Infinite・Hakaider   作:赤バンブル

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試作第三話。


課題

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏の脳だと・・・・・」

 

千冬は言葉を失ってしまった。無理もなかった。

 

形はどうあれ死んだとばかり思っていた弟は自分の目の前に現れたのだ。それも敵として。ハカイダーは今にもゴーレムたちの拘束から解かれようとしていた。

 

「あのロボットが教官の・・・・・・」

 

身体が痺れて思うように動けなくなったラウラは這いつくばりながらもそれを見ていた。千冬は思わず「雪片」を手から離してしまう。

 

「・・・・・・出来ない・・・・・一夏と戦うなんて私にはできない!」

 

『ちーちゃん・・・・・』

 

束も何とも言えなくなってしまった。一方のハカイダーはあと少しで拘束を解くところだった・・・・・・・・だが。

 

『グッ!グウウ・・・・・・・・・』

 

突然苦しみ始めたかと思うと体中から煙を噴出して機能を停止してしまった。

 

『ほう、どうやら破壊回路とISコアは長時間戦闘を行うと拒絶反応起こし、ショートを起こしてしまったようだな。君たち姉弟の戦いを見たかったところだが非常に残念だ。』

 

ハカイダーの口を借りてギルは残念そうに言う。

 

『儂もそろそろここらで話を終わらせるとしよう。篠ノ之束に我らの居場所を知られるのも面倒だからな。ではまた会おう。ダークにISは通じぬことをハカイダーが証明してくれたからな。この出来損ないはお前たちにくれてやる。後は好きにするのだな。』

 

そういうとギルの通信は途絶え、ハカイダーの目は完全に光を失った。千冬は黙ったまま抵抗しなくなったハカイダーに近づいた。

 

「一夏・・・・・」

 

変わり果てた弟にそっと手を触れる千冬。だがその隣ではラウラが拳銃を構えていた。

 

「教官、下がってください。」

 

「ボーデヴィッヒ!貴様、一夏をどうするつもりだ!?」

 

「奴は我が軍に甚大な被害を与えました。このまま破壊して・・・・・」

 

「ダメだ!」

 

「教官!」

 

千冬はハカイダーを庇う。

 

「一夏は元々こんなことをする奴じゃなかったんだ!すべては私のせいなんだ!だから撃つなら私にしろ!」

 

「何を言うんですか!奴は確かに教官の弟だったのかもしれません。しかし、今は我が軍に打撃を与えたISすら上回る恐ろしい兵器なんですよ!」

 

ラウラが千冬に反発するにはこれが初めてだった。今まで千冬が言うことは正しいと思い、彼女の指導を受けてきた彼女だからこそこの判断は正しいと感じたからだ。現にハカイダーは甚大な被害を与えたのは事実、このまま見ず知らずの未確認機に回収され再び動き出したらそれこそ取り返しがつかなくなる。

 

「退いてください教官!いくら教官でも本当に撃ちます!」

 

「撃つなら撃つがいい!一夏を壊すというのなら喜んでこの命くれてやる!」

 

「教官・・・・・・・・」

 

「もう、二度と手放さない・・・・・・私のたった一人の弟・・・・・・たった一人の家族・・・・・・もう失いたくない・・・・・」

 

千冬は泣き崩れながらハカイダーを見る。機能を停止したハカイダーはどこか悲しげに見えてくる。

 

『・・・・・・ちーちゃん、悪いけどいっくんは束さんが持っていくよ。このままだと本当にいっくんが死んじゃうから。』

 

そういうとゴーレムたちはハカイダーとホワイト・クロウを回収して去ろうとする。

 

「待ってくれ束!お願いだから一夏は連れて行かないでくれ!!」

 

『今のいっくんはちーちゃんが誰なのかも憶えていないんだよ?』

 

「憶えていなくてもいい!傍にいさせてくれるだけでもいいから・・・・・・・・頼む・・・・」

 

『・・・・・・・日本に戻ってきたとき私の助手のクーちゃんを迎えに行かせるから。そのときまで待って。』

 

そこで束の会話は終わりゴーレムたちは空のかなたへ飛び去って行った。

 

 

 

 

 

 

後にドイツ軍はこの事件を軍の演習中の事故として偽装した。これはISを上回る兵器の存在を知られてしまえば世界が混乱し不安定になると判断してでの判断だった。これによる死者は多数、けが人の内複数人は軍のIS搭乗者だった。彼女たちは幸い復帰も可能な負傷で意識を取り戻したもののハカイダーへの恐怖がトラウマになり軍への復帰を拒む者が続出、数か月後に軍を除隊する者が相次いでいたという。この中で右足を吹き飛ばされたクラリッサ大尉は一時義足の装着も考えたが吹き飛ばされた右足の接合がうまく行ったため数カ月後に復隊のためのリハビリ訓練へと移る。

 

この事件の数日後、織斑千冬はドイツ軍から去り、日本に帰国することになった。本来別れのあいさつに来るはずだったラウラはこのときは現れず千冬は見送る者がいない中、軍を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

日本の空港に到着すると束の言う通りクロエと名乗る少女が迎えに来ていた。千冬は彼女の運転する車に乗せられると目隠しをされ束のラボへと連れていかれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・もう目隠しを外してもらっても結構ですよ。」

 

クロエの指示で千冬は付けられていた目隠しを外す。

 

「ここが束のラボなのか?」

 

「はい、私と束様は基本的にここで衣食住をしています。」

 

「ここに一夏がいるのか?」

 

「現在束様が破壊回路のプログラムの書き換えで研究室で眠っています。しかし、根本的な組み換えは現段階では困難なため基準を下げるのが限界ですが。」

 

クロエはそう言いながら千冬をラボの中へと案内していく。研究室では束が丁度ハカイダーの回路を一回分解して新しく組立て終えたところだった。

 

「あっ、ちーちゃんいらっしゃい。まあ、散らかっているけど空いてるところに座ってよ。」

 

束が勧められるがままに千冬は研究室のソファーに座った。

 

「クーちゃん、コーヒー淹れてきて。束さんにはミルクたっぷりで。ちーちゃんは?」

 

「わ、私はストレートで頼む。」

 

「わかりました。」

 

「あっ、インスタントなんだからスプーン二杯でいいんだよ。この間みたいにお玉二杯じゃだめだよ?」

 

「はい。」

 

そういうとクロエは厨房へと入って行った。それを確認すると千冬は真面目な顔になって束の方を見る。

 

「・・・・・・・束、一夏は・・・・・」

 

「正直言うとあの体になる前の記憶はほとんど失っていたよ。正直脳自体にもそのダメージらしき痕跡が調べてみたらあったんだよ。だから後遺症という可能性もあるね。現にちーちゃんたちを襲った時の記憶もなかったよ。」

 

「人間の体に戻すことはできないのか?」

 

「残念ながらそれも今の段階では無理だね。体は恐らく向こうが証拠隠滅のために処分しているだろうし・・・・」

 

「そんな・・・・・・・」

 

千冬は思わず落胆する。そんな時、ハカイダーが再起動して起き上がった。

 

「おはよういっくん。気分はどう?」

 

『・・・・・・今度は何をした?』

 

「破壊回路とISコアの拒絶性をなくしたところかな?破壊回路のプログラムを少し~~だけ書き換えてISへの破壊本能を抑えたんだけど。」

 

『・・・・・・・そうか。』

 

「い、一夏・・・・・・・・」

 

『ん?』

 

ハカイダーは千冬の方を見る。

 

「あ、この人は私の大親友・・・・」

 

『ち・・・・・・・・ふ・・・・・・ゆ・・・・・姉?』

 

「「!?」」

 

ハカイダーの一言に千冬と束は唖然とした。

 

「いっくん今なんて言った!?」

 

「わ、私のことをお、憶えているのか!?一夏!?」

 

『分からない。だが、貴様を見た瞬間ふと頭にこの言葉がよぎった。どうしてだがわからんが・・・・・』

 

ハカイダーは困ったように言う。千冬は思わず涙目になった。

 

「ちーちゃん、今の私じゃいっくんを元の体にすることはできないよ。でも、できるだけ人間に近い生活ができるようにするのには努力は惜しまないよ。」

 

「だが・・・・・・・この姿では・・・・・・」

 

「今はまだできる状態じゃないけどその作業が終わったら以前のいっくんの姿になれる回路を作る予定にしているんだ。だから昔みたいに一緒に住めるよ。」

 

「それは本当なのか?」

 

「でも、問題は破壊回路なんだ。あれはあのギルとかっていう爺さんからじゃ、いっくんのことが丸裸同然に分かっちゃうから今はこれをどうやって防ぐかが課題なんだよ。このラボにいればあらゆるものも遮断するから向こうも今何やっているのかわからないけど・・・・・」

 

束は考える人の真似をしながら言う。それと同時にクロエがコーヒーを持ってくる。

 

「コーヒーお待たせしました。」

 

「ありがとうクーちゃん・・・・・・・って、何だこの白い粉末の塊は!?」

 

束は自分のカップの白い塊を見ながら言う。

 

「何ってご指示通りにミルクを・・・・・・」

 

「私が言ったのは冷蔵庫の牛乳だよ!これじゃ・・・・・・・・コーヒーの味がする脱脂粉乳・・・・・・ガクッ。」

 

束はしょぼんとしたように言う。千冬は恐る恐る自分カップを見る。幸いこちらは普通のコーヒーだった。

 

「とにかくちーちゃん・・・・・・いっくんのことは私が何とかするからね。」

 

「あ・・・・・・ああ。よろしく頼む束。」

 

そう言い終わると束はほぼ水分が脱脂粉乳に奪われたコーヒーを飲む。

 

「おおう・・・・・・・束さんのお口の水分が・・・・・・」

 

『水を持ってくるか?』

 

ハカイダーは何気に心配していた。

 

「・・・・・・・・人のことを心配するところは変わっていないんだな。」

 

千冬は少し安心したような顔で言う。姿はどうあれ今束を心配しているハカイダーはかつての一夏そのものだった。

 

 

 

一方ダークでは

 

「プロフェッサー、なぜあの時ハカイダーを回収されなかったのですか?」

 

部下の一人が不思議そうに聞く。するともう一人の部下の方も引き続き言う。

 

「私も同意見です。現にあの時の戦果は暴走時よりも安定しているうえに能力も予想よりも遥かに上回っておりました。」

 

「儂等はISのことに関してまだ知らなぬことが多すぎる。」

 

「はあ?」

 

「確かに我がダークでもISのコアから様々な実験を繰り返している。だがダークロボットにコアを取り付けるということはあるか?」

 

「それは・・・・・・」

 

「ダークロボットはそもそもISを含める既存の兵器への対処・破壊することを目的として製作している。無論ハカイダーとて例外ではない。」

 

「確かにおっしゃる通りです。」

 

「それにこちらと回線が繋がった時確認したコアを見ればわかるであろう。」

 

「はい、コアは現在確認されているISのコアのどれにも属さず、通常の物よりも出力が桁違いに高いです。」

 

「おそらく初期に制作したプロトタイプのコアの一つを使ったのであろう。通常のコアではあれほどの出力を出せんからな。」

 

「では・・・・・我ら側で回収しても・・・・・」

 

「使い物にならんな。破壊回路の方が出力が勝って自爆しかねん。」

 

「・・・・・・」

 

「まだ何か言いたいか?」

 

「い、いえ!失礼しました!」

 

部下はさっさと自分の持ち場へと戻って行った。

 

 

 

 

 




・・・・・・実はというとこの作品本来「特捜ロボ ジャンパーソン」ベースでやる予定でした。機会があればそちらのバージョンにもチャレンジするつもりです。

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