ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
トブの森の奥深くにある貴重な薬草を採取するという難解なクエストを引き受けた“漆黒”のモモンことアインズは、途中でドライアードのピニスンと出合いました。そしてピニスンの案内により、かつて七人組により封印された『世界を滅ぼす』という魔樹──ザイトルクワエの元にたどり着きます。
同行したアウラのスキルにより目覚めたザイトルクワエを見上げながら、アインズは守護者達に対プレイヤー戦闘の訓練を実践させる事にするのでした。
「コキュートス、マーレ、デミウルゴス、ご苦労」
〈ゲート〉により到着した守護者達にアインズがねぎらいの言葉をかけました。
「アインズ様がお呼びとあらば、即座に」
「デミウルゴスノイウトオリダ。アインズ様、ゴメイレイヲ」
「……あの……アインズ様のお役に、あの……立ってみせます」
アインズは満足そうに頷いてみせました。離れた場所でハムスケと一緒に様子を見ていたピニスンが騒ぎだしました。
「何あれ? いつの間にか増えたよ? どこから現れたのかな?」
「うるさくしない方が身のためでござるよ。あの方達は普通ではないのでござる」
やがて再び〈ゲート〉が開かれアルベドとありんすちゃんが現れました。
「アインズ様、おそくなり申し訳ございません」
「よい。アルベドよ」
と、アインズはアルベドの隣にありんすちゃんがいることに気がついて、一瞬ギョッとしました。ありんすちゃんは既に真紅のフルプレートにスポイトランスを持ち、やる気満々です。
「……その……アルベドよ。シャルティアはナザリックで待機すべきだと思うのだが……」
「申し訳ございません。どうしてもついていくと言い張りまして……」
ありんすちゃんは鼻からフンスと息を吐きながらスポイトランスをブンブン振っています。それを見てデミウルゴスは静かに肩をすくめてみせました。
「……ゴホン。……では本題に移ろう。今回、階層守護者達に集まってもらったのはお前たちのチームとしての戦闘能力を確かめたい。それと、全員の力が見たいから決して本気を出すな。私は後ろで見させてもらおう」
※ ※ ※
「一番さいちょにいくでありんちゅ!」
ありんすちゃんがトテトテと駆け出しましたがたちまちの内にコキュートスとアウラに追い抜かれてしまいました。
「わら……わたちがさいちょでないとイヤでありんちゅ!……う、うわーん!」
コキュートスとアウラがザイトルクワエに攻撃しているのを見ながら、とうとうありんすちゃんが泣き出してしいました。仕方ありませんよね。ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。
「大変だ。あの子供危ないよ! お母さんは助けようとしないの?」
興奮して叫ぶピニスンをハムスケが宥めます。
「あの子供は実はとても強いでござるよ。それにあの女性はシャルティア殿の母親では無いでござる。決してそのような事を言ってはいけないでござる。命が……」
コキュートスとアウラは途中で攻撃を止めてありんすちゃんを宥め始めました。そこにアルベドがやって来て二人に言いました。
「コキュートス、アウラ、あなた達はアインズ様のお言葉を思い出しなさい! アインズ様は私達守護者が協力して戦う事をお試しになっているのだわ」
「うん。アルベドの言う通りだね。……それと我々守護者はアインズ様よりワールドアイテムをお預かりしていますが、それを敵に奪われない為にも連係は必要ですね」
デミウルゴスも加わって諭します。マーレがアルベドとデミウルゴスに訊ねました。
「……あ、あの……するとぼ、僕たちは、……どう戦えば?」
「合体攻撃でありんちゅ!」
アルベドやデミウルゴスが答えるより先にありんすちゃんが叫びました。
※ ※ ※
「……うーん。どうしたのかな? なんだか揉めているみたいだけど……世界の危機だというのに何をしているんだよ!」
ピニスンは苛々しながら守護者達を見守りました。
「うわっ! 何をするんだろう? 女の人とシッポの男の人の上に昆虫みたいな人が乗っかった。今度はダークエルフの二人が両側にぶら下がったぞ? ……あー危ない。小さい子供がてっぺんに……」
「うーん……それがしにも全くわからないでござるよ」
強情なありんすちゃんの意見を受け入れて完成した? ナザリック階層守護者の合体形態『ふぁいなるあたっくモード』になった守護者達はヨロヨロしながらザイトルクワエに向かいました。てっぺんのありんすちゃんは大喜びです。
「やってられるかー!」
『右足』のアルベドか思い切りコキュートスを投げます。コキュートスはアウラマーレを左右に飛ばし、さらに頭上のありんすちゃんをザイトルクワエの頂点に飛ばします。ありんすちゃんはスポイトランスを構えてロケットのように飛んでいきます。
「うわー! 凄い! あの昆虫の人が四本の剣を出したよ!凄い勢いで枝を切っていく。……赤い子供が大きな槍を突き刺す度に魔樹が少しずつ萎んでいく!」
ピニスンとハムスケが呆気に取られる内にどんどんザイトルクワエは刈り込まれていき、さらにあらゆる攻撃を受けて萎んでいきます。てっぺんにあった薬草はありんすちゃんのスポイトランスで凪ぎ払われた後、デミウルゴスの手に無事収まりました。
「うーん……じゅいぶんちっちゃくなったでありんちゅね」
百メートルもあったザイトルクワエはもはや一メートル程の高さになり、魔樹の面影はなくなっていました。マーレが養分いっぱいの雨を降らすと、なつくようにキューキュー鳴いて甘えます。結局、ザイトルクワエはナザリック地下大墳墓の第六階層でピニスンが世話をする事になったそうです。
※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました