ズサが行く異世界転生 作:グルバスター
ゴルドンに案内された秘書用の控え室は間違いなく快適に過ごすための工夫が施されていた。世界一の先進国を自負するロマネクの都の中心部として、最高峰の技術を盛り込んだようだ。
「奴の私物は放り出してやったが、不快なものでもあれば遠慮なく言いたまえよ」
「恐れながら……………、その奴とやらは、当分は外に出さない方がよろしいかと」
「まあな、あんな回りくどいことまでやっていたのだ…………事が片付くまでは………………、暴露されては困る」
「(面倒ならば、強引にでも片付けた上で情報規制すれば良かったものを…………………)そうなっては、最悪の事態ですな………………私でも分かりますぞ」
シナンジュとしては、この老獪な商人が強引な手段を取らないことに疑問を感じていた。ズィレーバは手荒に模様替えしようが、見向きもされない場所だ。経済大国ロマネクにけちをつけるリスクなど負う価値は無い。外聞を気にするにも、一般人の耳に届くことはまずあり得ない。万が一非難があっても、ロマネク上層部という漠然としたくくりに対しての何の意味も無いようなものだ。
だが、傭兵を雇って土地を荒らしていたとなると話が変わってくる。秘書がしました、と言っても額面通り受け取る奴などいない。もし、それが事実だとしてもだ。そうなる前に蹴りをつけなければ、ゴルドンは大きなダメージを負う。だからこそ、悠長に住民投票などやっている場合ではない。
シナンジュは、ゴルドン邸で一夜を明かした。風呂は汚れを水で流すだけだったが、眺めが素晴らしかった。エルスグラードを一望でき、屋外に出られるようになっていた。食事も珍味まで取り揃えた豪華なものだ。
(ズィレーバのジャガイモなんかとは、月とすっぽんだとは思ってはいたが……………………あれを食べ物と考えるのは、此処の料理に失礼だな……………美味い、素晴らしいぞ)
ベッドについては、
「(今の私にとっては、最高のドックだな……………少なくとも、横になっている価値がある………)………………Zzzzzzzz」
「よし、これから我らはズィレーバに向けて出発する!!!」
ゴルドンは、飛行船を持っていたらしい。しかも、護衛はワイバーンである。恐ろしく強そうな見た目だが、人懐こい種類らしい………………………人には。
「クォォォォッッ!」
一方、シナンジュには威嚇するかのように吠えかけて、考えごとをしていたシナンジュを少し驚かせた。その様子を見ていたゴルドンの使用人たちは、
「1人で傭兵団と渡り合う奴でもビビるときあんのか………………」
「2mを優に越えているぞ…………………素顔はわからんが………………」
「へへっ、俺はあいつは女だと思うぜぇ」
「えっ、何でだよ!?確かに声高いし、体型分かりにくいから、判断できんが………………」
「あいつ起こしに行ったときに寝言を聞いちまったんだよ……………『大佐ぁ、あと5分寝かせてください』ってな、ありゃ、女の子の声だった」
「あいつはまだ若いゴーレムかもしれんな、もしくは中身はもっと小さいか、だな」
「なるほど、小さい女の子が中に………うへへ………」
いろいろと邪推されているシナンジュだが、性別はない。だから、
「(なんか私が、アンジェロ大尉みたいなってるのか?いやいや、私は男でもないから少なくとも彼ほどはヤバくない……………、そうに決まってる!!)私に中の人などいないからな………………」
混乱しながら突っ込みを入れるのがやっとだった。シナンジュのAIは、フロンタルよりはアンジェロ似である。
シナンジュも、アンジェロも、フルフロンタルに拾われて彼にのみ従った。似ない方がおかしいかもしれない。
そんなことよりも今はズィレーバだ。住民投票の告知と協力者の引き込み、選挙当日に開票・施行を今から一週間で行う強行スケジュールだ。昨日話した方針に加え、住民を釣るための物資にゴルドン邸シェフの豪華な手作り弁当を追加した。ゴルドンとシナンジュは、ズィレーバの住民が口に入れる物を考慮して高い効果を見込んでいた。