ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

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067ありんすちゃんのすぺしゃるカレー

 今日のありんすちゃんは鼻歌まじりでとても上機嫌です。いつもよりソワソワして落ち着きなく、時間ばかり気にしています。

 

 ありんすちゃんはお昼が来るのが待ちきれないのでした。そうなんです。今日は月に一回の『カレーの日』なんです。

 

 毎日のナザリックでの執務の一つのナザリック改善についての提案で、唯一アインズの発案が実現したのがこの『月に一回のカレーの日』だったのです。

 

 いよいよお昼になりました。ありんすちゃんは早足で食堂に向かいます。そして厨房の前で大きな声で注文しました。

 

「ありんちゅちゃんすぺしゃるカレーでありんちゅ」

 

 説明しましょう。『ありんすちゃんすぺしゃるカレー』とはリンゴと蜂蜜をふんだんに使った甘口の、いわゆるお子様カレーです。ありんすちゃんはまだまだお子様ですから仕方ないですよね。ちなみに辛口カレーが好きなのはマーレ、意外にもアウラとコキュートスは甘口派だったりします。

 

 ありんすちゃんは甘口カレーライスを早速頬張ります。この最初の一口がたまりません。

 

 次にトッピングの半熟玉子をスプーンで割ります。固ゆで玉子でなく半熟なのはありんすちゃんのこだわりです。スプーンの先でトローリ出てくるまったりとした黄身を一緒にすくって口に……まさに至高のひとときです。

 

「おや? ありんすちゃんはまたお子様カレーっすね」

 

 目を閉じてうっとりとしていたありんすちゃんに容赦ないルプスレギナの声がしました。ルプスレギナはカレーライスにハムカツ、茹で玉子、ラッキョウに福神漬けとてんこ盛りしたトレイを持っていました。

 

「辛くないカレーなんてカレーじゃないっすよ。せめて中辛にしないと大人になれないっすよ」

 

 そういうルプスレギナはいつも中辛のカレーライスです。実はありんすちゃんも一度だけ中辛のカレーにチャレンジしてみた事がありましたが……大人にはまだまだ遠いという実感を得るだけでした。

 

「お子ちゃまカレーではないでありんちゅ。ありんちゅちゃんすぺしゃるカレーでありんちゅ」

 

 ありんすちゃんは一生懸命に主張しました。とは言っても本当はただの『甘口カレー』なんですけどね。

 

「ふーん。ま、良いっすけど……そういえば今度カルネ村でエンちゃん、ああ、人間のエンちゃんっす──がカレー作るみたいっすね」

 

「…………もぐもぐ」

 

「この前、カルネ村にカレーを小さな鍋で持って行ったんすけど、大好評だったんすよ。で、料理長にレシピ貰ってあげたら挑戦したいってなったっすよ」

 

 そういえばありんすちゃんはしばらくカルネ村に行ってませんでした。ネムは元気でしょうか?

 

「……もぐもぐ。もぐもぐ」

 

 うーん……ありんすちゃんはルプスレギナの話には全く興味が無いみたいですよ。目の前のカレーを味わう事に集中しているみたいです。仕方ありませんよね。だってありんすちゃんはまだ5歳時位の女の子なのですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 

 ──まだバハルス帝国が魔導王国の属国化する前──

 

 バハルス帝国皇帝ジルクニフは苦悶していました。カッツェ平野でアインズ率いる魔導王国の圧倒的な力を見せつけられた現在、帝国の行く末に明るいものが全くないからでした。

 

「陛下、こうなりゃなるようにしかならないですよ」

 

 バジウッドの言葉もジルクニフにはなんの気休めにならなりません。

 

「一体どうしたら……」

 

 頭を抱えたジルクニフ達の目の前に突然女の子が現れました。

 

「ま、魔導王国の?」

 

 確か魔導王国を訪れた際にどこかで見かけたような気がします。

 

「これを食べるでありんちゅ」

 

 女の子はジルクニフに小さな鍋を差し出しました。ジルクニフが蓋を開けると中には茶色いドロッとしたものが入っていました。

 

(……シチューのようだが……いや、違うな……ま、まさか……いや、そんな筈は…………)

 

 ジルクニフがバジウッドを振り返って見ると彼も同様に引きつった顔をしていました。恐らくジルクニフと同じ事を考えていたのでしょう。

 

「おいちいカレーでありんちゅよ。早く食べるでありんちゅ」

 

 女の子は茶色いものをスプーンですくうとジルクニフの目の前に突き出しました。思わず顔をそむけたジルクニフの口に無情にもスプーンが近づけられていきます。

 

「……へ、陛下……食っちまうんですかい?」

 

(…………!!)

 

 ジルクニフは観念しました。恐らく目の前の女の子は強い。バジウッド達が全員でかかっても勝てないでしょう。しかしながらこの帝国の鮮血帝として怖れられた自分が少女にウ●コを食べさせられる屈辱にあうとは……

 

 ジルクニフは目を固く閉じて口に入れられたものを味わした。

 

 途端にジルクニフの脳髄を刺すような閃きを感じました。

 

「う、うまい!」

 

 ジルクニフの目からはいつしか涙が流れ落ちていました。なんという事か……魔導王国ではウ●コすらこんなに美味しいのか……次元が違いすぎる……

 

 このジルクニフのちょっとした誤解が後にバハルス帝国が魔導王国の属国化する要因になった事はあまり知られていないそうです。

 

 

 

※ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました

【挿絵表示】

 


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