私達がアークスとなって1週間ほどが過ぎた……
試験日に無茶をしたせいで、1日の出撃停止命令が出され、出遅れてしまったがなんとかアッシュと同じくナベリウス森林、凍土、アムドゥスキア火山、リリーパ砂漠の自由探索許可を得た。さらに、アッシュは短期間でたくさんのアークス達と知り合い交流を深めている。マターボードの力で他アークスに出会いやすいとはいえ、あそこまで仲良くなるのはその人柄の良さも関係しているのだろう。もちろん、私も時々アッシュに会うのだが本当に親切で誰にでも優しく、真面目で好青年な印象を受けた。
A.P.238/2/28
私は、最近アークス内で噂となっている惑星ナベリウスの凍土にいるという何かを探すダーカーについて調べる為に、凍土にヒカリを連れて調査に来ていた。アークスの技術は凄いもので着せるだけで完全に外からの、熱や寒さやホコリ、砂から身を守る服というものがあり今回はそれをヒカリに着せている。何故ヒカリだけなのかというと、元々私は気温や外部からの影響を受けにくい性質を持っているのが理由と言えるのだが、何よりもメセタが足りなかったからである。
ーーダーカーどころか原生種すら見当たらないな……近くにいるのは、さっきから私を追ってきている気配を限りなく薄くしている……アークスか?
ここは、凍土だ。追ってきているのに足跡が見えないという事は、空を飛んでいるか、もしくは私の足跡に完璧に合わせて歩いているかのどちらかだろう。少し立ち止まり、冷たい空気を吸い込む、そして、ゆっくりと息を吐く。吐いた息は、白くなりしばらくすると細かい氷となって飛んでいった。
「……さっきからコソコソと私を付けてきているそこのお前……出てこい!」
突然、見えていないはずの自分をしっかり見つめて出された声に、透明なそれは一瞬驚く。そして、姿を現す。
現れたのは、十代後半くらいの少女だった。姿は、ゼルシウスという気配を薄くするというコスチュームを着ていて、全体的に刺々しいイメージを感じさせていた。
「なんなんですか……あなた達は……何故、私に気づけるのですか?」
「……達?」
「いえ、何でもありません。それよりも答えてください。私は完全に気配も姿も消していました。何故気づけたのですか?」
少女の瞳は、鋭くこちらを見ている。適当にはぐらかしてもいいが目をつけられるのは面倒くさそうだ。何より、姿も気配も隠すということは普通のアークスではないということに他ならない。
「私が君に気づいた理由はおそらく、君が思っているアークスとは別だろう。……私が君に気づけたのは、私が他のアークスとは違うからだ。それ以上は言えない。どうしても聞きたいのならば力づくで来い。」
「……少し、予定とは異なりますが仕方ありませんね。目標を始末します。」
少女は、武器を抜きそう言った。
ーー始末する、と。
つまり、誰かが私を暗殺するよう命令したのだろう。大体、その誰かの見当はついているが……少しの隙を見つけて、少女はダガーを構え、首に向かって一直線に突っ込んできた。その動きは、アークスとしてはまぁまぁと言えるが暗殺者としては失格だった。私は、虚空から黒剣を取り出すと、その攻撃を薙ぎ払う。
「っ……!」
「動きは速いが何処を狙っているのかバレバレだぞ……?」
少女は、言葉を無視して再び突っ込んでくる。それを、剣で受け止める。少女のダガーが剣と接触し少し違和感を覚えるが、そのままライジングエッジで打ち上げる。少女は、小さく呻いたが空中で一回転するとツインダガーPAブラッディサラバンドを放ってくる。飛んでくる斬撃をガードする、直後フォールノクターンで地面スレスレまで降下してきていた少女が空いた腹にオウルケストラーを放つ。完全に入った斬撃に私は少し顔を歪ませるが、すぐに表情を戻す。体力が少なくなったが、代わりにサブに解放して付けていたFiのハーフラインスレイヤーとデッドラインスレイヤーが発動し、その分の打撃力が上乗せされたソードの叩き付けが少女を襲う。
「ぐっ……」
「さっきの連携は良かったが……攻撃後の油断は、命取りだぞ?」
強烈な叩きつけをくらった少女は、気絶しそのまま雪の中に倒れてしまった。
「……吹雪が来るな。」
雪の中、倒れている少女を見つめながらそう呟く。
放置してもいいが、聞きたいことがいくつかある。私は、少女を抱えると近くの洞窟に入った。火を焚いて、しばらく暖をとっていると読み通り外は吹雪出した。何故かは、わからないが私の読みは高確率で当たる。というか、外れたことが無い。
とまぁ、そんなことは置いておいて、先の戦闘で違和感を感じた少女の武器を調べる。まず、見る。デザインはぜルシウスと似ていて少し変わっているがアークスは、割となんでも武器として扱うからおかしくはない。例えば、デッキブラシや冷凍マグロなんかがそうだな。次に、刃を撫でてみる。
「っ……」
切れ味は普通だが、身体にあるフォトンが奪われたような気がする。先程の戦闘で感じたのは、このフォトンが奪われる感覚なのだろう。だが、この武器が奪うのは他者のフォトンのみでは無い。強すぎるその力は使用者のフォトンすら喰い、その存在を希薄なものにしている。
「あうぅ……だぁだ!」
さっきまで布の上で寝ていたはずのヒカリ起きてきて、少女の顔にぺちぺちと触れる。その瞬間、アークスのテクニック、レスタのような光が発生する。
「なっ!?」
自分ですら見たことの無いヒカリの姿に驚いていると、少女が目を覚ます。
「うっ……誰ですか?顔を叩かないで……って赤ちゃん!?」
目を覚ますといきなり目の前に知らない赤ちゃんがいれば誰でも驚くだろうな……と思ってはいたが、さっきまで戦っていたクールな少女が目をぱちくりさせて驚いている姿は面白かった。
「……ふふっ、感謝しろ。お前を回復させたのはヒカリだ。」
「……本当ですか?この子が?」
「そうだ、くくく……私も信じられないが事実だ。」
「笑いすぎです……」
少女は不満げな表情でこちらを睨んでくるが、やがて、はぁ……とため息を付くとヒカリを抱き抱えた。抱っこされたヒカリは、きゃっきゃっと喜んでいる。ようやく、落ち着いた私は、温めておいたスープを渡しながら吹雪が止むまで話をすることにした。
「どうして、敵の私にここまでするんですか?」
「……うーん、どうしてだろうな。私の勘が今は、お前が死ぬ時ではないと告げているから?というか、お前の剣に明確な悪意を感じられないから、だろうか。現に、ヒカリもお前に懐いてるからな。」
「なんなんですか……そのなんとも言えないような理由は。」
呆れるように、片手で頭を抑え下を向く少女に今度はこちらからの質問をする。
「まぁ、そういうわけだ。というか、聞き忘れていたがお前の名は?」
「普通、暗殺者が敵に名前を教えると思います?」
「任務失敗してる上に、敵に助けられてるのに?」
「ぐっ……意地悪な人ですね。……クーナです。」
「だぅ。」
クーナは、ムスッとした表情でこちらを睨むがそんなことは気にしない。なぜか、ヒカリが呆れたような顔をしている気がするが気にしない。
そして、次の質問だ。裏の仕事をしているならば例の噂の件も知っている可能性が高いからな。
「それじゃ、クーナ。今、アークスの中で噂になっている惑星ナベリウスの凍土に居るという物探しダーカーについて何か情報はないか?」
「……なるほど。貴女はその調査に来たというわけですね。残念ですが、そちらに関する情報も噂以上のことは持っていません。」
「……そうか。」
「では、次はこちらから。かの暴走龍については、ご存知でしょうか?もし、見つけたなら全力で始末してください。ハドレッド……いえ、あいつは裏切り者ですので。」
「……わかった。が、その件に関しては私より適役がいるぞ?私より先に出会い、そして話した彼。彼ならばお前の力になるだろう。私の勘がそう言っている。」
「また勘ですか……ですが、わかりました。そうしてみます。」
その後、しばらくして吹雪は止んだ。しかし、代わりに私の調査対象も現れた。強大な黒いフォトンを纏ってーー
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