ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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021ありんすちゃんとジルクニフ

 バハルス帝国の王城にドラゴンに乗ってやって来たありんすちゃんとアウラ、マーレの三人は広場にいた帝国兵士達を魔法で生き埋めにしてしまいました。慌てて顔を出した皇帝、ジルクニフの懇願によりありんすちゃん達はひとまず皇帝と会見する事にしました。

 

「さて、ご使者殿。私がバハルス帝国皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスである。……先だってフィオーラ殿が言っていた件だが、私には全く心当たりが無いのだか?」

 

 ムッとしたアウラを制してありんすちゃんが口を開きます。なにしろアインズ様から今回の任務の責任者に指名されたのはありんすちゃんなのですから。

 

「ナジャリックにワーカーが泥棒しに来ちゃでありんちゅ。皇帝の命令でありんちゅ」

 

 ありんすちゃんの鋭い指摘にジルクニフは動揺しました。

 

「なにを……いや、言いがかりだ。私は知らぬ……なにか誤解されているのであろう」

 

(ワーカー達を送り出す計画は慎重に進めたから私の関与を示すものは何もないはずだ。……きっと口から出任せに決まっている)

 

 ジルクニフの心の中の葛藤を見抜くようにありんすちゃんが可愛いらしく小首を傾けました。

 

「アインジュちゃまに謝罪しないでありんちゅね。じゃあ帝国はおちまいにするでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんはそう言うと立ちあがりました。両隣のダークエルフも立ちあがり、少女のダークエルフが黒い杖を振り上げました。ジルクニフは慌てました。と、同時に理解するのでした。この魔導国の使者には駆け引きが全く通じないという事を。彼らは自分達がそこにいる事にお構いなしに王城もろともこの場にいる全員を抹殺しようとしている事を。そして、そこにはジルクニフ側の釈明を微塵も許さないという事を。

 

「す、すまなかった。謝る。いや、是非とも謝罪させて下さい! この通りだ」

 

 ジルクニフが必死に懇願するとありんすちゃんはニッコリしました。

 

「しょうでありんちゅか。しょれならこの城壊すのはやめるでありんちゅ」

 

 ジルクニフは安堵しました。と、同時になんとか主導権をこちらで手に入れられないか目まぐるしく頭を回転させるのでした。

 

「では、アインズ殿に謝罪にナザリック地下大墳墓とやらに行くとして……準備等々でみっか、いや、十日程待って頂けないだろうか?」

 

 ジルクニフはありんすちゃんの瞳をじっと見つめながら訊ねました。ありんすちゃんは顎に人さし指を当てて悩む素振りをしてみせます。ジルクニフは今こそ好機とばかり言葉を続けました。

 

「その、アインズ殿にプレゼントを用意したりしないとならないのでね」

 

 プレゼントという言葉に明らかな反応をありんすちゃんが示したのを見て、ジルクニフはほくそ笑みました。しかし、次の瞬間、ジルクニフのささやかな希望は隣のダークエルフの少年によってうち壊されてしまいました。

 

「あのさぁ、アインズ様から『すぐ来るように』伝えろって言われているんだよね。『すぐ』が何日後かはそっちが決めて構わないけど」

 

 ジルクニフは苦虫を噛むような気持ちを味わいました。どうやら子供達にしか見えない使者を寄越したアインズは相当な策士と思われました。

 

「準備などもろもろ整えて三日後までにはそちらを伺おう」

 

 ジルクニフは絞り出すかのような声で答えました。国内では鮮血帝などと呼ばれている自分が年端もいかない子供達相手に手も足も出ないという屈辱……

 

「じゃあアインジュちゃまにちゅたえるでありんちゅ。しょう言えば、生き埋めの人たち、掘り出しゅの手伝ってあげるでありんちゅか? まぁ──」

 

 ありんすちゃんは両手をパンと打ち合わせるとニッコリと笑みを浮かべました。

 

「──おせんべいみたいにペッタンコでありんちゅかもしれないでありんちゅね」

 

 ジルクニフはようやく反撃の機会を得たかのようにニッコリと微笑みました。

 

「それはありがとうございます。ではお願いしてもよろしいですか?」

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

 ジルクニフは後悔していました。あの会見の最後に余計な頼みなんかをした事を。ありんすちゃんはジルクニフの言葉に対して素直に頷きました。それからすでに三時間──

 

「マーレ、もうちゅこし盛り上げるでありんちゅ。出てきたでありんちゅ」

 

 マーレが魔法で隆起させた地面からありんすちゃんが遺体の一部を次々に取り出します。それを一つ一つジルクニフが受け取ります。

 

「顔が半分でありんちゅね。あとは足でありんちゅ。この鎧は三角に潰れちぇておもちろいでありんちゅ」

 

「ほらほら、皇帝。しっかり持つ! さっきから頭を二つ落としたじゃん。あんたの部下なんだから大切に扱いなよ?」

 

「……ハ……ハイ」

 

 ダークエルフの少年に叱られて、ジルクニフは慌てて兵士の成れの果てを拾いました。無惨な光景に付き合わされて手も足も震えが止まりません。

 

(……まさに地獄だ……)

 

 ジルクニフ自身が頼んだ事である為、今さら嫌味だったなどと言い訳する事も出来ません。

 

 まだまだ終わりが見えないこの地獄の責め苦にジルクニフはただただ涙ぐむだけでした。

 

 

※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました

【挿絵表示】

 

 


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