時間軸は大分未来を想定。エミリア陣営(プリステラ組&レム)で、食事をするというだけの短編。
レム居るのに宿の人に食事作ってもらうとかおかしくね?とか状況設定はガバガバです。
アニメの最終回がきちんとすばらしい最終回だったので、平和な話もいいよなあと執筆してみました。いつか、こんな時間が訪れますように。
※前作へのブックマーク、投票などありがとうございます。励みになります。
※ピクシブの方にも投稿してます。
時間軸は大分未来を想定。エミリア陣営(プリステラ組&レム)で、食事をするというだけの短編。
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アニメの最終回がきちんとすばらしい最終回だったので、平和な話もいいよなあと執筆してみました。いつか、こんな時間が訪れますように。
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「食堂、ここで合ってるよな、オットー」
「ここだと思いますよ、ナツキさん」
プリステラの、嫌に広いワフー旅館の中。エミリア陣営一行は夕食を取るために食堂に移動していた。
ここに来ているのは、スバル、オットー、ガーフィールと、エミリア、レム、ベアトリスの六人である。戸を開けると、座敷のある大広間が視界に飛び込んでくる。
「おったまげたわ。ここの宿って、すごーく広いのね、スバル」
「……おったまげたってきょうび聞かねえな」
「茶化さないの!」
宿の案内人に誘導されて、一行は座敷の座布団の上に腰を下ろす。席順は反時計回りに、エミリア、スバル、ガーフィール、机の向かい側に移って、オットー、ベアトリス、レムである。しかし、着席するやレムはこちらを真剣な面持ちで見つめている。
「いや、あの、レムさん? 何でそんな顔でこちらを見ていらっしゃるんでしょうか?」
「スバルくんの右隣を、ガーフごときに奪われてしまいました。レム一生の失態です……」
「それが理由!?」
ごとき呼ばわりされたガーフィールが怒りやしないかとひやひやしながら右を見るも、以外にガーフィールは冷静である。彼も少し大人になった、ということなのだろうか。
準備のいいことに、一行が腰を落ち着けるやいなや夕食が運ばれてくる。焼き魚にご飯と味噌汁、漬物。いわゆる焼き魚定食である。
「それじゃあ――木よ、風よ、星よ、母なる大地よ」
エミリアの声に合わせて一行は祈りを捧げ、各々が食事を始めようとする。しかし、その段になって一行は思わぬ困難にぶつかる。――口に運ぶ用の食器がスプーンでもフォークでもなく、ハシなのだ。
宿の人に聞いたところ、スプーンやフォークの類は置いていないらしい。一行の中にハシの経験者はほとんど居らず、自然スバルが扱いのレクチャーをすることになる。
一通りのレクチャーを終えて、各々が食事に取り掛かる。だが、スバルの見るところ、ハシをうまく使えているのは経験者であるレムだけで、ベアトリスもエミリアもガーフィールも扱い辛い食器具になかなか苦戦しているようである。
「なんかさらっとひどい扱いを受けた気がするんですけど気のせいですかねぇ!? 」
「なんだオットー、居たなら居たって言ってくれよ」
「さっき話してたでしょうが!」
オットーまじオットー。右隣のガーフィールと目を合わせて、お互いサムズアップ。これで今日のノルマは達成だ。
「あんたらホント何なんですかねぇ……」
ちなみに、ハシを使ったことがあるのかオットーは危なげ無く食事をしている。ガーフィールもなりとは違って手先が器用だからか、苦戦しながら何とかハシでの食事に慣れはじめたようである。
ベアトリスとエミリア――問題があるのはこの二人である。スバルは左隣のエミリアに目を向ける。先ほどから、嫌な音が聞こえてくるのだ。
「え、エミリアたん……? なんかハシがメキメキ言ってる気がするんだけど」
「気のせいよ」
「そ、そうか……?」
そんなに力を入れなくても大丈夫だよ、とアドバイスすると、素直にエミリアはその助言を容れて、ようやくハシに不必要な力を入れる事を止める。これでこちらの方は問題ないだろう。問題はむしろ、こちらの方である。
「……うう、うまく運べないのよ」
ベアトリスはハシをスプーンのように持ち、それでなんとかして魚の身を口に運ぼうとしている。しかし、ハシの上に乗せられただけの身は、あっけなく皿にダイブしていく。
「ベア子、そうじゃない。こういう風に持つんだ」
「む、難しいのよ。そもそも、どうしてこんな得体の知れない魚を食べなきゃいけないのかしら」
「そんなこと言うなよ、好き嫌いは良くないぜ。ほれ、あーん」
「あ、あーんなのよ」
差し出された魚をもぐもぐと食べるとベアトリスはご満悦である。そんなに焼き魚が美味しかったのだろうか。そこまで考えて、今自分が行ったことを振り返り、遅まきながらも自分が導火線に火をつけてしまったことに気がつく。……マズい、この流れは。
「ぐえッ」
突然、右側からカエルがつぶれたような声が聞こえた。慌ててそちらを向くと。
「れ、レムさん……?一体何をなさってるんですか?」
「はい、スバルくんのレムです。スバルくんからのあーんを待っています」
机をはさんで左側の席に座っていたはずのレムが、いつの間にかスバルの右に座っている。当然、本来スバルの右に座っていたガーフは押しのけられて、ついでに横倒しである。彼は一瞬だけこちらの方を見ると、悟りきった表情をうかべそのまますごすごと机の端に移動する。
「いや、あの、レムさん……?」
「スバルくんからあーんしてもらうのは、レムの特権です!」
「初耳なんですけど!?」
「今決めたので当然です!」
早く、さあ早くと期待に胸を膨らませキラキラした瞳でこちらを伺うレムを前に、その希望をかなえないなど有り得ない。覚悟を決めてハシで魚をつかみ、レムの方に向ける。きっと今、自分の顔は真っ赤だろう。
「ほ、ほれ。あー」
言い終わるよりも前に、青髪の少女はぱくりと食べてしまう。
「ごちそうさまでした、スバルくん」
そういって、レムは微笑む。その微笑みは、見ているこちらの心が暖かくなるような満面のもので。それだけで恥ずかしさを振り切って、あーんをしてよかったと思える。
――そう思えるのだが、左側から感じる冷たい空気を意識の外に置くのもそろそろ限界である。そろそろと右側を向くと。
「つーん」
こちらが左を向くのに反応して、エミリアもまた左を向く。やはり、機嫌を損ねてしまったらしい。顔が赤らむのを自覚しながらも、覚悟を決めてあーんの体勢に入る。
「ごめんて、エミリアたん。あーん」
「ん、こんなことで」もぐもぐ
「機嫌直したりなんか」もぐもぐ
「しないんだから」もぐもぐ
「……E・M・P(エミリアたん・マジ・プリティ)」
言葉とは裏腹に満足そうなエミリアを見て、こちらの頬も思わず緩む。自分が蒔いた種であるが、どうやら嵐は収まったようだ。ビバ平和な食事。さて、自分も食べようと焼き魚に箸をつけようとして。
「でも、スバルにあーんしてもらったってことは、スバルにあーんしないといけないわよね」
――運命は、何時だってスバルに残酷だ。いつもなら、どれだけだって聞いていたい鈴の音のような美しい声も、このときばかりは死刑宣告のようですらある。
「いや、あの、エミリアたん……?」
「し、しかたないんだから。しょうがないわよね。あ、あーん」
口ではしょうがないと言いながら、エミリアの表情は緩みきっていて、そこに一原子のしょうがなさをも見出すことは出来ない。さらに、照れも入っているからなのか、整った顔立ちが赤く染まっている。もしもこの場に桃髪の給仕が居れば、「レム、レム。エミリア様が色ボケなさっておられるわ」とでも言っただろう。しかし、恐ろしいのはそんなことではなくて。
「レムもスバルくんにあーんします!」
「ベティーもスバルにあーんするのよ!」
恐れていた事態。三人から差し出された焼き魚の身が、スバルを三方向から包囲する。さらには、この騒ぎを聞いた旅館の人たちまでこちらに好奇の視線を向けてくる。不味い、早く解決しないと晒し者になってしまう……
「スバルくんにあーんするのも、レムの特権です!」
「スバルは私の騎士だよね?ね、スバル」
「スバルはベティーの契約者なのよ。契約者の意に沿うのは当然かしら」
三者三様にスバルとの関係性を持ち出して、自分のあーんを受けろと迫る。一人は危うげのないハシ使いで。一人は、さっき指摘したのにもかかわらずまた力の入ったハシさばきで。最後の一人に到ってはハシが使えないので、あーんをするためだけにムラクで魚の身を浮かしている。それはもはやあーんなのか。
じりじりと近づいてくる三つの焼き魚に、知らずスバルの額に脂汗が浮かんだ。
「なァ、オットー兄ぃ」
「何ですかガーフィール」
「大将はスゲぇな」
「言わないでください!悲しくなるじゃないですかぁ……大体、アンタにはミミさんがいるじゃないですか」
「あ、アレはあいつが付きまとってくるだけで」
「いいじゃないですかぁ~微笑ましい。それに知ってるんですよ。この前二人で出かけたそうじゃないですか! なんてうらやましい!」
「ンだとぉ!? 大体、んなこと言ってるからオットー兄ぃはモテないンじゃねェのか?」
「何だと!僕が、僕がどれだけ、どれだけ……」
「お、俺が悪かったよオットー兄ぃ。そんな泣きそうな顔すんな」
「う、うるさい――今日もやけ酒だぁ」
まあ、なんだかんだ、エミリア陣営は今日も平和である。