ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
ナザリック地下大墳墓第九階層にありんすちゃん、部下に抱えられたエクレア、そしてもう一人の姿がありました。エクレアが二人の前に立ちます。
「あー、えーコホン。今回、我がナザリック反逆団に新たに新人が加わりました。彼は帝国から出向している人間に過ぎないので戦力として頼りないが、本人のやる気を見込んで特別に我がエクレア団の入団を許可するものとする」
「えーと……はじめまして。私はロウネ・ヴァミリネンです。この度、同志の中に加えて頂きまして誠にありがたく存じる次第にあります」
緊張のあまり直立不動の姿でロウネが挨拶をしました。エクレアは部下に抱えられたまま、面倒くさそうに指示を出します。
「じゃ、ロウネはシャルティア隊員に任せる、という事で」
「らじゃ、でありんちゅ」
エクレア隊長の命令にありんす隊員は元気に返事をします。ロウネはありんすちゃんがまだ5歳児位の女の子なので思わず慌てました。彼の目にはエクレアを抱えている部下の方がありんすちゃんよりも格上に見えたからです。
「あの……こちらのシャルティア様はいささか幼すぎるのでは……」
「こう見えてシャルティア隊員はナザリックでもなかなかの強者なんだ。しかもかつてアインズ様と戦った事すらある。ガチンコでな」
ありんすちゃんは得意げに胸を反らせました。ロウネにはこの幼女と魔導王が戦う様子が全く想像出来ないので呆気に取られるばかりでした。そんな新米隊員のロウネはエクレア隊長の声で我に返りました。
「では、諸君。今日もナザリック制覇の為、反逆活動に勤しむとしよう」
エクレア隊長の音頭で隊員二名はオーと力強く拳を突き上げるのでした。
※ ※ ※
トイレ掃除に追われた一日がようやく終わり、第六階層の居住区に用意された自室に戻ったロウネはベッドに横たわりました。
(陛下の指令にあったダークエルフの少女との接触は、取り巻きのエルフによってほぼ不可能みたいだが、どうにか魔導国内の反乱勢力に加わる事が出来たぞ。あのエクレアにシャルティア……見ためはペンギンと幼女に過ぎないが恐るべき強者みたいだ。しかも、よく判らないがあの魔導王と争ったらしい。この情報をもっと集めれば、皇帝陛下もご満足頂けるに違いない)
※ ※ ※
翌日もエクレア団が反逆活動に勤しんでいると、デミウルゴスが通りがかりました。
「これはデミウルゴス様。如何ですかな? そろそろ私のナザリック反逆の力添えを戴けませんでしょうかな?」
「反逆しゅるでありんちゅ」
デミウルゴスは優しくありんすちゃんの頭を撫でながら答えました。
「そうだね。考えておくよ。……そうだ、その反逆活動を是非とも頼みたいのだかね。第五階層で『綺麗なもの』『バラバラなもの』『グチャグチャなもの』を整理して欲しいのだが、頼めるかね?」
「まかちぇるでありんちゅ」
やたらと張り切るありんすちゃんを先頭にエクレア団は第五階層に向かうのでした。
※ ※ ※
「うーん……これは大変でありんちゅね」
「部下を大勢呼ばなくては……この際、恐怖公の力を頼るしかないか……」
「……仕方ないでありんちゅね」
呆然として言葉を失ったロウネをよそにありんすちゃんとエクレアは淡々と相談を進めていました。
数え切れない死体の山を前に恐怖公の眷属達の力を借りれば作業が楽になるのはわかっていましたが、ありんすちゃんはちょっと気が引けてしまっていました。自分の階層の領域守護者ではありますが、ありんすちゃんは恐怖公とその眷属が苦手なんです。仕方ありませんよね。ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。
尚、その後ロウネは自室に籠って二度と外に出てくる事はありませんでした。