ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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114ありんすちゃんまたしてもメイドになる

 ナザリック地下大墳墓の第九階層にある食堂は今しもメイド達の食事時で賑わっていました。

 

 ありんすちゃんもメイド──プレアデスの一人、ソリュシャンと向かい合って食事をしています。ソリュシャンは野菜サラダ、ありんすちゃんはペペロンチーノですね。

 

「……あの、ありんすちゃん様。ありんすちゃん様はアインズ様の正妻におなりにはならないのですか?」

 

 ありんすちゃんは器用にスプーンの上でパスタをフォークでクルクルッと巻き取るとスポポポーンッと吸い込みます。それから人さし指を頬に当てて首を傾げました。

 

「……うーん。どうでありんちゅかね? ありんちゅちゃはアインジュちゃまの娘、みたいなものでありんちゅ」

 

 突然、ソリュシャンが立ちあがりました。

 

「このままではアルベド様にアインズ様の正妻の座を奪われてしまいます! 以前のシャルティア様でしたら間違いなくアインズ様の正妻に……それなのに……私は今でもシャルティア様こそアインズ様に相応しいと思っています!」

 

 ありんすちゃんはソリュシャンを見向きもしないでパスタをフォークで巻き取っています。パクリ。

 

「……おいちいでありんちゅ。チョリチャも食べるでありんちゅ」

 

 相変わらずモグモグと食べているありんすちゃんの様子にソリュシャンは思わずテーブルをダン! と叩きました。

 

「──ソーちゃん、なに苛立っているっすか? あー……もしかしてあの日っすか?」

 

 激高するソリュシャンの後ろに同じくプレアデスの一人、ルプスレギナが現れました。

 

「ありんちゅちゃはちらないでありんちゅ。チョリュシャが勝手にバンバンなんでありんちゅ……ルプーも食事でありんちゅ?」

 

 ありんすちゃんは平然としてフォークでパスタをクルクルしながら尋ねました。

 

「……いやあ、食事はもう済ましたっすよ。ちょっとユリ姉を探しているんすけど……来月のアインズ様当番について……」

 

 ちなみにアインズ様当番とは一般メイドが交替でアインズ様のお世話をする、という仕事なのですが……

 

「──それだわ!」

 

 突然ソリュシャンが顔を上げました。そして小脇にありんすちゃんを抱えるとルプスレギナをひっぱって食堂を出ていきました。

 

 ありんすちゃんはまだペペロンチーノを半分しか食べていなかったのに……

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 翌日、アインズがベッドから起き上がるとアインズ番の一般メイドのシクススが立ち上がりました。と、丁度その時扉がノックされ、対応したシクススがアインズに報告します。

 

「……あの、アインズ様。交替のメイドが到着致しました」

 

 アインズが頷くとシクススが扉を開けて交替のアインズ様当番のメイドを入れます。

 

「ありんちゅちゃでありんちゅ」

 

 なんとメイド服を着たありんすちゃんでしたのでアインズは驚きました。

 

「……ありんすちゃんではないか? これは一体……?」

 

 シクススが平伏して答えます。

 

「なんでもペストーニャ様とユリ様から今日のアインズ様当番はありんすちゃん様がなさるとの事でございます」

 

「……し……しかし……」

 

 アインズが見るとありんすちゃんは胸を張り、張り切っているようでした。

 

「……頑張るでありんちゅ」

 

 アインズは悩んだ末にありんすちゃんのアインズ番を許可するのでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「……こ、これは一体……」

 

「……ああ。気にしなくとも良いアルベドよ。今日はありんすちゃんがメイドの当番だそうだ」

 

 ナザリック地下大墳墓の第九階層にあるアインズの執務室の扉を開けたアルベドは凍りつきました。無理もありません。

 

 毎日の日課であるアインズとの政策協議の場に、かつてのライバルの姿を見いだしたからです。

 

 凄まじい目付きで睨んでいるアルベドをよそにありんすちゃんはアインズの膝の上に座り、足をブラブラさせながらお絵かきに夢中です。

 

「……まあ、その……なんだ。たまには子供の意見を聞いてみるのも良いのではないだろうか? それに、な……ありんすちゃんが描いた絵は挿絵として有効活用──」

 

「──なりません! アインズ様の膝の上に乗るなんてもっての他です! アインズ様の膝の上はわたくしのものです!」

 

 アルベドは思わず叫びました。ありんすちゃんはゆっくりアインズの膝から降りるとアルベドに言いました。

 

「……ちかたないでありんちゅね。アルベドにゆじゅってあげるでありんちゅ」

 

 アルベドは歓喜しながらアインズの膝の上に座るのでした。

 

 ──やれやれ。これではどちらが子供かわからないな……

 

 アインズは思わずため息をつくのでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 どうにかこうにかありんすちゃんの一日アインズ番は夜を迎えました。普段ならばアインズの寝室で椅子に座って見守るのですが……

 

「……ありんすちゃんよ。無理せずに眠って構わないぞ……ん?」

 

 ありんすちゃんに振り向いたアインズは思わず破顔しました。

 

 なんと、ありんすちゃんは椅子に座ったままコックリコックリ居眠りしていたのです。無理もありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。

 

 アインズは優しくありんすちゃんを抱き上げると自分のベッドに寝かせてあげるのでした。

 

 良かったね。ありんすちゃん。良い夢を。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 翌朝やって来た交替のメイドを見てアインズは驚きました。

 

「……くっふっふっふ……おはようございますアインズ様。本日、アインズ様当番をさせていただきますアルベドに御座います」

 

 

※ありんすちゃんが挿し絵を描いてくれました

 

【挿絵表示】

 


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