ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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046ありんすちゃんゆうかいされる

 その日のありんすちゃんはいつになく早い時間に目覚めました。

 

 こういう時ってなにか大事件が起こったりしてしまうのがお約束だったりしますが……それは一通の手紙から始まりました。

 

 大きなあくびと伸びをしながらありんすちゃんはベッドを降ります。ふと見ると足下に一通の手紙が落ちていました。

 

 宛名はありません。ですが、ありんすちゃんの住居ですからありんすちゃんが読んでも構わないでしょう。

 

 早速封を切り、手紙を広げて読みました。

 

「──ありんすちゃんはとてもかわいいのでゆうかいしました。アウラとマーレがこれからずっとありんすちゃんのめいれいをきくならありんすちゃんをかえしてあげます。ほんきです」

 

 なんと! ありんすちゃんが誘拐されてしまったみたいです! 犯人の要求を認めなければありんすちゃんの身が危ないみたいです!

 

 ありんすちゃんは大きく口を開けて呆然としています。あまりのショックに我を忘れてしまったみたいですね。

 

 仕方ないですよね。だってありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子に過ぎませんから。

 

 誘拐事件の当事者になってしまったなんて、私でも気が動転してしまいます。

 

 ありんすちゃんが誘拐されて、ありんすちゃんはどうするのでしょう?

 

 ん? あれ?

 

 ちょっと待って下さい。ありんすちゃんはここにいますが? ……誘拐されたありんすちゃんとは?

 

 大変です! ありんすちゃんは気がついていません。必死な形相でどこかに走っていきます。

 

 ありんすちゃん! ちょっと待って下さい!

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 ありんすちゃんは第六階層にやって来ました。どうやら誘拐犯の要求をアウラとマーレに知らせるつもりかもしれませんね。

 

「んー? どうしたの? ありんすちゃんじゃん。あたしに何か用かな?」

 

 ありんすちゃんはアウラに手紙を見せます。

 

「……うわっ! なにこれ? ……ただのイタズラじゃない。……あのさあ、まさかとは思うけど……ありんすちゃんってば、もしかして本気にしているんじゃ?」

 

 ありんすちゃんは興奮して言葉を喋る事が出来ません。激しい身振りで事の重大さをアウラに伝えます。

 

 なんという事でしょう? ありんすちゃんが一生懸命話しているのにアウラはまともに取り合ってくれません。

 

「……ハイハイ。もう気が済んだかな? あたしもヒマじゃないからね」

 

 ありんすちゃんはほっぺたを膨らまして抗議します。ありんすちゃんが誘拐されたのはアウラのせいなんですから。

 

「……だーかーらー……ありんすちゃんはここにいるんだから問題ないってあたしは言ってるんだけど?」

 

 アウラはジト目でありんすちゃんを見ています。

 

 うーん……ようやくありんすちゃんも気がついたみたいですね。ハッとした様子で駆け出して行きます。

 

 今頃やってきたマーレは突然部屋を飛び出してきたありんすちゃんに驚き、アウラに尋ねました。

 

「……お、お姉ちゃん、ありんすちゃんどうしたの……かな? ……あ、なんでもないよ」

 

 アウラがジト目のまま振り向いたのでマーレは質問をするのを止めました。 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 ありんすちゃんは自分の階層に走りながら、混乱した頭で一生懸命考えていました。

 

 あの手紙を出した犯人を見つけてありんすちゃんを誘拐させないと、ありんすちゃんは嘘つきになってしまうかもしれません。

 

 どうやら、ありんすちゃんはどうしたら誘拐されるか考え始めてしまったみたいです。

 

 うーん……根本的に間違った方向に行ってしまったとしか思えませんが、どうなるのでしょう?

 

 ありんすちゃんはシモベ達を集めて手紙を見せました。

 

「この手紙を出ちた犯人を見ちゅけるでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんを誘拐した、という内容にシモベ達はざわめきます。

 

 一人のヴァンパイア・ブライドがおずおずと手を上げて発言を求めました。

 

「あの……その手紙は昨日、ありんすちゃん様のご指示で私が書いたものかと……」

 

「──え?」

 

 ……そうでした。アウラとマーレを騙そうとありんすちゃんが誘拐されたという手紙を出そうとしたような記憶が少しあります。

 

「……ゴホン。……では、これからありんちゅちゃん、ゆうかい大作戦始めるでありんちゅよ」

 

 ありんすちゃんは何事も無かったかのようにヴァンパイア・ブライドに命じます。

 

「これからアウアウとマーレにありんちゅちゃがゆうかいされたと知らせるでありんちゅ」

 

 ヴァンパイア・ブライドはありんすちゃんから手紙を受け取ると第六階層へ向かいました。

 

 ヴァンパイア・ブライドはすぐに戻って来ました。

 

「ありんすちゃん様! 大変です! アウラ様もマーレ様も笑い転げてまともに相手をして頂けませんでした」

 

 それはそうですよね。さっきありんすちゃんが大騒ぎしちゃっていますから。

 

「役にたたないでありんちゅね。もういいでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんは恐縮しきっているヴァンパイア・ブライドを許してあげました。

 

 ……うーん……でもヴァンパイア・ブライドは何も悪くないと思いますが。

 

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

 そんな事があった翌朝、ありんすちゃんはいつものように目を覚ましました。

 

 ベッドから降りたありんすちゃんは足下に一通の手紙を見つけて……またまた大騒ぎするのでした。

 

 仕方ありませんよね。だって、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。

 

 

 

※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました

【挿絵表示】

 


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