ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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004ありんすちゃんぼくじょうにいく

 ありんすちゃんが目を開けると、周囲の景色は見慣れないものに変わっていました。

 

 ありんすちゃんは右手を見、左手を見、またまた右手を見てみましたが、しっかりつかんでいたパンツはありませんでした。可愛らしくレースで飾られた真っ白のお気に入りのパンツ。

 

 ありんすちゃんは小さくため息をつきました。お気に入りのパンツが無くなって残念な気持ち、それに、やっぱりパンツがないとスースーするのが気になります。このままだと風邪をひくかもしれません。風邪をひかなくてもまたくしゃみでどこかに飛ばされてしまうかもしれません。

 

 ありんすちゃんは周りを見回すと、どうやらパンツの替わりになりそうなものを発見しました。

 

 あたりの木々にひらひらと布のようなものがたなびいていました。長いもの、短いもの。幅も様々です。何百もの布、羊皮紙の原材料が木の枝に架けられていて、ひらひらとたなびいていたのでした。

 

 ありんすちゃんはジャンプして一枚の布を手にすると器用にくるくると巻きつけました。

 

 これで大丈夫。

 

 風邪なんかひきません。

 

 え? ありんすちゃんはアンデッドだから風邪をひくはずがないですって?

 

 でも、ありんすちゃんはまだ5歳児位の小さな女の子なんです。もしかしたら、もしかしたらですが、もしかしたら風邪をひいちゃう事だってあるかもしれません。

 

 もしかしたら、ですが。

 

「これわこれわ……ナザリック地下大墳墓階層守護者のシャルティア様でいらっシゃいませんか。あいにくデミウルゴス様わナザリックにお戻りになられていましてこちらにわ、いらっしゃいませんが……」

 

 ありんすちゃんに男が声かけてきました。

 

「デミウルゴチュ?」

 

 ありんすちゃんは『ス』を『チュ』と言ってしまいます。仕方ないですよね。だってまだ5歳児位の女の子なのですから。

 

 そうそう、そういえばデミウルゴスが確か聖王国の国境近くで牧場を運営しているとかいう話を聞いた記憶がありました。なんでもナザリックで使うスクロールの材料の羊皮紙を得るためにナントカ羊を飼育しているとか……だったようでした。

 

「よろしければ、このプルチネッラめがご案内致します」

 

 ありんすちゃんは道化師(プルチネッラ)の後を付いていく事にしました。

 

 

 

 ※  ※  ※

 

 

 

 やがて大きな看板が見えてきました。

 

『聖王国両脚羊牧場』

 

「ここわ、スクロールの材料になるアペリオンシープの繁殖場です」

 

 何やら大きな檻がいくつもあって牧場っぽくない気がしましたが、ありんすちゃんにはよくわかりませんでした。

 

「デミウルゴス様わ慈悲深く愚かなものたちにも分け隔てなく愛情を注いでおられます……実に美しき愛……」

 

 感極まって言葉が途切れたプルチネッラの眼からは涙が流れていました。

 

 しばらく歩くと大きなサイフォンのようなものがありました。中には赤い液体が入っています。ありんすちゃんが顔近づけると球体のガラスにひしゃげて写ります。

 

 なんだか面白いですね。

 

「これわ、デミウルゴス様が皮を剥ぐ時に流れる血をムダにするまいとして作ったものです。こうして一滴もムダにすまいという、これこそ、まさに真実の愛とイうべきでわないでしょうか……」

 

 ありんすちゃんが写ったガラスに手を伸ばして触れた途端、ガラスは粉々になりありんすちゃんは赤い液体でずぶ濡れになってしまいました。……だんだん、だんだんと視界が赤くなっていきます。……ありんすちゃんが覚えていたのはそこまででした。

 

 

 

 ※  ※  ※

 

 

 

 ──気がつくとありんすちゃんは真っ赤な湖に浮かんでいました。

 

「やれやれ……シャルティア。困ったものだね。これではまた一からやり直さなくてはならないよ」

 

 ありんすちゃんが見上げるとデミウルゴスが空を飛んでいました。

 

「〈血の狂乱〉とはね。シャルティア、済まないがこの事をアインズ様に報告させてもらうよ」

 

 ありんすちゃんはイヤイヤとかぶりをふりましたがどうしようもありません。

 

 その後、ありんすちゃんはしばらくナザリックから出る事を禁止されてしまいました。

 

 

 

 ※  ※  ※

 

 

 

 竜王国のアダマンタイト級冒険者“クリスタル・ティア”の“閃烈”セラブレイトは前線にいました。竜王国に侵攻してきたビーストマンとの戦いは一段と激しさを増していたのでした。

 

「陛下、きっと私がお守りします」

 

 幼さの残る竜王国女王、ドラウディロンの面影を思い出しながら心を奮い立たせます。

 

 先ほど届いた可愛らしい手紙を何度も読み返し、この戦いが終わったら得られるであろう名声と褒美に胸を踊らせるのでした。

 

 セラブレイトは懐から白い布を出すと広げました。縁がレースになった純白の布は手紙が届けられた際に一緒に置かれていた大切なもの。

 

 セラブレイトにとってドラウディロンの信頼の証であり幸運のお守りであったのでした。

 

「ああ……陛下……この命に変えても……」

 

 布切れに顔を埋めながらセラブレイトは女王ドラウディロンへの更なる忠誠を誓うのでした。

 

 

 

※ありんすちゃんが挿し絵を描いてくれました

【挿絵表示】

 

 


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