ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
ナザリック地下大墳墓 第九階層執務室──重厚な机の前には階層守護者が勢揃いしていました。もちろんありんすちゃんもいます。
「ナザリック地下大墳墓の主たる至高のお方々のまとめ役、偉大なる魔導王陛下であらせらるアインズ様にアルベド以下各階層守護者の忠誠を──」
「──よい。かたぐるしい挨拶はよせ。アルベドよ」
アインズは片手を振ってアルベドを静止しました。スカートの裾を摘まんで会釈をしようとしていたありんすちゃんは、ちょっと止まってから優雅にお辞儀をします。
「こぬたびはありんちゅちゃもガンバリングでありんちゅまちゅ」
「──ガンバリング、か。ワハハハハ」
ありんすちゃんの可愛らしさにアインズもつい破顔します。
「──うん。うむ。さて、階層守護者達よ。今回集まってもらったのは他でもない。かねがね進行していた王国の件で重大な局面となったからだ。……アルベドよ。皆に説明を」
アルベドは軽く咳払いをすると話始めました。その内容は魔導国の傘下に入ったローブル聖王国に対し食糧などの支援物資を積んだ馬車の車列が魔導国を発った事、その途中のリ・エスティーゼ王国の辺境地でその車列が襲われ、支援物資が全て何ものかに奪われてしまった事、そしてその名分をもって魔導国は王国を攻め滅ぼすつもりである事、でした。
「ゆるちゃないでありんちゅ! あ、り、ん、ちゅう!」
ありんすちゃんは鼻を膨らませて叫びました。
「そうだ。王国にはそのつけを払わせてやるつもりだ。アウラ、マーレ、コキュートスはそれぞれ軍勢を率いて王都リ・エスティーゼを滅ぼせ。一人たりとも生かすな……ん?」
アインズはふと、ありんすちゃんの期待のこもった眼差しに気付きました。
「……うむ。ありんすちゃんも、だ。シモベを率いて滅ぼすのだ。ただし、無理はするな」
ありんすちゃんはコクンコクンと頷きます。
「よし。では明日開戦だ。現場の総指揮はデミウルゴスに任せる。ナザリックからの兵站などはセバスに一任する。各自細かく調整して事に当たれ。ナザリックの名を天下に示すのだ」
※ ※ ※
ありんすちゃんは興奮しながら第二階層に戻ってきました。鼻の穴がずいぶんと拡がっていますよ。
「明日はいよいよ王国攻めましゅでありんちゅ!」
ありんすちゃんは深紅のフルアーマーを身にまとい、高々とスポイトランスをかがげます。
「ありんちゅちゃが一番、やりしるでありんちゅ!」
ありんすちゃんの周りのシモベ達が拍手をしました。
「そいでもって、二番、やりもありんちゅちゃ!」
シモベ達が一層激しく拍手します。
「そいでそいで、三番、四番もありんちゅちゃ!」
ありんすちゃんはフンスと鼻から息を吐き出すと胸を反らします。
次にありんすちゃんは明日の準備を始めました。お出かけ用のウサギのリュックに次々と着替えとお菓子を詰め込みます。うーん……ありんすちゃんは遠足と勘違いしていそうですね?
まあ、ありんすちゃんは階層守護者とはいってもまだ五歳児位の女の子に過ぎませんから、戦争について理解していないのかもしれませんね。
ありんすちゃんはベッドの枕もとにウサギのリュックを置くと目をつぶります。明日寝坊しないように早めに眠るのですね。感心です。
※ ※ ※
夜も更けた頃──ありんすちゃんはベッドでパチリと目を開きました。うーん……もしかしたら興奮してなかなか寝つけないのでしょうか?
ありんすちゃんはベッドから降りると深紅のフルアーマーを身につけます。手には大きなスポイトランスを握りしめています。
「ありんちゅちゃが一番やり、しるでありんちゅ!」
ありんすちゃんはブンブンとスポイトランスを振り回しました。
「しょいで、二番、やりもしるでありんちゅ!」
ありんすちゃんは気合いを込めてスポイトランスを降り続けるのでした。
※ ※ ※
そして朝になり、いよいよ王国を攻める刻限になりました。
「……うん? なんだと? ありんすちゃんが到着していない、だと?」
アインズはデミウルゴスからのメッセージを受けて大きな声をあげました。
「……まあ、よい。とりあえず王国殲滅はありんすちゃん抜きで構わん。いや、むしろいたいけな幼女には参加させるべきでなかったかもしれぬな。では、デミウルゴス。頼んだぞ」
※ ※ ※
で、結局ありんすちゃんは……
アインズの命で様子を見にきたルプスレギナは深紅のフルアーマー着てスポイトランスを手にしてグースカ眠るありんすちゃんを見つけるのでした。仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ五歳児位の女の子に過ぎないのですから。