ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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029ありんすちゃんりょうりをする

 ナザリック地下大墳墓第六階層にありんすちゃん、アウラ、ユリ、ナーベラルが集まっていました。野外キッチンが用意されていて、どうやら皆で料理に挑戦してみるみたいですね。

 

「うーん……やっぱり駄目だね。あたしもただの消炭みたいに真っ黒焦げになっちゃった。……やっぱりユリみたいに料理スキルが無いと無理なのかなぁ?」

 

「ただ、食材の肉を焼いてステーキにするだけですが、無理みたいですね」

 

 アウラが作った消炭料理を前にして、思わずユリはため息をつきました。以前、アインズが一般メイドに試させてみた時も皆、やはり消炭のように真っ黒焦げにしてしまったそうです。この結果はたとえ階層守護者といえども同じのようです。

 

「次はわら……わたちがやるでありんちゅ」

 

 フンスと鼻から息を吐きながらありんすちゃんがキッチンに向かいました。ありんすちゃんはやる気満々の様です。

 

「……いやいや、シャルティアも無理だってば。あたしで無理なんだからシャルティアにはできっこないよ?」

 

 ありんすちゃんはキッとアウラを一睨みして肉を手に取ります。フライパンにバターを敷いてやさしく肉を乗せます。ここまでは順調です。しかし……肉に熱が通り出した瞬間……ジュンと音がして真っ黒焦げの消炭になってしまいました。

 

 と、さっきから一人黙って料理の様子を観察していたナーベラルが口を開きました。

 

「この間、アインズ様と冒険者をしていた時、敵を〈ツインマキシマイズマジック・チェイン・ドラゴン・ライトニング〉で倒したのですが焼けた死体がとても美味しそうな匂いでした」

 

「ちょれでありんちゅ! ナーベ、お肉を魔法で焼くでありんちゅ」

 

 アウラもうなずいています。

 

「うんうん。試してみようよ?」

 

「……あの……それは料理とはいえないのでは?」

 

 若干一名、気乗りしない者がいましたが、ナーベラルはキッチンのフライパンに乗せられた肉を前にして魔法を発動させました。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「うーん……やっぱり人間でないと駄目でありんちゅね」

 

 ナーベラルの〈ツインマキシマイズマジック・チェイン・ドラゴン・ライトニング〉で焼かれた肉はまたしてもただの真っ黒焦げの消炭になったのでした。

 

「うーん……人間かぁ。丁度この階層に一人いるけど、アインズ様から危害を加えるなって厳命されているんだよね」

 

 ぼやくアウラの隣でありんすちゃんが顔を上げました。どうやら心当たりがあるみたいですね。

 

「わたちに任せるでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんは魔法〈グレーターテレポーテーション〉を発動させました。次の瞬間、ありんすちゃんの足元には一体の氷漬けの死体がありました。

 

「たくちゃんあるからいくつでも持ってこられるでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんはどうやら第五階層に氷漬けになっている死体の事を思い出したみたいですね。これで実験が出来ます。ナーベラルは今度は死体に向かって魔法を発動させました。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「うーん……やっぱり生きていないと駄目でありんちゅね」

 

 結局、人間の死体でも同じように真っ黒焦げの消炭になってしまいました。

 

「生きてる人間かー……やっぱりこの階層にいるのが丁度良いんだけどねー……かといってシモベを焼くのもね……あ、そうだ。丁度良いのがいた」

 

 アウラは突然自分たちの住居に戻ると鳩が三羽入った篭を持って来ました。

 

「これは帝国のネウロ……だっけ? ……今第六階層に住まわせているんだけど、持って来てた鳩を逃がしちゃったんだよね。で、すぐにあたしが回収しておいたんだ」

 

 早速、ありんすちゃん、ナーベラル、アウラはそれぞれ魔法やスキルを利用してそれぞれこんがりと美味しそうな鳩の丸焼きを作りました。アウラはファイヤボールやライトニングなどの魔法を覚えていない為、スキルで魅了して鳩に自らグリルに飛び込ませました。

 

 こうしてありんすちゃん達は『丸焼き』という料理を覚えました。アインズは大喜びでしばらく食堂で『ありんすちゃんの丸焼き料理』が続いたという事です。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 第六階層の自分用の住居に閉じ籠っていたロウネ・ヴァミリネンはひたすら書き物をしていました。

 

(陛下に伝えなくては。魔道王打倒の獅子身中の虫、ナザリック地下大墳墓の反逆勢力の存在──エクレア団──についての情報をなんとしても伝えなくては……)

 

 

 ロウネは三通の手紙をしたためると小さく折って小さなリングに挟みました。それを三羽の鳩の足にそれぞれ着けて放しました。青空に向かって飛び立っていく鳩の姿を目で追いかけながらロウネは満足気に頷くのでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 それから数日後、ロウネは相変わらず引きこもり状態でしたが、気力が回復してきたので夕食に出された鳩の丸焼きをペロリと平らげたそうです。

 

 尚、臨時料理人となって丸焼き料理を作っていたありんすちゃんでしたが、残念ながら臨時料理人をクビになってしまいました。ありんすちゃんがカボチャの丸焼きを作ろうとして畑をすべて焼いてしまったり、焼き魚を作ろうと生け簀を三つも丸焼けにしてしまったからですって。

 

 仕方ありませんよね。だってありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子に過ぎないのですから。

 

 

※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました

【挿絵表示】

 


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