動かず、ライダーは動けない。だがこの一撃で全てが決まる。暗流の両手は糸で塞がっており、黒鍵も『右歯噛咬』も『左歯噛咬』も出せない。

 

砲台から魔力で作られた砲弾が放たれる。そこでようやく暗流が動き出す。体の周りに糸を展開、自らを繭のように囲む。これをすると周りが見えなくなるが、防御に関しては最強と言える。

 

ライダーの砲弾が糸の繭へ当たる。砲弾は爆発し、爆発した時に出る衝撃波と熱が、糸へ襲いかかる。

 

糸は千切れ、溶けていく。本来なら、糸はすべて消え、暗流の体は焼け飛ばされているだろう。だが暗流は無傷のまま立っている。

 

糸の繭は千切れたたり焼かれたり、欠損した部分を周りが直していく。可能ならば周囲から集めろ。不可能ならば作り出せ。この状態は暗流の膨大な魔力を喰らい尽くす。

 

魔力回路が悲鳴を上げるが、泥が無理矢理修復する。気を抜けば暗流はすぐに死ぬだろう。

正義の味方ならすぐに止めるだろう。だが止まらない。暗流ならまだ手はある。時間がかかり、成功率が少し下がるが、まだ安全な手はある。

 

だが暗流はやらない。

 

暗流が保有する呪いのようなスキル『死滅願望』。自ら死にに行かせようとするこの最低最悪なスキルは、最も高い成功率で、最も高い死亡率の方法を選ばせた。

 

暗流は文句の一つも言わずに従う。何故ならこれが、この呪いが自らの力の代償なのだから。

 

「俺の勝ちだ。ライダー」

 

爆熱が消え去り、暗流が繭を散らせる。ライダーは手足に糸を喰い込ませて抜け出そうとしている。だが抜け出せない。

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!」

 

糸を伝い、サーヴァントの天敵とも言える泥がライダーの体を飲み込んでいく。それと同時にライダーの頭の中に響く負の感情。ライダーは叫んでいるのだろう。最早獣の叫びと化した声を、暗流は聞き続ける。

 

「『疑似技能 偽・七閃』」

 

ライダーの体に糸が走る。糸は無抵抗なライダーを効率良く裂き、その命を終焉へと向かわせる。糸の一本がライダーの霊器を砕いた感触がする。

 

ライダーが暗流に手を伸ばす。だが、その体は既に消滅しかかっている。暗流は糸を全て消し、十字を切る。

 

「おーい!暗流ぃ!」

 

十六夜達が走ってくる。その中に耀の姿はない。暗流も服に付いた埃を払い、十六夜達の方へ向かおうとする。

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、暗流の体がバラバラに切り裂かれた。


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