変わらぬ輝きを見守る者   作:Kuroa430

3 / 6
今回はマトイ救助の手助けまでです。
安藤サイドの話に無理に絡ませると、パラレル×パラレル=カオスになって収集がつかなくなると感じたので水琴さんは基本的にダーカーを吸い寄せて安藤にダーカーが行き過ぎないようにする係になりそうです。


Episode1
変化する運命


A.P.238/2/20/5:00

 

フィリアの部屋。まだ、外は暗い。

腰のあたりからゾワゾワというようななんともいえない感覚に襲われ、水琴は目を覚ます。

どうやら、フィリアが水琴の腰のあたりから生える大きな尻尾を抱くように寝ているようだ。不意に、尻尾をきゅっと締めつけられた。

 

「ひぁっ……!」

 

水琴は、未知の感覚に驚き自分でさえも知らない声を出してしまう。しかし、力は緩まない。それから30分ほど尻尾を締め付けられ続けた。水琴は必死にフィリアに声をかけるがフィリアは目覚めない。

 

「おねが…ひっ…フィ…リアァ…っくぅ…はな…し……んぅっ……はなしてぇ……」

 

昨日までの凛々しい姿とは程遠い、弱々しく少女のような声、そして白い狐耳を下げてぷるぷると身体を震わせ涙まで浮かべるその姿はまるで子犬のようだった。

必死の呼びかけにようやく目を覚ましたフィリアは状況を把握するのに少し時間がかかった。しかし、徐々に状況を理解しだしたのかみるみる顔が赤く染まっていく。まだ掴んでいた尻尾をパッと離すと同時に謝る。

 

「すっ……すみません!私、寝ちゃうとなにかに抱きついちゃう癖があるみたいで……」

「い……いや、起きて……はぁ……くれて……助かった……んっ……はぁ……」

 

謝るフィリアに荒い息の母親、そんな2人を尻目に娘は気持ちよさそうに眠っていた。

朝から思わぬことで汗をかいてしまった水琴は娘をフィリアに預け、軽くシャワーを浴び、朝食を作った。トーストを食べつつフィリアはそういえば、と口を開いた。

 

「水琴さんのその耳と尻尾、やっぱり本物だったんですね……それで、ヒューマンというのはやはり謎です。あと、ずっと気になってたんですけど、娘さんの名前ってなんていうんですか?」

「……何故そんなことを?」

「何故って、そりゃあいつまでもこの子のことを娘さんと呼ぶわけにもいきませんし、なによりあなたの娘として情報登録する際、名前は必須項目なんです。」

 

娘の名前。今までそんな事を聞かれたことは無いし、自分もずっと娘とだけ呼んでいたため名前などは考えたこともなかった。水琴という名もこの身体をくれた少女がつけてくれた名だ。

初めてつける娘の名。水琴は少し黙って娘を見つめてから答えた。

 

「この子の名は、ヒカリだ。」

「ヒカリちゃん……ですね。わかりました。では、そう登録しておきます。」

 

ヒカリ。自然と出たその名は水琴にたくさんの大切なものをくれた少女の名だ。その少女が最期にくれたプレゼント、そのプレゼントに水琴は少女の名をつけた。何故そうしたのか……それは、今の水琴自身にすらわからなかった。しかし、初めてヒカリと名前で呼ばれた娘はどこか嬉しそうに顔を胸に押し付けてきた。

 

 

A.P.238/2/20/8:00

 

フィリアをメディカルセンター前まで送ったあと、修了任務の集合時間までまだ時間があると水琴とヒカリはショップエリアに来ていた。すると、不意に頭の中に10年前に出会った例の声が響いてきた。

 

『貴女を、待っていた。』

『……シオンか。単刀直入に聞くが今日は何をすればいいんだ?』

『……貴女には、彼が来るまでマトイをダーカーから守ってもらいたい。』

 

シオンの言う彼が誰を指すのかはわからなかったがきっと誰かがマトイを助けることになるのだろう。それまで、水琴はダーカーや原生生物からマトイを守ることが今回の依頼らしい。いっその事私が助ければいいのでは、と感じた水琴だが娘とマトイ2人を庇いつつシップに戻るのは難しいと判断しその依頼を受けた。水琴が了承するのを聞くとシオンの気配はすぐに消えた。どうやらシオンは10年前、水琴がクラリッサを手にした時に気配を感じたルーサーという男を警戒しているらしい。

 

シオンの依頼を受けた後、ゲートエリアに向かう水琴とヒカリ。その目線の先には昨日の情報屋姉妹、パティエンティアが待っていた。パティは水琴に気付くとすごい勢いで抱きつこうとしてきた。勢いのまま抱きつかれるとヒカリが潰れると判断し咄嗟にヒカリを高く持ち上げる。そして、無防備になったお腹にパティはダイブしてきた。

 

「みーこーとー!ヒカリちゃーん!」

「ちょっと待って!パティちゃんそれ危ないから!」

「おっと……」

 

パティのダイブで尻餅をつきつつ何故ヒカリの名を知っているのか聞く水琴。パティの話ではさっきたまたまフィリアに会って聞いたらしい。後から追いついたティアがパティに説教を始める。

 

「パティちゃん!水琴さんは赤ちゃんを抱えてるの!もし、落としちゃったりしたら赤ちゃんだから打ちどころによっては死んじゃうかもしれないんだよ?」

「うぅ、ごめんなさい、ティア。」

「謝るのは私じゃなくて水琴さんにでしょ?」

「ごめんなさい、水琴。」

 

この姿を見ているとまるで姉と妹が逆のようにも感じてしまう。まぁ、ヒカリは無事だし、と今日なぜここに呼んだのかを聞く水琴。すると、パティが何かをアイテムパックから取り出した。

 

「じゃじゃーん!これを渡したかったの!……えっと、なんていうんだっけ?」

「はぁ……名前くらい覚えとこうよ……これはおんぶ紐っていって昔の人が赤ちゃんの世話と仕事を両立させるために作った便利道具よ。今じゃ赤ちゃんを預かる施設とかも多いからあんまり需要はなくなってるけどね。」

「そうそうおんぶ紐!これでヒカリちゃんをおんぶすれば両手は空くし少しは戦闘も楽になると思って持ってきたんだ!」

 

そういって2人はおんぶ紐の付け方をレクチャーしてくれた。

 

「なるほど、若干肩が動かしにくいが充分戦えるだろう……」

「おぉ……すっごい……」

「胸……」

 

胸の前でクロスさせるタイプのおんぶ紐だったせいで黒いコートを着ているのに水琴の胸が強調されていた。少し恥ずかしかったが、戦闘のためなら仕方ないと今回は諦めたことにした水琴。

それから集合時間まで軽く会話をしていたが、ティアはずっと死んだ魚のような目で胸を睨みつけていた。別れ際に今度はクロスタイプじゃないおんぶ紐をパティに頼んでおいた。

 

 

A.P.238/2/20/10:00

 

いよいよ、修了任務開始30分前となった。研修生達は十人程の組に分かれそれぞれのキャンプシップへと乗り込んだ。

目的地に着くまで水琴達研修生は、六芒均衡の1、レギアスの声で基本の情報を確認する。

そのままここに記せば長くなるので要約する。

『オラクル』とは惑星間を自由に旅する船団である。『オラクル』にはヒューマン、ニューマン、キャスト、デューマンの4種族が存在し、それぞれが協力し合い惑星調査組織『アークス』が成り立っている。

ということだそうだ。

 

『……到着したようだな。これより向かう惑星は、ナベリウス。文明は存在せず、原生生物は凶暴だ。決して油断はするな。』

 

『新たに誕生する「アークス」よ。今から諸君は広大な宇宙へと第一歩を踏み出す。各々のパーソナルデータを入力せよ。

我々は、諸君を歓迎する。』

 

これで、音声は終わりのようだ。随分と聞き心地のいい事しか言わないな、つい最近10年前の市街地を見てきた水琴にとってはそう感じられた。すると、同じことを口にした金髪のニューマンがいた。彼は隣の黒髪の男と10年前の事について軽く話していたがこちらに気付くと駆けてきた。

 

「なぁ、あんた。あんたって昨日急遽修了任務に参加することになった水琴って人だろ?おれは、アフィン。よろしくなっ!」

 

元気のいい声で挨拶をして、アフィンは黒髪の男と一緒にナベリウスへ降りていった。

全員がナベリウスに降りた頃ようやく水琴は、パーソナルデータを打ち込んだ。

 

「種族ヒューマン、性別女、年齢は……28くらいでいいか。クラスはハンター……っと。」

 

パーソナルデータを打ち込み終わると今回は自動で武器が装備された。名前はソード。初心者に扱いやすいような作りになっていて威力はあまり無い。とりあえずはこれでいいだろう。と水琴もナベリウスへと降りていった。

 

A.P.238/2/20/10:30

 

惑星ナベリウス・草原エリア

簡単なテストをして原生種との戦闘となった。しかし、ここで問題が起きた。武器にフォトンが上手く流れないのだ。アークスの武器は使用者がフォトンを流すことによって本来の力を発揮する。つまり、フォトンの流れないソードでは弱い原生種数匹ならなんとかなるだろうが今後戦うであろう大型原生種やダーカーとの戦闘ではまず役に立たないだろう。フォトンを流そうともたついていると原生種、ガルフがこちらに気づき吠えた。すると、あっという間に、沢山のガルフに囲まれてしまった。

 

「くそっ……こんなとこでもたつくわけには……ちっ」

 

舌打ちをしつつ最初に飛びかかってきたガルフをフォトンの流れていないソードでたたき落とす。それを見たガルフの仲間は一斉に飛びかかってきた。水琴は跳び上がる。ガルフは勢いのまま仲間にぶつかる。間髪入れずに、水琴はソードを物凄い速さで叩きつける。ガルフたちは悲鳴を上げるまもなく泡を吹いて倒れた。

 

「これは……まずいな。」

 

ガルフたちに叩きつけたのは水琴の全力の半分。かといって手を抜いたわけでもないが一撃でガルフたちを殺せないとなるとマトイを守りきるための体力が残せるかが不安だった。水琴は強いとはいえ体力がかなり少ない。長く戦えばすぐに体力が切れてしまう。水琴の能力、時空間移動を使えば尚更だ。

武器が役に立たないこと自分の体力の無さにイライラしていると突然、通信が入った。

 

『惑星ナベリウスにてコードDを発令!空間侵食を観測、出現します!』

 

突然の通信に驚く間もなく次々とダーカーが現れる。四本脚の小型ダーカー、ダガン。

ダガンは1匹では弱いが必ず出現する時は『数匹』の群れで出現するはずである。が、今回は様子が違った。水琴の前に現れたダガンは数十匹。明らかに数が多い。何故なのかはわからないがダーカーはアークスを優先して襲う。たくさんのダガンは一斉に水琴を襲ってきた。

 

「なんなんだ!さっきからっ!温存させる気は全く無いのか!?」

 

そう言いながら水琴は、使えないソードを地面に刺す。そして、そのソードを足場に先程ガルフと戦った時の数倍跳び上がる。そして、空中で右手を突き出し目を瞑り叫ぶ!

 

「開け!グラビティゲート!そして、出でよ!我が敵を塵と化せ!ブラックウィング!」

 

声とともに、地面に黒い穴が開き数十匹のダガンは一気に中心に吸い寄せられる。そこへ、いつの間にか水琴の手に握られていた黒く大きな剣の一撃が光よりも速く落ちてくる。ズガァァン!というとてつもない音とともに黒い穴とそこへ吸い寄せられたダガンたちは跡形も無く消え去っていた。

音もなく地面に降りた水琴は、さっきの衝撃で折れたソードを横目で確認するとマトイの待つ森林の方へ駆けて行った。

 

ブラックウィング、水琴がそう呼ぶ黒い大剣は、振ると黒い羽のようなものが舞うことからそう名付けられた。この剣はどんなに硬いものを斬ろうが刃こぼれせず、使用者が敵と定めたものは全て塵と化してきた。現にマトイを探して森林を駆けている水琴の前に現れたダーカーや原生種は全て一太刀で塵と化している。

 

 

A.P.238/2/20/11:10

 

惑星ナベリウス森林エリア。

ようやくマトイを見つけた水琴。しかし、マトイは大型の蜘蛛のようなダーカー、ダーク・ラグネに襲われかけていた。

ダーク・ラグネの爪がマトイを切り裂こうとした瞬間、その爪を水琴が切り落とした。ラグネはキシャァァァ!という悲鳴のような声をあげた後距離をとろうと後退りする。その距離をとらせまいと水琴は、ラグネの顔面にPA(フォトンアーツ)ギルティブレイクを叩き込む。最期の抵抗とラグネは大ジャンプで飛びかかってくる。それを既に読んでいたのか水琴は大きな横薙ぎを終わらせ、ダーク・ラグネをオーバーエンドで切り裂いた。

 

「……はぁ……はぁ、これでしばらくは大丈夫だろう。マトイは無事なのか……?」

 

水琴はそう言うと、ゆっくりと倒れているマトイに近づく。そして、そっと顔をのぞき込む。次の瞬間、水琴は驚愕した。

 

「なっ!?ヒ……カリ……?」

 

水琴はあまりの衝撃に動揺が隠せなかった。シオンに助けてほしいと頼まれたこの少女と水琴にたくさんのものをくれた少女……その2人の顔がそっくりなのである。しかし、よく見るとマトイの方が若干幼く見える。それに服装は全く別物だ。水琴は似ているが違うのだと、そう自分に言い聞かせると背中のヒカリを見る。

 

「……あ。」

 

ヒカリは先ほどの激しい動きで酔ったのか、青い顔をしていた。慌てておんぶ紐を解き抱っこへ持ち替える。手に握られていた黒剣ははなすと黒い羽を一つ残して消えた。そうこうしているうちに、任務が始まる前に話しかけてきたアフィンの気配ともう1人の気配を感じ水琴は、急いで身を隠す。

そして、水琴は確信する。あの黒髪の男がマトイを助ける人物だったのだと。

彼らがマトイを救助し、キャンプシップへと戻ったあと、水琴も別の船でアークスシップへと帰還した。

そして、具合の悪そうなヒカリをメディカルセンターにダッシュで連れていった。




今回の反省(赤ちゃんをおんぶしてる時は激しく動くと危険)
ダーク・ラグネさんが森林に出現していたのは、私が初心者の頃森林探索に行った時、レベル7でラグネさんに追いかけられた印象が強かったためです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。