ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
王国のアダマンタイト級冒険者、蒼の薔薇のマジックキャスター イビルアイ、そしてイビルアイから奪った仮面をつけたありんすちゃん。
ゲヘナの時に全く見分けがつかなかった事からありんすちゃんはアインズ様の密命で王都に潜り込んでスパイをする事になりました。
名付けて『魔法少女いびるありんすちゃん大作戦』です。
なんでも魔法少女にはペットのお供がつきものだというコキュートスの強い主張でエクレアがお供する事になりました。
※ ※ ※
まずは準備をしましょう。ありんすちゃんは大切にしまっておいた仮面を取り出します。あのイビルアイが気絶した時に手に入れた仮面です。
ありんすちゃんは仮面をつけるとクルリと回ってみせます。……あら不思議。誰が見てもどこから見てもイビルアイそのものです。
かくてありんすちゃんとエクレアは王都に潜入するのでした。
今回のターゲットは蒼の薔薇のリーダー、ラキュースです。
ありんすちゃんは何が何でもラキュースの弱みを握らないといけません。
まずは何気ない会話から探りを入れます。偽物とバレないように、さり気なく、さり気なく、です。
「ラキューチュ、良い天気でちゅね」
「……そうね」
「こんな日はケーキが食べたいでんちゅね?」
「……そうね」
ありんすちゃんは上の空なラキュースに少しムカついてきました。ラキュースはありんすちゃんを赤ちゃん扱いしているのに違いありません。
「ガガァランにはおひげがありまちゅね?」
「……そうね」
ありんすちゃんは用事を言い訳にしてラキュースにサヨナラを言ってその場を離れてみました。
そして物陰からこっそりと観察していました。
凄いですね。とても5歳児位の女の子とは思えない、名スパイぶりですね。
ありんすちゃんに見張られている事を知らないラキュースは、キョロキョロ周囲を伺っていたと思うと一冊のノートを取り出して熱心に何か書き込み始めました。
時折朱くなったりしながら、機嫌良さそうに鼻歌まじりに一生懸命になにやら書いています。これはきっと、アダマンタイト級冒険者ならではの何か重要な情報に違いないですね。
そう思ったありんすちゃんはいきなり飛び出していってラキュースからノートを奪いました。
「ちょっ? なにすんのよ? イビルアイ! や、やめて!」
ありんすちゃんは素早くノートをエクレアにパスします。
エクレアは死に物狂いで逃げます。
ラキュースはまるで鬼のような形相で追ってきます。
しかしエクレアは身体の小ささを生かしてテーブルの下を駆け抜けてなんとか追撃をかわしました。
かくしてありんすちゃんとエクレアは王都の重要機密が載っているであろうラキュースのノートをナザリックに無事、持ち帰りました。
デミウルゴスはノートを広げると喜びました。
「……これは実に素晴らしい。この秘密を公開すれば王国は底知れないダメージを受けるだろうね」
※ ※ ※
数日後、魔導王国ではガゼフとブレインの道ならぬ恋が描かれたラキュース作の薄い本「薔薇は夕日に輝く」が売り出され、空前のベストセラーになったそうです。
──番外編 おわり──
※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました