ズサが行く異世界転生 作:グルバスター
(何故アンジェロ大尉の声にしたんだ……………?大佐の声なら、まだわかるが……………しかも、寝言まで彼の…………あー、なんと言うか…………あれだ………)
(スリープモード時のあれは不味かったかもしれないですね)
(だろうな、なんとかしてくれないか?できれば、大佐の声が良い)
(内面はアンジェロ大尉に似てますよね、あなた………一応その予定だったのですが、あなたがこんな裏技みたいなことするとは、思ってなかったので……………初心者が、あのゆったりした威厳ある声で話すのは、ちょっと腹立つかな、と思ったので……………)
(世界貢献ポイントとやらで、武装が手に入ると言っていたな……………大佐の声も買えないか?)
(でも、まだあなた世界に貢献してないでしょう?)
(ズィレーバの連中を助けたら、買えるか?)
(ひ、必死ですね…………そんなに嫌だったんですか!?まあ、助けられればいいでしょう)
(よろしい、以上だ)
シナンジュと女神との交渉は終わった。とりあえず自分の威厳が粉微塵と化す前にズィレーバの件を片付けねばならない。ついでに、声を変更するまではスリープモードになるわけにはいかない。
(とりあえず私が出て、もっともらしい言葉で、あの弁当を配りながらゴルドン等から聞いた移転先でも褒めちぎるか……………)
(ズィレーバの住民も限界だろう。あの馬鹿のお陰で多少意固地になっている、とゴルドン等は言うが呆れたものだ。実際は、『あの馬鹿』のお陰でかなりやり易い。まず、畑を荒らされて腹ペコの奴らを食べ物で釣るのは簡単だ。それに、私が傭兵どもを蹴散らしたのを見ていた奴らがいる。その私が行くのだからな)
悪魔に会った後、手を差し出してくれたのは天使だと考えてしまうのは、無理からぬ話だ。
『二人目の悪魔だ、もっとひどい奴かもしれない』
と思えるのは、そのような話を耳に入れた人間だけだ。貧しくても、気高いズィレーバの人々は知らないだろう。騙してまで奪うものは、何も持っていないからだ。
「なぁ、シナンジュ君…………………面白い寝言を言ったそうじゃないか?悪夢でも「寝落ちしてたか!!」」
「どっ、どうしたシナンジュ君!?」
人を見下したりしてると、バチが当たるのかもしれない。なんと今度は、ゴルドンにまで伝わっていたようだ。内容までは知らないようだったが。
「ズィレーバだな」
不毛地帯だけをズィレーバとして括っているロマネクは、慈悲の欠片も無いと言えるだろう。住民がいなくなれば、軍の実験場か、ローゼアへ突き返すか、だ。住民がいるから金が余計にかかる。
「私が独りで行く……………弁当と炊き出しの準備を」
「任せろ、シェフまで連れてきたからな…………やはり、好きで貧乏してるわけではないからには、食い物で釣れるか…………ふんむ…………」
ぶつぶつ言ってるゴルドンを置いて、ズィレーバで一番大きいと思われる集落に向かう。名前は無い上に、何人住んでいるかもわからない。そもそも一番大きいかどうかもわからない。
「見た感じでは」「前に来たときと変わっているわけがない」
とのことらしい。傭兵たちを村人たちの前で、蹴散らしたのはこの近くだ。この集落の畑を荒らすつもりだったのかもしれない。
「おおっ、我らが救世主じゃっ!!!!!」
「あのときの…………………なんと神々しい」
「あっ、赤騎士サマだよ」「カッコいいよな」
(悪い気分ではないが、いささか心苦しいな……………私は、お前たちをここから叩き出すために来たんだからな…………)
村人の歓声を聞き流し、集落の中心部に歩みを進めた。粗末な家が建ち並ぶだけで、目を引くのはそのボロさ加減くらいのものだ。
(こいつらのためにも、さっさと解決しないとな……………)
飛行船の降りた方から、煙が上がった。別に料理に失敗したわけではなく、料理が出来て、仮説の食事場も完成した合図である。あとは、シナンジュが村人たちを説得するだけである。