紅魔館マッサージ   作:yourphone

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紅魔館マッサージ

いつも通りの博麗神社。

風の音と時折聞こえてくる妖怪のうなり声が静寂を際立たせている。

 

いつもの様に縁側でお茶をすする霊夢。

茶柱は立っていない。これも、いつも通り。

 

いつもみたくやって来る魔理沙。

しかしその顔は何時もより輝いている(かもしれない)

 

「おーい、霊夢!」

「何よ、魔理沙」

「面白いもんがあるんだ、一緒に来てくれないか?」

「あんたの『面白い』は場合によっては危険なんだけど?」

「そんなわけ無いぜ。ほら!」

「わっちょっ! たく」

 

魔理沙に連れられ、向かう先は紅魔館。

飛ぶこと数十分。霧の湖に辿り着く。が、いつもと比べるとかなり騒がしかった。

 

「あ?何であんなに人間が居るのよ。しかも紅魔館に向かう人と、紅魔館から来る人とか居るし」

「にっひっひ。まあ見てみろよ、あれ」

「どれよ」

 

魔理沙が指差す先。ぽつねんと看板が立っている。

少女たちはふわりと降り立つ。

 

「どれどれ?『マッサージ始めました。ご用の方は門番のメイド妖精に声を掛けて下さい』 何これ?」

「一回行ったけど、なかなかのもんだったぜ!」

「もう行ったの?てゆうか、別に肩が凝ってたりはしないけど」

「お前殆ど動かない癖に何時も忙しい忙しいってぼやいてるだろ?」

「それはあんたらが宴会の後片付けをしないのが悪いじゃない。 んー。ま、たまには良いかしらね」

 

しかし、一体誰がマッサージをするのだろうか。霊夢はふと考える。が、すぐに答えが出る。

ま、当然あのメイドでしょうね。金が無くなったのかしら?

 

「あ、博麗の巫女さん!」

「巫女さんも来たんですか?」

「あ?あーまあね」

 

霊夢に気付く村人Yと村人I。

 

霊夢は意外と人里へ寄るが、如何せん金がない。よって立ち止まる事が少なくなり、無意識に発する一般人には近寄りがたい雰囲気も合わさり、村人に話し掛けられる事は滅多に無い。

そんな巫女さん相手に話し掛けてきたのは、もしかしたらマッサージの効用の一つかもな、と魔理沙は考える。

 

「それじゃ、失礼します」

「たまには参拝に来なさいよ?」

「あ、あはは。考えておきます」

 

ささっと帰る村人たち。その後ろ姿を眺めながら、霊夢は呟く。

 

「何よあの態度」

「神社の建ってる場所が悪いと思うぜ?」

「それ、私じゃどうにも出来ないじゃない」

「私にもどうにも出来ないな」

 

くだらない事を喋りながら歩く二人の少女。

飛んだ方が速いが、降りたのにいちいち飛ぶのも面倒だという霊夢の意思だ。

 

「あ~~、ようやく着いたぜ」

「やっぱり飛んでばかりいると歩いたときに疲れるわね。ま、今から疲れを癒してもらうわけだけど」

「ピピッ!?ミコダ!」

 

霊夢と魔理沙を見たメイド妖精が騒ぐ。と、あちこちから他のメイド妖精が現れる。

 

「ミコカ!」

「ミコダ!ミコガキタ!」

「ミコナノカー!」

「随分と仰々しいお出迎えね?」

「おいおい霊夢、今日はマッサージされに来ただけだろう?何で戦闘体制になるんだよ」

「う。つ、釣られてよ。別に私が戦闘狂って訳じゃ無いわ」

 

霊夢が言い訳していると、紅魔館の奥から人影が。

 

「あら、魔理沙。霊夢を連れてきてくれたのね?」

「おうよ!これで良いんだろ?」

「  あ、何?私を罠に掛けようって腹積もり?魔理沙を利用してまで?」

「罠だなんて、そんな事御座いませんわ」

「私はマッサージの代金を霊夢で払っただけだぜ!」

「ふーん?取り合えず魔理沙は潰す。そうね、一般人が居るかも知れないし、神霊『夢想封印 集』!」

「うぎゃあ!」

 

〰>〰∀〰<〰

 

「ふぅ。スッキリしたわ」

「ボロボロだぜ」

「では霊夢さん、お嬢様………ではなく、妹様がお待ちになっております」

「 え、レミリアじゃなくてあっちが用事なの?マジで?何の用よ」

「来れば分かります」

「たく、分かったわよ。あ、私を騙そうとしたらそこの白黒みたいになるからね」

「心得ておりますわ」

 

スタスタと歩く咲夜。その背中を見ながら、霊夢は思う。

いつもと態度違くない……?と。

 

「こちらです」

 

案内されたのは紅魔館のとある一室。

 

「てっきり地下だと思ってたけど。そう言えば、あんたは良いの?」

「はい? 何がですか?」

「マッサージの奴。あんたがやってるんでしょ?」

「あら、霊夢が勘違いするなんて珍しい」

「は?」

「中に入れば分かるわ」

 

混乱しつつも、扉を開けて中へ。

部屋にはベッドが一つ。悪魔の妹が一人。窓はなく、奥に扉がある。

 

「あ、霊夢来たのね!」

「いやまぁ、フランが居るのは分かるわ。けど、何その格好」

「ふふん、これがマッサージ師の制服なのです!」

「ふーん。で、美鈴はどこ?」

「え、なんで美鈴?」

「咲夜じゃないって事はマッサージ出来そうなのは美鈴ぐらいでしょ?」

「私だよ?」

「冗談もそんくらいにしたら?」

 

実は霊夢は分かっていた。部屋の中を見たとき、既に。しかし、認めたく無かったのだ。

フランがマッサージをすると言う現実に。

って言うか普通に怖い。狂気を持った悪魔に背中を預けるのは躊躇って当然でしょ?

 

「うぅー。 もう良いよ、霊夢、そこに寝そべって」

「・・・」

 

言われた通り寝そべる。

別に心を許した訳じゃ無い。無いが、以前なら爆発している場面で自分を抑えられた。この事が霊夢に言うことを聞くという事を選択させた。

それに殺されそうになったら『夢想天生』使えば良いだろう、という保険有ってこその選択だが。

 

「それじゃあやらせて貰いますね、お客さま」

 

フランが馴れた手つきで背中に手を置き、ぐっぐっと押していく。

 

「あっふぁっはっ」

「ねぇ、霊夢」

「あっ、なっにっよっ」

「別に私が押すのに合わせて声を出さなくても良いんだよ?」

「勝っ手っにっ、でてっくっるっのよっ」

「ふーん?」

 

その後は黙々と霊夢の背中を押していくフラン。

部屋には霊夢の声だけが響いている。

 

「んー、そろそろリラックス出来たかな?」

「あ~~?」

「良いみたいだね」

 

フランが霊夢の背中から手を放す。

 

「ん、終わり?」

「ううん、むしろこれからが本番。それじゃあ、キュ~~~~」

 

フランがその右手を霊夢に向け、ゆっくりゆっくり握っていく。

 

「は?あぁあぁあぁあぁ」

「むぅ、お客さま凝ってますねぇ」

 

霊夢にとって初めての感覚。それは、まるで体の固まった部分が壊れていくような…

 

「って、まさか!」

「あ、気付いたの?そう、これは私にしか出来ない技だよ!」

「ちょっ!体の凝りを『壊してる』って言うわけ!?」

「そうだよ」

 

フランが話し始める。

 

「そもそもの始まりはね、お姉様とか咲夜の『目』が大きくなっていたのに気付いた事なの」

「はぁん?」

「吸血鬼は物事を長い目で見ることが出来るから、気付けたの。それで、その大きくなっていく『目』を壊したの。そしたら」

「…そしたら?」

「爆発したわ」

「えちょ」

 

霊夢にとっては一大事である。何故なら、今現在その『目』を握られているのだから。

 

「あ、大丈夫だよ。今はそんなことは無いから」

「そ、そうなの?」

「うん。パチュリーとか美鈴とかと沢山練習したし。で、どこまで話したっけ?」

「レミリアが爆発したところよ」

「そうそう!」

 

フランが右手を握り締める。開き、また握り始める。

 

「あがががが」

「うわ、かったーい。それでね、えぇと、咲夜に相談したら色々教えてくれてね、ゆっくり壊していくと凝りが直るみたいで」

「いででででで」

「難しいんだよ、これ。力加減を間違えたら壊しちゃうし」

「あ~が~が~」

「商売にしよう!って言ったのはお姉様だから、力加減の練習はお姉様を試験体にしたわ。お姉様ったら、直しても直してもすぐに『目』が出来るし、間違って壊しちゃってもなんとかなるしね」

「あーーー、あ、痛くなくなった?」

「凄いでしょ。っていうか聞いてた?」

「一応ね」

 

レミリアが不憫とは思わないがよくやったぐらいには考える。何故なら、レミリアの尊い犠牲のお陰で私や村人たちは安全にマッサージを受けられるから。

 

「あとどんぐらい掛かるの?」

「霊夢の『目』が後四個ぐらいだから、後ちょっとだよ」

「うぃ」

 

 

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

「あ~~」

「はい、おっけぃ。まだ少し待っててね」

「うぃ~~」

 

フランの手によって霊夢は完全に軟体動物のごとくぐだっている。

 

「はいはい私の番ですね、フラン様」

「うん、いつも通りお願い」

「あ~~?みりん?」

「私は調味料じゃないですよ。ほっ!」

「あ?あーあーあー。あつっ!?」

 

美鈴が霊夢の『ツボをつく』。

霊夢の血流が良くなり、汗が吹き出す。

 

「あつっあつい!」

「それじゃあ失礼しますよ~」

 

チクッ

と霊夢の首に痛みが走る。

 

「いたっ」

「はい、おぅけぃです。フラン様」

「うん、ちゃんと押さえてるよ」

「何したの?」

「霊夢さんから代金を頂きました。どうせお金は持ってないんでしょう?」

「余計なお世話よ」

 

霊夢が言い返すが、力が無い。それだけリラックスしきっているのだ。

 

「吸血鬼が頂くのは人間の血ですからね」

「ウフフ、お姉様が喜ぶかもね」

「あふぅ。そろそろ良いかしら?流石にもう終わりでしょ?」

「あ、はい。お帰りはあちらです」

 

美鈴が部屋の奥の扉を指差す。

霊夢はフラフラと浮かび上がり、扉から出ていく。

 

「これなら、営業停止させる必要は無いわね」

 

これからも利用させてもらおうと心を決める霊夢であった。

 




紅魔館のマッサージ店は人妖問わず大衆に受けた。
惜しむらくは、人里からの行き来がしづらい点と、フランの能力だよりなのでチェーン店が作れない点か。

皆さんも幻想入りしたら、一度寄ってみてはいかが?
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