求めていた物はきっと。   作:あくぜろ

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本作品を読んでくださっている皆様、大変お待たせしました。
自分で書いた作品を自分で読み直すと、結構表現の浅い部分があって大幅に修正してしまう。どうもあくぜろです。

二日連続投稿をしたせいもあるのかもしれませんが、第二話でお話の方向性もハッキリしてない作品にも関わらず、早くもお気に入りが30件オーバー……。これが旬の原作のコンテンツ力なのかと戦々恐々していると同時に、結構期待されているのかな?なんて勝手に思って一人で燃えています。コンテンツ力だけの作品を書くのは不本意ですし、今後も頑張りたいですね。

ということで第三話なのですよ。


帰ってきた場所

「あれ、もう外が暗くなって来てる。三人ともついさっき来たばかりなのに、なんかあっという間だね。」

 

 久し振りに会った三人の友人たちと過ごす時間はとても楽しくて、しかし楽しい時間というのは大抵過ぎるのも早いものである。千歌の言葉につられる形で外に目を向けると確かに日が沈み始めている。ポケットからスマートフォンを取り出して時間を確認すると、時刻は六時三十分を少し過ぎたところだった。そろそろ帰らないと七時を過ぎてしまうため、ここらで失礼しよう。

 

「もうこんな時間か。三人とも、悪いけど俺はそろそろ帰るわ。」

 

「じゃあ私もあんまり遅くなるとじいちゃんが心配するから帰ろうかな。曜はどうする?」

 

「うーん、二人が帰るなら私も帰ろうかな。うちもあまり遅くなると心配されるから。」

 

「えー、もう帰っちゃうのー?もう少しお話ししようよぉー。」

 

 千歌が引き留めてくるが、俺は七時には帰らないといけないし、曜と果南姉ちゃんだって年頃の女子である以上あまり遅くなれば両親が心配するだろう。まだまだ話し足りなさそうな千歌には悪いが、今日はこれでお開きにすべきだ。曜と果南姉ちゃんの方を見れば、二人も同じ考えであったようで、千歌にまた今度、と言いながら俺達三人が揃って帰り支度を始めると、不意にポケットの中のスマートフォンが振動し始める。

 

「電話……、親父から?」

 

 取り出したスマートフォンの画面を確認すると、そこにはたった二文字、親父とだけ表示されている。いくら友人とはいえ人前での通話は失礼だろうと思い、一旦廊下に出ようとすると、「あ、別に気にしなくていいよー。」と千歌が言うので、お言葉に甘えてその場で電話に出る。

 

「もしもし?」

 

『優理、お前今どこにいる?』

 

「ん?千歌ん家。バス停で会った果南姉ちゃんに連れてこられた。」

 

 ぶっきらぼうに、用件だけを伝える親父からの電話は、慣れてない人間が聞けば親父の機嫌が悪いように感じるかもしれないが、十五年間親父と接してきた俺は自分の父親がこれで平常運転であることを知っているので特に驚かない。親父は堅物で口下手で不器用な人なのだ。

 

『そうか。……曜ちゃんには会えたか?』

 

「ああ。限りなく偶然に近い感じだったけどね。顔合わせるなり思い切り殴られたよ。いやぁ、あの右は世界狙えるんじゃないかな。」

 

 と、冗談めかして言うと同時、左の脇腹に鋭い痛みを感じる。辛うじて悲鳴を飲み込みながら左を向くと、曜が半目でこちらを睨んでおり、どうやら彼女に脇腹をつねられたのだということが分かる。目線と空いた左手によるハンドサインで謝罪の意思を伝えると、曜は勢い良くそっぽを向いてしまった。こいつ、こんなにめんどくさい奴だったっけなぁ。と思いながら電話の方に意識を戻す。

 

『自業自得だろう。三人は今一緒にいるのか?』

 

「いるけど、どうしたのさ?なんか用事?」

 

『爺さんがお前が帰ってくるからと張り切っていてな。なんだったら三人も連れて来い。親御さんには婆さんから連絡をいれてもらうから、時間は気にしなくて大丈夫だ。』

 

「ん、ちょっと待って。聞いてみる。」

 

 ああ、じいちゃんが羽目外しちまって四人じゃとても食えない量を用意したのかと瞬時に理解し、一旦スマートフォンを耳から放して三人に問いかける。

 

「なあ、親父が家で飯食わないかって。どうもじいちゃんが張り切りすぎたみたいでさ、出来れば手伝って欲しいんだけど。あ、時間は気にするなってさ。」

 

「ホント!?いくいく!もちろん行くよ!曜ちゃんと果南ちゃんも行くよね?」

 

 真っ先に千歌が顔を輝かせながら了承の返事をし、他の二人にも「行こうよ!」と言わんばかりの勢いで問いかける。曜と果南姉ちゃんは少し考える素振りを見せたものの、すぐに返事をしてきた。

 

「うん。それじゃあ私もお言葉に甘えようかな。優理ん家のご飯、美味しいしね。」

 

「折角誘ってくれてるのに断るのも悪いよね。というわけで私もお邪魔しようかな。」

 

「ん、了解。……三人とも来るってさ。今からそっち向かうから、着くのは十五分後くらいになると思う。」

 

 千歌に続いて曜と果南姉ちゃんも了承してくれたので、再びスマートフォンを耳に近づけて親父に三人が了承してくれた旨と、大まかな到着時間を伝えておく。

 

『分かった。気をつけて帰って来るんだぞ。』

 

「うん、分かってるよ。それじゃあまた後で。」

 

 そう言って電話を切って、心の中で親父にありがとうと言っておく。多分、じいちゃんが飯を用意しすぎたというのは親父の嘘だろう。職人人生五十年にもなるじいちゃんが勢いに任せて料理を作りすぎるとは思えないし、もしじいちゃんが羽目を外してしまうようなことがあってもばあちゃんが上手く宥めるはずだ。じいちゃんがその道五十年のプロだというなら、ばあちゃんもまた五十年間仕事と家庭の両方でじいちゃんを支え続けている、云わばサポートのプロ。そんな二人が揃っていて、料理を作りすぎるなんてつまらないミスをする事はないだろう。

 

 きっと親父は果南姉ちゃんを俺の迎えに寄越した時から、三人を今日の夕飯に招待するつもりだったんだと思う。親父は態度にこそ出さないものの、いつも俺のことを気にかけてくれている。だから果南姉ちゃんに俺の迎えを頼んだのも、そして今、わざわざ家で七人分もの夕食を用意してくれているのも、全部俺のことを思ってやってくれているのだろう。

 

 三年前や今回のような俺のワガママにも何も言わないでいてくれるし、本当に親父には頭が上がらない。そんなことを考えながら、準備をしている三人に先に外で待ってると伝えながら千歌の部屋から出る。俺がいたら着替えとかもできないだろうし、美歌さんに預けてある荷物を受け取っているうちに三人の準備も終わるだろう。

 

 

* * *

 

 

「おまたせー。ごめんね、待たせちゃった?」

 

 旅館の玄関で美歌さんから荷物を受け取っていると、曜と果南姉ちゃんと一緒に千歌が奥から出てきた。俺も今荷物を受け取ったばかりなので特に待っていないと伝える。

 

「よかったー。曜ちゃんと果南ちゃんがうるさくて服選ぶのに時間かかっちゃったから、待たせちゃったかなって心配だったんだぁ。」

 

「最初は適当にジャージとかで出ていこうとしてたんだけどね。流石に女子高生がそれは問題あるからって言ってたんだよ。」

 

「幾ら優理ん家に行くだけとはいっても、ジャージでっていうのはあまりに女子らしさを投げ捨てた選択だからねー。無理矢理別の服に着替えさせてたんだ。」

 

 どうやら俺が荷物を受け取っている間に、ガサツ女子と今どき女子による激しい争いがあったようだ。というか千歌さん、君はそれで良いのか。幾らすぐ近くにある友達の家に行くだけとはいえ、流石にジャージというのは無いだろうと男子の俺でも思う。女子に幻想を抱いてるような男子連中に見せてやったら、自分の幻想とのギャップに耐えきれずに卒倒するのではないだろうか。そんな俺の心境など全く分かって無い様子の千歌は、靴を履きながら美歌さんと話している。

 

「おかーさん、今からゆーくん家にご飯食べに行ってくるから、私の分の晩ご飯は用意しなくて大丈夫だよ。」

 

「はいはい。話はユウちゃんから聞いてるから大丈夫よ。あんまりはしゃぎすぎてユウちゃんのお父さん達に迷惑かけちゃダメよ?」

 

 この春高校生になる娘に言う言葉とは思えない言葉を聞いて、思わず吹き出しそうになってしまう。それは既に靴を履き終えている曜と果南姉ちゃんも同じようで、二人の方を見ると、二人とも必死に笑いを堪えようとして震えているのが分かる。

 

「もー!おかーさんはいつもそうやって私のこと子供扱いしてー!私だってもう高校生になるんだよ?ほらぁ、三人とも笑ってるじゃん!」

 

「三人ともチカのことお願いね。この子いくつになっても子供のままだから三人に迷惑かけちゃうと思うけど……。」

 

 千歌の抗議をどこ吹く風と言わんばかりに、美歌さんが俺達の方を向いて言葉を続ける。俺達三人も、流石に千歌も高校生だからと言いたいのだが、ずっと前から千歌が何かと危なっかしい人物であることを知っている上に、先程の服装の話で千歌が子供の頃からあまり変わっていないことも証明されてしまっている。結局、俺達は三人揃って苦笑するしか無いのだが、それが気に入らなかったのか、千歌は頬を膨らませながら今度はこちらに食ってかかってくる。

 

「三人ともどうして大丈夫って言ってくれないの!?もしかして皆も私のことそんな風に……。」

 

「いや、だって……。ねぇ?」

 

「子供かどうかはともかくとしてチカが危なっかしいのは昔から変わらないからねぇ。」

 

 比較的千歌に甘い曜は言葉を濁して目を泳がせているが、果南姉ちゃんははっきりと言い放つ。そんな二人の形こそ違うが、肯定を示す反応にうちひしがれた様子の千歌は半分涙目になりながら、縋るようにこちらを向いて来るが俺の答えも二人とそう変わらない。

 

「いや、そんな目でこっちを見ようが関係なく、俺の中の千歌は初めて会った頃から現在進行形でアホの子のカテゴリに分類されていてだな。その、なんだ。諦めろ。」

 

 そう言いながら千歌の肩にポンと手を置くと、俯いている彼女がわなわなと震えているのが分かる。あ、これ虐めすぎたやつだ。と気付くが、時既に遅し。次の瞬間、千歌は俺の手を払い除けて、その場にいた全員を気にも留めずに外へと走り出してしまっていた。

 

「うわぁぁぁぁぁん!そうやって皆で私を虐めるんだぁぁぁぁぁ!」

 

「はいストップー。小さい頃にそれやって色んな人に迷惑かけたのは誰だっけー?」

 

 が、そんな千歌の疾走はすぐ隣にいた果南姉ちゃんに、襟首を掴まれることによって未遂に終わった。掴まれた反動で、「ぐえっ」という女子高生の口から聞こえてはいけない声が聞こえた気がするのだが、千歌の名誉の為に聞かなかったことにしておこう。

 

「うう、ひどいよ果南ちゃん。服破けちゃったらどうするのぉ?」

 

「いや、今のは果南ちゃんじゃなくても止めるんじゃないかな……。」

 

 曜が苦笑いしながらそう言うが、俺も同意見だ。先程果南姉ちゃんも言っていたが小さい頃、それこそ俺達が小学校に入ってすらいない頃に似たような状況で千歌が何処かに走り去ってしまい、俺達三人で探しても見つからず、最終的にはご近所全体を巻き込んでの大騒動に発展したことがあるのだ。あの時は普段滅多に怒らない美歌さんが本気で怒っていたのを今でも覚えている。それを考えれば千歌を捕獲したことはもちろん、その手段に関しても全て自業自得の一言で済むだろう。

 

「まったく、チカはいつもそうやって後先考えずに走り出すんだから。そんなんだからいつまでも子供扱いなんだよ。」

 

「だな。こんなの見せられたら誰だって子供扱いするさ。」

 

 そんな、俺と果南姉ちゃんの言葉に頬を膨らませる千歌だが、果南姉ちゃんに襟首を掴まれたままなので、先程のように逃げ出す心配はない。ちなみに千歌は先程からバタバタともがいて、果南姉ちゃんの拘束から逃れようと抵抗はしているのだが、日頃ダイビングで鍛えている果南姉ちゃんと千歌の間には絶対的な体力差があるため、抜け出せないでいる。

 

「この子は何時まで経ってもこんなだから心配なのよ。本当にいつまでも目が離せなくて……。」

 

「うー、もういいよ!皆、おかーさんなんか放っといて早くいこ!」

 

 ようやく果南姉ちゃんの拘束から解放された千歌は、頬を膨らませたまま、一人でずんずんと歩いていってしまう。本当に昔から変わらないなぁ、と思いつつ、美歌さんに挨拶をして千歌を追いかけることにする。

 

「それじゃあお邪魔しました。また近い内に顔を出しにくるので。……美渡さんがいない時に。」

 

「あははっ!ユウ、まだ美渡さんのこと苦手なんだね。それじゃあおばさん、また来ます。」

 

「優理は昔から美渡さんのお気に入りだったもんねー。あ、今日はお騒がせしましたっ!」

 

「ふふっ、また来てね。美渡にはユウちゃんが会いたがってたって伝えておくから。」

 

「いや、本気で勘弁してください。」

 

 美歌さんとそんなやり取りをしてから、俺達三人も先に行ってしまった千歌の後を追いかけて行く。旅館の敷地の外では、相変わらず不機嫌そうな顔をした千歌が待っており、彼女に追い付いた俺達に歩きながら文句を言ってくる。

 

「もーっ、みんな遅いよー。」

 

「お前が先に行ったからだろうが。ったく、本当にせっかちな奴だな。」

 

「だっておかーさん話長いし、私のことバカにするんだもん。」

 

 などと言い争っている俺達を見ながら、不意に曜がクスリと笑いをこぼす。

 

「ふふっ、なーんかこの光景も久し振りに見るよね。」

 

「そうだね。思い立ったら即行動しちゃうチカと何をするにも考えて動くユウは、昔からこうやってよく喧嘩してたもんね。懐かしいなぁ。」

 

「あー、そういえば昔から千歌とはよく揉めてたな。だけど考えて見てほしい。これまでに千歌に全てを放り投げて碌な結果になったことがあったか?」

 

 少なくとも俺の覚えてる範囲では、そんなことは一度も無かったと思うのだが。こういう時に俺が折れたり、そもそも最初から千歌に従ったりした場合、大体は四人揃って正座から説教、良くて実行犯の千歌だけ説教がオチだったはずだ。そんなことを考えながら、曜と果南姉ちゃんの方を見てみれば二人も同じ考えのようで、苦笑を浮かべている。

 

「うーん、確かにチカが言い出しっぺで何かしたときは拳骨かお説教を受けた記憶しかないなぁ。」

 

「い、いや、頑張って思い出せば一回くらいはちゃんとしたのがあるんじゃないかなぁ?……多分。」

 

「そうだよぉ。そんな毎回毎回怒られたりなんて……あれ?なんか毎回怒られてる気がする。」

 

「ほら見ろ。いつも揉めてたのだって、放っとけば碌なことにならないことが分かりきってたから、それを止めてただけだぞ?」

 

 そんな他愛もない話をしながら、五分ほど歩いただろうか。正面に、周囲の民家とは少し異なる建物が見えてくる。他に比べて和を意識したのであろう装いで、入り口には白い暖簾がかかっている。だが、何よりも特徴的なのは入り口の引き戸、その真上にでんと佇む大きな看板で、そこにはただ四文字で「鮨処 古河」と記されており、いかにもといった昔ながらの寿司屋の雰囲気を演出している。この店、鮨処古河はここ内浦で三代続く鮨の名店であり、東京は銀座で修行したという初代の技を代々受け継ぎ、今日まで守り続けていることで有名だ。

 

 地域や県内はもちろん県外でも有名な店であり、この店の鮨が食べたいと県外からはるばる訪れる客もいるほどである。そんな鮨処古河が今の俺達にどう関係あるのかといえば、ここが俺達の目的地、つまりは俺の実家なのだ。慣れた足取りで入り口に近付けば、引き戸には本日貸切の張り紙がされているのが分かる。

 

「うーん、三年ぶりの筈なのに全くと言っていい程に何も感じない。久し振りに帰ってきたって感じがしないんだよなぁ。」

 

 いつ見ても立派な店構えだよなぁ、と思うがしかし、三年ぶりに帰ってきた筈の我が家には何故かあまり懐かしさを感じない。昨日までは別の場所で寝泊まりしていたというのに、誰かにお前はこの三年間ずっとここに住んでいたと言われれば、そのまま信じてしまいそうな程度には懐かしさや、帰ってきたという感覚がしないのだ。尤も、昨日まで身を寄せていた従兄弟の家が、この家と似た外見的特徴を持っていたからということもあるのかもしれないのだが。

 

「私は実家から離れたことが無いから分からないけど、案外そういう物なのかもしれないよ?」

 

「私はうんざりだけどなー。あーあ、一回でいいからゆーくんみたいに東京の親戚の家で暮らしてみたいなぁー。」

 

 そんなことを言っている曜と千歌を横目に、引き戸を開けて店の中に入っていくと、そこには親父にじいちゃん、ばあちゃんの今我が家にいる家族全員が揃っており、久し振りに見る肉親の顔に、ここで初めてちょっとした懐かしさを感じた。同時に、普段は四人掛けの席として使っているテーブルを三つ繋げることで作られた、多人数用の大きなテーブルに所狭しと並べられた料理が目について、思わず苦笑してしまう。

 

「ただいまー。って本当にすっごい量だな、こりゃあ。」

 

「おお、しばらく見ない間に大きくなったのぉ。元気にしとったか、優坊や。」

 

「お帰りなさい、ユウちゃん。ささ、果南ちゃん達も入って入って。お料理が冷めちゃうわ。」

 

 鉢巻きと白い板前用の上着を身に付け、ニカッと人好きのしそうな笑みをこちらに向けてくるじいちゃんに、柔和そうな印象を与える笑みを浮かべながら近付いてくるばあちゃん。二人とも来年には七十五になるというのに、まだまだ元気そうで何よりだ。そんなことを考えていた俺の後ろから千歌、曜、果南姉ちゃんの三人も続々と店の中に入ってくるので、横にずれてスペースを開ける。

 

「おじさん、おじいちゃんにおばあちゃんも。今日はお招き頂いてありがとうございます。」

 

「えっと、お久し振りです。今晩はお世話になります!」

 

 果南姉ちゃんと曜が少し畏まった様子で挨拶をするが、じいちゃんはがははと大声で笑いながらそれに答えた。

 

「知らない仲じゃあるまいし、二人ともそんな畏まらんでくれ。ほれ、見ての通り優坊が帰ってくると聞いて儂も婆さんも張り切ってしまっての。寧ろこっちが手伝ってほしい位なんじゃよ。」

 

 指で頬を掻きながら、恥ずかしそうに言うじいちゃんにばあちゃんも続く。

 

「そうよぉ。それに三人ともこーんな小さな頃からユウちゃんと一緒に遊んでくれてたから、もう私達にとっては全員が孫みたいな物なの。だから曜ちゃんと果南ちゃんも千歌ちゃん位の感じでいいのよ?」

 

 そういったばあちゃんの視線の先には早くもテーブルに近付いて、並べられた料理の数々に目を輝かせている千歌の姿が。ばあちゃんに釣られる形でそちらを見た曜と果南姉ちゃんは片や苦笑、片や呆れた表情を浮かべる。

 

「うわぁ、すっごぉい!どれもこれも美味しそうでどれから食べていいか迷っちゃうよー。」

 

「千歌ちゃん……。」

 

「こーら、チカ!おじさん達に挨拶ぐらいしなきゃダメでしょ!」

 

「あら、いいのよ。それより皆手を洗ってらっしゃいな。場所は覚えてる?」

 

 あまりにアレな千歌の行動を果南姉ちゃんが咎めようとしたが、それに被せるように放ったばあちゃんの言葉に、三人とも店の奥へ消えて行く。そんな中、俺は先程から一言も発さずに、腕組みをしながら壁際に立っている親父に近付いて行く。そんな俺に気づいた親父は、無言のままこちらに視線を向けてくる。

 

「ただいま。それと、ありがとね。」

 

「……何の事だ。特に何かしてやった覚えは無いぞ。」

 

「色々だよ。お陰で大分気が楽になった。だからありがとう。」

 

 俺がそう言うと、俺のことを見下ろしながらフン、と鼻を鳴らしてただ一言「良かったな。」とだけ呟いてテーブルの方へ歩いていってしまう。そんな俺と親父の姿を、カウンター越しに見ていたじいちゃんがため息を吐く。

 

「久し振りに息子と会ったって言うのに素っ気ない奴じゃ。まったく誰に似たんだか。」

 

「本当にねぇ。昔から素直じゃないんだから。さ、そんなことよりユウちゃんも手を洗ってらっしゃい。ご飯にしましょ!」

 

 ばあちゃんの言葉に頷いて、千歌達が入っていった入り口から、店舗の居住スペースに入っていく。奥から聞こえる騒がしい声に、今夜は騒がしくなりそうだと、そんな確信を一人胸に抱きながら。




ここからはつらつらと遅くなった言い訳でも。
前回の投稿から実に一週間という間が空いてしまった訳ですが、実は先週の日曜日の時点でこの第三話は書きあがっていました。
ですが、録画しておいたアニメ最終回を見たときにちょっとしたことを閃いてしまい、結局三回ほど完成させては一から書いてを繰り返した結果こうなってしまったのです。
三話で既に難産とか非常に今後が心配です。

後はプロットをかなり大幅に手直ししたりもしてるので、その辺の整合性にも苦労してました。

ちなみにスクフェスのイベントは穂乃果ちゃんにこちゃん共に三枚取りできました。やったぜ。



総選挙、僕は梨子ちゃんと曜ちゃんの同率一位を諦めないよ。絶対にだ。
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