ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

122 / 159
122ありんすちゃんまたまたせいおうこくにいく

 ローブル聖王国 首都ホバンスの王城では聖王になったカスボンドとケラルトの頭を飾ったサークレットが会議をしていました。

 

「うむ。ケラルトなのかサークレットなのか……とりあえずカルカ聖王女の復活は無理、という事だな」

 

 カスボンドの問いかけにサークレットが頷きます。

 

 カルカ聖王女の遺体はバラバラになった後で亜人のパーツと混ざってくっつけられてしまったのでした。

 

 ──と、突然大きな音と共に壁が崩れました。

 

「──何事か!」

 

 部屋の外で待機していた聖騎士団団長のレメディオスと副団長のグスターボが飛び込んできました。

 

「──な!」

 

 全員がその場に凍りつき言葉を失いました。

 

「──貴様は……ヤルダバオト! ……」

 

 絞り出すような声でレメディオスが叫びました。

 

「……ちょうでありんちゅ」

 

 レメディオスに答えたのはヤルダバオトではなく、赤いフルアーマーの小さな女の子でした。

 

「……な? ありんすちゃん殿……これはどういう──」

 

「──やり直しでありんちゅ」

 

 意味がわからず呆然とする一同を尻目にありんすちゃんは〈ゲート〉を発動させます。

 

「わたちはエ・ランテルで待ってるでありんちゅ。ヤルダバト後はよろちくでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんの姿が消えるとヤルダバオトが〈メテオ〉を唱え辺りは赤い光に包まれるのでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「……なんという事だ……カスボンド聖王陛下はご無事だろうか?」

 

 レメディオスは深くため息をつきました。

 

「ありんすちゃん様はエ・ランテルで待つと言っていましたよね。やはりここはまたもや助力を乞うしか……」

 

「……しかし明らかに今回はありんすちゃん殿がヤルダバオトを連れて来たのではないか。共犯に違いないぞ?」

 

 レメディオスはふと閃きました。

 

「そうだ。法国だ。スレイン法国ならばヤルダバオトを倒せるのではないか?」

 

 グスターボは悲しそうに首を振りました。

 

「……ぐぬぬぬ。なんという事だ……」

 

 再び現れたヤルダバオトは首都ホバンスを占領、更にカリンシャまでを占領してしまいました。現聖王であるカスボンド陛下は行方が知れません。唯一幸いな点はありんすちゃんが「民は殺ちちゃダメでありんちゅ」と言い残していった為、死者が出なかった事ですが……

 

 レメディオスは唇を噛み締めました。

 

「……仕方あるまい。エ・ランテルに向かうぞ」

 

 かくしてレメディオス団長の一行はまたしてもエ・ランテルに向かうのでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

「ありんちゅちゃにまかちぇるでありんちゅ!」

 

 ローブル聖王国に向かう馬車の中で真紅のフルアーマーの姿のありんすちゃんは上機嫌な様子でスポイトランスを振ります。

 

 今回のヤルダバオトの再来の経緯を聞いている従者ネイア・バラハはため息をつきました。

 

 レメディオス団長からは今回のヤルダバオトはどういうわけかありんすちゃんが使役しているらしい事、 ありんすちゃんを上手く宥めてヤルダバオトに去ってもらうように誘導する事を命じられていました。

 

「ちょうでありんちゅ!」

 

 不意にありんすちゃんが空間から素晴らしい装飾のある弓を取り出しました。

 

「こりはアルテメ……アルテメシュー……シュー……」

 

 ありんすちゃんは背中のおでかけリュックを降ろしました。可愛いピンクのウサギがついたリュックの中からクシャクシャになった紙きれを取り出します。

 

「……こりはアルテメシューテン……グスタースーパ……でありんちゅ。しゅごいルーン、しゅごい力を持ちたルーン……っているでありんちゅ。しんこきゅしる。ゴホン、せきしてから……貸してあげるますで……貸してあげる……ありんちゅ」

 

 ありんすちゃんはネイアの前にルーンの弓──アルテメイトシューティングスタースーパーを差し出しました。

 

 ネイアが恐る恐るアルテメイトシューティングスタースーパーを受け取るとありんすちゃんが言いました。

 

「こりをちゅかう時は……ええと……『よみがえりし秘術によりしルーンの力よ』と叫ぶんでありんちゅ」

 

 ネイアが頷くとありんすちゃんはニッコリしました。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

 ありんすちゃんを乗せた馬車は無事にカリンシャ郊外の解放軍の本陣に着きました。レメディオスは複雑な表情で聖騎士を整列させます。

 

「ありんすちゃん様に敬礼!」

 

 副団長のグスターボが号令をかけるとい並んだ聖騎士が一斉に敬礼をしました。

 

 馬車の扉が開くと従者ネイアが素晴らしい装飾がある弓を抱えながら気まずそうに降りてきました。

 

 一緒に降りてくる筈のありんすちゃんの姿はありません。

 

「従者ネイア、これはどうした事か?」

 

 レメディオスが険しい表情で訊ねました。

 

「……それがその……ありんすちゃんはまたしても三時に『おやちゅの時間でありんちゅ』とおっしゃるなり〈ゲート〉の魔法で……」

 

「──なんだ……と……」

 

 うーん。仕方ありませんよね。ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。