ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
ありんすちゃんの隣にマーレ、前にはアウラ、ユリ、シズが並んでいます。先日泣きながらナザリックを飛び出していったありんすちゃんは満面の笑みを浮かべていました。まるで前回の事がなかったかのようですね。
「これから改めてあかずきんちゃんの映画をさちゅえいするでありんちゅよ」
一列に並んだメンバーを眺めながらありんすちゃんは小首を傾げました。
「ルプーがいないでんちゅね……変わりにベスチョ……ワンワンにするでありんちゅ」
あれ? ルプスレギナはどこかで……うーん……何か忘れているような……いよいよ改めて撮影開始です。
前回の反省を生かして、今回はイジワル継母は無しになりました。お母さん? のアウラに挨拶してあかずきんのありんすちゃんが出かけます。
この先の森でオオカミと出会う筈ですが……大変です! ありんすちゃんは綺麗な蝶々を追いかけて道をそれていっちゃいました。
すかさずアウラが魔獣を呼んで監督兼助手兼カメラマンのマーレと一緒に追いかけます。
ありんすちゃんはクルクルとまるで踊るような足取りで蝶々を追いかけます。きっと頭の中は蝶々の事で一杯でしょうね。
仕方ありませんよね。ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子に過ぎないのですから。
蝶々を追いかけている内にありんすちゃんは小さな小屋の前にやってきました。どうやらずいぶん近道をしてしまい、ありんすちゃんはオオカミに出会う事なく無事にお婆さんの家に着いてしまいました。
「……か、カット……」
「カートッ! ダメじゃん。ありんすちゃん、オオカミに会わなきゃあかずきんじゃないじゃん?」
マーレを押しのけてアウラがダメ出しします。今更森に戻るのは面倒だ、という事で小屋の近くであかずきんとオオカミの出会いのシーンを撮ることにして、ベストーニャを呼び寄せる事にしました。
さて、撮影再開です。オオカミがあかずきんに尋ねます。
「あかずきんちゃん、どこに行くのかな? ……わん」
「おばあちゃんのお見舞いいくでありんちゅ」
「森の向こうに綺麗なお花が一杯咲いていたから、摘んでいけばお婆さんが喜ぶと思いますよ」
「──『わん』を忘れているよ?』
「…………わん」
助監督のアウラがとっさにベストーニャに指摘したので事なきを得たみたいですね。
話はこの後ありんすちゃんがお花を摘んでいる間にオオカミがお婆さんを飲み込んでしまうシーンがあるのですが、ありんすちゃんが飽きてきた為端折る事になりました。
ベッドでお婆さんのユリになりすましたオオカミのベストーニャが、やって来たあかずきんのありんすちゃんを招き入れます。
「おばあちゃん、お口が大きいでありんちゅね」
「お前を食べる為だよ! ……わん」
ベストーニャの顔の継ぎ目が裂けて開きます。中からはうねうねと触手が伸びてきてありんすちゃんを捕まえようとします。
「…………ジャーン。猟師登場」
突然扉を開けて入ってきたシズが両手の銃を構え、撃ち始めました。ベストーニャはありんすちゃんを食べる事が出来ずに倒れました。
「……か、カット……」
「カート! んー良いねえ! ……良い演技だったんじゃないかなぁ? お疲れ様」
またしても自称助監督のアウラが仕切ります。まあ、何にせよ無事に撮影は終わりました。ありんすちゃん良かったですね。
唯一残念だったのはカメラの中にフィルムを入れ忘れていた事でしたが……とりあえずめでたしめでたし。
※ ※ ※
「うーん……なかなかありんすちゃん来ないっすね……どんだけ待たせるんすかねっす……まさかこれが放置プレイってヤツっすか?」
※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました