藍色の狙撃手   作:303

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気分転換の投稿。


古峰姫里①

 

閑静な住宅街街に、剣戟の音が幾度も響く。

 

袈裟斬り、逆袈裟斬り、横薙ぎ……荒船の斬撃を、千里は弧月の刀身を添えて受け流す。立て続けに攻撃を捌いていく技術は、素人目には巧に見えるだろう。けれども、それを成す本人の表情はやや硬い。

 

更に斬撃が続く中、荒船がキャップの影になった目を細めた。それまではお手本のように整っていた太刀筋に意図して荒い一閃が混じる。

 

強引な、しかし確かな威力を持った斬り上げ。

 

一撃の変化に千里は目を見開き、流し損ねた刀が不恰好にかち上げられる。

 

 

「……おい、胴がガラ空きだ」

 

言葉ともに、千里の戦闘体は斬り捨てられた。

 

 

 

 

 

古峰隊作戦室。

 

オーソドックスな内装の室内で、千里は一人ソファに腰掛け、テーブルのノートパソコンを開きログを眺める。

 

一戦の流れを一通り見終える。

 

先輩の指摘を思い浮かべて、成る程と、これまた一人で頷いた。

 

ふと、扉の開く音に目を向ける。

 

「セン、おつかれー」

 

からりとした明るい声音で、姫里が入室とともに千里を労う。

 

ヒメもお疲れ様

 

スマホの画面をかざして見せ、彼も片割れへと労いを返す。

 

「荒船先輩との模擬戦、どうだった?」

 

6勝24敗

 

千里のとなり腰掛け姫里が問えば、頬を掻いて言葉を打つ。次いで眺めていたパソコンを彼女の方へと傾けた。

 

「?……そんなに悪くは見えないけど?」

 

何合も続く打ち合い。

示された数字に比べて善戦して見える内容に、姫里は首を傾げる。

 

確かに攻撃は捌けるんだけどね、それだけなんだ

 

千里の補足に目を向ける。

 

守りばかりに気を取られて、攻めがおざなりになっている。いくら綺麗に受け流したところで、そこから反撃に転じてやろうというプレッシャーがまるで感じられない。いずれくる綻びを待つか、今回のように強引にこじ開けてしまえれば、後は何も怖くない。

 

荒船の指摘は概ねそんなところだった。

 

「なるほどねぇ〜」

 

ちょうど弧月をかち上げられた場面を目に、彼女は納得して頷く。

一拍おいて顔が俯き、緩くまとめたポニーテールが揺れた。

 

 

 

「……ごめんね」

 

ポツリと零れた言葉に、千里が顔を向ける。

 

「あたしがフロントやれれば、センも狙撃に集中できるのに……」

 

無理することない

 

下がった彼女の視界に、スマホの画面を見せて返す。

 

「無理なことないよ……」

 

そう姫里が返し、笑みを貼り付けて続ける。

 

「流石にセンとは比べられないけど、トリオンもあるし、アタッカーの時は個人戦も悪くなかったんだよ?」

 

その言葉を聴きながら、千里が静かに彼女を見据えた。

視線がぶつかり、姫里はたじろぐ。

 

 

人ならね。でも、トリオン兵だったら?

 

淡々と綴った文面に、二、三口を開くが、言葉は出ない。ぎこちない笑みはあっさりと剥がれた。

 

シュンとした片割れに、千里は困ったような笑みを浮かべて、彼女の頭をそっと撫でる。

 

ランク戦は悔しいことも多かったけれど、僕らは遠征に行きたいわけでもないでしょ?それよりも、守りたいものをきちんと守らなきゃ

 

「……負け惜しみ?」

 

いや、真面目に

 

「…………他の隊のみんなが聞いたら、怒りそうだね」

 

たしかに、この言い方はマズイか

 

姫里の返しにそう応える。

言い方が悪かったのも確かだと、千里は苦笑いを浮かべて、釣られて姫里もニヘラと笑う。

 

 

不意にアラームの音が鳴る。

 

二人は壁のデジタル時計に目をやる。防衛任務のシフトの時刻だ。

 

 

 

さあ、切り替えて仕事しようか、隊長さん

 

千里がおどけて言葉を打つ。

 

「だね、頼りにしてるよ、狙撃手くん」

 

それに乗り、同じ調子で姫里が応えた。

 

 

古峰隊は、今日も防衛任務に勤しむ。

 

 





Himeri Furumine
古峰姫里(フルミネ ヒメリ)
Profile
本部所属 B級 古峰隊 オペレーター 隊長
15歳 3月21日生まれ
155㎝ A型 はやぶさ座
好きなもの
弟 映画鑑賞 甘いもの
Parameter
トリオン8 機器操作7 情報分析7 並列処理7 戦術6 指揮6 total33

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