ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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143ありんすちゃんねぼうする

 ナザリック地下大墳墓 第二階層──ありんすちゃんはパチリと目を開きました。どうやら昨夜、スポイトランスを振っているうちに寝てしまったみたいです。起き上がると、目の前にルプスレギナが意地悪そうな笑みを浮かべていました。

 

「おんやぁ、ありんすちゃん、随分とゆっくりしているっすね。アインズ様はカンカンじゃないっすかね?」

 

「アインジュちゃま!」

 

 ありんすちゃんは真っ青になりました。大変です。今日は朝からナザリックの軍勢がリ・エスティーゼ王国の首都を攻略する作戦が行われているのでした。

 

 ありんすちゃんもアウラ、コキュートスと同じようにシモベを引き連れて王国の人間を殲滅する任務を与えられていたのでした。

 

「ありんちゅちゃは、じぇんじぇん、じぇーんじぇーん、遅刻なんかちないでありんちゅ! ちょっと、おしょくなっちゃだけで、ありんしゅ」

 

 口を尖らせて異議を唱えるありんすちゃんですが……うーん……

 

 ──まじゅいでありんちゅ……いしょいでお城しぇめるでありんちゅ!

 

 ありんすちゃんは大急ぎで〈グレーターテレポーテーション〉を唱えました。

 

 

 

※   ※   ※

 

「まにあっちゃ、でありんちゅ」

 

 ありんすちゃんは幾つもの塔がある大きな建物を見てホッとします。

 

 マーレやコキュートスにかかれば王城もあっという間に瓦礫の山に変わってしまうでしょう。

 

「ありんちゅちゃがチャッチャッと片付けしるでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんは王城に向かって……うん? ちょっと待ってください。ありんすちゃんが向かっているのはリ・エスティーゼ王国のロ・レンテ城ではありませんよ。うーん……この建物はたしか…………そうです。ありんすちゃんは間違ってスレイン法国に来てしまったみたいですよ。

 

「一番やり、間に合ったでありんちゅ!〈ヴァーミリオン・ノヴァ〉でありんちゅ!」

 

 ありんすちゃんは塔を次々に破壊していきました。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

「た、大変です! 何ものかが結界を破壊して攻撃してきます!」

 

 一人の神官が慌てて駆け込むと同時に激しく建物が揺れました。

 

「何事じゃ! まさかエルフ共が攻めてきたというのじゃあるまいな?」

 

 最高神官長は厳めしい顔をさらに厳しくして咎めます。

 

「……それが……小さな赤い鎧の子供の姿のバケモノが……突然攻撃してきまして……」

 

「……バケモノ? そんなに強い相手なら私が出ようか?」

 

 銀と黒の髪のまだあどけない表情の少女が立ちあがりかけました。──番外席次〈絶死絶命〉──法国最強の神人は肩に得物のバルデッシュを担いで散歩にいくように出て行こうとしました。

 

「……まて。お前が出るのは不味い。評議国の目もあるだろうからな」

 

 番外席次を制止すると最高神官長は目を閉じて 何やら考え込みました。

 

「神官長。では、我らが……」

 

 その場にいた何名かの漆黒聖典隊員が名乗りをあげます。彼らは法国が誇る各自が一騎当千の実力者です。

 

「──いや、私が出よう。法国の至宝、〈ケイ・セケ・コゥク〉を使う」

 

 最高神官長は力強く頷きました。

 

「真なる姿を得た〈ケイ・セケ・コゥク〉ならば必ずやかの者を意のままにしてくれよう!」

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 ありんすちゃんはいくつもの塔や建物を壊しながら中央の一際大きな建物にやってきました。

 

「今度は〈メテオ〉にしるでありんちゅ。流れ星、おほしちゃまでありんちゅな」

 

「──待て! 喰らえ!」

 

 ありんすちゃんは突然現れた男にビックリしました。初老の男が半裸、いわゆるブーメラン水着のような物を着ているだけの裸の格好で偉そうに腕を組んで立っていたのですから。

 

「……おかしい? 何故だ? 〈ケイ・セケ・コゥク〉よ。力を示せ! 何故だ? 何故光らぬ?」

 

 初老の男──最高神官長は狼狽えますが、当たり前ですよね。最高神官長が穿いている、もしくは着ているのは実はワールドアイテムではなくてマーレのパンツなのでしたから。

 

 ありんすちゃんは器用にスポイトランスの先を使ってマーレのパンツを脱がしてしまいました。

 

「…………なんという屈辱……か……」

 

 股間を両手で隠した最高神官長にありんすちゃんが迫ります。

 

「──ふ。人類最強〈絶死絶命〉、この私が相手だ! 子供相手だろうと手加減はしない!」

 

 ありんすちゃんはバルデッシュを振るう番外席次に向き合います。

 

「……ありんちゅちゃがやっちゅけゆんでありんちゅ!」

 

 横凪ぎされるバルデッシュの刃をありんすちゃんはスポイトランスで突き上げました。番外席次の体が流れるとそこに──

 

「──ありんちゅちゃパーンチ!」

 

 スポイトランスから片手を離したありんすちゃんが握りこぶしで殴りつけます。

 

「──ありんちゅちゃキーック!」

 

 番外席次の顔面にありんすちゃんの蹴りが炸裂しました。

 

 蹴られた勢いで飛ばされた番外席次はヨロヨロと立ちあがりました。

 

「……強い。強いな…………仕方ない。最後の手段だっ!」

 

 番外席次は懐から何かを取り出しました。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

「……あれ? ありんすちゃん、結局来なかったんすか? おかしいっすね? ちゃんと〈グレーターテレポーテーション〉で移動したはずなんっすけど……」

 

 リ・エスティーゼ王国首都、リ・エスティーゼを焼け野原にして完膚なきまで叩き滅ぼした魔導国陣営でルプスレギナが首を傾げました。

 

「……うーむ?」

 

 アインズもまた、首を傾げるのでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

「…………ありんすちゃんが戻った、だと。うむ……では執務室で会おう。アルベドも同席させろ」

 

 慌てた様子のシモベからの報告を受けたアインズは一人呟きました。

 

「………さて……どうしたものか……」


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