藍色の狙撃手   作:303

2 / 3
古峰千里①

間延びしたチャイムが校内に響く。

 

ホームルームを終えて、帰り支度を始める1ーEの面々を席から眺めつつ、古峰千里は口元を右手で覆う。

くあっ、と大きな欠伸が漏れた。

 

「おまえが眠そうとか、珍しいよな?」

 

かけられた言葉に、千里は欠伸を噛み殺して顔を向ける。

 

おはよう、登

 

「いやいや、千里、遅いから。昼間過ぎてるし、そもそも居眠りなんかしないだろ?」

 

かざしたスマホの文字に、小荒井登がツッコミを入れる。ぼーっとしているようで案外真面目な友人だ。授業中に突っ伏している姿が、全く想像できなかった。

 

「で?じっさいなんかあったのか?」

 

諏訪さんたちのとこで、映画の鑑賞会。

 

小荒井が、ああ、と納得する。

 

「諏訪隊と仲良いもんなー、おまえら。ナルホドね……余裕で夜更かしコース直行じゃん」

 

ヒメも一緒だったから、あっちも似たような感じかも

 

「似たようなってより、姫里は絶対寝てんだろ」

 

小荒井の言葉に、千里は苦笑いを浮かべる。いつもならこちらに顔を出す頃合い。言われた通り寝ているのだろう。

 

千里が徐に立ち上がる。

 

「お迎えか?」

 

彼女のいるであろう教室。その方向を指差し、小荒井に頷く。

2人は1ーBの教室へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む〜、あの映画が面白いのが悪いんだぁ〜」

 

ボーダー本部への道を行くなかで、そう言い、姫里が頬を膨らませる。

 

弟に揺り起こされ、寝ぼけ顔を数秒キープ。そこから赤面しギャアと絶叫するという流れを見られ、恥ずかしくない人間はあまりいないだろう。

 

ごめん、ヒメ、配慮がたりなかったね。

 

姫里の顔からは、未だに赤さが抜けきらない。そんな片割れの様子に、悪いことをしたなと、千里が謝る。

 

「もう!……まったくだよ、まったくだよ!なんでフツーに起こしてくれないのさ〜」

 

「いや、あれ以上普通の起こし方ってあるか?」

 

1ーBで合流した奥寺が首を傾げる。

 

「ないない」

 

小荒井がそれにかぶりを振った。

迷惑にならない声量で声をかけ、ほんの軽く肩を揺する。これでダメならどう気を使えというのか。

 

「コアデラさんもなんか言ってよー」

 

「「誰がコアデラさんか」」

 

唐突な姫里からのフリ。妙な呼び方とテンションに、2人が呆れ顔で返す。

暴走気味な彼女の頭に、千里がコツリと拳をあてた。

 

「にゃっ」

 

小突かれところを左手で撫で、姫里が片割れへと目を向ける。

 

もうあんまり怒ってないよね?ふざけすぎだよ。

 

「あはは、すみませんでした」

 

姫里が軽い調子で謝り、千里がしかたがないな、といったふうに肩を竦める。

 

「ところでさ」

 

双子のひと段落した様子を見て、奥寺が口を開く。

 

「2人が見た映画って、どんなやつなんだ?」

 

「あっ、それおれも気になってた。……なんていったっけ?」

 

続く小荒井の声に、千里がスマホを軽快に叩く。

 

十年以上前の、コミカルなSF映画だよ。

 

「十年って、また古いな〜」

 

奥寺が感想を漏らし、姫里が口を開く。

 

「小佐野先輩が、ネットで動画漁ってたらなんかみっけたらしいんだけどね……」

 

4人のたわいもない会話は、ボーダー本部にたどり着くまで続いた。

 

 

 

 

 

 

3人と別れた千里は、ランク戦室へと顔を出す。

あたりを見回し、目当ての背中を見つけ駆け寄る。

 

「……よお、千里」

 

足音に気づき、振り向いた相手は、キャップのツバを上げて千里に声をかける。

お待たせしました。荒船さん。

 

荒船哲次に会釈し、いつものように画面をかざした。

 

「いや、約束の五分前だ、さほど待っちゃいない」

 

その言葉にホッと息を吐く。

 

「それじゃ、さっそく始めるか」

 

荒船の言葉に千里が頷く。

2人はブースへと足を踏み入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。