ズサが行く異世界転生 作:グルバスター
「ふんむ、得体の知れない輩が傭兵どもを連れて来たとな?」
「はい、ゴルドン様に面会を「通せ、そいつだけな」
「はあ、あんな奴と会う気で?」
「アホか、貴様は………武装解除して、衛兵も同席させるに決まっておる!だが商人としては、直接顔を合わせることだけは譲れん………それが出来ない奴は商人とは言えんからな」
「くれぐれもお気をつけて………「貴様も顔を出せ」」
「そんなっ!?」 「冗談だ」
冗談とは言ったが、ゴルドンは内心かなり苛立っていた。あのような腰抜けは、一生雑用で十分だ。それが本人にとっても、この交易大国を支配するエルスグラード
にとっても望ましい。エルスグラードの大商人ゴルドンは、商人に不要なものはいくつもある、と考えている。例えば、プライド、蛮勇、臆病、などだ。分不相応なプライドの高さは選択肢を狭めるし、余計なことに手を出しやすくなる。浅ましさも身を立てたら改めるべきだが。蛮勇とは、引き際を知らないことだ。商人としては致命的と言える。今の男のように臆病なのは、ケチな商人にしか成れない。慎重と臆病は違う。臆病はチャンスを逃す。
「応接室内に例の者が入りました………武器と思われる物は取り上げましたが、人間ではないので……………、それにあの図体で鎧のような体です……」
「ワシは、ゴーレムと商談を取りつけに行った時もあった!大の男が泣き言じみたことを言うでないわ!!!」
ゴルドンは、ますますイライラしながら応接室に向かった。残された男は、既に涙目だった。
「ご多忙中にお時間をいただきました…………私はシナンジュという者です」
「ふん、要件は?」
「ズィレーバについての話が」
「ふん、詳しく」
シナンジュは、傭兵たちを従えて彼らの雇い主ゴルドンに会いに来ていた。老獪な商人ならば汚れ仕事に使った彼らを連れて来ることで、自ら出てくるか、いきなり消しに来るか、のどちらかの行動をとるだろう。シナンジュは、ゴルドンが交渉力に長けているとの情報から、前者の行動をとることに賭けた。
「(賭けは当たりだ………………次は……………)はい、ズィレーバからの人払いが回りくど過ぎる、と思いまして」
「ズバリと踏み込んできたか、嫌いではないぞ………して、何が言いたい?」
「(隠す気は無い…………か?)私にズィレーバからの人払いについての考えが有ります」
「ほう…………………、ワシはどうすれば良いのだ?(ふむ、強請りではなく、売り込みか…………)」
シナンジュは傭兵たちの戦いに介入した。ただし、この世界で最初に出会い、シナンジュに窮状を涙ながらに訴えたズィレーバの住民たちのためではない。この世界で、自らの足場を固めるためだ。心にも無かったサイド共栄圈実現を掲げて戦ったフル・フロンタルの影響を受けたシナンジュには、あの戦いが茶番であることがすぐにわかった。そして、自身がフロンタルの建前の行動を真似た上でこの世界で身を立てるため、最大限利用することにした。何故、フロンタルの建前の行動になぞらえて動くのか?それは、フロンタルが、シナンジュに乗っているのは建前の目的のための建前の行動だったからだ。ネオジオングごと崩壊していく自身の体は、真実のフロンタルの願いだったのか?単なる実験機であった自分を見事に乗りこなしてくれた唯一のパイロットは、シナンジュを最後まで彼の建前の目的のためにしか動かしていなかったのかもしれない。
(兵器が、乗り手が乗り手自身のために自分を使って欲しいと思うのは、わがままだろうか?)
「ズィレーバと隣り合うクノム地方との境界線付近に彼らの集落を移せば良いかと」
「だが、移住したい者は少ないぞ……………そんなのは何度も提案したんだぞ」
「彼らは、あなた方に少し意固地になっているだけでしょう……………戦闘を止めた私が行けば、話だけは聞いてくれるでしょう」
「むぅ………………」
「それに、移住への懸念は、見知らぬ土地や人への警戒心から来るものでしょう………後は、これらを踏まえて住民投票を行えば良いだけでしょう」
「なるほど、ごまかし込みでだいたい45%の住民を引き込むことが出来れば………………か?」
「はい、傭兵団が数増しに雇っていた荒くれ者たちは思想的にはこちら側、また買収も容易でしょう」
ゴルドンは、感服してしまった。やはり、小狡いだけで頭の粗末な男とは、違うようだ。実際、傭兵に内戦の振りをさせて暴れさせるというのはかなり穴がある計画だった。盗賊が暴れていると言ったのでは、
「あそこに盗るものなんかあるのか!?」
「商業大国として、盗賊が彷徨いているのはイメージ悪化に繋がるし、討伐しろ!」
となるから、政治闘争を装おうとしたのだが人数不足が祟り、傭兵団のイロモノ揃いの装備品が目立つことになった。当然、端から見れば突っ込みどころ満載な戦いが繰り広げられていた。しかも、傭兵同士で殺し合うわけにはいかず、現地に罪人を連れて行って斬り殺すはめになった。信憑性を高めるために、たびたびこのような手間がかかることをしなければならなかった。各国から来た視察団の呆れ顔が記憶に新しい。ズィレーバだからいいか、とスルーしてくれているが。だが、これがばれたらかなりまずかった。そもそもゴルドンが丸投げしていたのだが、ゴルドンが気付いた時には既に手遅れだったのだ。仕方ないから、そのまま任せていたが経費はその間抜けた責任者のポケットマネーから出させた。当初は死ぬ気でやらせようということだったが、
「(あいつの首切るか、こいつのが役立つだろうし)では早速だが……………、ことは急がねばならん…………どこぞの馬鹿のせいでな」
「承知した」
「明朝には向こうに出発するから、良ければここで泊まっていってくれ……………これから、秘書寝室に1つ空きができるからな」
「………………………………感謝します」
「なーに、大したことではない」
ゴルドンは、シナンジュと握手を交わし、2人で部屋を出た。衛兵たち後をついて行く。そして、ゴルドンは、不安そうな顔をしてゴルドンを待っていた男に、解雇を宣告した。呆然とする男を残し、ゴルドン一行は空き部屋が1つ増えた秘書寝室に向かった。