Side 俊希
雨がしんしんと降る夜道を俺は傘を差さず、腰に木刀を差して歩いている。目指す場所は
何で俺が更識家の屋敷を目指してるかというと箒の護衛役目の交代だ。更識家の人間が箒を護衛していたが奴等では力不足だと俺と束さんは考えたんだ。だから俺が束さんの使者として更識家に乗り込んで腕っ節を認めさせるって訳だ。俺や束さんだってこんな力で黙らすようなことはしたくない。だが日本政府は言った。実力の分からない者に篠ノ之箒の身柄を護衛させない、と。
この言葉に俺が切れた。何で箒を物扱いした?箒を束さんの付属品としか見てねぇのか?まずテメェらに箒が何で縛られなくちゃならねぇんだ?そう思ったから俺は更識家に強襲することを決め、束さんと箒に許可を貰った。箒に約束されたのはたった1つ。更識家の人間は誰1人として殺してはならない、だ。俺はコレを守りつつ、更識家に箒の護衛役目の交代を許可して貰わなければならねぇってことだ。まぁ、余裕だろうな。千冬さんレベルの人が更識家にいれば話は別だが、あんな人がぽんぽんいる訳ねぇしチョレーチョレー。
「おい、糞餓鬼。ここに何か用か?」
如何やら俺は目的地に着いたみたいだ。顔を上げると木で出来た門の前に黒いスーツにグラサンスキンヘッドの男が2人いた。如何でもいいがコイツら双子か?クッソ似てんぞ。
「黙ってねぇで何かーー」
「下がれ」
「テメェ何言ってーー」
バキッ!!
俺に口を聞いてきたスキンヘッドAに向かって、腰に差していた木刀を抜きながら横薙ぎに払った。
「もう1度だけ言う。下がれ」
俺はさっきより威圧しながらスキンヘッドBを睨んだ。スキンヘッドBは俺に怯み2、3歩程下がって門までの道を空けた。俺は空いた道を歩き門の扉を全力で蹴破った。
Side スキンヘッドB
俺は今横にいる弟と一緒に昨年更識家に入った。更識家に入るまでは喧嘩で負けた事が無かった俺達は更識家で上を見せられた。俺達がどれだけ足掻こうが絶対に勝てない人がいるって事を教え込まれた。俺はその事を理解したが弟は理解できなかった。その事に気がついたのは先月の頃だ。弟は言った。「お嬢をひん剥いてヤってみてぇー」と。弟からすると何の気なく言ったと思うが弟のことを正直馬鹿だと思った。お嬢様は御年14にして当主様を除きこの家で最も強いお方。そんなお方に何てことを口走ってるんだ、と心の中で思った。
そんな事があり弟の事を考え続けて1ヶ月が経ったある日、通達が届いた。内容はこうだ。
「明日の午後11時半頃、篠ノ之束の使者が我々の屋敷を強襲する。屋敷の警備レベルを最大にし全力で使者を迎え撃つべし」
篠ノ之束の使者…これは相当厄介な者が此処に攻め込むのか。俺達が担当する場所は屋敷の門の警備で役目は使者が来た事と使者の勢力を知らせる事だ。
「ふぁ〜あ。メンドくせぇ…」
「気を抜くなよ。そろそろ時間だ」
「チッ、ウルセェよ糞兄貴…」
俺は弟と揉めている為に素っ気ない返事が返ってきた。揉めた理由は俺が弟に上には上がいる事を分からせようとした為だ。だが俺の言葉は弟には届かなかった。
ピチャッピチャッ…
人が此方に歩いてくる音がする。音のする方を見ると160cm程の背丈で腰に木刀を差した黒髪の子供が近づいてきた。まさか、この子供が篠ノ之束の使者なのか…?
「おい、糞餓鬼。ここに何か用か?」
「下がれ」
黒髪の子供は顔を俺達に向けて言った。黒髪の少年は中性的な顔つきで黒い瞳をしている幼い少年だったが、瞳の奥にある真っ赤な炎が俺を動けなくした。俺は咄嗟に理解した。此奴には勝てない事が、この子はお嬢様と同等、いやお嬢様を超えるかもしれない強さの持ち主だという事が…
「テメェ何言ってーー」
バキッ!!
弟の声が聞こえたかと思うと次の瞬間には弟が6m程吹き飛ばされていた。恐らく黒髪の子供が腰に差していた木刀を振るったんだろうが、俺の目には何もかもが見えなかった。俺は震えた手で敵が来た事と敵の実力がかなりやばい事を伝えようとした。
「もう1度だけ言う。下がれ」
俺は黒髪の子供に睨まれただけで一瞬身体中が燃やされた感覚に陥った。もうだめだ、俺にはこいつを止める事はおろか手に持つ発信機で危険を知らせる事も出来ない。出来る事は1つだけだった。それは身体を2、3歩動かして門から下がる事だけだった。
俺の空けた道を黒髪の子供は通り門の前に立った。この門は簡単には開ける事が出来ない様になっている。何故から門の扉はかなり重いからだ。この扉は1枚約50kgあり何時もは開けておくが、敵が屋敷を攻めようとする時に閉める物だが、この門を閉める為に大の大人が6人も必要とするんだ。それにこの扉は古くから屋敷を守ってきた扉なのだ。そうそう破られる事は無いだろう、
ズドォオオオオンッッ!!!
黒髪の子供が扉を蹴った。その衝撃で扉は3m程吹き飛び、古くからこの屋敷を守ってきた扉は瞬きもしない内に破られた。俺は開いた口が塞がらなかった。そして身体中の力が抜けてその場に倒れた。俺はゆっくりと屋敷の門をくぐる黒髪の子供を見ながら思った。この子供にはお嬢様や当主様ですら敵わない、と…
Side 俊希
うっわぁ……あんな所にもこんな所にも黒いスーツに黒いサングラスをした間抜けヅラの男が…テメェらは○ンターかっての。まぁ○ンターと違ってガッチガチに武装してるがな。ひーふーみー、120人か。コレは想定の範囲内の人数だな。
カチャッ!
「貴様が篠ノ之束の使者か?」
流石は対暗部用暗部の皆さんだ。さっきまでの間抜けヅラが数秒でキリッとして俺に手持ちの銃を向けてくる。そうこなくっちゃな。
「Yes.本日は篠ノ之束の命により更識家を強襲しに来ました」
「ほう、そうか。では大人しく投降して貰おうか?そこから動きを見せたら子供だろうと問答無用で撃つ」
今思うと更識家の人達には申し訳ない事をするな。だってさ、コレは日本政府にキレた俺の八つ当たりなのだから。
「おラァッ!!」
ズガァアアアンッ!!
俺はさっき話しかけてきた人に全力で突きをした。俺の視界に入ってる全ての人が驚いていた。無理もない、現時点での俺の全力の動きが見えるのは千冬さんと束さん、クロエ位だろう。そして俺に驚いてるその隙、頂くぞ。俺は近くにいる4人を木刀で斬り捨てた。
「調子に乗るなぁあああああ!!」
ガガガガガガガガッ!!!
10を超える人が俺を狙って銃をぶっ放してきた。俺は俺に飛んでくる弾丸を見て弾道を予測、身体に当たる弾丸だけを木刀で
ハァ…つまんねぇな。何だこの弱さは。俺が次々に更識家の人達をボッコボコにしていくも、屋敷から出てくるのはどいつもこいつも銃銃銃…ちょっとは武闘派の奴等出てこいよ!!それに時々俺の眉間や脚を狙ってスナイプして来る奴!当てる気があるならもっと気配を消せよ!!それにもっとさ、こうタイミングってのがあるだろう?確かにその撃ち方がセオリーかもしらんが俺には通用しねぇってことを直ぐ気づけよ!てか眉間や脚をピンポイントで撃つんじゃねぇよ!避けやすいんだよ!撃つなら胸を狙って撃てよぉおおお!!
俺は戦闘がひと段落したから腕時計を見た。えっ、何だコレ…?ものの20分で屋敷から出てくる人の波が終わっちまって、満足に動けるのは俺と当たる気がしねぇスナイパー5人だけだ。他の奴等は地面に転がってたり池に浮いていたり門の壁に刺さったりしている。コレだけの人がいて俺に1発も弾丸を当てれないとか弱いにも程があるだろ?(俊希が非常に強いだけです)
「小っちぇえな」
俺は半ば呆れながら屋敷に向かって歩き始めた。屋敷の中には武闘派がわんさかいる事を期待するぜ。まぁ多分いても数10人だろうがな…だってよ、俺はもう更識家の人達を297人も倒しちまったからな。
屋敷へと入る戸は開けっ放しになっていたから俺は玄関から普通に入った。何か旅館みたいなとこだな。コレ靴を脱いで入った方がイイのか?うーん…脱いで入るか。取り敢えず靴を脱いだが早速別れ道とは。右か左か…確かこういう時は人は無意識の内に左を選択する確率が高いんだよな。だからこそ右だな。正直屋敷を壊して道を作るって選択もあるっちゃあるがそれは止めとこう。八つ当たりの範疇を超える気がするからな。
右方向の廊下を進むと幾つもの障子戸があった。1つ1つ開けるべきか?いや、それはねぇな…幾ら何でもそれはメンドくせぇ。良し、決めた。
「だーれかいるかー!いたらちゃっちゃと出てこいよぉー!!」
ガタガタッ!
「そこかッ!!」
ズガッ!!
「ひゃぁっ!」
ん…?何だ?物音がした障子戸に木刀をブッ刺したら女の子の悲鳴のような声が聞こえた気がしたが、気のせいか?確かめてみるか…
ズガズガズガッ!!
「ひぃやぁあああああ!!」
ん…?何だ何だ?悲鳴が大きくなった気がしたが気のせいか?もう1回やってみるか…
ズガズガズガズガズガズガッ!!
「も、もう…やめて…っ!!」
「仕方ない、止めてやろうか、、、俺が顔も知らない奴の言うことなんて聞くかぁ!!」
「きゃああああああああ!!!」
ズガズガズガズガズガズガバンッ!!
障子戸が俺の突きに耐え切れなくなって勢いよく吹っ飛んだ。部屋の中を見ると蹲っている水色の髪をした女の子がいた。俺は何の気なしに部屋を見渡すと1つのポスターに釘付けになった。そのポスターの作品とは『シャーマンキング』。何とこの世界にもシャーマンキングが存在した。俺は存在を知った時から直ぐインターネットで全巻を購入して何回も読んだ。因みにこの世界のシャーマンキングは50年以上前に完結を迎えた作品となっている。
「なぁ、君ってもしかしてシャーマンキングが好きなのか?」
「え…そ、そうだけど…あなた…誰?」
水色の髪の女の子が顔をあげた。一言で言うとスゲェ可愛い。このレベルの可愛さは箒と同じ位だな。水色の髪に優しげな赤い瞳をもつ女の子、保護欲がそそられるぜ。
「俺の名前は加藤俊希。君は?」
「わ、私は
「俺も俊希でイイ。それは俺が束の使者だからだ」
「た、束って篠ノ之博士…っ!?そ、それじゃあ、あなたは家を…」
「そうだな。攻めにきた」
俺と簪の間が静寂に包まれた。静かな時を人は良く長く感じるが今は長く感じなかった。それもそうだ。俺は何の緊張もしていないのだから。簪が何かを口に出そうとして止めた。うーん、簪はあまり言いたいことが言えないタイプなのか?ココは俺が話しやすい雰囲気でも作ってやろう。なに、同じマンガを愛する同志だからな。
「俺からも質問イイか?」
「……なに?」
「簪はシャーマンキングだと誰が1番好きなんだ?」
「わ、私はホ、ホロホロかな…私の趣味とは違う、けどね、何でか好き……」
「そうなんだ。俺はやっぱり竜だな。メラカッコいいからな」
「だからさ、さ、俊希くんは木刀なの…?」
「そうだぜ」
何か詰まりながらも名前を呼ばれるの懐かしいな…昔の箒を思い出すぜ。ていうか、箒って妹ってより姉って感じだな。ザ・キッチリした姉。逆に簪は何かこうザ・可愛い妹って感じがするな。
「ふぇぇ…?わ、私がか、か、かわ、いい…?」
「まさか、俺声に出てた?」
「……うん」
「そ、そうか…何か恥ずかしいな」
さっきと別の雰囲気で静寂に包まれた。ていうか、スゲェ気まずい。具体的に言うと前に箒を助け出した時に束さんが来て、ひと段落した後並に気まずい…だがコレも仕方ねぇことだ。だって箒や簪はスゲェ可愛いからな。俺が気まずくなることも無理はないな!
「あ、あの……さ、俊希くんは私を襲わない、の…?」
「襲わないぜ。簪は俺に攻撃する意思がないだろう?それにコレは戦いじゃなくてタダの八つ当たりだ。だから俺は簪を襲わない。もし、簪が俺に攻撃でもしてきたら瞬時に対応するがな」
「そ、そうなんだ。良かった…」
カチャッ
「動くな」
「な、なにをしてるの…?」
「お嬢様、此奴は篠ノ之束の使者です。我々の仲間が既に約300人が此奴にやられています」
簪に集中し過ぎたせいで俺は背後を取られてしまった。何とも情けない…それに簪が俺のやったことを聞いてヒドく驚いてるようだ。あーあ、もう少し簪とお話したかったな。未だシャーマンキングの話を1回しかしてねぇからもっとしたかったのによ…
「お前は後悔するだろう」
「何?」
「俺をさっき撃たなかったことになぁ!!」
バシィイイイインッッ!!
俺は背後を見ずに全力で木刀を横薙ぎに振るった。その後チラッと背後を見るとえっ…てなった。1人だったんだ。簪に集中して俺の背後を取った人が。バカだろ?テメェ1人で俺を倒せる訳ねぇだろ。もしテメェ1人が倒せるのなら俺はとっくにヤられてるぞ。
「か、か……」
「か?」
「かっこいい…っ!」
「へ?」
「すごく、かっこいい…っ!まさか、さ、俊希くんは『
「出来るぞ、ほら」
俺は深呼吸して一旦気持ちを落ち着かせた。目を瞑り意識を集中し始めて…今だ!!俺は木刀を振るった。木刀が描いた軌道に真空波が形成されて空気を伝わりながら真空波の延長線上にあるものを切っていった。ふぅ…この世界にきて何やかんや初めてやったが上手く出来るものだな。
「ロ、ロマンだ…っ!ほ、他にはなにか、できないの?」
「超・占時略決を完全習得してるから呪禁存思とか出来るぞ」
「す、すごい…死者を生き返させることができるなんて…」
「そうだろ、スゲェだろ?……ん?」
「ど、どうしたの…?」
呪禁存思…死者を蘇生することが出来る。怪我も死ぬ前に戻る。怪我、怪我……
「あああああ!!やっちまった!!」
「ひゃぁっ!ど、どうしたの?」
「更識家の人達をワザワザ生かすんじゃなくて殺しとくべきだった…ッ!殺した人達を蘇生した方がケガも治って後に影響を残さねぇ。だが変に気絶させちまったせいで俺に負わされたキズもケガも残ったままだ!!」
「ち、治癒する技は使えないの…?」
「出来ないことはないがアレには女性の人骨が必要なんだ……ハァ、もう気にしても仕方ねぇか」
「それで、良いんだ…」
そうだ、気にすることはねぇ。万が一の時は俺が出張ればイイだけの話じゃねぇか。正直かなりメンドくせぇが呪禁存思を事前に思い出さなかった俺がワルい。
「じゃあな、簪。俺はココのトップのところに行ってくる。また会った時はシャーマンキングの話をしようぜ」
「ま、待って…っ!私も、行く…」
「え、何で?」
「さ、俊希くんともっとお話、したい。だめ…?」
「ダ、ダメじゃないです…」
正直ダメだと言った方がイイんだろう。簪は苗字といいさっき俺に銃を向けていたお嬢様の発言から予測するにココのトップの娘なんだろう。そんな簪の言葉を肯定すれば簪を俺の八つ当たりに巻き込んでしまい、ヘタしたら更識家内の簪の立場が悪くなっちまう。だが俺の口から出たのは肯定の言葉だった。
Side 簪
篠ノ之束の使者と名乗る人、加藤俊希くんはふしぎな人だった。今まで会ったどの男の人ともちがう人で、何というか、らくだった。今の時代、だれもしらないような漫画を私と同じで好きな人。本音でさえこの話はついてこれないのにさ、さ、俊希くんは短いあいだだけどついてくるだけじゃなくて、一緒になって話してくれた。それでか、か、可愛いって言ってもらえた…
その後、更識家の従者の1人が俊希くんの頭にけん銃を突きつけた。私はどうにかして従者の人をとめようとしたけど、言葉がつまってしまって何もできなかった。だけど…俊希くんは状況を1人で解決してしまった。目にも止まらぬ速さで木刀を振るった姿は幼い見た目ながらも私が思い描くヒーローそのものだった。
だからだろう。私は俊希くんについていきたい、もっと俊希くんのことが知りたいって思っちゃった。まだ俊希くんのことはシャーマンキングが好きってことしか知らないのに、ね。
「ふふっ…」
「どうした?何か面白いことでもあったか?」
「いや、別に…気にしないで」
「そうか」
「次、右に曲がって。奥の障子戸が道場。お父さんはそこにいる、と思う」
「ありがとな、簪」
俊希くんのまとう雰囲気が少し変わった気がした。多分、お父さんの戦いに備えてだと思う。だけど、お父さんの前に絶対、
俊希くんが障子戸を勢いよく開けた。ほら、やっぱり…道場の真ん中には仁王立ちした
「あのドヤ顔女は簪の姉か何かか?」
「わ、私のお姉ちゃん…」
「か、簪ちゃんっ!?何でここに!?」
「………」
私はお姉ちゃんが苦手だ。お姉ちゃんは私とちがって何でもできる。その度に、私は従者の人達に陰口を叩かれる…そんな悪循環が続いたある日、お姉ちゃんが次期楯無になることが決まった。楯無とは更識家の当主に与えられる名前のこと。その日の時に私はお姉ちゃんに言われた。
「貴女は無能のままでいなさいな」
その言葉を聞いてから、私の世界から色が消えた。そして、私はお姉ちゃんが苦手になった。
「貴方、何で簪を連れているのッ!」
「簪が簪の意思で付いて来ただけだ」
「簪ちゃんがそんな事言う訳ないわ!!貴方が簪ちゃんを誑かしたのよッ!!」
「か、勝手なこと言わないで…っ!さ、俊希くんは悪くない。私がお願いしたの!」
「あ、貴方は簪ちゃんをどれ程っ!ゆ、許さない…ッ!!」
「簪の話を聞いてやれよッ!!」
私の前でお姉ちゃんと俊希くんの戦いが始まった。私の目にギリギリ捉えられるレベルの攻防が2人に繰り広げられている。お姉ちゃんは怒りに満ちた顔をしてる、けど…俊希くんはひどくつまらなそうな顔をしていた。
「簪、コイツ倒してもイイかな?」
「簪ちゃんに話しかけないでッ!!」
「うるせぇなァッ!!」
ズドォオオオオンッ!!
俊希くんは目にも止まらぬ速さで木刀を振るって、お姉ちゃんを吹き飛ばした。お姉ちゃんでさえも、俊希くんの剣が見えなかったんだ…そうじゃなかったら、お姉ちゃんは攻撃を当たったりしない、と思う。
「簪のことをテメェがとやかく言うんじゃねぇよ!!簪は簪なんだよ!テメェは簪の姉だの何なの知らねぇが簪はテメェの所有物でも何でもねぇ、漫画が好きなタダの簪なんだよ!!テメェの簪像を押し付けるなッ!!」(前話で俺の箒って言った事を忘れています)
私は、お姉ちゃんの、所有物じゃ、ない。漫画が好きな、唯の、簪……そんなこと言ってくれる人は、始めて。私を私として、更識簪ではなく簪を見てくれた…短いあいだだけど、漫画の趣味が偶々あっただけだけど、私は、そんな俊希くんのことをみると、心がきゅってなって…どきどきする……どうしたんだろう?私の心は。
「簪ちゃんの事を何も知らない癖に!知った口を聞かないでッ!!簪ちゃんは私が守ってあげないとダメなのよ!!」
「その考えが押し付けだって言ってんだろッ!簪がテメェに守って欲しいって言ったのか!?」
「そんな事は関係ないわ!だって、私は簪ちゃんのおねーさんなんだからそれをする義務があるのよ!!」
「もう、いい加減にして!!お姉ちゃんは、何で私を、見てくれないの…!?」
「そ、そんな事ないわよ…!私は簪ちゃんを誰よりもーー」
「ちがうっ!お姉ちゃんが見てるのは、お姉ちゃんに都合のいい、私…」
「違うのよ簪ちゃん!お願いだから私の話を聞いて!!今度こそ【失敗】しないからぁ!?」
【テメェの簪像を押し付けるなッ!!】
私は俊希くんが言ってた、言葉を思いだした。私は、この言葉を胸に込めて、私なりの言葉で、お姉ちゃんにぶつけた。
「私は、お姉ちゃんに守ってほしく、ない…っ!私は、お姉ちゃんがいなくても、やっていけるっ!!」
Break!!
「アポ、アポ…ア…ポ……」
お姉ちゃんは放心しながらうずくまった。多分だけど、私のコトダマが上手く聞いてくれた、のかな?少しだけだけど、フォローを入れとこうかな。
「お姉ちゃん、私はお姉ちゃんに守ってほしくないって、言ったよね…?私の言葉にうそはない。だけど、私はこう言いたかったの…お姉ちゃんの背中をまもりたい、ってね…」
「か、かん、簪ちゃぁああああああんっ!!ごめんねぇ!こんな駄目なお姉ちゃんでごめんねぇ!!」
お姉ちゃんが私の胸で泣いてる。初めてみた…お姉ちゃんが泣いてる姿。これを、見ていると、お姉ちゃんへの苦手意識が、なくなっていく気がした。お姉ちゃんも、完璧、じゃないんだ…なやんで、あがいて、もがいて…そうやって、がんばって生きてるんだ。
私もお姉ちゃんの身体をぎゅっとした。あたたかい…これが、家族のあたたかみ。これを感じてると、自然と涙がでてきた。私は、本当の意味でお姉ちゃんと姉妹になれた気がする。これも、全部俊希くんのおかげ。ありがとう、俊希くん。