ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~   作:善太夫

69 / 159
069ありんすちゃんのバレンタインデー

 ありんすちゃんはとってもご機嫌みたいです。なんでも今日はバレンタインデーとかいうチョコレートをたくさん食べられる日なんですって。うーん……ちょっと違う気がしますが……

 

 ありんすちゃんは第六階層にやって来ました。アウラとマーレにチョコレートをご馳走して貰うつもりですね。

 

「あれ? ありんすちゃんじゃん。え? ばれんたいんでい? ……チョコレート? マーレはわかる?」

 

「えーと……チョ、チョコレートなら料理長に……」

 

 どうやら二人共バレンタインデーについて全く知らないみたいですね。仕方ありません。ここは賢いありんすちゃんが先生になってバレンタインデーとはなんたるかを教えなくてはいけませんね。

 

 ありんすちゃんは胸を張りました。

 

「二人共だめでありんちゅね。バレンタインデーとはバレンタインという神ちゃまがチョコレートをプレゼントしてくれる日なんでありんちゅ」

 

 双子の感心した眼差しを受けてありんすちゃんはエヘンと得意そうです。

 

「……うーん……じゃあ、僕達もチョコレート、貰えるのかな?」

 

 おずおずとマーレが尋ねました。

 

「マーレはありんちゅちゃんにチョコレートあげなくてはならないのでありんちゅ。アウアウもありんちゅちゃんにチョコレートあげるでちゅよ」

 

 アウラとマーレはよくわかりませんが、ありんすちゃんにチョコレートを差し出しました。ありんすちゃんは大喜びです。うまくすればナザリックのチョコレートを全て独り占め出来るかもしれません。

 

 ありんすちゃんは次に第五階層にやって来ました。

 

「コレハ……アリンス殿、メズラシイ」

 

「コキュトチュ、今日はバレンタインデーでありんちゅよ」

 

 ありんすちゃんはコキュートスに手を出して催促しました。コキュートスは意味がわからずにきょとんとしました。

 

「バレンタインデーはありんちゅちゃんにチョコレートをあげなくてはならないのでありんちゅよ。まちゃか知らなかったでありんちゅ?」

 

「グヌヌ……サヨウナ風習ヲシラズ、面目ゴザラヌ。チョコレートトハ一体?」

 

 ありんすちゃんは先程アウラ達から貰ったチョコレートを見せました。コキュートスはシモベの雪女郎達にチョコレートを持って来させるとありんすちゃんに渡しました。

 

 両手一杯のチョコレートを手に入れたありんすちゃんは自分の階層に戻り、一人で全部食べる事にしました。

 

 うーん……本当はバレンタインデーってそんな風習じゃないと思いますが……ま、ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子ですから仕方ありませんよね。ありんすちゃんにとって大満足な一日だったみたいです。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

「……バレンタインデーですか?……なにやら女性が男性にチョコをプレゼントするとかいう人間共の習慣ですな。……私が女だったらアインズ様に差し上げるのだがね。……おや、誰か来たみたいだね?」

 

 ありんすちゃんはデミウルゴスからもチョコレートを貰おうと第七階層にやって来ました。両手一杯のチョコレートを持って。

 

 ありんすちゃんは一旦自分の階層に戻ったのでしたが、どうやら欲が出てもっとチョコレートを貰おうとやって来たみたいですね。

 

「これはこれは。ありんすちゃん、バレンタインデーのチョコレートですね。ありがとう。……しかし、女性が男性にチョコレートを贈るバレンタインデーをよく知っていましたね」

 

 ありんすちゃんはイヤイヤをしましたが、バレンタインデーを知っていたデミウルゴスには逆らえませんでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 第九階層アインズの執務室──アルベドは少しイライラしていました。先程いきなりやって来たアウラの愚痴をずっと聞かされていたからです。

 

「ありんすちゃんばかりズルいよね? あたしだって『ばれんたいんでい』のチョコレートを欲しいんだよね。ありんすちゃんだけって不公平じゃん」

 

「あのね、アウラ。バレンタインデーっていうのはね──」

 

 アルベドは「女性が好意を持つ男性にチョコレートなどのプレゼントをする習慣なのよ」と言いかけてやめました。アウラ達はそもそもバレンタインデーを知らないか誤解をしているが、確か至高の方々の話題に上がった事もかつてあったのだからアインズ様は知っている筈です。ここでアルベドがアインズにプレゼントをしたら高ポイントを稼げるのではないでしょうか?

 

 アルベドはアウラが訝しげに自分を見つめているのに気が付くと小さく咳をして話を続けました。

 

「まあ、そうね。小さい子供の事を羨んでも仕方ないわね。それともアウラはまだまだ子供なのかしら」

 

 途端にアウラは真っ赤になり、あれこれ言い訳しながら出て行きました。残されたアルベドは一人、あれこれと思い悩むのでした。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

 その夜、ナザリック地下大墳墓に戻ったアインズは執務室の扉を開けました。中には花で囲まれたチョコレートの山が置かれていました。

 

「そうか……今日は聖バレンタインデーだったな……」

 

 カードを見るとデミウルゴスからでした。

 

「……うーん……まさか、その気はないと思うが……単なる好意と受け止めておこう」

 

 次に寝室に行くとなにやら大きな箱があります。リボンがかけられている事からどうやら贈り物みたいです。アインズ番の一般メイドが箱を開けると中に等身大のアルベドのチョコレートが入っていました。

 

「……これは……!」

 

 チョコレートのアルベドは全裸だったのでアインズが目のやり場に困っていると、突然、チョコレートのアルベドの目が開き動き出しました。なんとチョコレートのアルベドはアルベド本人にチョコレートでコーティングしたものだったのでした。

 

「お、落ち着けアルベドよ! ……うわ……ちょ……」

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 第二階層屍蝋玄室──ありんすちゃんがため息をつきました。せっかく集めたチョコレートを全てデミウルゴスに持っていかれてしまった事が残念でたまらなかったみたいです。せめて三月にキャンディーでも貰えると良いですね。

 

 やっぱり欲張らずに程々にしておくべきでしたが……仕方ありませんよね。ありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。

 




ありんすちゃんが挿絵を描いてくれました
【挿絵表示】

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。