ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

19 / 159
019ありんすちゃんだいかつやくする

 その日ありんすちゃんはお昼頃に目が覚めました。なにやらシモベ達がざわついています。

 

 第一階層や第二階層のスケルトンやエルダーリッチ達がやたらと張り切っています。

 

 ありんすちゃんは自分の守護階層の見回りをしてみました。今回はなんとありんすちゃん一人で見回ります。いつもだったらシモベの二人のヴァンパイア・ブライドと一緒でないと見回りしないのに不思議ですね。

 

 実は先日、アウラとアルベドから一人で階層の見回り出来ないとありんすちゃんがからかわれたからです。

 

「なに、シャルティアってもしかして自分の階層の見回り、一人じゃ出来ないの? そんなのまるで赤ちゃんじゃん」

 

「……おぎゃー。……ちょっと言ってみただけよ。別に意味はないわ」

 

 よりにもよって、ありんすちゃんを赤ちゃん扱いしたんです。

 

 許せませんよね?

 

 アウラなんか、アウラなんかこの間おねしょしたシーツを第六階層の片隅で干していたってマーレから聞いちゃいましたから。ありんすちゃんはもうおねしょなんてしません。

 

 そりゃたまにシーツが濡れていた朝があったかもしれませんが、寝ぼけてちょっとお水をこぼしちゃったのに違いありません。

 

 ありんすちゃんは気持ちを入れ替えて見回りに集中しました。

 

 ふと見ると恐怖公が眷属を並べてフォーメーションの練習をしていました。

 

「──違うぞ、違う。この動作の次は第一班がこうズササササっとまず足下をすくう。で、第二班が視界を奪いつつ顔面を制圧。そう、もっと素早く。で、第三班第四班が衣服の隙間から侵入。でこの時に悲鳴を上げるから第五班が口から……」

 

 恐怖公はありんすちゃんに気がつくと恭しくお辞儀をしました。

 

「これはこれは我が領域の階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン様。どうぞ我が眷属をご覧下さいませ」

 

 たくさんのゴキブリ達がずらりと整列してありんすちゃんにお辞儀をしました。

 

 ありんすちゃんは恐怖公とその眷属がちょっと苦手です。正直なところ、出来るだけ近づきたくないのが本心でした。そこでありんすちゃんは適当に挨拶してその場を去りました。

 

 ひと通り見回りをして、お風呂に入ったら今度はお昼寝をします。え? お昼まで寝ていたから必要ないですって?

 

 とんでもありません。睡眠不足はお肌の大敵なんですよ?

 

 え? いつもだったら「だって、ありんすちゃんは5歳児位だから仕方ない」というですって?

 

 気まぐれでちょっと変えてみました。

 

 さてさて、ありんすちゃんが再び目を覚ましたのは夜も更けた頃でした。夕方から一眠りすれば当然ですよね。ありんすちゃんは第一階層に行ってみました。

 

 何だか騒がしいので近付いてみると冒険者達がスケルトンと闘っています。戦闘メイド達が見物しながら声援を送っています。

 

「ルプー、みんなずいぶん楽しそうでありんちゅね?」

 

「一緒に見物するっすか? 面白いっすよ?」

 

「アァ、アンナ時ニ飛ンジャイイ的ジャネ?」

 

 ありんすちゃんも応援してあげる事にしました。ありんすちゃんはあまりにも興奮してしまったので階段の手すりから大きく身を乗り出してしまいました。

 

「──危ない!」

 

 冒険者の盗賊がありんすちゃんを助けようと振り向いた瞬間にスケルトンの一撃が見事に当たりました。

 

「ば馬鹿者しゃ……」

 

 緑の冒険者が気を取られてこれまたスケルトンの一撃。次々と冒険者達はまるでドミノ倒しのように地に伏していきました。

 

「ナザリック・オールドガーダーの出番までいかなかったわね」

 

「セツヤク出来テ良カッタジャナイノ」

 

「やったっすね。シャルティア様、大活躍っすよ」

 

 ありんすちゃんは張り切って第二階層に向かいました。

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 第二階層には他の冒険者達がいました。

 

 どうやら落とし穴に落ちそうになっています。ありんすちゃんは棒でカブトムシみたいな冒険者をちょんちょんと突っついてみました。

 

 カブトムシは脇の下を突っつくとヘンな声を出すので面白くなりました。

 

 ツンツンツツン

 

「あふん。あふ、あふん」

 

 ……ツンツンツンノツツン

 

「……あ、あ、あふふん、ふふん」

 

 ありんすちゃんは指揮者のように棒を構えて──それそれ、それ。

 

 たまらなくなったカブトムシは向きを変えました。

 

 ありんすちゃんからだとお尻が突っつきやすそうですよ。

 

 ツンツンツンツン……ブスッ?

 

「あふあふあふん。んへ? あ゛ーーー」

 

 カブトムシは暗闇に落ちていってしまいました。穴の底で恐怖公がありんすちゃんに感謝のお辞儀をしました。周りに眷属達も並んでいます。ありんすちゃんは自らの活躍をアインズ様に報告しようと第九階層に向かいました。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 第九階層にアインズ様はいませんでした。メイド達の話では他の階層守護者達と一緒に第六階層に行っているらしいとの事でした。

 

 ありんすちゃんをのけものにしてみんなでケーキでも食べているかも知れませんね。

 

 ちなみにありんすちゃんが好きなケーキはモンブランです。もちろんてっぺんの栗を一番最初に食べます。

 

 ケーキの事を考えながら、ありんすちゃんは第六階層に到着しました。

 

 コロッセウムの前に来るといきなり扉が開きました。みるとアウラが扉を開けたところでした。

 

「──アルシェ! 逃げてぇ!」

 

「うん。ぎっどみんなもぎでね」

 

 ありんすちゃんがコロッセウムに入ろうとしたら中からロケットみたいな勢いで飛び出してきた女の子と正面衝突しました。

 

 女の子はありんすちゃんが倒れたのを見てびっくりして 抱き起こしました。

 

「──おお? シャルティアがアルシェを捕まえた! お見事ぉ!」

 

 アウラが叫んでいます。本当はありんすちゃんの方が捕まったような感じなんですが。

 

 今夜はありんすちゃんが大活躍の夜でした。

 

 

 

※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました

 

【挿絵表示】

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。