Fate~Flower of battlefield~ 作:yuia
戦士たちは既に撤退地点まで到達していた。
撤退地点と言っても安全地点と言うわけではない。
単に後方部隊と合流したと言うだけ。
それでも俺には十分だ。
なにせ愛しい女の無事が確認できるのだから。
本来なら無事を喜び合って抱きしめたいところ。
それをぐっと堪える。
なにせまだ戦場の中心から多少離れたというだけだ。
周りには少ないながらも敵はいる。
「さんきゅ。」
すれ違う瞬間、一先ず先ほどの援護の礼だけでも言っておく。
「どういたしまして。」
どうやら意味は伝わったようだ。
正面から少しだけ視線を外しウインクで答えてくれた。
それだけで疲れが一気に抜ける気がした。
このままこいつと部隊の殿を務めたかったが、俺一人だけ輪を乱すわけには行かない。
それに部隊では俺が一番最後だ。
こいつも直ぐに後退して来るだろう。
「おい!!何してやがる!!」
部隊前方から誰かの怒鳴り声がした。
また勇者がなにかやらかしたのだろうか?
名残惜しげにあいつを見ていた俺は事態を確認しようと振り返る。
それと同時に俺が振り返った先から俺の横をら何かが駆け抜けた。
「智也君!?」
あいつの驚いた声。
俺は再度振り返る。
視線の先には地面に落ちていたのだろう、魔族の物と思われる棍棒を持った勇者。
走る先には魔族が三体。
魔族までの距離は残り15m。
あいつが矢を放つ。
正確無比なその矢は一体の魔族の眉間に命中。
そこで俺が走り出した。
勇者までの距離は30m。
あいつは次の矢をつがえようとして、矢が切れている事に気付く。
そして、弓を捨てて腰の短剣を抜いて走り出す。
勇者との距離は15m。
「待て!!俺が行く!!」
制止の声をかけるがあいつは止まらない。
俺は走る速度を上げる。
しかし、先程までの戦闘で酷使した体は思ったように動いてはくれない。
そこで勇者と魔族の距離が0になった。
勇者は棍棒を振り上げ一体の敵に叩きつける。
それは魔族の掲げた楯を粉砕し、同時に左腕ごと吹き飛ばす。
勇者は振り下ろした棍棒を今度は力任せに振り上げた。
幸運な事に腕を失って体勢を崩していた魔族の頭に命中しそのまま頭を粉砕する。
しかし、勢いもここまで。
もとより二対一。
本来なら一体目の魔族に手傷を負わせたのなら、目標を変え残りの一体を攻撃しなければならなかった。
だが、もはや仇に目が眩んだ勇者はそれをしなかった。
結果、残りの魔族に大きな隙を見せることになる。
現に敵はもう棍棒を振りかぶっていた。
対する勇者はそのことにやっと気付いたところ。
間に合う筈が無い。
ここで幸運なことが一つ。
その瞬間に一人間に合った者が居た。
俺にとっては不運なことに。
間に合ったあいつは勇者体当たりして吹き飛ばした。
もし間に合ったのが俺であれば勢いを殺さず勇者と一緒に倒れこむ事が出来たのかもしれない。
しかし、体重の軽いあいつではそうはならなかった。
勇者に体当たりしたあいつの勢いは死に、その場に停止する。
そこに迫る魔族の棍棒。
やめてくれ。
あいつは回避が間に合わないと判断するとそれを必死に短剣で受けようとする。
やめてくれ。
しかし、棍棒の一撃を短剣で受けきれるわけも無く。
嘘だ。
さらに、魔族の怪力をまともに受けたあいつは。
嘘だ!!
玩具のように宙を舞った。
俺の方に飛ばされたあいつを必死に受け止める。
俺の横を戦士たちが駆け抜けていく。
あいつの体は右腕と脇腹の一部が異様な形に凹んでいた。
内蔵をやられたのか口からは血が流れ出している。
「おい・・・目開けろよ。」
反応が無い。
「開けてくれよ。」
気絶しているかと思い少し揺すってみる。
「ぐっ!!」
「すまん。痛かったか。」
よかった、気絶していただけのようだ。
「はぁ・・・はぁ・ごぼっ!!」
口から勢いよく血が吹き出す。
かなり深くやられたみたいだ。
「すぐ治療部隊に見せてやるからな。」
そう言って抱き上げようとした俺をあいつはとめた。
「まっ・・て、も・・うわた・はぁ、しはダメだよ。ゲホッ・・・助か・・らない。」
「何言ってんだよ!!そんな事いってる暇があったらはやk「聞いて・・・ね?」」
あいつの俺を掴む手は実際の何倍にも強く感じた。
「何だよ。」
その力に圧されて聞き返した。
「さ・・・っきも、言った・・はぁ、はぁ・・けど・・私は・・・もう・・ダメみたい。」
そんなこと言うなよ。
「ごめん・・ね。一緒に・・・はぁ、はぁ・・戦って・・・あげられ・・なくて。」
いいよ。別にいいんだよ戦わなくても。お前の分まで俺が戦うから。ただ側に。俺の側に居てくれよ。
「もう・・・わた・はぁ、はぁ、はぁ・・・しの・・援護・・ないん・・だから・・・無茶しちゃ・・だめ・・はぁ、だよ?」
そんなに心配ならずっと見てろよ?俺馬鹿だから忘れちゃうかもしれないだろ?な?
「な・・・かないで、わた・・し・・・あな・・と・・いれて、はぁ、はぁ、ほ・とに・・・はぁ、幸せ・・・だったよ。」
嘘言うなよ。何回泣かせたと思ってんだよ。俺誓ったんだぜ?泣かせた分の倍笑わせるって。
「だか・・さいごに・・・はぁ、はぁ・・言わせて?・・・・・・・・・」
「おい・・・おいって!!やめろよ。もったい付けるなよ。土壇場になって恥ずかしくなったんだろ?そうきまっ「ユウキ」」
肩に手を置かれて振り返ると、泣きそうな顔をした戦士が立っていて。
ゆっくりと首を振った。
俺は視線をあいつに戻した。
俺の腕の中に納まるあいつはまだ暖かくて、でもすっぽりと何かが抜けような気がして冷たく感じた。
それが余計にあいつの死を感じさせて・・・。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーー!!」
そして・・・俺の心は凍った。
いかがだったでしょうか?
いろいろ語れていない部分がありますがあまりにも長くなるため本編で書こうと思います。
最後・・・ばっかりで読みづらかったらすみません。