ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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123番外編 ジルクニフとリユロ

 その日のジルクニフは上機嫌でした。魔導国の属国となり、国内は安定してきました。時折、理不尽な事がごくごく稀に起きたりしますが概ね平和だといえました。

 

 今日はジルクニフと同じ境遇を経験した友人がアーウェンタールを訪れる予定です。ジルクニフはソワソワしながら友──クアゴアの王リユロの登場を待ちます。

 

「我が友ジルクニフよ。今回はお招き頂きありがとう」

 

「よく来てくれたね。我が友リユロよ。今日は君の好物を沢山用意したから楽しみにしてくれ」

 

 リユロはジルクニフと熱い抱擁を交わしました。その際に鋭い爪がジルクニフを傷つけないようそっと手のひらを返す優しさにジルクニフは感動するのでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「……そういえばこの前、例の女の子が来たんだが……」

 

 豪華な食事を終えて二人は歓談に移りました。

 

「赤いフルアーマーで例の大きなランスを振りながらアウラ様とマーレ様と一緒に見えてね……」

 

 リユロはそこで言葉を切り、顔を歪ませました。

 

「私が出迎えてひれ伏すと例の女の子は叫んだんだ。『こりからモグラ叩きゲームしるでありんちゅ』と」

 

 ジルクニフも顔を歪ませます。

 

「……それは酷いな……」

 

 二人は無言でため息をつきました。しばらくの空白の後、ジルクニフが口を開きました。

 

「私の所では先週……あの三人が来たよ」

 

 ジルクニフは遠い目をしました。

 

「……三人、か。するとやはり──」

 

 リユロの言葉にジルクニフは力なく笑います。

 

「……ああ。お察しの通りまたしても、だ。そう、『ありんすちゃん当てゲーム』だ」

 

 ジルクニフは目を閉じました。

 

「あの女の子は『アウアウはどれでしょう?』と聞いてきたんだ。──仕方ないだろ? アウアウなんていないんだから──」

 

 突然ジルクニフが荒々しく叫びました。リユロにはジルクニフの気持ちが痛い程わかりました。

 

 そうです。確かに『アウアウ』なんて名前の幹部はナザリックにはいません。だからジルクニフか『アウアウなんていない』と答えたのは間違いではないのです。

 

 ですがあの女の子──ありんすちゃんにとっては『アウアウ』とは『アウラ』の事なのでした。

 

 またしても沈黙が訪れました。

 

 しばらくしてまたジルクニフが口を開きました。

 

「……あの女の子は今、ローブル聖王国に行っているらしい」

 

 リユロはため息をつきました。見ず知らずのローブル聖王国に微かにあわれみを感じながら、です。

 

「……あの女の子は無邪気ゆえに恐ろしい。聖王国も可哀相にな」

 

 ジルクニフはまたしてもため息をつきました。何故なのだろう。魔導国の属国になったのにあまり脅威は変わらないのは何故なのだろう。

 

 ジルクニフとリユロはありんすちゃんがローブル聖王国に出かけている、つかの間の平和をせめて楽しもうと思うのでした。

 

 そして小さな赤い悪魔が一日でも長くローブル聖王国に滞在してくれる事を願うのでした。


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