ロボットなヤンデレ娘に愛されて ※他短編詰め合わせ   作:トクサン

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 恐らくインスタントHERO系列の話。
 ファイルに入っていたので取り敢えず投下してみた次第です。
 新しいモノを発掘したらまた投下します(`・ω・´)


インスタント・HERO 第二の能力者

 多分俺には、女性に好かれる才能みたいなのがあったのだと思う。

 

 別に誰か特定の人が好きな訳でもなくて、選ばなければ大抵の人に好意的な目を向けられる容姿だったから、惰性で色々な人と付き合っていた。皆が俺を好きだと口にした、その瞳の色を僅かに濁らせながら、好きだ好きだと囁いた。

 いつしかそれが日常になって、異常は通常に、俺は自分の置かれた世界が普通だと思い込んでいた。初めて女性の味を知った中学時代も、逆ナンパでホテルに連れられた高校時代も、特に何をする訳でも無く怠惰に淫らに過ごした大学時代― 今も。

 女性の体に包まれながら、あぁ、俺は一生こうして生きていくのだろうかと漠然と思った。別に性欲が特別強い訳でもないし、ヤる事ばかりを考えているスポンジ頭の自覚も無い、ただ求められるから、手を差し出されるから取っているだけなのだ。

 

 それが崩されたのは偶然、風邪を引いて、医者に罹って、何でも学生の間は治療費が無料だから色々見て貰えと身内に言われ、渋々従って見て貰った結果だった。

 

「……女性間感染症、執着症候群?」

 

 聞いた事の無い病名だった、しかし何とか症候群だとか大層な名前を聞いた俺は何となく嫌な予感を覚える。無骨な丸椅子に腰かけた俺は眉尻を下げながら、僅かに困惑の色を表情に滲ませた。

「えぇ、まぁ、何と言うか……便宜的にそう呼ぶ他ないと言いますか」

 どこか言い辛そうな、何とも微妙な顔で紙に何かを書き記す医者、年季の入った白衣に皴の刻まれた老人と言って良い姿、この道云十年のベテランの風格。

「例えばですが、貴方の周りにストーカーだとか、そこまでいかなくとも、何かこう、執着を見せる女性は居ませんか? それも複数」

「……えぇ、まぁ」

 居るも何も、殆どの女性がそうだった。

寧ろ一度関係を持ったら地の果てまで追いかけて来る、遠く離れた九州の地から北海道までやって来た元彼女などは本当に驚いた。というか、俺に関わる女性は殆どそんな行動を起こす女性ばかりだ。

無断で家に侵入し下着を盗んでいくなど日常茶飯事、起きたら隣に見知った顔の女が裸で寝ていたとか、気が付くと自室に隠しカメラが仕込まれていたとか、大学から帰宅したら全く知らぬ女が、「あっ、お帰りなさいっ!」と俺のエプロンを身に着けながら頬を染めて出迎えたりなど、例を挙げればキリがない。

俺の答えを聞いた医者は唸りながら顎を摩り、何かを考え込む。それから紙に何かを書きこんで、「……今までに聞いた事もありませんが」と口を開いた。

「貴方には、こう、異性を自分に依存させる、フェロモン……とでも言うのでしょうか、そういう物質が出ているのかもしれません」

「は……?」

 突然話がファンタジーチックになった、思わず「コイツ何言ってんだ」と口に出しそうになる。それ程に医者の言葉は突拍子も無かった、フェロモンなんていう抽象的過ぎる言葉がソレに拍車を掛ける。

「えぇ、まぁ自分でも突拍子もないと思うのですけれどね、そうとしか言えないと言うのでしょうか、少なくとも、貴方が何らかの方法で彼女達の行動を誘導しているのです、フェロモンか、或は新種のウィルスか何かは知りませんが」

 肩を竦めて両手を挙げる医者、それは誰がどう見てもお手上げのポーズだった。顔を顰めながら悪足掻きとして、「何で、そう断言出来るんですか?」と問うた。

 すると医者はスチールデスクに備え付けられている二段目の棚からゴソゴソと何かを取り出す、ソレは虫眼鏡に似た形をしていて、俺に向けると『pipipi』と音が鳴った。

「……それは?」

 何やら拡大鏡の部分に赤い線が走る、逆側からでも見えるソレをしげしげと観察しながら問いかければ、「FI粒子測定器です」と答えが返ってきた。

 聞きなれない言葉だ、俺は首を傾げて「FI……?」と疑問符を浮かべる。

「FI粒子、正式名称は【フィルバン粒子】、ヨーロッパで最初に発見された超能力者が纏う微粒子の事です、最近開発された機器でしてね、この測定器では目視できないFI粒子を測る事が出来るんですよ」

 そう言ってどこか新しいおもちゃを見せびらかす様に笑う医者に、俺は「ちょっと、待って下さい」と制止をかける。何やら聞き捨てならない台詞が聞こえた気がしたから。

「今、超能力者が纏う微粒子……って言いました?」

 恐る恐るそう聞き返せば、どこかキョトンとした表情の医者が「えぇ、えぇ、確かにそう言いましたよ」と頷いた。その事に俺は少なからず驚愕する、それはつまりー

 

「俺、超能力者なんですか……?」

 

― 【女性間感染症、執着症候群】

 

 それが俺の能力らしい。

 

 

 

 

 長年の謎が解けたと言うべきか、それとも新たなる謎が生まれたと嘆くべきか。

 これで何かが変わるのではないだろうかという俺の淡い期待は、文字通り淡く消え去って、「俺に対する好意は超能力によるものだから、もっと自由に生きてくれ」と、相手を俺なりに精一杯思い遣った発言は。

「貴方が居ない世界なんて意味がないの! 超能力だなんて嘘吐いて、誤魔化さないで!」

 と皆に一蹴される結果となり、まぁ依存症と言う言葉が付いている時点で離れられる訳が無かったのだ。結局自分のこと才能と言えるかも怪しい力の正体が、超能力とかいうこれまた怪しい分野に割り振られた結果、特に何が変わるという訳でも無く今日も今日とて女性に構われる毎日に戻った。

 解せない。

 

「……おはよう、瑛朝(てるあさ)

 起床と同意時に語尾がハートの言葉を食らう、そして声の方へと首を動かせば此方を覗き込む女性が一人、勿論全裸、俺も全裸、服は着て寝ていた、多分。

「……おはよう」

 枕の感触、シーツの感触、部屋の様子、それらを確かめて此処が自分の部屋だと確認する。自分の部屋で寝たのだから、自分の部屋で目が覚めるのが当たり前か? 否、彼女達は時に俺を自分の家までお持ち帰りする、自分で作った手料理の中に睡眠薬が入っているなんて誰が想像しよう?

 恐らく冷蔵庫の中にあった材料に睡眠薬を染み込ませていたのだと推測する。

 だから自分の部屋で起きれた事にまずは安堵、そして見事に下まで剥かれた状態を確認してシーツを捲る。

「あっ……」

 ぽっと頬を染めてそっぽを向く女、流石に見知らぬ他人の前で全裸を見せるのは抵抗が有るのでベットの下に常備してある非常用パンツを着用する。そして一番最初に確認すべきはゴミ箱の中、丸まったティッシュや避妊具の類は無し、一先ずは安心。

「……まずは朝飯にするか」

 

 最早この程度、慣れたモノである。

 

「やっぱり最初は男の子が良いな、あっ、もちろん瑛朝が女の子が良いって言うなら別に女の子でも良いんだけど、私、自分の子どもでも女の子だと嫉妬しそうで……あははっ、ちょっと子どもっぽいかな? でもでも、極力我慢するし、瑛朝の言う通りにするよ! あぁ、昨日の情事で出来てると良いなぁ、ふふっ、私と瑛朝の子どもだったらきっと凄く可愛いよ! 名前は何にしようか? 色々考えたんだぁ、私の名前と瑛朝の文字から一文字ずつとって……」

 

 朝食である。

 ご飯は大切だ、特に朝食は。別に昼飯と夜飯を貶す訳では無いけれど、朝食は朝一番のエネルギーを補填する大切な食事、だから俺は朝だけは絶対に食べる様にしている。

 今日の献立は白米、味噌汁、千切りキャベツにハンバーグ、それと煮物を小皿に一品。我ながら中々素敵な朝食では無いだろうか?

 勿論二人分用意してある、時には二人の女性がベッドに転がって俺を挟んでいる事も有るので、この家では朝に三人分の用意が常にされていた。備えあれば憂いなし、先人にも俺の様な苦労人がいたのだろう、この名言には何か感じ入るモノが有る。

 パクパクと朝食を口に放り込んでいると、目の前の女が身を乗り出して、「瑛朝はどう思う?」と問うてきた。

 正直話半分にしか聞いていなかった、いや半分も聞いていないかも、ごめんなさい全然聞いていませんでした。だからこういう時の対処法は一つ、最早なれた動作と化した日常の一コマ。

 俺は大きく頷いて、とても爽やかな笑顔と共に。

「そうだな」

 と答えた。

 

「だよね! やっぱり瑛朝もそう思ってるんだ、良かったぁ、私と瑛朝はやっぱり思考が似ているのかな? うんうん、そうだよね、そうに決まってる、だって私と瑛朝は~」

 

 頬を朱く染めた女が会話、というより最早独白であるが……を再開する。それをBGMに俺は食事を再開、今日のハンバーグは上手く出来たのだ、冷めない内に食べるのが吉である。

 

 あぁ、今日も世界は平和だ。

 

 




 多分続かない。
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