ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
リ・エスティーゼ王国アダマンタイト級冒険者チーム“朱の雫”のリーダー、アズス・アインドラは叫びました。
「な、なんでーー?」
またしてもアズスのパワードスーツがひとりでに飛び去っていってしまったのです。
前回はテレポーテーションしてきたありんすちゃんが勝手に動かしてしまったのでした。その後、カルネ村でみんなのおもちゃになっていたのを頼み込んでようやく返してもらったのです。最近ようやく右手のドリルをふつうの手に替えたばかりです。
いったい誰の仕業でしょう?
「……あのよう……少女だな。きっと……」
どうやらアズスには心当たりがあるみたいですね。
※ ※ ※
アズスたち“朱の雫”は馬を飛ばしてトブの大森林にやって来ました。すると遠くに大きな何ものかの姿がありました。
「……あれか……いや、違う。あれは巨大なゴーレムか……?」
森からヌッと半身を突きだした巨大なゴーレムの姿がありました。そしてその上空には──
「あっ! 俺のパワードスーツ!」
アズスは駆け出していきました。
※ ※ ※
「まちゃしぇたでありんちゅ! ありんちゅちゃのガリダムでありんちゅ」
「……勝負です。ありんすちゃん。僕がアインズ様からお借りしたガルガンチュアの強さを見せつけて、あの、やります!」
「かちゅのはありんちゅちゃしぇんようガリダムでありんちゅ!」
うーん。どうやらありんすちゃんとマーレがそれぞれパワードスーツ、ガルガンチュアに乗り込んでいるみたいですね。
ガシィィィン! 二体は互いに手をつかんでまずは力比べです。
ギシギシギシ……どうやら力比べではガルガンチュアが圧倒的みたいですね。ありんすちゃんは素早くパワードスーツを離脱させ、上空に逃れます。
「……ありんちゅちゃしぇんようガリダム、こうなっちゃら、ひみちゅへいきロケットパンチでありんちゅ!」
うーん。ありんすちゃん、パワードスーツにはそんな機能はないと思いますが……それにそもそもありんすちゃん専用機ではないですよ。
「……ろけっちょお、はんちぃいい!」
ありんすちゃんは叫びますが勿論腕は飛んでいきません。
「ちかちゃないでありんちゅ! ろぉおけっちょおおお!」
ありんすちゃんはパワードスーツの右手で左腕をつかみます。ミシミシミシ……
「ぱぁああああんちぃいいいーー!」
ベシィイイイ! とありんすちゃんはねじりとった左腕を思いっきりガルガンチュアの頭部に叩きつけます。
「──や、やめぇろぉおお!」
アズスは泣きながら駆け寄ります。
「……効かないでありんちゅな。もっかいろぉおけっちょおお! ぱぁああああんちぃいいーー!」
ありんすちゃんはコクピットから乗り出すとパワードスーツの右手をむしりとって投げつけました。
「やめぇろおおお!」
「ろけっちょおお! きぃぃいっくぅぅう!」
「やめてくれぇええええ!」
「もいっぱちゅ! ろけっちょおおおお! きぃぃいっくぅぅう!」
「や、やめてくれぇええ!」
ありんすちゃんは次々にパワードスーツの手足を投げましたがガルガンチュアはびくともしません。
「さしゅがはガルガンチャでありんちゅ。こうなったら奥の手ちゅかうでありんちゅ!」
ありんすちゃんはパワードスーツの頭部をつかみました。
「それだけはやめろぅうう! 頼む! やめてくれぇええええ!」
アズスの叫びはありんすちゃんには届きませんでした。
「ろけっちょおおおお! あたまぁああ!」
パワードスーツの頭部は無惨にもむしりとられ、投げつけられてしまいました。
「……右手のドリルがなくなったから負けちゃでありんちゅ」
ありんすちゃんはパワードスーツの残骸を乗り捨てると言いました。
「……あの、ありんすちゃん。『ロケットあたま』じゃなくて『ロケットヘッド』じゃないかな?」
ありんすちゃんはマーレと一緒にガルガンチャの肩に乗ってナザリックに帰っていきました。
残されたアズスはパワードスーツの残骸に涙するのでした。仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ五歳児位の女の子なのですから。